隠れ家喫茶ゆるふわ(凍結中)   作:ハマの珍人

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 鎌倉編無事(無理矢理)完結。

でも、まだ8月は終わらんよ(白目)


お祭りに行こう(裏)2

 身支度を調えた俺たちは、出店が立ち並ぶ神社の通りに来ていた。

 

「結構お店出てるんだね」

 

「数はそう見えますが、まぁ、似たような屋台が並んでますけどね」

 

 綿アメやらかき氷、焼きそばなどお祭りの定番は2、3軒はある。

 

「ワクワクしますね!」

 

「気持ちは分かりますけど、はぐれないようにお願いしますね~」

 

 祭ということで、人がごった返している。ただでさえはぐれたら大変なうえに、アイドルがいるので身バレしても大変だ。

 ちなみに未希は友達と行く約束をしているらしく、未練がましそうに先に行っていた。

 

 

「まずはどこに行くんですか?」

 

「ん~……入り口付近の焼きそば屋って話なんだけど……あそこかな?」

 

 目的地と思わしき焼きそば屋の屋台を見つける。

 

「すみません」

 

「へい! らっしゃい!」

 

 ソースの焦げるいい匂いと、煙の向こうには頭にハチマキを巻いた男性がいた。

――寿司屋の板前みたいだけど……やのつくお仕事されてないよね?――

 

「焼きそば1つ下さい」

 

 とりあえず、用件だけ済ませるのもアレなので、1つ買うことにする。

 

「あいよ! 400円ね」

 

 焼きそば1つ400円……まぁ、お祭りだしね。

 

「かっしー、ママンにもらったもの、見せてみたら?」

 

 本田さんが指摘する。

 

回想

 

 

「優也。これ、軍資金ね?」

 

 母に呼び止められ、英世さん5人ほど渡される。

 

「多すぎる? 大丈夫。出世払いの倍返しだから」

 

 ――母よ。恩を売るというより、恩を押しつけ元をとるというような――

 

「それと……コレ持って行って」

 

 と、メモを渡される。

 

「ナニコレ?」

 

「入り口付近の焼きそば屋の人に渡して。面白いものが見えるから」

 

「はぁ?」

 

「ほらほら。美人3人待たせてないで、行ってらっしゃい」

 

 

回想終了

 

 

「そうですね。すみません、これなんですけど……」

 

 半信半疑ながらも男性に母からのメモを渡す。

 

「なんだい? ……ちょっと待ってな」

 

 男性は訝しげにメモを受け取り、内容を確認する。

そして、焼きそばを袋に入れて――

 

「はいよ。400円ね」

 

 『支払う』金額は変わらなかった。

――焼きそばの数が増えていた――

 

「「「「えぇーっ!!?」」」」

 

 もう、サービスってレベルじゃないよ! 何がどうなったら1つ100円まで値下がりするの!?

 

「いいんですか!?」

 

 ――明らかに赤字になりますよ!?――

 

「おう、姐……お母さんにはお世話になってるからね。持ってきな!」

 

 母さん、あなたは一体何をしたんですか!?

面白いものってコレですか!?

 

「えっと……じゃあ、400円……です」

 

「おう! 毎度あり」

 

 申し訳ないなぁと思いながらもお金を支払うと、男性は嬉しそうに答えた。

 

「やっぱりママンがくれたのはクーポンだったんだね」

 

「あぁ、いい匂いです!」

 

 本田さんと日野さんは喜んでいるけど――

 

「いいんですかね……」

 

「クーポンってレベルじゃないよコレ……」

 

 申し訳なさと後ろめたさを感じる俺と藍子さん。

 

「さあ、次は何行く?」

 

「かき氷いきましょう! かき氷!」

 

「お、いいねぇ~」

 

「あの頭にくるのがたまらないんですよ!」

 

 ――キーンとくる痛みのことだよね!? 日野さん、かき氷食べて怒ってるわけじゃないよね!?――

 

 かき氷屋に向かう本田さん達を追い掛けようとすると――

 

「あ、俺だ。マルタイがかき氷屋に向かった。どの店行ってもいいように丁重にお迎えしろ。着装は――」

 

 うん、焼きそば屋のご主人が少々物騒な電話をかけているけど、スルーしたい。

 同じ事を思ったのか、藍子さんもこちらを見て苦笑いしていた。

 

 かき氷屋の前で本田さん達と無事に合流を果たす。

 

