隠れ家喫茶ゆるふわ(凍結中)   作:ハマの珍人

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 リアルが忙しく、投稿遅れました。すみません。
さて、今回のお話ですが、多少時空をねじ曲げます(笑)ブルトンサン、チカラオカリシマス


二次元ではよく見るけど、実際に体験したことはない

 2泊3日の予定を切り上げ、始発に乗って東京まで戻る途中である。

 3人は昨日のこともあって、未希を抱き枕にして寝ているだろう。母にだけは帰ることを告げてきた。

わざわざ寝ている4人を起こすこともないしね。

 

――しかし、眠い――

 

 昨夜、島村さんから電話があった。最初は誕生会の打ち合わせの話と、俺の個人的なお願いの話だったのだが、ライブの話や仕事の話やら話していたら、止まらなくなった。

 彼女の趣味が長電話って聞いてはいたけどここまでだったとは……。

  彼女が話し好きなのもあるだろうけど、聞き上手なのもあるんだろうな。だからお互いにノンストップで話してしまった。気づけば夜も更けていた。

 しかも、肝心の日程などは細かく決まらず、日を改めることになった。

 

――まずいですよ。非常にまずいですよ!――

 

 そして、揺られる電車の中、最強の悪魔睡魔さんと戦っているのだが――

 

――ダメだ、寝ちゃダメだ! 今寝たら悲劇を繰り返すことになる!――

 

 

 あれは去年のこと。滞在最終日の夜についつい夜更かしをしてしまい、今日のように始発で戻る電車の中。

 いい感じの揺れと、寝不足もあってつい寝てしまった。気づいたら乗り換え駅どこらか終点まで行ってしまっていた。慌てて山手線に乗り換えるも、再び睡魔さんとの戦いに敗れ、到着駅を寝過ごし、ぐるぐる廻るハメになった。

 

 

――あの時の悲劇を繰り返さないようにしないと!――

 

 しかし、運命というのは残酷なようだ。悪魔の囁きが聞こえてきた。

 

『闇にのまれよ!』

 

 ――うん。睡魔に負けるって意味ではのまれるんだろうけど、あなたは堕天使じゃないのかな?――

 

 悪魔がいるということは、天使もいるだろう。頼む! 睡魔に負けないようななにか、お願いします!

 

『煩わしい太陽ね』

 

 ――うん。確かに眠いから煩わしく感じるけどさ、あなたは堕天使だからね! あれ? 天使という意味では合ってるのか?――

 

 俺の中の天使という悪魔が両方堕天使だった……というか、何故神崎さんなんだ? 俺にとって天使って言ったら――

 

『優也さん、慌てずにゆっくりいきましょう』

 

 あ―― (白目)

 

 

 

ボンバー!!!!

 

「ハッ!」

 

 ――しまった……寝不足とゆるふわ空間(妄想)によって意識を放りだしてしまった……ここ、どこ?――

 

 車窓からの景色で現在地を割り出そうとするけど、見覚えがあるような、無いような……。

 

『次は――』

 

 ――おっと、ちょうど降りる駅だった。ありがとう、藍子さん。ありがとう、日野さん。来店されたときはサービスしてあげよう――

 

 2人に感謝して電車を降りた。

 

 

 

 さて、少し寝られたので、少し頭がスッキリした。

まぁ、一時的なものだろうし、店に着いたらカフェオレでも飲もう。

二宮さんはブラックを飲みたがるけど、俺は飲めないんだよなぁ。味覚が子どもなもんで……。

 で、発注して、食材も買わなきゃ。ついでに朝食も買っちゃおうか。

 荷物はどうしよう。家に帰ると寝てしまいそうだし……バックルームでいいか。

 なんて段取りを考えていたら着いていた。

 

「おはようございま~す」

 

「あ、おはようございますっ」

 

「(・д・)」

 

 知っている店内に知らない女性がウェイトレス姿でいた。

 

