隠れ家喫茶ゆるふわ(凍結中)   作:ハマの珍人

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 お疲れさまです。
2年参りならぬ2年執筆で書き上がりました。
今回は長めです。

 もともとこっちを先に執筆していたのですが、新年特別編を急遽書いたので遅くなりました。
誕生会回です。

ではお楽しみください。


サプライズと無計画は違う

 さて、5月某日。いよいよ島村卯月さんの誕生会&ニュージェネレーションのライブの打ち上げの日なのだが、気がかりがひとつ。

 

「高森さんから避けられている」

 

 先日の中庭でのランチ以来高森さんと会っていない。いや、半分は正確で半分は間違いなのだが。

正しくは、店に来ない――俺のいる時は。マスターの話では平日の昼には来ているらしい。

 学校では顔を合わせることもある。顔を真っ赤にして来た道を戻ることが大半だが。

 ラインを送ってみるも、既読はつく。返信はなし。とりあえずブロックされていないことに安堵した。

 

 そんなわけで落ち込んでいるわけなのだが……って何故俺は落ち込んでいるんだろう。

ともかくそうもいっていられない。プライベートとバイトは別問題だ。切り替えていこう。

 

 

閑話休題

 

 

 ともかく、今は渋谷さんから連絡をもらい、来てくれるという2人のアイドルを待っている。ちなみに渋谷さんと本田さんは後から島村さんを連れてくる役目があるため待ち合わせの駅には来ないらしい。

 

「しっかし、大丈夫なのかねぇ」

 

 俺は1人愚痴る。それもそのはず。相手の顔も名前も知らないのだ。ただ待ち合わせの目印に――

 

「白いバラってなんなんだろうな」

 

渋谷さんから出された条件。白いバラを持つ、または身につけてくること。

 バラは渋谷さんのご実家から購入しました。……一輪だけ。渋谷さんに言われちゃったからね。

 

 

回想

 

 

『川嶋さん、目印に白いバラを持っていくか、身につけてね?』

 

「よく分からないけど、まぁいいや。分かった」

 

『うちの店で買ってね?親に話通して安くしてもらうから』

 

「えっ!?無料でサービスじゃないの!?」

 

『フッ、甲斐性見せてよ』

 

何故か髪の毛を靡かせる姿を回想した。

 

「解せぬぅぅぅ!」

 

 

回想終了

 

 

 しかもお店に行ったら白いバラの花束準備されてて驚いた。確かにあれをサービスで貰うわけにはいかないよね、うん。値段は確かにお安かったけどさ。ご両親に申し訳なかったぐらいに。

 だから一輪だけを買い(それでも割引してもらった)、店のサービス券を置いてきた。

 

 そんなわけで、ジャケットにチノパン、胸には白いバラをさして待っている。正直視線が気になって仕方ないんだけど。10分持つだろうか・・・。

 

「あの、川嶋優也さん・・・ですか?」

 

不意に声をかけられ振り向く。茶髪をポニーテールにしてキャップを被った女の子と、黒髪眼鏡の女の子がそこにいた。

 

「あ、はい。もしかして、渋谷さんのお知り合いの方ですか?」

 

さすがに人前でアイドルかという確認をするわけにもいかないので多少濁して尋ねる。と同時にバイト用スイッチを入れる。

 

「はい、私いがr」

 

「はい、ストップ」

 

 自己紹介しそうになったので制する。

 

「人の目がありますので場所を移しましょう。自己紹介はそちらで。そちらの方もよろしいですか?」

 

 黒髪眼鏡の女の子もコクコク頷く。

 

「では、店の方に案内しますね。着いてきて下さいね」

 

「「はい」」

 

2人を伴い駅を離れ、店に向けて歩き出す。

 

「楽しみですねっ」

 

「ね?」

 

「なにがです?」

 

「事務所で話題になってるんですっ。喫茶clover」

 

マジですか!?

 

「みんな行きたいんですけど、場所が分からなくて。だから今回は嬉しいです」

 

 マスター。うちの店346アイドルのたまり場になるかもしれないよ。

でも、あの人なら手放しで喜ぶし、苦労するのは俺なんだろうなぁ。

 

「ここ……ですか」

 

「普通のお宅……ですね」

 

「うん。よく言われます」

 

 唯一店だと分かるのはドアにかかっている『準備中』の看板と『本日貸切』の貼り紙のみ。

 

 高森さんや渋谷さんたちが来るようになってからは「今の方がいいんじゃないか」ってことになったしもうこのままだろう。

 

「どうぞ」

 

ドアを開けて2人を招き入れる。

 

「「お邪魔します」」

 

 

 

「改めまして。川嶋優也です。本日は喫茶cloverをご利用いただきありがとうございます」

 

2人が変装を解くのを待って自己紹介する。

 

「小日向美穂です。よ、よろしくお願いします」

 

黒髪ショートの小日向さん。

 

「五十嵐響子ですっ。よろしくお願いします」

 

 茶髪のサイドポニーの五十嵐さん。(帽子を脱いでからポニーテールをサイドポニーに直していた)

 

「で、こちらがマスターの……って、あれ? マスター?」

 

 駅に行く前にはいたはずのマスターの姿が見えない。

どこに行ったというのだろう?

