隠れ家喫茶ゆるふわ(凍結中)   作:ハマの珍人

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 後編です。
会話多め、内容薄め、尻切れトンボです。




お祭りに行こう!(表)2

 初めてライブというものを見た。

こんな言い方をすると、『ライブ』って単語すら知らなかったと思われそうだけれども、あながち間違いではなかったかもしれない。

正確に言えばライブというものを誤解していたのかもしれない。

 ついこの間までアイドルに興味がなかったのだから、もちろんライブなんて行ったこともない。

 ドラマなんかのイメージだと、スモーク焚いたり、レーザー光なんかの演出の中、熱唱なのか絶叫なのか分からない歌を歌うメンバーと、狂ったように騒ぐ観客……といったような偏った印象しかなかった。

 

 その偏ったイメージが最初の1曲、たった1曲で変わった。

 

「ライブって……なんていうかスゴイですね」

 

「いやいや、まだ1曲目やから~」

 

「入ったばっかりで絶頂とか早すぎるぞ~」

 

 羽衣PさんとセクギルPさんが茶々を入れてくる。

 

「感動してくれるお客さんがいるんだ。ありがたいことだろう」

 

 あいかわらずの貫禄のある落ち着いた声でNGPさんが語る。

 

「それはそうと、桃色の魔道士は何処?」

 

 ――確かに、P.C.Sのプロデューサーさんはまだですか?

 

「アイツならまだ舞台袖じゃねぇの?」

 

「心配症やからねぇ~、彼」

 

「初めての担当なんだ。そもそも新人の時なんてそんなものだろう」

 

 ――P.C.SPさん、新人だったのか!?

 

「その点、NGPさんは近くで見守らなくても安心ですもんね?」

 

「そうでもないさ」

 

 NGPさんが遠い目をした。何かしら感慨深いものがあったのだろう。

 

「今でもリハーサルの時とかは発破かけるくらいするさ」

 

「さすがですなぁ~」

 

「でも、そんなもんじゃないですかね?」

 

 羽衣PさんとセクギルPさんも納得する。

 

「正直、もっと構いたい。緊張ほぐしたり、不安取り除いたり……」

 

 ――あぁ、過保護なんですね。

 

「でも、あまり構い過ぎると反抗期の年頃だから『プロデューサーさん、うざ~い。大っ嫌い!』って言われそうでね」

 

 ――あるぇ!?

 

「出たよ、NGPさんの親バカ発言」

 

「もはやお家芸やなぁ~」

 

「あ、子煩悩な方なんですね」

 

 ――自分の担当アイドルをお子さんのように愛することの出来るプロデューサーさんなんだなぁ。

 

「でも、実生活では……」

 

「お子さんどころか彼女すらいないんよ~」

 

「え!?」

 

「事実だけに何も言えない」

 

 目の前でアイドルのライブが行われていて、『あ、この衣装シンデレラをイメージしているんですか?』とか、『センターで歌われている方、スゴイオーラが出てますね』とか思っていたのだが、そんなことがどうでもいいと思ってしまえるほどのプロデューサーさん達による曝露大会だった。

 

 そうこうしている間に最初の曲が終わってしまった。

 

『みなさん、こんばんは~』

 

 先ほどセンターで歌っていた女性があいさつをのべる。

 

「あの人、なんというか、オーラ? がスゴイですね」

 

「お、お目が高いなぁ~」

 

「高垣楓、うちのプロダクションの歌姫なんよ~」

 

「元モデルという経歴の持ち主だ」

 

「世紀末歌姫よ!」

 

 おう、絶賛だ。……ん?

 

「元モデルなんですか!?」

 

「おう、良い反応だ。ツッコミの素質があるな」

 

 そんな素質はいらないんだけどなぁ、と頭を掻きながら思う。

 

「まぁ、うちじゃ珍しいことではないな」

 

「今しゃべってる川島さんも、ローカル局のアナウンサーやしなぁ~」

 

「悪を律せしケルベロスもいる(元婦警の方もいます)」

 

 ――はい?

