「なあ雪風、なんか食いたいもんあるか?」
いつもの千葉駅周辺。学生には優しいファミレスやマックなど、様々な飲食店が連なっている。
そこで、雪風に食べ物の要望を聞いてみる。
「特に私は。そこまで詳しくもないですし、一人で来るときはいつも手軽な物で済ませちゃいますし」
「そうか。俺もそんな感じ何だが……サイゼでいいか?」
「はい、大丈夫ですよ」
決まったところで、俺たちは目当ての店へと入って行った。
店員に案内され着席すると、雪風は唐突に謝り始める。
「比企谷先輩、先日は本当にすいませんでした……私のせいで巻き込んでしまって……」
「別に気にするな。それに、俺だってサヨナラパーティーの準備の時はお前に助けられし」
「あ、ありがとうございます……」
「ああ。とりあえずメニュー選ぼうぜ」
「そうですね」
俺は安定のミラノ風ドリアとドリンクバーを、彼女はシーフードグラタンとプチフォッカという焼きたてパンを選んだ。
それからしばらくして注文して料理が運ばれて来る。
それまでは雪風の家庭の事情や悩みを聞いていた。あまり俺が何か言えるわけでもないので、あくまで聞いて相槌を打っていた程度だが。
親が厳しいことは察していたが、まさか大手企業の社長を勤めているとは思わなかった。他にも、予備校の通う日数もとても多いらしく大変らしい。
さすが、アイツと同じJ組の生徒なだけはある。
「ところで、そのプチフォッカってやつ美味そうだな。俺も頼んでみようかな」
「よければ一つ食べますか?」
「いいのか?それじゃあ言葉に甘えて……っと」
一つ取って渡されたそれを口に入れる。
まだ温かく、とても美味であった。
「ん……美味いな」
「ですよね!!」
「お、おう……」
急に喜んで飛びついてきた。
自分の好きなものを他人が理解してくれることの嬉しさは分かるが、雪風にもこんな一面があるんだな。
そこら辺はアイツとは、やっぱり違うよな。
「比企谷先輩のそれって美味しいんですか?私ドリアとか食べたことなくて」
「ああ、何なら食べてみるか?ほれ」
持っているスプーンでドリアを取り、雪の前へ差し出す。
「え、え……これってあーんじゃ……」
「どうした?持たないのか?」
「そ、そうですよね」
雪風の消え入りそうな声は聞こえなかったが、特に問題もなさそうだ。
「ん、美味しい! 今度きた時はこれにしよ……」
「それならよかった」
その後は何事もなく食事を終え、雪風を家の近くまで送って解散となったのだが……
「比企谷先輩、よかったら連絡先交換しませんか?」
なんて言われるとは思わなかった。
もちろん俺にだってラインくらいはスマホに入れてあるが、友達は小町と両親と戸塚くらいしかいない。流石エリートぼっち!
しかし俺は後輩の強い押しに為す術もなくラインの連絡先を交換してしまった。
そして帰宅してから1時間後。
雪風から「お疲れ様でした」と送られてきたメッセージにしばらくの間苦悩しながら返信する内容を考えた末に「ああ」とだけ送っておいた。