隠れ家喫茶ゆるふわ(凍結中)   作:ハマの珍人

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 書きたいことはあるけれど、長く書くと、どこで区切っていいか分からなくなります。
 最近は1話5000字ほどにしてますが、短いですかね?

さて、水着回の次は、夏の風物詩のアレです。
ちなみにお祭りまでは行ってません。


お祭りに行こう(裏)

「今日は花火大会があるんだよ!」

 

 未希が弾む様な声で3人に告げる。

 

「でねでね、近くの神社までの道にずらーっと屋台が並ぶの!」

 

 ――まぁ、神社自体がそんなに大きくないから境内に屋台を出そうにもあまり出せないんだよな。

 

「毎年、お兄ちゃんと行ってるんだよ!」

 

 ――おぅ、ATM状態だけどな!

 

「浴衣もお母さんに着せてもらって行くんだ~!」

 

「ほほう! いいですな~浴衣」

 

 ――時々本田さんってアホっぽくならないか?

 

「かっしー、今すごく失礼なこと考えなかった?」

 

「だから、なんで分かるんですかねぇ!?」

 

 ――アイドルって読心術必須なんですか!?

 

「かっしーは顔に出るんだよ。で? 何考えてたの?」

 

「本田さんって時々アホっぽくなるなぁって」

 

「なにおう!?」

 

「ほら、これが去年の浴衣」

 

「かわいらしいですね」

 

 俺と本田さんが騒いでいる最中、未希は藍子さんにスマホで去年の画像を見せていた。

 その間、日野さんはというと――

 

「わ、分かりません……」

 

 頭から煙を出して机に突っ伏していた。

 

「ほら、未希。宿題しないと祭りにも行けないだろう? さっさとやる!」

 

「だってぇ~」

 

「だってじゃないだろ。夏休みも終わるってのにろくに終わってないじゃないか」

 

「図画の宿題は終わったもん」

 

「終わってる人はもう終わって、残り少ない休みを謳歌してるんだぞ? そもそも計画的にやらないからこんなことになるんだぞ? 去年の悲劇を忘れたか?」

 

 夏休みの最終日に徹夜して、ワーク、図画、朝顔の観察日記などを終わらせた。なお、未希は眠気で9時でダウン。俺はその後始発で戻って、登校した。

 ん? 朝顔の観察日記は適当に書いたんじゃないかって? 念のため、小学校で植えた日を教えてもらい、一日違いで植えたさ。そして、未希の夏休みが入ったと同時に観察日記書いてたから問題ない。

もはや誰の宿題だよ!

 っていうか、夏休みの友ってなんだよ! 敵だろ!?

 

「忘れてないから図画は終わらせたじゃん!」

 

 えっへんと無い胸を張った。

 

「それしか終わらせてないから怒ってるんだろ!?」

 

「あーちゃ~ん。お兄ちゃんがいじめるぅ~」

 

「まぁまぁ」

 

 未希の頭を撫でてあやす藍子さん。

うらやましいとか思ってないぞ? ……ホントダヨ?

 

「で、日野さん。どこが分からないって?」

 

「ここです! ここ!」

 

 とりあえず未希の泣き言を無視して、熱暴走を起こしている日野さんの課題を見る。

 

「あぁ~……これはこの公式を使って……」

 

「あ、あぁ! なるほど! と、いうことは……」

 

「はい、正解」

 

「おおぉ!」

 

 日野さんが自分で解けたのが嬉しいようで、大喜びしていた。

 ――日野さんもどこか犬っぽいんだよなぁ~。ボール投げたら追い掛けて取りそうだ。

 

「ところで、かっしーは夏休みの課題終わったの?」

 

 本田さんも自分の課題に取り組みながら聞いてきた。

 

「さっきも言ったとおり、無理のない計画を立てて、夏休み中に終わればいいんですよ」

 

「つまり、まだ終わってないと? 大丈夫なの?」

 

 と、言いながら顔は、にやついてますよ?