――あぁ、なるほど。そういうことか――

 

 一時のフリーズののちに、思考回路を再起動させて

答えを導き出す。

 

「あ、あの~」

 

「すみません! 間違えました!!」

 

 ――どうやら寝ぼけていたらしい――

 

 一旦公園まで行って、自販機でコーヒー(ブラック)を買う。飲めないなんて甘えだ! 頭を目覚めさせるためにはこれくらい――

 

「苦い!」 ウェー

 

 ――マズイ! もう一杯!! なんていかないな――

 

 口の中に残る苦味に涙目になり、顔をしかめる。

 

「さて、行きますか」

 

 

 念には念を入れて、道順を確認しながら店に向かう。

外見を確認して、看板も確認……うん。今度こそ間違いない。

 

「おはようございま~す」

 

「おはようございますっ」

 

「マスター!! 姐さんがいないからって、若い子連れ込むなんて何考えてるの!!」

 

「お前……その発言、ブーメランだからな?」

 

 ▼優也の会心の一撃! 優也に5000のダメージ! 

優也は倒れた

 

「じゃあ、この人はどなた?」

 

「新しく入ったバイトの槙原さん」

 

 ――バイト……ねぇ――

 

「ハッハッハ。冗談も休み休み言えって」

 

「ありがたいことにマジなんだわ」

 

 ふざけた様子も無いマスター。えっ、本当に?

 

「えっと……昨日からこちらでお世話になってます、槙原志保です。よろしくお願いします」

 

 マジか……

 

「川嶋優也です。こちらこそよろしくお願いします」

 

「さて、優也も戻ってきたことだし、今日もはりきっていこう」

 

「はいっ!」

 

 まぁ、マスターがやる気出るならなんでもいいんだけどさ。

 

「マスター、チョイチョイ」

 

 マスターを呼び寄せる。

 

「いつの間に面接したのさ」

 

「一昨日の昼に電話が来てな……」

 

 一昨日の昼……俺が帰った時の電話か?

 

「何でもファミレスでバイトしたことあるって言ってたし、こっちとしてもありがたいからなぁ」

 

 まぁ、確かにな。そこでふと気づく。

 

「あれ? さっき、『昨日から』って……」

 

「あぁ即採用で、面接の後に軽い説明と研修。昨日からフロアに入ってもらったんだ」

 

「いきなり!? 大丈夫だったの?」

 

「まぁ、接客を見てれば分かるさ」

 

 ――マスターがそこまで言うのなら大丈夫なんだろうな――

 

「まぁ、何かあったらフォローしてやってくれ」

 

「わっかりました」

 

「あと、買い出し頼んでいいか?」

 

「ん~」

 

 マスターに言われて食材を確認する。

 

「アイスは買わないとだね」

 

「昨日2箱分買ったんだけどな……」

 

「……アイス以外も結構減ってないか?」

 

「あぁ、槙原さん効果だよ……」

 

 マスターが遠い目をしている。どうしたんだろう?

 

「ま、まぁ、発注してから行ってくるよ」

 

「おう。ついでに氷も買ってきてくれ。冷凍庫の氷だけじゃ追いつかない」

 

「はいよ」

 

 返事するなり発注をかけるのだった。

 

 

「3番テーブル、ハンバーグセット1つとナポリタン大盛り1つ、アイスコーヒー2つです」

 

「はい」

 

「5番テーブル、オムライスあがったよ」

 

「はいっ」

 

 ランチタイムに入って、いつも通りの忙しさなんだけど……

 

 ――槙原さんがスゴすぎる――

 

「いらっしゃいませ。2名様ですか? ご案内します」

 

 ファミレスで培ったであろう接客。

 

「お姉さんすごーい。4つも持てるの?」

 

「よい子は真似しちゃダメだよ? 危ないからね?」

 

 1度に皿も運ぶバランス。

 

「ありがとうございましたっ」

 

 いい笑顔!

