水無月水樹の水紀行   作:七草青菜

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【風水師】ってどんなジョブなんでしょうね!


第三話 ジョブと<エンブリオ>

 □【水術師】シャボン

 

 目が覚めると、もう朝だった。

 

 結局わたしは二度寝を通り越して三度寝をしていたらしい。

 

 眠い目を擦りつつ、収納鞄からお水の入った瓢箪を取り出し、喉を潤す。

 爽やかなミネラルの香りが鼻を通り抜け、わたしの意識は徐々に覚醒していった。

 

「ふぅ……」

 

 一息ついたところで、リーちゃんの事を思い出す。

 

 どうしよっかなー。

 普通におはようって出てみるかな。

 

 心配されるのか怒られるのか。

 

 あードキドキしてきた。お水飲も。

 

 ◇

 

「……リーちゃーん、おはよーう」

「あ、シャボン起きたアルか。おはよう、朝ご飯用意しといて良かったネ」

 

 こそこそと食卓に入ったわたしに、朝ご飯の用意をしていたリーちゃんは、至って普通に挨拶を返した。

 

「……あれ? 怒ってないの?」

「ん? 何がアルか?」

「いや、わたし多分二日間くらいずっと寝てたから」

 

 わたしがそう言うと、リーちゃんはなるほどといった風に手を叩いた。

 

「ああ、確かにシャボンずっと居なかったアルね。“向こうの世界”に居たんでしょ?」

「“向こうの世界”?」

 

 リーちゃんが言うには、<マスター>とはこのデンドロの世界とこことは違う世界、つまり現実とを行き来できる存在らしい。

 <マスター>達は短くて数分、長ければ何日何ヶ月もの間、この世界から消失することもあるし、消えた場所に戻ることもあればセーブポイントと呼ばれる特殊な場所に飛ばされていることもあるという存在なのだと言う。

 

 へー、知らなかった。

 

「何でシャボンが知らないアルか。はい、朝ご飯」

「ありがとう!」

 

 そういう設定なんだね、初めて知った。

 そんな事れーちゃん言ってなかったし。

 この世界の住人の事を<ティアン>って言う事は教えて貰ったけど。

 

「今日はお客さん少ない日だから、狩りに行く予定だけど、シャボンも行くアルか?」

「行く!」

 

 やっとあのお水様に会えるのか。楽しみ!

 

 あ、このスープ美味しい。お水と合うね。

 

 ◇

 

「実を言うと、【風水師】の戦い方は、私もよく分からないアル」

「ありゃま」

 

 軽くずっこけそうになる。

 

 今は大河への道中の山道に立っている。

 この辺りはリーちゃんが余裕を持って対処出来るモンスターしか居ないらしいから安心して特訓する事が出来る。

 

「というのも、【風水師】って基本戦闘するジョブじゃないアル。本来は地形操作魔法を使って未開の地なんかを開拓をするジョブアルから」

「へー、そうだったんだ」

「……多分【風水師】ギルドで教えて貰ったと思うアルよ?」

 

 え、そうだっけ?

 

「はぁ……シャボンはせっかちアルね」

 

 失敬な、ただ説明を聞くのが面倒なだけだよ!

 

「同じだよ……」

 

 エセ中国語が消え去るほど呆れてる……。反省します。

 

「まあ、攻撃に転用出来なくもないと思うから、これからやってみるアルよ」

「はい! よろしくお願いします!」

 

 という事で、まずは使えるスキルの確認から入った。

 

「【水術師】の保有スキルは私も知らないアル。どんなのがあるアルか?」

「えーと、まず《水脈感知》でしょ、で、自然利用魔法の《操水術》系のスキル、あとはなんか《水術強化》とかそんな感じ」

「なるほど、【風水師】のスキルを水のみに絞った感じアルね。それなら多分教えられるアルよ」

「やった! よろしくね!」

 

 全てはまだ見ぬ大河のため! わたし頑張ります!

 

「それじゃあまずは《水脈感知》アル。このスキルはどこに水があるかが何となく分かるというものネ。パッシブスキルだから、今も発動してるはずアルよ?」

「確かに、何か変な感覚があるんだけど、これお水がどこにあるかを示してたんだね」

 

 言われてみれば、確かにお水っぽい感覚だ。

 

「【風水師】は基本的に地脈や水脈を感知して、それを操っていい土地を作るジョブネ。だからそのスキルは基本中の基本。他にも、長旅で水が無い時何かにも便利アルね」

「へー」

 

 これで万が一、いや億が一お水が無くなった時も心配しなくて済むね。【水術師】になってほんとに良かった。

 

「他のスキルも使いたいところアルけど、他のは水がある所でしか使えないアルから、スキルの説明だけしながら大河に向かうことにするアル」

「はーい!」

 

 こうしてわたしとリーちゃんは大河へと向かう事になった。わくわく。

 

 ◇

 

「そうだ、忘れてたけどわたしの<エンブリオ>がついに産まれたんだよ!」

 

 リーちゃんに【風水師】系統の戦い方を教えて貰いながら大河への道中を進んでいる時、ふと、自分の<エンブリオ>を確かめてなかったと思いあたり、リーちゃんと見る事にした。

 

「へえ、どんなのアルか?」

「まだ確かめてないんだー。今から出してみてもいい?」

「いいよ。戦力が増えるのは歓迎だしネ」

 

 よーし、それでは早速。

 

「えーと……いでよ、わたしの<エンブリオ>!」

 

 左の手のひらを前に突き出し、わたしがそう言うと、手の甲がパァっと光り輝いた。

 

「おお?」

 

 かと思うと、手の甲からお水が大量に溢れだし、わたしは、わたし達は お水びたしになった。

 

 うん? ご褒美?

 

 ◇

 

 【原水源 オケアノス】。

 

 それが彼女のエンブリオの名前である。

 TYPE:アームズでありながら、その紋章より呼び出されるは剣や槍等の武器でもなく、はたまた腕や心臓などの身体置換系のものでもない。

 【オケアノス】の形状は“水”。ただの水である。

 

 保有スキルは……0。

 その<エンブリオ>はシンプルな水であり、それ故にその量は大きな湖一つ分に等しい。

 

 水である事のみにリソースを費やし、それ以外の事を全て放棄した、まさに水が好きな彼女らしい<エンブリオ>と言えるだろう。

 

「これ純水じゃん! 溶ける!」

 

 しかし、必ずしも攻撃に転用できないという訳では無さそうである。

 

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