 

「そして、こうも言いました。『終わっている人は終わって、残り少ない休みを謳歌している』と。まぁ、早い話、終わってます」

 

「くっ、未央ちゃんを弄んだな!?」

 

「終わってないと思い込んで、俺をいじってやろうと企んでいたあなたの顔はお笑い種でしたよ?」

 

 と、言うか、勘違いしたのはそっちなんですけど

 

「ヒドイ! 私とは遊びだったのね!?」

 

「おい、その言い回しはやめろ!」

 

 この茶番が、という意味では事実ではあるけど、その言い方はいろいろと誤解を招く。

 

「構うだけ構って、いらなくなったらポイなんて、あんまりだわ!」

 

 ついには、泣き真似まで始める始末。

オーバーだとは思いつつも、さすが舞台をやっただけあって、真に迫っている。だけども、それは悪手だ。なぜなら――

 

「優也さん、未央ちゃん……正座」

 

 ――わざわざ氷結の女神を降臨させることもないだろうに――

 

「ささ、未希ちゃん。あぁなりたくなかったら、宿題やっちゃいましょう!」

 

「よ、よーし。未希、頑張っちゃうぞぉ……」

 

 ――まぁ、見せしめって大事だよね?――

 

「かっしーのせいだからね!?」

 

「いや、そもそも本田さんが……」

 

「ふたりとも?」

 

「「はい!」」

 

「反省してください」

 

 その後、藍子さんによるお説教が始まった。

 

 

「ふぅ、やっと終わったよ~」

 

「私もなんとか……」

 

 未希と日野さんが課題を終わらせたようだ。

 

「んじゃ、答え合わせするから持ってきて~」

 

 藍子さんのお説教自体は10分少々で終わった。

もっとも、お説教というよりは子どもを諭すようなものだったけど。

 それでも、正座はしばらく(自主的に)していたので、足がしびれて動きたくない。

 

「えぇー。答え合わせなんていいじゃん」

 

「あのなぁ、小学生のうちからそんなんでどうすんだよ。宿題であって作業じゃないんだぞ? 身につけなくてどうすんだよ」

 

「えぇー」

 

 口をとがらせ、不満をもらす。

 

「えぇー、じゃない。とっとと出す! 分からないところは教えるから」

 

「はぁい」

 

「お願いします!」

 

 対称的に日野さんはマジメにやっているようだ。

 

「あれ? かっしーって実はマジメ?」

 

「優也さんはマジメですよ。教えるときも教わる時も」

 

「ん? 教わるってなにを?」

 

「ヒント、蘭子ちゃん」

 

「あぁ~……らんらんが教えてるの?」

 

 それはかなりハードじゃないか!? 英語が分からない中学生がネイティブなアメリカ人とかイギリス人に聞くようなものだぞ!?

 

「さすがにそれは……」

 

 藍子さんも同じようなことを思ったのだろう。苦笑いだ。

 

「じゃあ、誰が?」

 

「小日向さんに教わったんですよ」

 

 日野さんの課題を確認しながら答える。

 

「みほちーが!? らんらんの言葉分かるんだ……」

 

 本田さんが目を丸くして驚いている。

 

「だって、熊本弁ですよね?」

 

「あれ、熊本弁だったの!?」

 

「え?」

 

「え?」

 

 熊本弁ってあれのことじゃないの!?

小日向さんに教えてもらったから理解ったんだと思ってたんだけど……

 

「え、みほちーも『闇にのまれよ』とか『煩わしい太陽ね』みたいなの教えてたの?」

 

 小日向さんの勉強会に同席していた藍子さんに聞いていた。俺じゃラチがあかないと思ったのだろう。

 

「……熊本弁でした」

 

「……え?」

 

 何言ってるの? とでも言いたげな顔に、全力をもって笑いを堪える。

 

「蘭子ちゃんが使う様な難しい言葉じゃなくて、一般的に言う熊本弁でした」

 

 ――顔を赤くして、恥ずかしがりながら熊本弁を話す小日向さん、可愛かったなぁ~。それを言うと、

 

「そぎゃん言わんと! うすとろか///(そんなこと言わないで恥ずかしい)」

 

 って言ってたなぁ。

 

「熊本弁って奥が深いね……」

 

「ほい、日野さんOKです」

 

 日野さんに課題のワークを返す。

 

「ありがとうございます!」

 

 さすが体育会系。礼儀正しい。

 

「んじゃ、次は未希なぁ~」

 

 

 昼食は夏らしく冷やし中華。具材はきゅうりに、ハム、錦糸玉子とオーソドックスなものに加え、疲労回復に効く梅肉を添える。それと簡単な中華スープ。冷たいものばかりだと……ね?

