カナダにあるハンワースセカンリースクールから来る体験入学のサヨナラパーティーの件。それから、生徒総会の件。
両者の仕事も後半まで行き着き、ようやく終わりが見えてきた。
そろそろ俺がこの場で手伝うことを辞めてもいい頃合いだと思うのだが、一色はさらさらそんな気はないらしい。
見事に返り討ちにされた。
そんなこんなで今は業務スーパーへと来ている。
学校からの経費、サヨナラパーティーに参加する生徒から一色が搾り取っ……ごほんごほん、集めた金で買い物している最中だ。
「先輩ー、これなんかどうですかー?」
指差す彼女の目の前にあるのはグミであった。
「なんでグミなんだ……」
「グミ美味しいじゃないですか~」
「確かに美味しいけどな。でも却下だ。そんなパーティーらしくない食べ物があってたまるか」
「えー……ケチですね先輩は……」
「駄々こねてもダメだからね。ほら、買うものは事前決めてあるんだしさっさと買うぞ」
「はーい」
渋々といった感じでスマホに書き込んだ購入リストに目を通しながら、カートに商品を乗せる。
クッキーから一口チョコ、大サイズのジュース。その他にも生徒が好きそうな菓子を次から次へと追加していく。
「こんなもんか」
「ですね。人数もざっと七、八十人程度ですしこれで充分だと思います」
充分と言っても、俺と一色が一つずつ山盛りになったカートを引いてレジまで進んでいるので、かなりの量を買い込むわけになるのだが。
会計の際に店員さんに領収書を頂くようにだけ頼み、金を払う。
よほど量が多かったのか、店員さんがレジ袋に詰めるのを手伝ってくれる。いや、ほんと助かります。
「ふぅ……後は平塚先生の車に乗せて終わりだな」
「ですねー、やっとおしまいです」
頭の悪い子でもわかる話だ。
こんな馬鹿みたいな量を手で抱えて帰れるわけがない。外で平塚先生が車を用意してくれているので、とっとと運ぶことにした。
「平塚先生、ありがとうございます」
「ああ、君たちも気をつけて帰るのだよ」
「はーいっ」
平塚先生の車が出ていく所を見送り、やっと終わったとばかりに一つため息を吐いた。
「じゃあ先輩、そろそろ帰りましょうか」
「あぁ、ちょっと待ってくれ。トイレ行ってくる」
ゴミムシを見るような目線で睨まれるが、仕方ないとばかりに一色は「はい……」と返事を返す。
あまり待たせるわけにはいかないので、目当ての場所へと行き、スグに一色の元へと戻った。
「悪いな、ほれ」
「ふえぇ?」
状況がいまいち飲み込めていないようだったが、俺は俺で照れくさいので先に歩いていってしまう。
「せ、先輩っ!待ってくださいよー。これ!私からもどうぞ!」
「お、おう、ありがと」
「い、いえ……こちらこそありがとうございます」
俺が一色に渡したものと、一色が俺に渡したもの。それは互いの手にしっかりと握られている。
トイレに行くふりをしながら密かに買いに行ったグミと、恐らく店の入口近くにあった自動販売機で購入されたMAXコーヒー。
大したものではないが、それでも心のこもったものだというのは俺ですらわかる。
「夜飯……どっか寄って食べてくか?」
「はい!そうしましょう。えへへ、最近は先輩と夜ご飯食べてばかりですね〜」
「そうだな」
新しい目的地が決まった俺たちは、そこへと向かって歩いていく。
特に何かある訳でもない。
それなのに、ただそれだけで心地よかった────。