 

「お待たせしました。僕がこの店のマスター、三浦春樹です。よろしくね、美穂ちゃん、響子ちゃん」

 

▼あ、マスターが飛び出してきた。

――タキシードで。

 

「マスター、何その格好」

 

「今日は卯月ちゃんの誕生会だからね。正装だよ。似合うだろ?」

 

「うん。誕生会に正装。分かるとも。でも俺らはパーティーの参加者じゃないから。裏方だから。裏方の正装はこっち(ウェイターの制服)だから。オッケー? ユーアンダースタン?」

 

「でも……」

 

「チェンジ!(威圧)」

 

「「あはははは」」

 

 マスターのアホさ加減に小日向さんと五十嵐さんは苦笑していた。

 

 

マスターが着替えてきたことで、本日のプランの確認が行われた。

 

 今日の調理をマスターは行わず、俺と五十嵐さんがすること。食材調達も自分たちで行うこと。これにより、最大限の値引きが出来る。

マスターと小日向さんが店内の飾り付け担当。といった感じである。

 

「じゃあ、このプランで良かったらサインを……」

 

「おい!」

 

「どうした優也?」

 

「どうしたじゃないだろ! 俺には色紙にしか見えないんだが?」

 

「それがどうした?」

 

「ただ単にサインが欲しいだけじゃないか!2人とも、サインなんかしなくても――」

 

「「え??」」

 

 すでに2人は、なんの疑いもなくサインを書いていた。

 

「純粋過ぎるだろ!」

 

頼むから少しは疑問に思ってくれ。

その後、マスターと会ったばかりの2人に説教をした。

 

 

 

 

「ところで、買い出しはどうします?」

 

 2人の荷物は飾り付け用の物だけのようだ。食材の類は無い。

 

「小日向さんは飾り付け担当だからいいとして……。自分1人で買ってきましょうか?」

 

 マスターの話によると、この2人と島村さんを加えたユニット。P.C.S(ピンク・チェック・スクール)の知名度も高いらしい。

 五十嵐さんが変装して買いに行ってもバレない保証は無い。それに加えて俺まで着いていったらそれこそフラ○デーやセ○テ○スなんちゃらものである。それは避けたい。

 

「ふっふっふっ、私にいい考えがあるんですっ!」

 

 五十嵐さんが不敵に笑った。『あ、これフラグだ!』とは言ってはいけない。優也お兄さんとのお約束だぞ?

 

 

 

 

「あ、この鶏肉いいですね。みずみずしさがありますっ!それにいいピンク色です。P.C.Sの一員としてはこの鶏肉を推したいですねっ!」

 

 五十嵐さんが生き生きとして食材を選んでいる。常日頃から家事をしているんだろう。いい目利きだ。

 そんな五十嵐さんに追従する形で俺はカートを押している――ハンディカメラを回しながら。

何故こんなことをしているかというと、店での話に遡る。

 

 

回想

 

 

「ふっふっふっ、私にいい考えがあるんですっ!」

 

コンbもとい五十嵐さんが不敵に笑った。

 

「隠そうとするからいけないんですっ。堂々としていれば問題ありません」

 

「確かにそうなんですけどね」

 

「それを邪推して面白おかしく書くのがマスゴミなんだよなぁ」

 

 戸惑う俺と久しぶりにマスコミ嫌いを見せるマスター。

 

「それに五十嵐さんのイメージダウンにもつながっちゃうし……」

 

「そこで……これですっ!」

 

五十嵐さんがカバンから取り出したのは――ハンディカメラ?

 

「これでお買い物風景を撮影して、『五十嵐響子の日常』ってことにしちゃいましょう」

 

 

 346プロでは、プロデューサーが仕事を取ってくるわけではなく、セルフプロデュースをしたり、自分から企画を持ち込んで採用される場合もあるらしい。主にバラドルがこのスタイルでやるらしい。

 

閑話休題

 

 

「と、言うわけでプロデューサーさんに許可をもらってカメラ借りてきましたっ。川嶋さん、撮影お願いできますか?」

 

 両手を合わせてのお願いポーズをする五十嵐さん。さすがアイドル。かわいい……じゃなくて、代案もないわけだし、了承した。

 その後、『いかにも撮影スタッフ』って感じの服に着替えさせられ、『撮影班』と書かれた腕章(一体どこで手に入れたんだろう。手書きにしても達筆だ。)を着けさせられ、なんちゃってロケを敢行。