「さて、味の方はどうします?」

 

「メロ~ン」

 

「私はレモンで!」

 

「じゃあ、イチゴで」

 

 みんな見事にバラバラだ。

 

「すみませーん。かき氷4つお願いします」

 

「あいよぉ。んじゃ、1200円ね。シロップは自分でかけてねぇ」

 

 ――1つ300円。うん。妥当なところだね――

さっきのこともあって、少々疑心暗鬼になっている。

 

 おじさんは機械に氷をセットして、操作する。

削られてカップに盛られていく氷。

 涼しげな音がするけど、俺、氷を削る音って苦手なんだよね。鳥肌がたってしょうがない。

 

「あいよぉ。お待ち」

 

 おじさんからカップを受け取る。

――何か氷多くないですかね!?――

 

シロップかけるから多めにしてくれたのかなって思ったけど、さすがにカップの2倍近い氷っていうのは……

 

「夏はやっぱりコレだよね」キーン

 

「くぅ~! 頭にきますねぇ~!」キーン

 

 ――日野さん、本当に怒ってないですよね!?――

 

「2人とも、急いで食べるか……うっ」キーン

 

 指摘しているそばから藍子さんも頭を押さえている。

そういえば、このキーンとくるのって、アイスクリーム頭痛って言うらしいね。

 

「んでもって~」ベー

 

「未央ちゃん、舌が緑色ですね!」ベー

 

「茜ちんの舌は、黄色……っぽいかな?」

 

 これもかき氷あるあるだよな。舌の色がシロップで変わるって……

 

「優也さん、私も変わってますか」ンベー

 

「あぁ。ちょっと色が濃くなってるね」

 

 ――って、何故俺に確認させる!? 普通に対応しちゃったけどさ! そもそもあなたのはイチゴですよね!? 赤いですよね!?――

 脳内でツッコミをいれながらも、かわいいと思ってしまう自分がいた。

 

「優也さんは何味ですか?」

 

「ん、ブルーハワイ」

 

 かき氷買うとき、いつもこれにしちゃうんだよな。

たまには別なのを注文しようと思っても、気づくと口がブルーハワイと告げている。

 

「そういえば、ブルーハワイってどうしてブルーハワイっていうんですか?」

 

「なんでも、カクテルにブルーハワイっていうのがあるらしく、それに色が似ているからとかなんとか……」

 

「そうなんですね~」

 

 と、言っても田中から聞いた話なんだけどね。

 

 

「1口いただけませんか?」

 

「へ?」

 

「ブルーハワイ、1口いただけませんか?」

 

 そう言って、目を閉じて口を開ける。

 

――何故目を閉じるんですか? どうして口を開けるんですか!? 何を求められているんですか!?――

 

「えっと……どうぞ」

 

 カップごと藍子さんに渡す。おい、チキンとか言うなし!

 

「あーん」

 

 しかし、藍子さんも頑固だ。目を閉じたままあーんを要求してきた。

 

 ――かくなる上は、本田さんに――

 

「はい、茜ちん。あーん」ニヤニヤ

 

「あーん」

 

 ――アイツ、ニヤニヤしてあーんしてやがる!――

 

本田さんはこの状況を徹底的に楽しむらしい。

 えぇい! こうなれば、男は度胸!!

 

「はい、あーん」

 

 おぅ、手が震える。こぼさないように何とか藍子さんの口に入れる。

 

「ん、おいしいです」

 

 ――あまり変わらないと思うんだけどなぁ――

 

「じゃあ……あーん、してください」

 

「はい?」

 

「お返しです」

 

 スプーンでかき氷を1口分すくって差し出してきた。

 

「いや、俺は……」

 

「イヤですか?」

 

「あ、いや、えっと……」

 

 藍子さんに聞かれると断れないんだけど……恥ずかしいんですけど……

 

「未央ちゃん、お返しです! はい、あーん!」

 

「あーん」ニヤニヤ

 

 日野さんは分からずにやっているのだろうが、もう1人は俺がうろたえるのを見て楽しんでやがる。

 

――クソッ! 彼の者に雷神の鉄槌を!――

 

「あっ!」キーン

 

 アイスクリーム頭痛がきたのか、頭を押さえる本田さん。

 

――フハハハハ、人の不幸を笑うヤツには天罰が下るのだ!――

 

「優也さん、まだですか?」

 

 藍子さんは顔を赤く染め、それでもスプーンを差し出していた。

 

