「では皆さん!一人ずつ考えた案を発表してくださいっ」
時刻は放課後。
俺と同じ三学年、自クラスの教室に残って友達と会話する者もいれば、受験に備えてそそくさと帰宅していく者もいる。
まあ後者が圧倒的に多いのだが……それでもまだ部活動に専念する者も少なくはない。
前者の場合は受験をせず、かつ部活動も行っていない者の集まりだ。
ちなみに俺も大学には通うつもりなので、受験生ということになる。……働く気は全くないけど。
それに、俺が狙っているところならそこまで勉強漬けしなくとも、間違いなく合格するだろう。でなければ一色の仕事の手伝いをしたりしないからな。
「では副会長からお願いしますねー」
そして昨日話していた、サヨナラパーティーの件について今現在、生徒会室で会議をしている最中だ。
「ああ、じゃあ……去年の城廻先輩に劣らないようにするためにはどうするか考えたんだけど、やっぱりみんなで楽しめるゲームか、お菓子やジュースなんかを出して本物のパーティーなんかをするのがいいかと思う」
「ありがとうございます、次は書記ちゃんお願いっ」
「はい──」
一通り皆が案を出していく。
書記ちゃんと会計くんの案は副会長と似たり寄ったりなものだ。それに比べバカな小町とポンコツな川崎弟はどうやっても実現不可能な案を出して、他のメンバーから半分諦めの目で見られていた。
「では最後に先輩どうぞー」
「は?」
いやいやいや、何言っちゃってんのコイツ……そもそも俺は生徒会メンバーじゃない。だから何も考えてきていないのも当然である。
「『は?』じゃないですよ。先輩こそ何言っちゃってるんですか〜」
「いや、そんなもの考えてきてないんだけど……」
皆からゴミを見る目で視線を向けられる。
そんな目で見ないで!決して案を考えること忘れてたとかじゃないんだからね!
「……はぁ、忘れてたんですね」
「はい……」
「もういいです、話を進めましょう」
一色と副会長を中心にどんなゲームをするかを決めていく。それに、お菓子やジュースなんかについても。
だが、それを考えるにあたって、突き当たる壁がある。
ゲームをすることは構わない。
日本だけで行われる独自のゲームだってある。もちろん、それに拘らなくてもみんなで楽しめるものは幾らでもあるからだ。
だが問題なのは飲食物の買い込みについて。
まず圧倒的に生徒会が使える費用が少ないこと。全校生徒分用意するなど、不可能と言わざるを得ない。
ならここは一つ、俺のフラッシュアイデアを提供するとしよう。
「なあ、ちょっといいか」
「なんですか?」
一色や副会長含め生徒会メンバーが一斉に俺へと顔を向ける。
皆沈黙を続けるあたり、俺もこいつらから大分信用されるようになったのだろう。一色よりも生徒会長やってる自信あるし。
「生徒会が使える具体的な費用なんて、高が知れているだろう。まず全校生徒分菓子やらジュースやら用意するのは無理だ」
「で、でもそれはほら、生徒みんなから少しずつ集金したら集まるんじゃ……」
やっぱり一色ちゃんはおバカなのね……と心で密かに思いながら話を続ける。
「本気でそんなことできると思ってるのか?仮に学校側からの許可が降りたとしても、必ず反対派の人間が出てくるのは明らかだ。そもそも、俺のように他人に興味のない人間だっているからな」
「先輩……」
「ご、ごほんっ。まだ問題は山積みだぞ。会場は体育館だとして、全校生徒が入るだけで一杯一杯なのに、そんな所でゲームが出来るはずがない。分かったか一色」
「むぅ……わかりました……」
どうやら納得して頂けたようでなによりだ。
決して俺がそんなサヨナラパーティーに参加したくないとかそんな私情はこれっぽっちも挟んでないが、一色が素直に認めてくれたのは有難い。
自分の意見と食い違っても、相手の意見が正しいと思ったら素直に相手の意見を受け入れることなど、簡単には出来ることではないだろう。
一色は相手のことを受け入れることが出来る人間である。その点については、こいつの持ついい所なのだと思う。
肩を落として無茶苦茶悔しそうにしてるけど。
「で、どうしたらいいんですか?」
「簡単なことだ。人数が多いなら絞ってしまえばいい。実際、体験入学に来た奴と関わる生徒なんてそう多くはないだろう。部に入ってる人間やクラスの数少ない人間だけだ」
「なるほど……」
「参加するか否かの紙でも配れば、参加する生徒も分かるだろう。自主的に参加する生徒ならば多少集金しても問題ない。これで問題は解決だ」
「流石先輩ですっ!その調子でゲーム内容も考えてください」
「バカっお前、みんなが楽しめるようなゲームを俺が知っていると思ってるのか?てことで後は副会長任せたぞ」
「ああ、助かったよ比企谷」
……何度聞いてもいい響きだな。『比企谷』と『副会長』、お互いに呼び名があるのは。初めての男友達かもしれない。
「じゃあ俺は帰るけど、いいか?」
「えー、待ってくださいよぉ〜。私先輩と一緒に帰るつもりだったんですけどー」
「えー、じゃないよ。今日の俺の仕事終わっただろ……」
「ダメです、先輩に拒否権なんてないんです!だから終わるまで待っててください」
「はいはい、わかったよ……」
かくして俺は生徒会の仕事が終わるまで書類チェックをさせられるのであった。