 

「そして、それをスカウトした方がこちら~」

 

「よせよ、照れるじゃないか」

 

「346はなんでもありかと思っていましたが……実際なんでもありなのはプロデューサーさん達なんですね……」

 

 P.C.Sのプロデューサーさんがおかしい人だと思っていた時期がありました……。彼はまだまともな方だったんですね。

 

「お、お待ちかねのP.C.Sのお出ましだ」

 

 セクギルPさんの一言でステージに目を向ける。

と、いうか今まで爆弾発言の連発でせっかくのライブの印象が薄れてしまっているんですが……。

 

「うちのプロダクションの癒しやからなぁ~」

 

「卯月ちゃん! 結婚してくれ!」

 

「お前のようなやつに娘はやらん!」

 

 ――あなたのお子さんでもないのですけどね

 

「あれ? おじさんは?」

 

 そこで先ほどまでライブを真剣に楽しんでいたはずのおじさんの姿が見えないのに気づいた。

 

「ん~……。後ろ見てみぃ」

 

 羽衣Pさんに指摘されて後方を確認すると――

 

「「ウオォォォ!」」

 

 ピンクの4条の光が縦横に動いていた。

つまり、ピンクのサイリウムを持ったおじさんとダークPさん。静かだと思ったら……

 

「む、我が剣技に着いてくるとは!」

 

「まだだ! まだ終わらんよ!」

 

 少年マンガのような熱さではあるけど、行われていることはオタ芸ですよね。

 

「どうや?」

 

 羽衣Pさんの質問に前を向く。

 

「えっと……なにがですか?」

 

 質問の意図が分からず聞きなおす。

 

「いつも来るお客さんの子達のアイドルとしての1面を見て、どう思う?」

 

 ――あぁ、そういうことか。

 島村さんは……どうだろう? 初めて会ったのが彼女の誕生会の時だったから話す機会はあまりなかった。

でも、笑顔が印象的だった。今日の方が輝いていると思う。

 小日向さんは、最初無口なのかと思ったら実はあがり症だった。

それでも、熊本弁を教えてくれた心優しい子。

ときどき寝てたけどね。

 五十嵐さんは頑張り屋さん。決めたことはやり通す。でも、甘えてくるときは甘えてくる。

そんな3人を――

 

「そうですねぇ……いろいろありますが、なにより(オーラで)大きく見えますね」

 

 3人とも俺より身長が低いものの、身長以上に大きく見える。これがアイドルのオーラなのだろうか。

 

「なるほどなるほど。3人とも(胸とか)大きく見える……と」

 

 うん? セクギルPさんの言い方が気になるけど……まぁいいか。3人の姿を目に焼き付ける。

 

「今さらですけど、さっきまでシンデレラをイメージしたドレスみたいな衣装だったじゃないですか。それがいつの間に衣装替えしたんですか?」

 

「あぁ~。さっき、1曲目の後で楓さんがしゃべってたやろ? MC言うんやけど、その間に舞台袖に戻って衣装替えしたんよ」

 

 なるほど。高垣さんが話をふった……川島さんはこちらから見て左端の位置にいた。そのタイミングで右側の袖に行ったのだろう。

 

「それに衣装はマジックテープでとめるヤツもあるしなぁ~」

 

「色々考えられているんですね」

 

 なんか裏事情に詳しくなっていってるんですが……。

 

 

「さて、いよいよ川嶋くんお待ちかねの、あの子の登場だけど……お気持ちをどうぞ」

 

 セクギルPさんが声をかけてくるけど……

 

「勘弁してください」

 

 俺のライフは既にゼロです。と、いうのも

 

 

 回想

 

「神崎さんのライブって……独特のスゴさがありますよね」

 

「まぁ、路線が路線やからなぁ」

 

「しかし、最近蘭子ちゃん何事にも前向きになったよな」

 

「瞳を持つものでも得たんやろうなぁ」チラッ

 

「詳しく!!」ズイッ

 

「ダークPさん、近いです」

 

 

「最近、凛ちゃん事務所に来るときテンション高いよな?」

 

「事務所来る前になにしてるんやろうな?」

 

「たぶん、うちの店でコーヒーをn」

 

「ふぅ~ん、ふーーーーん」ゴゴゴゴゴ

 

「あの、NGPさん?」

 

「うちの娘を誑かしているのか?」ゴゴゴゴゴ

 

「あ、あの、NGPさん、いや、なんでもないです」

 

 

 そんなこんなでいじられ続けてしんどいです。P.C.SPさん、はよ! はよ!!

