隠れ家喫茶ゆるふわ(凍結中)   作:ハマの珍人

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 いかがお過ごしでしょうか?師走ということで、学生の方も社会人の方も大忙しのことと思います。
 かく言う私も職場では、仕事の指示をいただくために上司を探して三千・・・㎝?は動いてます。

 プライベートでは、デレステのイベだったり、砂集めたり、某天空の城の20階層付近ウロウロしたり、ゴーストな決闘者いじめたりしてます。

 さて、世間はクリスマスですが、本編は未だ5月(!?)です。なるべくサクサク進めるようにします。
では、お楽しみ下さい。


見つめ合うと素直に・・・。

 アイドルの仕事と言えばどんなものを思い浮かべるだろうか。

 まず、歌、ダンス、それにグラビアやモデルだろうか。またはバラエティ番組に呼ばれたり、ラジオもやったりする。さらにはドラマや映画に出る人もいるだろうし、ブログを書くアイドルもいる。

 ごく一部では、農業したり漁に出るアイドルもいるらしい。

 アイドルに詳しくない俺でもこれだけ思い浮かぶ。だけど何も華やかな仕事だけではない。当然地道にショップで行われるミニライブだったり発売イベントだったりもあるだろう。

 

 さて、ここまで長々と説明してはいるのだが、いい加減状況を説明しよう。なに、簡単なことだ。

 

日曜の朝から実家にいる妹が突撃してきた。

          ↓

妹の提案(拒否権? そんな選択肢はない)により買い物へ。

          ↓

ショッピングモールでポジパによるイベントが行われていた。

          ↓

CDお渡し会(?)らしく、行列に並んでいる←イマココ

 

 少し早かったらミニトークショーもあったらしい。悔しがっていた未希を宥めていたら、

 

「でもこんなチャンス滅多にないからね。並ぼう! 並ぼう!」

 

といった具合に手を引かれ(ウワ! ショウガクセイツヨイ)列に並んだ。並んでしまった。

 

「お兄ちゃんは誰のとこに並ぶの?」

 

 未希が俺の手をブランブラン揺らしながら尋ねる。

ってか、周りの人に当たると悪いから止めなさい。

 

「誰のとこ……ってドウイウコト? ってかCDお渡し会って何?」

 

「あぁ、そこから説明しないとダメなワケか」

 

 未希はヤレヤレと言ったかんじのポーズをする。

なぜだろう。イラッとする反面、カワイイと思う。

 

「お渡し会っていうのはね、ふれあいなんだよ」

 

 は?

 

「お金でCDとアイドルの貴重な1分間を買って、お話したり、相談のってもらったり、アピールなりパフォーマンスしたり……様々なひとがいるけどね。」

 

「パフォーマンスって・・・危なくないのか?」

 

「ホントに危ないのは禁止されているし、そもそも剥がしさんがいるからね」

 

「ハガシサン?」

 

「うん。ホラ。少し見えにくいけど、今先頭の人の肩抑えている人。あの人が剥がしさんだよ」

 

 未希に言われて先頭を見やると……なるほど。ボディーガードのような人が先頭の人に終了を促し、次の人を誘導して、何やらを計っているようだ。

 

「あれは、何をしているんだ?」

 

「さっき1分間って言ったでしょ?1分をきっちり計っているんだよ」

 

 意外と正確なのな。

 

「で、誰のレーンに並ぶの? 未央ちゃん? 茜ちゃん? あーちゃん?」

 

ん? 誰のレーン? ドウイウコト?

 

「1人20秒の3人分じゃないの?」

 

 未希に尋ねると、未希はキョトンとした顔をした。

 

「違うよ~。そういうのもあるけど、今回のは1人に1分だよ」

 

 あ、ホントだよく見ると3人分に区切られてる。

 

「って、お兄ちゃんよく分からないよね?では、私がポジパについて説明してあげよう」

 

 なんかメガネを取り出してかけ始めたぞ。どっから取り出したんだソレ?

 

「まず手前の子が本田未央ちゃん。ポジパのリーダーだよ。ニュージェネのリーダーでもあるし、ドラマにも出てるから知ってるんじゃないかな?」

 

 あ、うん。知ってる。あの子の目線がいまだに怖い。明るくていい子なんだろうけどね。

 人気があるのは確かなようで、彼女のレーンが1番長いようだ。並んでる人は老若男女問わず……といったところだろうか。

 

「で、真ん中にいるのが日野茜ちゃん。ポジパ……というより346プロの元気印。スポーツ系のバラエティー番組とかで見たことあるんじゃないかな?」

 

 そういえば、年末の赤坂マラソンだかで実力者に混ざって激走してた子がいた気がしたが……まさかな。

 

 ところで、先ほどから『ボンバー』と聞こえるのは彼女なのだろうか?彼女のレーンに並ぶ人も第一声が『ボンバー』のようだし。

 

「なんか彼女のところ、スゴいな。」

 

「あれでも軽い方かな。握手会とかだと、握手忘れて『ボンバー』合戦して握手忘れる人とかザラだし」

 

 それは握手会ではなくて『ボンバー会』ではないのか?

