隠れ家喫茶ゆるふわ(凍結中)   作:ハマの珍人

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 本編も悩むが、題名も悩むハマ珍です。
基本、英語とかまんまの時は悩みに悩んだ時です。

 さぁ、開廷の時間だ。


取り調べといえば、スタンドライトとかつ丼

 真夏なのに、cloverの店内を冷たい冷気が包む。

実際はそんなことないはずなのだが、そんな風に感じてしまう。

 そして、寒く感じるのに止めどなく汗が流れ落ちる。手足もガクガクで立っているのがやっとなくらい。

 顔なんかひどいものだろうな。

 

「とりあえず座りなよ」

 

 渋谷さんに促されてボックス席に腰掛ける。

隣には藍子さんが座り、正面に渋谷さん、その隣に北条さん、神谷さんと座る。そして、マスターは仁王立ちして、かなりの威圧感を放っている。

 

「さて……じゃあ、洗いざらい吐いてもらおうかな」

 

 渋谷さんが切り出す。

 

「吐くって……何を?」

 

「とぼけないでよ! ネタは上がってるんだよ!!」

 

 バンッ!

 

 ――えぇ~……なんか思ってたのと違うんですけど……。

怒られる流れかと思っていたのに、刑事ドラマでよく見る取り調べみたいになっている現状。

 渋谷さんがテーブルを両手で叩いた音にビックリする藍子さん。両手を押さえて痛がる渋谷さん。

 本当になんだこれ!?

 

「何って……2人の馴れ初めだよ」

 

 フフンと不敵に笑う北条さん。

初対面だけど、この人とは相性が悪そうだ。弱みを見せたらからかわれる。絶対にこの人には弱みを握られないようにしなきゃと思った。

 もっとも、手遅れなんだけどさ。

 

「出会いから今に至るまで、一切合切聞きたいなぁ~」

 

 公開処刑か、断罪か……。選択肢などなかった。

 

「初めてあったのは、春先。俺が買い出しから戻る途中で……」

 

「私が雑誌でこのお店を見つけて、行ってみようかと思ったんだけど、迷ってしまって……」

 

 ――懐かしいなぁ。まだ3か月位しか経ってないんだよなぁ。

 

「え? このお店見つけたの、藍子だったの?」

 

「今じゃ346アイドルで話題の店だからな」

 

 ――アイドルに会いに行ける喫茶店……cloverで君も握手……ってことになりそうだな。

 

「知る人ぞ知る……って言えば聞こえはいいけど、実際は近所の人しか来なかったからね」

 

「それでも、ご近所のマダムからは人気あっただろ?」

 

 マスターの反論は最もなんだけど……

 

「看板もないから分かりにくいんだよなぁ」

 

「確かに……」

 

「凛に教えてもらわなきゃ分からなかったな」

 

 北条さん、神谷さんも納得する。

 

「その話は置いておいて、今は2人の馴れ初め!」

 

 チィッ! 上手く話を逸らそうとしたのに、渋谷さんはそれを許さなかった。

 

「いやぁ、初めて優也が高森ちゃんを連れてきたときは彼女かと思っちゃったよ」

 

 マスターの一言に藍子さんは頬を染める。あれ? デジャブ。

 

「お? マスターさん的には高評価?」

 

「そりゃあね。こんな良い子が優也の彼女なら、思わず、その、ね?」

 

 と笑顔を見せながら、こちらに殺気をむけるマスター。これは下手をうてない。

 

「で? で!?」

 

 かなり食いついてくる北条さん。

――あの、あまり身を乗り出さないでいただけると……その……ね?

 急いで目を逸らす。

 

「そのあと、まさか高校で顔を合わせるとは思わなかったですね」

 

 俺は御館様に呼び出された後、雑用を頼まれたんだっけ。

 

「私も。優也さんは大学生だと思ってましたので」

 

「「「あぁ~」」」

 

 藍子さんの一言に3人が納得の声を漏らす。

 

「俺、そんなに老け顔かなぁ?」

 

「いや、そうじゃなくて」

 

「なんて言うか……その格好とか見てると、落ち着きがあるから」

 

 神谷さんのフォローに思わず感動してしまった。神谷さん、ええ子やなぁ。

 

「それだけじゃないんでしょ? 未央が言ってたけど」

 

 渋谷さん、そこまで俺がにくいのか!