 ただ、藍子さんの歌っている姿を生で見るのは初めてでワクワクしている。

 

 あぁ、最初に思ったのは、やっぱり音源と生声は違うと思った。何度も何度も聞いている曲なんだけど、生声の方がいいと思ってしまった。

 何度も聞いているのに、それこそ歌詞を覚えてしまえるほど聞いているのに、歌詞のイメージがスッと入ってくる。

 

「川嶋くん、どないや? 愛しの藍子ちゃんの生歌は?」

 

「最高ですね! とりあえず、幸せのかけらを探しに行こうと思います!」

 

「お、おう……」

 

「言質はとったんやけど……。なんかこれやない感」

 

 ――あれ? 俺変なこと言ったかな?

 

「お待たせしました~……どうしたんですか?」

 

 ようやく、P.C.SPさんが合流。

 

「うん、今しがた川嶋くんから爆弾発言があったんやけどね」

 

「っていうか、そういう関係だったんだな」

 

「まぁ、事務所的には禁止ではないが、他言無用だな」

 

「あ……」

 

 自爆してしまった。

 

 

「川嶋く~ん、そろそろ最後やで~」

 

「穴が合ったら入りたい」

 

「墓穴掘って何言ってんだか」

 

「ま、まぁ。うちの歌姫の歌を聞こう? ね?」

 

 ――歌姫って……高垣さんだったっけ?

 

 

 

「あれ?」

 

 気づくと歌が終わっていた。なんというか、歌そのものに引き込まれ、高垣さんから目を離せずにいた。

 

「川嶋くん、ハンカチいるかい?」

 

「え?」

 

 P.C.SPさんに言われて初めて自分が涙を流していることに気がついた。

 

「初めてのライブ、どうだったかな?」

 

「月並みな感想ではありますが、最高ですね」

 

「そう言ってもらえてうれしいよ」

 

「本日は招待いただき、ありがとうございました」

 

 改めて御礼を述べる。

 

「これからも仕事とかで一緒になることもあるから、よろしくね」

 

「はい」

 

「まぁ、それはそれとしてやけど……」

 

 ここで羽衣Pさんが――

 

「どうする? ポジパPさんにあいさつしてく?」

 

 爆弾を落とす。

 

「え、あの、ちなみにポジパPさんってどういう方なんですか?」

 

 話し合いが出来る方だといいなぁ。

 

「一言で言えば……脳筋?」

 

「ゴリラ」

 

「剣闘士なり!」

 

「アイドルのタックルを反動無しで受け止める」

 

「え? 茜ちゃんのタックルを止めるんですか!?」

 

 ――うん。無理。

というか、おじさんがいう『茜ちゃん』のタックルがそんなにスゴいのか。

 

「えっと……遠慮しておきます」

 

「賢明だ。残りの夏休みをベッドの上で過ごす羽目になるだろう」

 

 NGPさんの言葉が冗談であることを祈る。

 

 

 帰りはP.C.SPさんが送ってくれることになった。

 

「担当の3人はいいんですか?」

 

「後は打ち上げだけだからね。それまでに戻れば大丈夫だよ」

 

「「お世話になります」」

 

 おじさんと2人でプロデューサーさんに頭を下げる。

ところでおじさん。グッズ買いすぎじゃないかな?後部座席がおじさんとグッズで埋まりそうなんだけど?

 

 

「げっ!」

 

 車の中でスマホを確認すると、未希から電話が来ていた。

 

「どうしたの?」

 

「あ、いえ。妹から電話がかかってきていたので……」

 

 1時間に1回の頻度で。

 

「急ぎだといけないから、かけてもいいよ?」

 

「すみません」

 

 一言断り、電話をかける。

 

「もしもし!?」

 

 わぉ、ワンコールで出たよ。

 

「ごめん、何かあった?」

 

「お兄ちゃん! 帰ってきて!! なるはやで!!!」

 

 有無を言わさない剣幕でまくし立てられ、電話を切られた。

 

 まだ夏休みは終わらない

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ライブ描写は難しい。

いよいよ明日、総選挙の中間発表ですね。
 今年は誰がランクインしているのでしょうか。楽しみです。
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