 

「夏の風物詩だよね~」

 

「シンプルイズベストってことで」

 

「いやいや。文句いってるわけじゃないよ。ラーメン屋の前で『冷やし中華はじめました』って貼り紙見ると食べたくなるしね」

 

 本田さんの気持ちは分かる。それに加え、アイドルの前に女の子だ。ラーメン屋に入りづらいだろう。

 

「これは! 梅干しですか?」

 

「はい。ゴマダレもいいかなぁと思ったんですが、夏バテ対策ってことで」

 

「なるほど! では、いただきます!」

 

 本当にこの子の食べっぷりは気持ちいい。

しかし、こんなに小さいのによく食べる。その栄養はどこに……あ!

 

「……優也さん?」

 

 ――あれ? 今年の夏は冷夏なのかな? 少し寒い気がする――

 

「たっだいま~」

 

 局地的な冷夏に見まわれる我が実家に、出かけていた母が帰ってきた。

 

「「お帰り~」」

 

「「「お帰りなさい」」」

 

「あぁ~、わが子の他に、かわいい子に迎え入れられるっていいわ~」

 

 ――母さん……半年会わないうちにおかしくなった?――

現役女子高生兼アイドルに迎え入れられるんだから分からなくないけれど――

 

「ところでどこに行ってたの?」

 

「ん~? 夏祭りの準備」

 

 ――神社でも行ってきたのか?――

お祭りの屋台は地域の青年会が主体でやるらしいし……境内の掃除か? それにしては時間がかかりすぎてる気がするし……

 

「じゃじゃーん♪ 浴衣借りてきたの♪」

 

「は?」

 

「花火、夏祭りときたら浴衣でしょ? 大丈夫。着付けは出来るから」

 

 おう、すごい笑顔だ。3人は置いてけぼりな感じだけどいいのか?

 

「寸法とか大丈夫なのかよ……」

 

「ほら、プロフィールに身長とか載ってたから大丈夫よ。まぁ、合わせるだけ合わせてみましょう! と、いうことで……」

 

 こっちに向かってニッコリ笑う母。『あとは言わなくてもわかるでしょ?』とでも言うような笑顔。

 

「はぁい! 風呂掃除してきます! 洗い物は桶の中に入れて、水に浸けておいてくださいな」

 

 詰まるところ、『着替えするのだから出ろ』ということ。まぁ、着替えを堂々と見るほど図太い神経してないしね。

 

「もし終わったら草むしりよろしくね♪」

 

 おう、サラッと仕事追加しおったぞ。

 

「はいよぉ」

 

 さっさと出ることにした。

 

 

 

side 藍子

 

 優也さんのお母さんがお借りしてきた浴衣を合わせるために、準備をします。

 

「アップにするべきか、お団子にするべきか……」

 

 むむーんと顎に手を当てながら私の髪形を思考するお母さん。

 

「お団子でかわいらしさを出す? それともアップで大人っぽさを出す?」

 

 何というか、真剣なのでしょうけど、仕草がいちいちかわいらしい人です……

 

「よし、アップにしましょう!」

 

 言うが早いか、ササッとアップにします。

 

「さ、藍子ちゃん。これ着てくれる?」

 

「なんですか?」

 

「浴衣スリップっていうの。浴衣着るときの肌着みたいなものかしら」

 

 ――浴衣って素肌に着るものじゃなかったんですね――

私が浴衣スリップを着けている間にお母さんは茜ちゃんの髪もまとめていきます。

 

「未央ちゃんもこれ着てね?」

 

「はい!」

 

 未央ちゃんも浴衣スリップを着けるのですが……やっぱりスタイルに差があって、嫉妬しちゃいます。

 

「うーん……未央ちゃんと……茜ちゃんはタオルが必要ね」

 

 タオル? 何に使うのでしょう?