 お店側にも撮影交渉を行う五十嵐さんが『出来る女』に見えた。

 

 

回想終了

 

 

「五十嵐さんは料理されるんですか?」

 

 ベーコンをかごに入れた五十嵐さんに尋ねる。

 

「女子寮では交代制で作ってますっ!」

 

「女子寮?」

 

「地方から来てる子もいるので、そういう子は女子寮に入りますっ!」

 

「ってことは、五十嵐さんも?」

 

「私は鳥取から来ました」

 

 鳥取……鳥取砂丘くらいしか分からないけど、遠いのは分かる。少なくとも神奈川から出てきて、都内に一人暮らしするよりは遠い。

 

「家事とか大変じゃないですか?」

 

「そんなことないですっ、お料理……というより家事得意なんですっ!」

 

 五十嵐さんが笑顔で答える。

 

「地元にいた時は両親が共働きだったので、弟たちの面倒見ながらお料理とかお掃除、お洗濯もやってました」

 

 かなり頑張り屋なお姉ちゃんだった。

 

「でも、こっちに出てきて、お料理は当番制、お洗濯は自分の分だけで物足りなくて……」

 

頬をポリポリかく五十嵐さん。

 

「事務所のお掃除もしたり、お茶入れたりもするんですよ?もちろん自分からですけどっ。」

 

 アイドルってなんだっけ?

 

「でも、そんな私を見て、卯月ちゃんと美穂ちゃんは『頑張りすぎなくていいんだよ?私たちに甘えていいんだよ。私たちが響子ちゃんのお姉ちゃんだから』って」

 

このユニットでは私は甘えられるんですっ。と五十嵐さん。

 

「ん?妹? 五十嵐さんがお姉ちゃんではなくて?」

 

「はいっ!私が1番年下なので」

 

「えっ!?」

 

 島村さんや小日向さんよりしっかりしているのに年下ということに驚きを隠せなかった。

なお、年齢を聞いてまた驚き、自分もしっかりしようと心に決めたのだった。

 

 

「すまない、作者の表現力の拙さと日頃料理をろくにしない故に調理描写はカットだ。本当にすまない」

 

「か、川嶋さん。どなたに話し掛けているんですか?まさか、『あの子』?」

 

 小日向さんがビクビクしながら尋ねてくる。どこか小動物っぽい。

『あの子』とはどの子だろうか?

 

 なんやかんやあって、飾り付けも終わり、料理もテーブルの上に『所狭しと』並んでいる。そう、『所狭しと』

 ちなみに今日の誕生会、出席者は主役の島村さん、仕掛け人の渋谷さん、本田さん、ここにいる小日向さんと五十嵐さんの5名。そう、女性が5名。

 女性が5名に対し、テーブルに所狭しと並ぶ料理。

うん、現実逃避はそろそろ無理があるね。端的に言おう。作りすぎてしまった。

どうしてこうなってしまったかというと――

 

 

回想(ダイジェスト)

 

お料理得意と言っていた五十嵐さんが思いのほかに手際が良かった。

           ↓

俺の料理人(バイト)魂に火がついてしまった。

           ↓

五十嵐さんも白熱して料理対決風になる。

           ↓

マスターもノリノリになってしまう。

           ↓

買ってきた食材を使い切る。(この時点で予定の品が出来上がっている)

           ↓

俺と五十嵐さん、「まだ足りない!」と騒ぐ

           ↓

マスターが店の食材を出し始める

           ↓

再び調理再開(この時点で小日向さん正気に戻る)

           ↓

お互いにハイスピードバトル(この時点でマスター疑問を抱く)

           ↓

なんやかんやでドロー。テーブルの上に大量の料理。

           ↓

青ざめる俺と五十嵐さん←イマココ

 

回想終了

 

 

「どうしよ……」

 

「明日のランチメニューはTKGかな(現実逃避)」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 

「あわわわわ」

 

膝をつく俺と現実逃避するマスターとひたすら謝る五十嵐さんと慌てる小日向さんという地獄絵図がそこにはあった。

 

「後で食材買い足さなきゃ」

 

「任せた」

 

「こっちは?」

 

「余ったらタッパーでお持ち帰りかな」

 

「「えっ!?」」

 

驚く2人。

 

「いいんですか?」

 

「女子寮の子達に食べさせてあげて」

 

「ありがとうございます」

 

 

ちなみにお代はプラン通りということになった。

 

 

 渋谷さんから連絡が入り、間もなく着くらしい。

というわけで、クラッカーを持って左右に散開、待機。

 

「クラッカー持つとなんかワクワクするよね?」

 

「分かりますっ!」

 

「分かるわ」

 

 小日向さんの発言に同意する2人。俺?ちょっと分からん。

 と、店のドアが開き(店のベルは事前に外してある)、渋谷さんと本田さん。そして、2人に連れられてきた島村さん。その目にはアイマスク。そう、アイマスク。絵面ヤバくないかな。

 

「卯月、アイマスク外していいよ」

 

「あ、もう着きましたか?」

 

アイマスクに手をかけて外す島村さん。目がなれてない今が攻め時!