 

「えっと、私が移動教室だったんですけど、その時に優也さんにぶつかってしまって……」

 

「「おぉ~!」」

 

「俺は、山積みのノートを持っていて、前が見えていなくて……その後でノートを取り違えていたんですよね」

 

「マンガか!?」

 

 神谷さんから鋭いツッコミが入る。

 

「未央ちゃんにも言われました」

 

 ――確かにマンガとかでありそうだけどね。

 

「その後で高森ちゃんがアイドルだってことを知ったんだっけか」

 

「俺はアイドルに疎いし、マスターもそこまで興味無かったしね」

 

「藍子の知名度って高いはずなんだけど……」

 

「少しショックでしたけど、お忍びという意味ではありがたかったです」

 

「その節は失礼しました」

 

「いえいえ」

 

 それをきっかけにマスターはドルオタになったし、俺は藍子さんのソロ曲、ユニット曲を聴くようになった。

 

「マスターさん、ブラック3つ、アイスでお願いできますか?」

 

「なんかここ、暑いうえにブラックコーヒーが欲しくなるよなぁ?」

 

 神谷さんが襟元を掴んでパタパタと風を送り込む。

と、ふと神谷さんと目が合った。

神谷さんは顔を赤くして、襟元から手を離し、目を逸らした。

 

「その後は……台風の日でしたっけ?」

 

 ――あ、その話は――

 

「ん? 台風の日?」

 

 マスターが聞きつけてしまった。

 

「その日は俺が旅行に行ってたから、休みにしてたはずだけど?」

 

 ――Oh……。

 

「旅行ってどちらに?」

 

「北海道。カニが食べたくてね」

 

「あぁ、私が電話したあたりか」

 

「あれもビックリしたねぇ。ま、それは置いといて……」

 

 マスターがアイスコーヒー3つとアイスミルクティーを持ってきた。

 

「うちの店、不定休でね。常連さんにしか言って無くて、まさか藍子さんが来るとは思ってなくてね」

 

「台風が酷くて、泊めていただきました」

 

「「「は!?」」」

 

 声を揃えて驚く3人と――

 

有罪(ギルティ)

 

 目のハイライトを消滅させて告げるマスター。

 

「いやいや、ずぶ濡れの女の子を台風の中、タクシーが来るまで外で待っていろと!?」

 

「お前が濡れ鼠になって帰ればいいだろう!」

 

「んな無茶な……」

 

 確かに俺も無茶苦茶だとは思うけど……。

 

「で? で!? その後は!?」

 

 北条さん、かなりテンション上がってるな。神谷さんも口には出さないけど、展開にワクワクしてるようだ。

 

「お風呂をお借りして、お夕飯をごちそうになって、話しましたね」

 

「うんうん、それで!?」

 

「眠くなって寝ちゃいました」

 

「……え?」

 

 おお、北条さんの目が点になった。

 

「まぁ、藍子だしね」

 

「あぁ、藍子だしな」

 

「うぅ、否定できません」

 

 渋谷さん、神谷さんの2人に納得されて、藍子さんは縮こまる。

 

「それで、その後はなにもなかったの?」

 

 急速冷凍並に冷めてしまった北条さん。

 

「その日は何も……翌日に優也さんの服を借りて買い物に行ったくらいですね」

 

「ナニソレ!?」

 

 あぁ、また北条さんのテンションがあがった。

 

「服が乾いてなかったし、藍子さんが着られるものないか探したら中学生時代の服があったから」

 

「ラノベかドラマかよ!?」

 

 神谷さんも律儀にツッコむなぁ。

 

「あぁ、それが原因で喧嘩したこともあったっけ」 

 

 SHI☆BU☆YA!!

 

「どういうこと?」

 

「川嶋さんが、ボーイッシュな女の子、黒髪ロングの女の子、年下の女の子と一緒にいたって。それで藍子が嫉妬したって……」

 

「首を出せぃ!」

 

 ――怖ぇよ!

 

「翁だ! 翁がいる!」

 

 何故テンション上がってるんですか!? 神谷さん!

 

「えっ、3股ってこと!? いや、4股!?」

 

 ――いやいや、付き合ってないですから!