 

「じゃあ、藍子ちゃんからやっていくわね」

 

 そう告げて私を全身が映る鏡の前に誘導します。

 

「あの、タオルってどうして使うんですか?」

 

「ん~? 浴衣ってね、体のラインが出ないように着なきゃいけないの。出ちゃうとみっともなく見えてしまうの。だから、あの2人はタオルを巻かなきゃいけないの」

 

 ――あ、つまり私の胸が小さ――

 

「別に藍子ちゃんの胸が小さいって言ってるわけじゃないのよ? 浴衣着る分には大きい人よりは綺麗に見えるし。そもそも女の価値は胸で決まるわけじゃない。何より――」

 

 私に浴衣を羽織らせながら、お母さんが耳元に顔を寄せ――

 

「うちの息子は胸の大きさで女の子を見ることは絶対にない。藍子ちゃんも知ってるでしょ?」

 

 そう呟かれ、先ほどまで自分が嫉妬したことの小ささや、お母さんに指摘されたことで恥ずかしくなりました。

 

「ふふっ。若いっていいわねぇ~」

 

 言いながらも着付けの手は止めません。何がどうなっているかも分からないまま、されるがままです。

とにかく、紐やら何やらが多いんですね。

 

「藍子ちゃん、苦しくない?」

 

「大丈夫です」

 

「うん。我ながら上出来! じゃあ、イスに座っててね? さ、未央ちゃん。いくわよ~」

 

 早く優也さんに見てもらいたいような、恥ずかしいような……

 

side out

 

 

 風呂掃除も終わり、草むしりも終わり、縁側にて涼む。

 傍らには――

 

ミャー

 

「おぉ、プリン~」

 

 脚が黒く、全体は茶色い仔猫、プリンと、

 

「おう、こっちこ~い。ホレホレ」

 

 俺がオモチャで呼ぶのを冷めたような目で見ている茶色いネコのフィナ。

ちなみにプリンがオモチャに食いついている。

 

「お前はホントにネコなのか?」

 

 俺がやるときだけ無反応でいるし。

 

「おっ待たせ~」

 

 じゃじゃーんと自分で効果音を発しながら現れる母。

 

「待った? ん? 今終わった? ちょうど良かったわ」

 

 しかも一人で自己完結させてるし。

 

「お披露目よ~」

 

 母がスッと横に避け、本田さんと日野さんが姿を現す。

 

「どうかな? かっしー」

 

 本田さんの浴衣は薄い黄色にオレンジの星が描かれたもの。髪が短めの彼女は髪型をそのままに、星の付いたヘアピンをしていた。

 

「こういう格好は慣れないので、照れますね……」

 

 日野さんの浴衣は赤みが強いオレンジにひまわりの柄。彼女の明るさを表したようだ。

元気はつらつな彼女は身を潜め、お淑やかに見える。

 

「うん。似合ってますよ」

 

 言葉少なに褒めながら、彼女はの登場を待つ。

 

「ん? あぁ。藍子ちゃんを待ってるのね」

 

 な、ナンノコトヤラ

 

「藍子ちゃ~ん」

 

 母が呼ぶと、藍子さんが部屋の襖に隠れるようにしながら顔を出す。メガネをかけていた。

 

「あーちゃん、かっしーが楽しみにしてるんだよ?」

 

 藍子さんから少しの葛藤が見え、襖の影から出てきた。

 

「どう……でしょうか?」

 

 藍子さんの浴衣にはオレンジの牡丹が描かれていた。

髪はアップになっていて、メガネと相まって大人っぽく、色っぽい。そんなこともあり、言葉を失ってしまった。

 

「優也さん?」

 

「ほら、何か言ってやりなよ」

 

「あ、うん。綺麗です」

 

 何とかこの一言を絞り出すのがやっとだった。

 

「ありがとうございます」

 

 微笑んだ藍子さんを見て、かなりドキドキして、直視出来なかった。

 

「さて、次は優也の番だよ」

 

 ――はい?――

 

「俺の番って何が?」

 

「浴衣はあんたの分もあるんだから、ほら、さっさとする」

 

「いや、俺は……」

 

「早く!」

 

「はい……」

 

 結局母に押し切られ、俺も浴衣を着ることになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 浴衣のお話を書くにあたって、調べてみたのですが、おはしょりとか色々やらなきゃいけなくて大変なんですね。
 浴衣って、素肌に着るものと思っていたのですが、そんなこともなく、着崩れすると大変という理由も納得です。
 浴衣デートって理想的だとは思いますが、色々大変なので、妄想で留めておくのがいいかもしれませんね。
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