週1投稿を目指してますが、遅くなることもあるかもしれません。ご了承ください。
8月某日、都内某所
夏休みも終盤。けれども、夏の暑さは『俺達の戦いはまだまだこれからだ!』とでもいうかのように衰える様子もない。
むしろ、『ここからがクライマックスだ!』とでもいうかのように暑さを増している。
テレビでも『水分をこまめにとり、熱中症にご注意ください』と定型文かのように言われている。
――この暑さが過ぎれば、あっという間に冬が来るんだろうな――
日本という国は、四季がある国と言われているが、『秋? あぁ、アイツなら留守だよ。休暇とってベガスに行ってる』とでも言うかのように秋は存在感を失っている。
――まぁ、商売人にとっては秋なんてない方がいいんだけどね。商い(飽きない/秋ない)だけに――
……少しは涼しくなった気もするが気分は全く晴れなかった。
――お腹痛い……。帰って……いいわけないよね――
自分から言い出したこととはいえ、段々増してくる緊張感に押しつぶされそうになる。
けじめをつけなきゃと思いながらも、時計の秒針がさながら処刑台への階段を1歩、また1歩と登るような感覚に陥る。
――もう、ひと思いにやってくれ~――
逃げそうになる自分を歯を食いしばりながら必死に抑える。
そして遂に――
「お待たせしました」
待ち人来る。
「な、なぁ。大丈夫か? スゴイ顔してるぞ?」
「大丈夫。問題ない」
「いや、それ大丈夫じゃないヤツだからな!?」
「?」
今日の待ち合わせ相手、島村さんと神谷さんだ。
回想
「お願いってなんですか?」
「いや……実は、トライアドプリムスの3人との仲を取り持ってほしいんですよ」
「? それだったら凛ちゃんの方が――」
うん。島村さんの言うことはごもっともなんだけど……やっぱり説明すべきかなぁ。
「その、渋谷さんと仲違いしてしまいまして……」
「けんかしちゃったんですか!?」
「けんかって言うか……まぁ、俺が悪いんですけど、その結果渋谷さんとを怒らせてしまって……」
「? えっと、どういうことなんでしょう?」
少し長くなるんですが、と前置きした上で経緯を話した。
「え、えーと、うーん」
きっと電話の向こうで島村さんは目をグルグルさせて考えているのだろう。
「藍子ちゃんが川嶋さんを好きで、川嶋さんも藍子ちゃんが好きで、でも、川嶋さんはそれに気づかなくて、藍子ちゃんを傷つけてしまって、凛ちゃん達を怒らせてしまった……と」
「おっしゃるとおりです」
――改めて言われると、俺、クズじゃん……――
「で、藍子ちゃんとは和解して付き合っているんですよね」
「はい」
これ、島村さんに断られてもおかしくないよな。むしろ、罵倒されても文句言えないよな。
「でも、まだ凛ちゃん達と仲直りが出来てなくて、お誕生会に支障をきたしそうなんですよね?」
「……はい」
「じゃあ、仲直りしましょう!」
「え?」
「仲直り、したくないんですか?」
「いや、そうじゃなくて、責めないんですか?」
「責めてほしいんですか?」
――島村さんに責められる……喜ぶ人なら喜ぶんだろうな。マスターとかマスターとかマスターとか――
「でも、俺がしたことって……」
「確かに、川嶋さんが藍子ちゃんをどんな理由であれ、傷つけてしまったことは事実です。
でも、藍子ちゃんと川嶋さんがお互いに話し合って理解したのなら、私が言うことはないです。
それに、凛ちゃん達と仲直りしようとする気持ちがあるなら、私、お手伝いします!」
――マスター、世の中には天使がたくさんいるんだね――
「でも、凛ちゃんも頑固、というか、決めたらやり通すところがありますからね」
うん。何度か謝ろうとしたけど、顔を合わせるとすぐ避けられて、最近は俺がいる時は来ないしね。
「とりあえず、凛ちゃんは最後にします」
「え?」
「他にも謝る人が2人いますからね」
「……北条さんと神谷さん」
「はい! じゃあ、まずは奈緒ちゃんに謝りましょうか」
まぁ、あの3人なら神谷さんが1番話を聞いてくれそうだしね。
「でも、俺、神谷さんの連絡先知らないです」
「そこは私が交渉して連れて行きますよ!」
島村さん、こう見えて交渉できるのか!