 

「あれ? 黒髪ロングって……」

 

「私のこと」

 

「お前だったのか!?」

 

「うん。卯月の誕生会のことで相談したくてね」

 

「ってことは、3股?」

 

「ん、待てよ。さっき、藍子がボーイッシュな格好したって……」

 

 おぉ、神谷さん鋭い!ツッコミだけじゃなかったのか

 

「ってことは、ボーイッシュな女の子って藍子?」

 

「自分に嫉妬してたのか……」

 

 神谷さんが憐れむような、呆れたような顔をして藍子さんを見る。それを受けて、藍子さんはさらに縮こまった。

 

「でも、2股してるんだよね!?」

 

「でも、ここまでくると、その1人も何かありそうだな」

 

「妹なんです。俺の」

 

「「はぁ!?」」

 

 俺の発言を受けて驚く2人。まぁ、無理もないだろう。

 

「妹と付き合ってるの!?」

 

「ラノベか!?」

 

「違うから!! 小学5年生と付き合うわけないから!!」

 

 誤解を解こうとするも――

 

「「ロリコンだ-!!」」

 

「んなわけあるかー!!!」

 

 

「じゃあ、話を戻すよ」

 

 ――このまま終わってくれないかなぁ?

北条さん、神谷さんの2人を何とか説き伏せたところで渋谷さんの一言により話が戻る。

 

「藍子は勘違いで嫉妬して、川嶋さんと顔を合わせ辛くなって、川嶋さんは謝ろうとしたと……」

 

「でも、顔を見ると逃げるから、凛に協力してもらおうとしたと……」

 

「まぁ、結局私の出番は無いんだけどね」

 

 渋谷さんが頬杖をついて言った。

 

「え? じゃあ、どうやって藍子と川嶋さんは和解? したの?」

 

 あぁ、あれも恥ずかしい話なんだけどなぁ……。

 

「球技大会の時ですね。優也さんが保健室に運ばれちゃって……」

 

「運ばれたって何したの!?」

 

「バレーボールの試合で、場外のボールを追いかけて、壁に激突。そのまま気絶しました」

 

「「「えぇ……」」」

 

「寝不足も祟ったもので……」

 

 ――思えば、あのあたりで藍子さんを意識したんだっけ。

 

「それで、保健室に来てくれた藍子さんに謝って、誤解を解くことが出来ました」

 

「よかったなぁ」

 

 神谷さん、本当に良い子!

 

「で? 昨日は何があったの?」

 

「「え?」」

 

「昨日は藍子の誕生日。何もなかったわけじゃないよね?」

 

 勘の良いガキは嫌いだよ。ガキっていうほど年も離れてないけどなぁ。

 

「何とか誕生日を祝おうと思いまして、夜に事務所まで行ったんですが、入れ違いになったようで……」

 

「事務所に来たの!?」

 

「行動力あるなぁ」

 

 驚く北条さんと感心する神谷さん。

 

「家に戻ったら藍子さんがいて、ビックリしました」

 

「藍子も意外と行動力あるよね……」

 

 渋谷さんの呟きに――

 

「川嶋さんに祝って欲しかったので」

 

「「「アイスコーヒー!!!」」」

 

 カフェイン摂りすぎはよくないゾ。

 

「プレゼントをいただいて、ケーキとジュースでお祝いしようとしたんですが……」

 

「ジュースがチューハイだったんだ」

 

 パリン!

 

「ゆーうーやー!!」

 

「いや、藍子さんが事務所でもらったヤツだから!」

 

 コップを握りつぶしたマスターを何とか宥める。

 

「で? 酔わせた藍子にナニをしたの?」

 

「むしろ、逆に名前で呼んでくれって言われました」

 

「藍子……」

 

「で、酔いつぶれた未成年アイドルを外に出すわけにも行かないから、ベッドに寝かせて、俺はソファーに寝たしだいです」

 

 本当はその後トイレに行って、ベッドに寝てしまったけど、黙っていよう。

 

「それで? 藍子は何で川嶋さんを名前で呼んでるの?」

 

「えっと……朝にご飯をいただいて、学校に行くときに、新婚さんみたいだなぁって思ってしまって、呼んじゃいました」

 

 ナニソレカワイイ。

 

「あれ? 待って。川嶋さんと藍子はいつから付き合っているの?」

 

「「え?」」

 

 ――何を言ってるんだ、北条さんは?