 

パンパーン

 

「ふぇ!?」

 

クラッカーの音にびっくりする島村さん。

 

「「お誕生日おめでとう!」」

 

「あ、あの……」

 

みんなが声をそろえて言うと、島村さんはすごく申し訳なさそうに言った。

 

「私の誕生日、今日じゃないですよ」

 

うん。みんな知ってるよ。

 

 

「そうだったんですか」

 

 渋谷さんによる今回のパーティーの説明を聞き、納得する島村さん。

 

「今日は私のためにありがとうございます」

 

 こちらに頭を下げて、ニッコリと満面の笑みを浮かべる。

隣を見ると、マスターが生まれたての子鹿のようにプルプルしていた。

 

「いえいえ、こちらもこのようなおめでたいパーティーに当店をご利用いただき、嬉しい限りです」

 

 接客モードで答える。オイ、そこの渋谷生花店の娘さん。ギャップがあるからって笑いをこらえるのやめてくれないか?

 いや、こらえられないからといって大笑いされても困るんだが。ほら、P.C.Sの3人がキョトンとしてるじゃないか。

 

「それにしても、ずいぶんたくさん作ったねぇ。5人分じゃないよね。これ」

 

 本田さんがテーブルの料理を見て驚く。俺と五十嵐さんは理由が理由だけに苦笑い。

 

「食べられるだけ食べていただいて、余ったら女子寮の方たちに食べていただければと」

 

「ううん。私、今日女子寮に泊まろうかなぁ」

 

「でも、この量……しばらくはレッスン厳しめにしてもらう?」

 

「ライブ終わったのに、またマストレさんのレッスンはキツいよぉ」

 

本田さんと渋谷さんが内輪話をしている。

 

「えっと……お2人も一緒に食べませんか?」

 

島村さんから思いも寄らぬ提案がでた。

 

「ありがたいのですが、我々も仕事中ですので……」

 

「でも、私たち5人ではさすがに多いので、良かったら……」

 

「しかし……」

 

そこでマスターがポンと俺の肩を叩く。

 

「優也。お客様がおっしゃってるんだから、ご相伴に預かろう」

 

「マスター……」

 

「な?」

 

「実際はアイドルと一緒に飯食いたいだけだよな?」

 

「……」

 

無言で目をそらすマスター。その顔には汗が。

オイ、こっち向け。口笛吹くな。口笛で流れ星キセキ吹くな。何気に上手いのが腹立つ。

 

「分かりました。ご一緒させていただきます」

 

「はい!」

 

アイドルには逆らえない。そんな気がした俺だった。

 

 

「で?藍子とはどうなの?」

 

「いきなり何さ」

 

パーティーも終わり、全員(主役のはずの島村さんも「お片づけ、頑張ります」と言ってやっている。)で片づけしてる時に渋谷さんが隣に来て、食器を拭く。

 

「ん?未央に聞いたからカマかけただけ」

 

 チッと舌打ちする。

 

「あ、バラありがとね。安くしてもらって」

 

「うん。露骨な話題転換はいいから」

 

「あー、うん。少しね」

 

「歯切れが悪いね。何かあったの?」

 

 観念して正直に話すことにした。

 

 

「川嶋さんは意外とオオカミだったか」

 

「いや、手は出してないぞ!?」

 

「うーん。しかし、拗れた原因の一端が私にもあるしなぁ……」

 

「手は出してないからな!?」

 

「分かったから」

 

ぞんざいにあしらわれた。

 

「一度話し合いの場所を設けようか」

 

「お願い、出来るか」

 

「まぁ、川嶋さんには今回のことでお世話になったし、恩返しと考えればね」

 

「恩というほどのことしてないけどな」

 

「じゃあ、恩を売っとくから……覚悟してね?」

 

妖艶に微笑む渋谷さん……。なんか怖い。

 

「お、おう。とにかく頼むわ」

 

「うん。頼まれた」

 

そう言って食器を拭き終えた渋谷さんは去って行った。

 

さて、どうなるやら。

 

 

 

 




 どうしてこうなった。
なんかしぶりんの方が爆弾化してきた。
次回は、学校が舞台の予定です。

では、次回の更新でお会いしましょうノシ
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