「お願いしていいですか?」
「はい! 島村卯月、頑張ります!」
回想終了
とりあえず店員さんにドリンクバーを人数分頼み、本題に入る。
「あ、私飲み物持ってきましょうか?」
「あ、それでしたら俺が行ってきます」
――さすがにアイドルに持ってこさせるわけにいかないし――
「いやいや、川嶋さんいなかったら意味ないだろ!」
神谷さんに注意されてしまった。まぁ、ごもっともなんだけど。
「卯月も、飲み物は後でにしてくれ」
「はい……」
島村さんも注意されて、小さくなった。
「で……一体何の話なんだ? 卯月からは、『奈緒ちゃん、来てください! 何も聞かずに来てください! いいから来てください!』って連れて来られたから何にも……」
――交渉とはなんなのか……――
「島村卯月、頑張りました!」ブイッ
交渉(力技)だった。
「えっと……先日のことを謝罪したくてですね……」
「ん? あぁ、あれかぁ~」
――えっ? 何でそんなに軽いんですか?――
「まぁ、確かに最初はあたしも怒ったよ。藍子の気持ち考えずに何言ってるんだ! って。
でも、川嶋さんにもいろいろあったみたいだし、結果的には藍子の気持ちに答えた。それに、こうして謝ってくれたならあたしから言うことはないかな」
「奈緒ちゃん、かっこいい!」
――神谷さん、男らしい」
「あたしは女だ!」
あ、心の声が漏れてました。
「それより、藍子を悲しませるなよ?」
「それはお約束します!」
――もう悲しませないと決めたから――
「ところでさ、あたしたちって同い年だよな?」
「ええ、高校2年なので、そうですね」
「堅苦しくないか? 敬語なんて」
「そうでしょうか?」
――バイトのせいか、こっちの方が落ち着くんだけど……――
「よし、あたしは川嶋さんを名前で呼ぶ。そっちもあたしを名前で呼んでくれ。あと、敬語も禁止な」
「えぇ~!?」
「そうじゃなきゃ、あたしは許さない」
「そんな横暴な!」
――さっきは許すって言ったじゃん――
「私も名前で呼んでくれないなら協力しません」
ここでまさかの島村さんの裏切り。オンドゥルラギッタンディスカ!?
「さぁ、どうする?」
「どうします?」
「な、奈緒さん、卯月さん……これでいいで……いいか?」
「やればできるじゃんか!」
「うれしいです、優也くん」
――おおぅ!? 卯月さんに笑顔で呼ばれると、浄化されそうだ――
「おぉい、ゆ、ゆうゃ~」
「なぁんで条件出した人が1番恥ずかしそうにしてるんですかねぇ?」 ニヤニヤ
「う、うるさい!」
「照れてる奈緒ちゃんは置いておいて、次は……加蓮ちゃんですか?」
卯月さんが奈緒さんを放置宣言したものだから、奈緒さんが騒いでいる。おちょくられた仕返しなどではないけど、放っておこう。断じて仕返しなどではない。
「そう……だね」
「ゆうや? 顔真っ青だけど大丈夫か?」
――あなたは顔が真っ赤だけど大丈夫か?――
「渋谷さんも怖いけど、北条さんも怖い……」
「まぁ、加蓮は怒ってたからな。マスターから話聞いたあとはそうでもないような気もしなくもないけど」
――はっきりしてほしいです――
「大丈夫です! 私にいい考えがあります!」
「卯月、それフラグだから」
「? 旗ですか?」
――正直、不安でしょうがないけど、交渉人、卯月さん。頼みます! ここは汚名返上してください。
汚名挽回はしなくていいですからね!? 本当に!!――
「こんな見え透いた罠で……ムグムグ 私がどうにかなると思っているの? ムグムグ なめられたものだね ムグムグ」
「言動がここまで一致しないのも清々しい」
「驚きの即落ちだな」
交渉人卯月さんが選んだ手は昔ながらの手段だった。
まず、俺が一時退席します。次に北条さんを呼び、山盛りポテトを注文します。
この時、壁際の席に北条さんを座らせて、隣に奈緒さんか卯月さんのどちらかに座ってもらいます。
それを確認してから俺が再び席に戻ります。
なんということでしょう。気づいたら北条さん包囲網が出来ていました(棒読み)
「それで ムグムグ 何の用なの? ムグムグ」
「すみません。来ていただいてなんなのですが、食べるか話すかしてもらっていいですか? 本当にすみません」
「」ムグムグ
――あ、食べる方を選択するんですね。分かってましたけど――
と、いうか北条さん。かなりお怒りのご様子なんですが……またお腹痛くなってきたんですけど……
「奈緒さん、奈緒さん」ピンポーン
隣に座っている奈緒さんに小声で話しかける。
「ん、どうした?」タダイマオウカガイシマス
「トイレ行っていいっすか?」ゴチュウモンオウカガイシマス
「いや、だからお前がいなくなったら話にならないだろう!?」ヤマモリポテトツイカデ
「だって、北条さんお怒りなんですもん」カシコマリマシタ
「とっとと謝って楽になっちまえよ」
「謝ったら許してもらえる?」
「楽にはなる(許してもらえるとは言ってない)」
「そんn「ねぇ」」
北条さんの凍る様な声に俺と奈緒さんは背筋を伸ばす。
「何内緒話してるのかなぁ?」
「いえ、なんでもないです」
「人を呼んでおいて内緒話なんて……ねぇ?」
「ほら、ゆうや。さっさと謝っとけ」
奈緒さんが肘で突いてくる。
「えっt「お待たせいたしました。こちら山盛りポテトです!」」
話を切り出そうとしたら、店員さんに出鼻をくじかれた。って……
――いつの間にポテトを!?――
「ポテト冷めちゃうから、食べてからでいいよね?」
「はい……」
「」ムグムグ
卯月さんが両手で1本のポテトを食べていた。
どこか小動物っぽい。リスか? いや、うさぎだろうなぁ。名前的に。
「?」ムグムグ
「……」パシャ
「!?」
小首をかしげた瞬間、スマホで撮ってしまった。俺は悪くない! 俺の右手が勝手に!!