 

「付き合ってないですけど……」

 

「「はぁ!?」」

 

 そこまで驚くことかなぁ?

 

「待って、2人の話を聞いていると、お互いが好きなようにしか思えないんだけど」

 

「いやいやいや、付き合ってないですよ。そもそも釣り合わないですし」

 

「「「はぁ!?」」」

 

「そもそも、俺が()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ちょ、何言って――」

 

 ガタッ

 

「帰りますね? マスターさん、ごちそうさまでした」

 

 藍子さんはカウンターに領収書とお代を置くと出て行ってしまった。

 

「川嶋さん、なにやってるの!?」

 

「え?」

 

「アンタが追いかけずに誰が追いかけるの!?」

 

「でも――」

 

 パァン!!

 

 大きな音が聞こえ、頬に痛みと熱を感じた。

目の前で渋谷さんが腕を振り抜いて止まっているのを見て、自分がビンタされたことに気づいた。

 

早く行け!! 川嶋優也ぁ!!!

 

 渋谷さんに怒鳴られ、弾かれたように走り出す。

 

 

side 凛

 

「川嶋さん、何であんなこと言ったんだろう」

 

 川嶋さんが飛び出した後で奈緒が呟く。

 

「知らないよ! あんな最低な人!」

 

 加蓮はかなり怒っている。まぁ、当然だろう。

私も、彼があそこまで言うとは思っていなかった。

 

「あまり、優也を責めないであげてくれないかな」

 

 調理をしつつ、マスターさんが加蓮を宥める。

 

「それに、みんな誤解してるかもね」

 

「「「誤解?」」」

 

 何を誤解してるのだろう。

 

「釣り合わないって言ったのは、『高森ちゃん』が『自分』に合わないってことじゃなくて、『自分』が『高森ちゃん』に合わないってことなんだ」

 

 ??? 同じことじゃないのかな?

 

「アイツ、自分を卑下するクセがあってね。まぁ、環境が環境だったから仕方ないんだけどね」

 

「環境? それが一体……」

 

「本来はアイツが言うべきなんだけどね。その環境って――」

 

 マスターさんから語られたことは私の想像を絶するものだった。

 

side out

 

 

 駅へ行ったが、いなかった。多少遅れたとはいえ、藍子さんに追いつけないとは思えない。

 

「いないと思うけど、行ってみるか」

 

 部屋にいることを信じて、走る。

傷つけるつもりはなかった。だが、俺のことを好きだなんて思わなかった。

 いや、思ったこともあった。でも、すぐさま否定した。それは自惚れだ。

俺を好きでいるはずがないって。

 

 部屋の前まで行ったが、いなかった。

もしかして、知らぬ間に追い越してしまったのだろうか。

 例えば、途中のコンビニ。入店していれば気づかない。

少しペースを落として引き返すか。

 

 cloverの近くまで来てしまった。後、探す場所としたら――

 

「公園か……」

 

日が高く、暑いこともあり、親の判断だろうか。遊んでいる子供はいなかった。

 

 ブランコ、すべり台に隠れる場所はない。

アスレチックにはありそうだが、子供がいつ来るか分からない状況で隠れるとは思えない。

と、すれば――

 

「見つ……けた」

 

 ドームの中。夏場ということもあり、熱がこもっている。そこに体育座りをしている藍子さんを見つけた。

 

「来ないでください」

 

 藍子さんから向けられる拒絶。自分が悪いとはいえ、精神的にくるものがある。

 

「言い訳じゃない……って言ったところで信じてもらえないかもしれない。でも、傷つけるつもりはなかった。

 そして、何故俺が藍子さんに釣り合わないか。それを分かってもらうため、少し俺の昔話につきあってほしいと思う」

 

 いきなりだよね。謝らないで昔話に付き合えってさ。

でも、謝るだけなら猿でも出来る。

 

「俺は、母親と妹以外の愛を知らなかった。他の人は誰も愛してくれなかった――父さえも」

 

 これから語られるは川嶋優也の原点と、黒歴史。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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