 

「なんかフォローしなくて済みそうだけど……」

 

「その分、こっちのフォローが必要なんだよ」

 

 なるほど。何かあったら(俺の)フォローしてやってくれってことか……。

 

「この調子だと、槙原さん目当てのリピーターとか増えそうだな」

 

「確かになぁ……」

 

「営業時間の見直しも必要かなぁ」

 

 少なくともランチタイムの後に1時間ほどの休憩入れないと、槙原さんも疲れちゃうしね。

 

「6番テーブルあがりました?」

 

「もう少しであがります」

 

 

「よし、そろそろ引けて来たし、休憩しよっか」

 

「はいっ、看板ひっくり返してきますね」

 

 槙原さんが入口へ――

 

「灼熱の太陽が大地を焦がす時!(こんにちは~)」

 

 あ、神崎さんが来た。

 

「あ、いらっしゃいませっ」

 

 少し虚をつかれた槙原さんだったけど、すぐさま接客に――

 

「ま、間違えました~!」

 

 ――あれ? デジャブ――

 

 洗い物してた手を止めて、神崎さんを呼び止めに行った。

 

 

「かくかくしかじか」

 

「ノアの方舟!(四角いムーブ♪)」

 

 神崎さんに説明をする。

 

「なるほど。眷属を得たのか(アルバイトの方だったんですね)」

 

「分かっていただけたようで。ところで、お昼はまだですか?」

 

「うむ、魔力が足りぬ。贄を所望する(まだ食べてないのでお腹ペコペコです)」

 

 まだ食べてないと……。

 

「いつものでいいですか?」

 

「うむ、悠久の言霊を紡がん!(はい、いつもので)」

 

 ――ハンバーグセットとオレンジジュースっと。ソースはケチャップだっけか――

 

「少々お待ち下さい」

 

 1列してキッチンに戻ろうとすると、槙原さんが唖然としていた。

 

「どうしました?」

 

「今の、神崎蘭子ちゃんですよね?」

 

「えぇ。常連さんですよ」

 

 ――アイドルが来たから驚いてるのかな――

 

「それも驚きなんですけど、今の会話のどこに注文があったのかなって」

 

 ――確か俺も最初分からなかったんだよなぁ――

 

「ずいぶん遠くまできたなぁ……」

 

「えっ?」

 

「あ、なんでもないです。そうですね……慣れですかね」

 

「なるほど! あ、休憩入りますね」

 

 そう言って槙原さんはスタッフルームへ行った。

 

「さ、ハンバーグ、ハンバーグっとその前にオレンジジュースが先だね」

 

 グラスを取り出し、氷とオレンジジュースを入れる。

かき氷の削る音は苦手だけど、この氷がグラスに当たる涼しげな音は好きだ。

 

「先にこちらオレンジジュースになります」

 

「感謝を……ゴクッ シヴァの息吹!(ありがとうございます。 冷たくておいしいです)」

 

 さて、それではハンバーグを作るとしよう。

 

「って、マスター。何してるの?」

 

 キッチンにてグラスにアイスやら何やらを入れているマスターがいた。

 

「パフェ作ってるんだよ」

 

 いや、なんでだよ。神崎さんは頼んでないし……

 

「ついには堂々と自分でパフェ作って食べるようになったのか……」

 

「いや、違えよ。槙原さんへの賄いだ。彼女パフェが好きらしいからな。ちょっくら置いてくるわ」

 

 そう言って作ったパフェを持ってキッチンから消えていった。

 

――賄いにパフェって……――

 

 アイスが減った理由の1部を垣間見た気がした。

まぁ、いいや。気を取り直してハンバーグづくりにかかろう。

 今回はハンバーグのタネにニンジンのすりおろしを入れてみよう。

 

 さて、ここでいつものお約束だが、料理シーンはカットだ。

 

 

