「はー……」
家の中へと入るとともに、私はスグに自室へ戻り、着替えもせずにベッドへとダイブした。
私、一色いろはは恋心に悩める乙女である。
前までは葉山先輩が好きだった。それは決して間違いない。
それでも、本気で好きだったかと聞かれたら『そうでもない』と答えるしかない。
だって、私にとっての彼氏彼女の関係なんて、自分自身を魅せるためのモノでしかなかったから。
でも、今は違う。先輩と付き合いたいと、好きだと自分から思うし、気がつけば先輩に会いに行ってしまっている。
「私、なーんであんな人好きになっちゃったのかな……」
いつからだろう。
先輩との初デートに行った時?よりは多分前だし。
やっぱりディスティニィーランドに行ったあの時かなぁ……
帰りのモノレール──
『──振った相手のことって気にしますよね?可哀想だって思うじゃないですか。申し訳なく思うのが普通です。……だから、この敗北は布石です。次を有効に進めるための……だから、その……がんばらないと』
私は周りに人が居なければ今にも泣き出しそうだった。
我慢しても嗚咽が漏れ、瞳にはじわりと涙が浮かぶ。
そんな中、先輩は言ったの。
『すごいな、お前』
って。
普通は頑張れって、人事みたいに言うのが普通なのに。先輩はすごいって言ってくれた。
多分、それが私が先輩を好きになったきっかけ。
それから先輩と時間を過ごすにつれて、どんどん好きな所が増えて……今日のラーメンの時とか、些細なことまで気を使ってくれるし、よく周りを見てるし、歩く時は歩幅を合わせてくれるし。
好きな所なんて言い出したらキリがない。
……ダメダメな所もたくさんあるんだけどね。
でもあの時に言った──
『──責任、とってくださいね』
今思い出すだけでも顔から湯気が出そうになるほど恥ずかしいけど、アレは結構本気で言ってた気がする……
「先輩は私の気持ちに気づいてるのかな……」
あの人、妙に勘が鋭い所あるのに、自分のことになると凄いドン臭くなるからなあ……
多分だけど、いや、間違いなく気づいてるはずがない。
ただ、一つ心配なことがある。
やっぱり、先輩はあの二人に影響されすぎた。
それは、どうしても私の手の届かない所にあって。それでも無邪気に私は追い求めてしまう。
私は──本物が欲しいから。
その本物に、先輩が気づいてくれればいいのだけども。あの人は自分の本物を心のうちに閉ざしていそうで、それは悲しいことに今の私では開くことが出来ない。
「あーあ……なんであんなめんどくさい人好きになっちゃったんだろうな……」
一色いろはは、今日も悩める乙女であった。