再度、やはり俺は本物を求める   作:火南 蛍

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戸塚彩加は天使である

 そろそろ学生服のYシャツも、長袖から半袖に衣替えする時期になる。

 いつから変えようかと悩みながらも、俺は学校帰りに書店へと寄っていた。

 

 今日はゲゲゲ文庫の新刊の発売日なのだ。

 毎月18日に新刊発売がされるので、特別用がなければこの日は必ず本屋さんに寄るようにしている。

 

 他にも10日は電電文庫、20日はファンタズム文庫、24日はFM文庫はそれぞれ新刊発売日となっているので、書店に足を運んでいる。え?キモいって?ラノベオタクだから仕方ないよね、てへぺろ。

 

「ワタリ先生の新刊は……っと、あったあった」

 

 『ガールズナンバーズ』というタイトルの本を手に取る。

 相変わらず、みかんエイト先生のイラストは神だな、うん。

 

 早速会計のためレジへ向かうと、文芸書が並ぶコーナーであたふたしている女の子……いや、男の娘が目に映った。

 

 戸塚彩加だ。

 俺と同じ、総武高に通う生徒の一人で二年の頃はクラスも一緒だった。

 

 久しぶりに見たな……いや、俺が普段から気にしていないだけで、普段学校で見合わせているはずだが。

 

「あ!八幡!」

 

 こちらに気づいたらしく、声をかけて来る戸塚。

 声変わりがまだ来ていないのだろうその声質は、女と言っても通話越しならきっと信じてしまう。

 

 そんな可愛らしい声をかけられた俺は懐かしい感覚に陥りながらも返事をした。

 

「久しぶりだな、戸塚。こんな所で何しているんだ?」

 

「うん、それがね……えっと、この本を探しているんだけど、なかなか見つからなくて」

 

 はい、っとスマホの画面を差し出して来る。

 そこには、有名なテニスプレイヤーの特集本が写っていた。きっと一テニスプレイヤーとして気になって購入しに来たのだろう。

 

「ああ、その本ならここじゃなくてあっちの方にあると思うぞ」

 

 こんな特集本が、文芸書が置いてある場所にあるはずもない。

 付いて来いと言うように、俺は目当ての本がありそうな場所へと向かった。

 

「お、あったぞ。これじゃないか?」

 

 ファッション雑誌なんかが置いてある場所に来ると、割とすぐに戸塚の欲しがっていたものは見つかった。

 

「そうだよこれ!八幡ありがとっ!」

 

 満面の笑みを浮かべて、お礼を述べる戸塚。

 

「お、おう……」

 

 可愛い、可愛い、ハスハスしたい、抱きしめたい……!!

 

 ゴクリ、と唾を飲み込むと駆られた衝動を抑えるように手を拳の状態にして握りしめた。

 自然と頰が熱くなるのを感じた。

 

 病気かな?病気じゃないよ、病気だよ(病気)。

 

 はい、病気ですね。本当に天使だ。

 

「じゃあ早速買って来るね!」

 

「ああ、俺もこれ買うから一緒に並ぶか」

 

「うんっ!」

 

 レジの並びに入ると、戸塚が少し心配そうな顔をして訪ねて来た。

 

「八幡さ……最近どう?三年に上がってからクラスも別々になっちゃったし……」

 

「まあ……至って普通だな……強いて言うなら、副会長とたまに話すくらいで去年とあまり変わらない」

 

 変わらない、なんて大嘘だ。

 何もかも変わってしまった。

 

 休み時間にちょこちょこ話しかけに来てくれたアイツや、放課後に活動していた部活も、そこにいたアイツも、全て今はない。

 

 大きく変わってしまったのだ。

 

「そっか……あ、材木座くんとはどうなの?」

 

「材木座か、まあたまに学校でもちょっかい出しに来たりラインが来たりする程度だな。アイツ暇そうだし」

 

「確かに」

 

 そういって苦笑いする戸塚。

 

「じゃあさ、今度材木座くんも誘って、ボクと八幡と三人で遊びに行かない!?」

 

「お、おう……別に構わないが」

 

 できれば材木座抜きで二人で遊びたい。

 が、そんなことを言えるほどの度胸は持ち合わせていないため、静かに了承する。

 

「やった!じゃあ帰ったらまた連絡するね!」

 

 そして本を購入した後、戸塚とは別れたーー。

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