「お待たせいたしました。ハンバーグセットです」

 

「わぁ~い! いただきます」

 

 ――本当にこの子はいつもハンバーグを目の前にすると標準語に戻るんだよな――

 

「神崎さん、その服で暑くないの?」

 

 神崎さんの向かいに座って尋ねる。

さすがに薄い生地なんだろうけど、この時期に長袖は少し暑いだろう。加えてゴスロリだしなぁ。

 

「少し暑いけど、日焼けしちゃうので……」

 

 ――確かにねぇ――

 

アイドルなのに加えて、神崎さんはもともと肌が白いから、日焼けは天敵だろう。だから日傘も手放せない。

 

「それに、女の子はオシャレのためならガマンするものって美嘉ちゃんも言ってたし」

 

 そのミカちゃんなる人物がどういう人かは分からないが、おそらく、どんなに寒くてもミニスカヘソチラなギャルなのだろう。

 それに、アイドルのイメージもあるだろうしな。

 

「まぁ、俺がとやかく言えることではないのですが、熱中症には気をつけて下さいね」

 

「はい」

 

 ――あ、そうだ――

 

「それと先日はありがとうございました」

 

「先日……?」

 

 神崎さんはキョトンとしている。

 

「先月の藍子さんの誕生日の……」

 

「あ、あぁ~」

 

 ストーカーに間違えられたのは痛かったけど、神崎さんが力を貸してくれたのは事実だしね。

 

「だからお礼を言いたくてね」

 

「そんな、大したことしてないですよ」

 

 両手を前に出してブンブン振る。

 

「本来なら何かしらの誠意を見せるべきなんだろうけど……」

 

 ――ある人は言いました。誠意とは言葉じゃないと――

 

「あいにくとあげられる物がなくて……」

 

「あ、それなら……んんっ」

 

 何かあるのか、咳払いをする神崎さん。どうした?

 

「我が真名を言霊に乗せるがいい(名前で呼んでください)」

 

「はい?」

 

「藍子ちゃんは名前で呼ぶんですね(時を操りし女神の真名は告げるのだな)」

 

 しまった。神崎さんの熊本弁が逆になっているのだが、それより、神崎さんの前でうっかり名前呼びしてしまった。

 

「我が目を欺くか!(隠していることでもあるんですか?)」

 

「ら、蘭子……さん」

 

 さすがに呼び捨ては抵抗もあるし、かと言ってちゃん付けは違和感がある。しかし、藍子さんと付き合っていることもあまり公にできない。故の妥協案だ。

 

「うむっ! ハンバーグにシヴァの横槍が(ハンバーグ冷めちゃう)」

 

 満足したのか、ハンバーグを食べ始める蘭子さん。

心なしか顔が赤い気がしたのは気のせいだろうか……。

 

 蘭子さんが帰り、ようやく休憩に入ると、未希から画像付きのラインが来ていた。

 

「何だ? うおっ!?」

 

 

ミッキミキ『悔しかろう 添付 フィナとプリンと戯れる藍子さんの画像』

 

 ――俺に懐かないフィナがここまで懐くとは! フィナ、そこ替われ! いや、藍子さん、そこ替わって、いや、プリンか――

 

 数分後に休憩室で項垂れる俺は槙原さんによって発見された。

 

 この時、あるプロジェクトが始動したことを俺が知るのは数時間後のことだった。

 

 

 

 




 と、いうわけで、槙原志保ちゃんを登場させました。
喫茶店ってことで考えてはいたんですが、彼女、三重出身なのと、初期からのアイドルなんですよね。

 と、いうことで、ご都合主義の当作品オリジナル設定。
 『驚愕! 槙原志保は短大生だった!』

 本当は大学通ってる描写もなく、ファミレスの店員さんなんですけど、出したくなって出しちゃいました。後悔はしていません。

 少しでも志保ちゃんの良さも出せるように頑張ります。

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