――恥ずかしいならやめればいいのではないですかね?――

 

このままでは、何も変わらないし、天罰から戻ってくる前に恥ずかしいことは終わらせてしまおう。

 

「あ、あーん」

 

 口を開けると、藍子さんのスプーンがスルリと入ってきて、かき氷を舌の上置く。

 

「美味いです」

 

「それはよかったです」

 

 あぁ。守りたい、この笑顔。

 

「あ!」

 

 藍子さんが急に声をあげる

 

「ど、どうしました?」

 

 両手をパンと合わせて

 

「間接キッスですね」

 

 ――どうしてこの人は恥ずかしいことをサラッと言うんですかね!?―― 

 

 まぁ、藍子さんが楽しそうならそれでいいんですけどね。

 

 

 

「ちょいとお嬢さん方」

 

 次の屋台に行こうとしたところでお面屋のおじさん? おじいさん? に呼び止められた。

 

「何でしょう?」

 

 藍子さんがご主人に近付いていく。

 

「お面を3つほど、いかがかな?」

 

「えっと、お面ですか……」

 

 藍子さんが言い淀む。正直いらないだろう。でも、はっきり断るのもどうも……

 

「あぁ。お代は結構だよ」

 

 はい!? 屋台なのに金はいらないって……どういうこと?

 

「それはどういうことですか?」

 

 俺が警戒レベルを上げる中、藍子さんがご主人に尋ねる。

 

「お嬢さん方、昨日イベントをしていた子たちだろう? そんな子たちの夏の思い出と、昨日の感謝を込めてってヤツかね」

 

 この人、悪い人ではないらしい。こんな簡単に信じるのもなんだけどね。

 

「とは言っても、最近の流行が分からんもんで動物のものしかないがな」

 

 ご主人の言ったとおり、飾られているお面はキツネやタヌキ、ねこ、犬のデフォルメされたものや、妙にリアルなものがあった。

 

「本当によろしいんですか?」

 

「あぁ。構わんよ。売れ残ったって処分しちまうし、お嬢さん方にもらってもらえるならお面も本望だろうさ」

 

 ささ、どれがいい? と尋ねるご主人。

 

 

「では、私は犬をもらいます!」

 

「あいよぉ。元気なお嬢さんは犬ね」

 

 ご主人がデフォルメされた犬のお面を渡す。

 

「私はねこさんで」

 

「眼鏡のお嬢さんはねこね」

 

 今度はデフォルメされたねこのお面を藍子さんに渡す。

 

「私は――」

 

「タヌキかな」

 

 本田さんが悩んでいるなか、口を挟む。

 

「んん? かっしー、それはどういう意味かな?」

 

「あ、いや、キツネかタヌキっていわれるとタヌキかなって……」

 

「なぁ~んか納得いかないけど、いっか。じゃあ、タヌキで」

 

「あいよぉ」

 

 そう言ってご主人はタヌキのお面を取った。

 

「え!? 何かこれすごいリアルなんだけど!? デフォルメされた方だと思ったらリアルな方だったんだけど!?」

 

 驚く本田さんと爆笑する俺。

 

「おぅ、すまん。こっちだった」

 

 そういってデフォルメされた方を渡す。

 

「これはこれで……」

 

「何かロー○ンのキャラに似て「それ以上はいけない!」アッハイ」

 

「兄ちゃんは何にする?」

 

 ご主人が俺に聞いてくる。

 

「いや、俺は別に……」

 

「そうかい? じゃあ、耳寄りな話をひとつだけ」

 

 チョイチョイと手招きするご主人の近くによる。

 

「神社に行く石段があるだろ? その石段の真ん中から右に逸れて少し行くと、開けた場所がある。絶好の花火観覧スポットさ。いいか? 右だぞ?」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ほら、お嬢さん方が待ってるぞ。行ってやんな」

 

「ありがとうございます」

 

「いい夜を」

 

 藍子さんたちの所に戻り、振り返ると、人ごみでお面屋の屋台が見えなくなってしまった。

 

「いい方でしたね!」

 

「お礼言いそびれちゃったから、後でお礼を言いに行こう」

 

「さて……ほんじゃ次は……」

 

 