 

「たまに『元気ですかぁ』合戦に発展するし。」

 

それは本家本元の人に任せよう!?そのうちボンバー注入とか言いかねないんじゃないか?なんか爆発しそうだな。

 

「お前、握手会とか行ってるんだな」

 

「さすがに毎回ってほどじゃないけどね。電車代とかもあるし、お小遣い貯めながらね」

 

 なんやかんやでしっかりしてるんだな。後でお小遣いあげるか。

 

「で、最後が高森藍子ちゃん。ポジパの良心。2人をなだめたりするお姉さん的存在かなぁ。ラジオとかコラムをやってたりするよ。」

 

 うん。知ってる。うちの店の常連さんだし、学校の後輩だし、昨日もここにいました。

 

「あーちゃんと言えば、ラジオとかコラムをやってたりするよ。あとは、『藍子のゆるふわ散歩』って番組あるよ。毎回終了時間ギリギリだけどね。時の女神って呼び名がつくぐらいだし」

 

 なんかスゴいな。

 

「さて、お兄ちゃん。誰にします?私は……今回未央ちゃんのところに行こっかなぁ」

 

 段々列が進んでいき、選択の時が迫る。

俺は――

 

 

 

「次の方、どうぞ」

 

呼ばれて彼女の前に立つ。

彼女は少し目を見開いたが、すぐに笑顔になった。

 

「こんにちは。来ていただいてありがとうございます」

 

「あ、えと、その……こんにちは」

 

「ゆっくりお話しましょう?」

 

 いつもなら普通に話せるはずなのに、舌が口蓋に貼りついてしまったかと思うくらいに言葉が出ない。

心臓がかなりバクバクいってるし、冷や汗も出てきた。

 これが俺の知らない高森藍子(彼女)なのか。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

 高森さんが心配そうに見つめてくる。

 

「あの、えっと、お、応援してます!」

 

何とかその一言を口にして、俺はいたたまれなくなり駆けだした。

 後ろから誰かが声をかけてた気がしたが構わず走って、トイレに駆け込んだ。

 

 

 しばらくして落ち着いてトイレから出ると、未希がベンチに座っていた。

 

「お兄ちゃん、大丈夫? またなの(・ ・ ・ ・)?」

 

「あぁ、すまない。バイトの時は大丈夫なんだけどなぁ」

 

「お兄ちゃんが謝ることじゃないよ。今回は無理に誘った私も悪かったし」

 

「あぁ。それにしても、CD受け取るの忘れちゃった。高森さんにも悪いことしちゃったなぁ。」

 

「え!?じゃあ、お金返金してもらうかCDだけワケを説明してもらってこようよ。」

 

「だなぁ。気が重いけどなぁ」

 

アイドルのお渡し会でばっくれて、CD受け取りにノコノコ現れる……悪目立ち確定だよなぁ。

 

「あの……!」

 

そんな中、不意に声をかけられる。

振り返ると――

 

「高森さん!?」

 

「え!? あーちゃん!?」

 

衣装姿で息を乱した高森さんがいた。

 

「えっと、イベントは?」

 

「終わらせて、きました。このあとも、戻るだけ、ですので」

 

 そう言ってCDを差し出してきた。

 

「お忘れ物ですよ。川嶋さん」

 

汗で輝いた笑顔だった。

 

「あ、あぁ。ありがとう。高森さん」

 

「いえ、ではまた」

 

高森さんは笑顔で去って行った。

あとに残ったのは――

 

「お兄ちゃん、ドウイウコト? 説明」

 

 急に修羅のように恐ろしい顔になった未希だけだった。

 

 

「ズルいズルいズルい」

 

 道すがら未希に説明をすると(ここ二日のことは秘密)頬を膨らませて怒っていた。

 

「どうして言ってくれなかったの!?」

 

「言うことでもないだろ。それに言ってどうすんだよ」

 

「それはそうだけど~。納得いかない~!」

 

「偶然何だから納得する必要ないだろう」

 

「それはそうなんだけど~」

 

「ハァ……これでいいか?」

 

財布の中からボワッと数枚野口さんを召喚。

 

「毎度あり~」

 

小遣い&口止め料と相成った。

 

「これで軍資金が増えたよ。ありがとうお兄ちゃん」

 

 分かったから腕組んだまま腕に頭押しつけるの止めろって。歩きにくい。

 

「アイドルって言えばさ、あっちいたときに一緒に遊んだゆう姉ちゃん、覚えてる?」

 

「あぁ」

 

「ゆう姉ちゃんもアイドルになったんだってさ。この間連絡きたよ」

 

「ほう」

 

幼なじみのゆう――こいつはゆう姉ちゃんと呼んでる――とはいろいろなことして遊んだなぁ。あれ?名前はなんだっけな。『ゆう』としか呼んでなかったから忘れてしまった。

 

「お兄ちゃんにも会いたいって言ってたよ」

 

「そうか。機会があればな」

 

「機会はあるものではなくて作るものだよ」

 

 未希は決め顔でそう言った。

 

 

とりあえず駅の改札前まで来た。

 

「んじゃ夏には帰るから母さんによろしくな」

 

「お兄ちゃんも体調管理には気をつけるんだよ?じゃあね」

 

 そう言ってあっさり改札をすり抜け消えていった。

 

ピンポーン

 

「ん?」

 

ラインの通知を見ると高森さんだった。

 

『今日はありがとうございました。

体調は大丈夫ですか?』

 

とりあえず大丈夫ってこととまた店で待ってる(学校だと会えるかも分からないから)ことを伝える。

 

 そのうち高森さんにも言っておかなきゃいけないかな。とそんなことを考えていた。

 

 

 なお、マスターは当初の予定通りに熊の置物を買ってきた。まぁ、他にもお土産があったのだが、熊の置物だけはどうにもならんのでレジの隣に置くことになった。

 

 


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