 その後も様々な屋台を回った。

金魚すくい(なぜかポイが和紙ではなく、100均の風呂の汚れ取り用ネットが付いていた)では、取れたものの、少々申し訳なくなり、子どもたちに分けた。

 リンゴ飴やチョコバナナは、大量にサービスされそうになったものの、そこまで食べれないので、丁重にお断りした。

 ヨーヨー釣りでは、祭りの実行委員長さんと遭遇。

うちの母の肝っ玉っぷりのおかげで青年会がまとまったと感謝された。母さん、あなたの祭り好きは相変わらずなんですね……。

 

「かっしー、花火って何時から?」

 

「あ、そろそろですね。じゃあ、先ほどお面屋のご主人に教えていただいたスポットに行ってみますか」

 

 はぐれないように、と注意しつつ神社を目指す。

が――

 

「花火の時間も近づいているので、混んできましたね」

 

「大丈夫……でしょうか?」

 

「本田さん、日野さん、着いてきてますか?」

 

 声をかけながら振り返るものの――

 

「人がごった返して見えない……とりあえず、神社の石段へ行きましょう」

 

 人ごみの中、はぐれないように藍子さんを引き寄せると、屋台の裏へ抜けて人ごみを避ける。

 

「ひとまず、本田さんたちには行き先を送っておきましょう」

 

「未央ちゃん達、大丈夫でしょうか……」

 

 藍子さんの心配もごもっともなのだが、お互いに探し回ってもこの人ごみの中合流できるかも分からない。

 それなら、合流場所を連絡して、先に待っていた方が良いだろう。

 

 ――身バレするかはお面次第ってとこかな――

 

 お面の加護を信じつつ、転ばないように気をつけながら合流場所へ向かう。

 

 

「未央ちゃん達、来てませんね」

 

 合流場所へ着いたものの、本田さん達の姿は無かった。

 

――人ごみの中、スマホへの通知に気づけ、なんて虫が良すぎたかな――

 

「あ、いたいた。はぐれた時は焦っちゃったよ~」

 

「なんとか間に合いましたね!」

 

 そんなことを考えていたら、2人がやって来た。

 

「で、穴場スポットってどこ?」

 

「あそこから右に入るらしいんだけど……この道かな?」

 

 石段の右側から伸びる細い道を通る。

 

「足元に気をつけてくださいね」

 

「「「はーい」」」

 

 後ろを着いてくる3人に声をかけながらしばらく進むと、木々が遮ることなく、まるでその部分だけポッカリと空いたような場所に出た。

 

「確かにここは穴場だね」

 

「不思議と静かですね」

 

 そんなに歩いたわけでもないのに、祭りの喧騒が聞こえないほど静かだった。

 

「あ! 上がりましたよ!」

 

 日野さんの指差す方向には夜空を彩る七色の華が咲き乱れていた。

 

「キレイですね~」

 

「た~まや~」

 

「ボンバー!」

 

 ――それ違うくない!? 合ってるのか!?――

 

「また、来られればいいですねえ」

 

 ニッコリ微笑む藍子さんの顔も花火で彩られていた。

 

 

 

 その後、石段へ戻ったところで実行委員長さんと遭遇。どこ行っていたのか尋ねられ、正直に答えると、

 

『そんな場所はない』

 

 と言われた。その先には小さな祠しかないと。

また、あの晩見たお面屋さんも存在しなかったらしい。

 

 祠と言われて、藍子さんは覚えがあったらしい。

なんでも仕事前に神社の周りを散歩していたら、少し荒れた祠があって、掃除をしたらしい。

 

 きっと、そのお面屋のご主人はその祠の神様だったのかもしれない。

 

 

「かっしー、怖くて眠れないから、一緒に寝てくれない?」ブルブル

 

「ゆ、優也さん。お願いします」ガクガク

 

「お面屋のお面はあるのに、お面屋のご主人はいなくて、お面屋も無くて、でもお面はあって」プシュー

 

「未希でも抱き枕にして寝てください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




――祭りの後――

「あ、夜分遅くすみません。川嶋優也さんの番号で間違いないでしょうか?」

「……ふぁい」ボーッ

「あ、私です。島村卯月です」

「ふぁい!?」ガバッ

「あ、すみません。仕事終わったので連絡したのですが、寝てました?」

「いえいえ、大丈夫ですよ! えぇ。で、どうされました?」

「いえ、凛ちゃんと響子ちゃんの誕生日会の日取りとかの相談を……」

「あ~……」

「どうかしました?」

「いえ、そのことで島村さんにお願いがあるんですけどね――」



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