「ゆうや~。何やってるんだよ。……あたしに送ってくれ」
「∑(OωO; )」
「川嶋さん。私にも」
「Σ(;OωO)」
「えっと……じゃあ、ライン交換ということで……」
交渉人卯月さんの活躍で、無事ラインを交換した。
「え? あのことで謝罪? あぁ~。確かに頭にきたけどさ、その後の2人のラブラブっぷり見たらどうでも良くなっちゃった」
――俺の覚悟とはいったい――
「でも、藍子を泣かせたりしないって……このポテトに誓える?」
「誓います!」
「ずいぶん安っぽい誓いになったもんだな」
「」ツーン(-ω-)
「ホラホラ、卯月もいじけないの、アーン」
「」ムグムグ
「そして、誓いのポテトを食わせた」
「ところで、なんで北条さ「加蓮」……北j「加蓮!」加蓮さんはお怒りだったんですか?」
有無を言わさず名前呼びを強制させられた。
まぁ、それは置いておいて、サラッと許してくれた割に、最初の不機嫌っぷりが解せない。
「今日はまだポテト食べてなかったから」
は?
「やっとポテト解禁したのに、今日、このタイミングまでポテト食べてなかったからね」
「そういえば、ポテト禁止令出てたっけ」
「そうそう。この間食べてからずぅっと禁止されててさ。ポテト食べれないから、肉じゃがとか粉ふき芋とか、いももちでガマンしてたんだけどね……」
――ポテト禁止令とは――
「それで、今日仕事終わって、やっと解禁!ってタイミングで呼び出されちゃってねぇ?」
「「すみませんでした!!!」」
「まぁ、面白いネタもらえたし、よかったとしようかな」ピッ
『おぉい、ゆ、ゆうゃ~』
「な、な……」
お、奈緒さんの顔が真っ赤になった。
「なんでその音源があるんだよ!?」
「なんでって、さっき卯月が――」
加蓮さんが卯月さんの方を見て凍りつく。
「私のポテトぉ~!!」
「」ムグムグ
先ほどまでお皿の上にあったポテトは姿を消してしまっていた。恐るべし、卯月さん。
「卯月を怒らせてはいけない」
奈緒さんが悟ったように締めくくった。
「あとは凛ちゃんだけですね!」
ファミレスを出て、機嫌がよくなったのか、交渉人卯月さんが告げる。
ちなみにあの後、悲しみにくれる加蓮さんは、山盛りとはいかないものの、普通のポテトを注文していた。
費用? 俺持ちです。
「凛は……難しいかもね」
「あぁ」
「そうなんですか!?」
あとは本丸を落とすだけなんだけど……
「確か、レコーディングを兼ねた合宿だって言ってたよね。『今朝から』」
神よ、どこまで無慈悲なのですか……
「ところで……優也さんは、いつまで私たちに着いてくるのかな?」
「実は、3人には言ってなかったね」
――今明かす、衝撃の事実――
「俺、重度の方向音痴なんだよ」
「「「はい?」」」
「初めて行く場所だと、地図見ても最低2時間はかかる」
「はぁ……」
「余裕を持って行ったつもりが、時間をオーバーしてたどり着く」
「えっと……」
「新宿駅? はっ、俺にかかれば遭難するね」
「つまり?」
「346プロまで案内してください」( ̄人 ̄)
約束の時間までは少し早いが、俺が1人で行くには遅すぎる時間だ。案内をあてにしていたわけだが……
「別にいいけどさ」
「入れないかもしれませんよ?」
素っ気なくも了承する奈緒さん、心配する卯月さん。
「ストーカーに間違えられたりして」
「あはは」
冗談のつもりで言ったのだろう、加蓮さんの一言に乾いた笑い声しか出なかった。
「そういえば、あったなぁ。ストーカー騒ぎ」
「あれって、藍子ちゃんの誕生日でしたよね?」
「蘭子を出せ! だっけ?」
――ハハハ、そんなに有名なのか――
「優也くん、顔が青いですよ?」
「それにスゴい汗」
「もしかして……」
「それ、俺です」(´;ω;`)
このあとめちゃくちゃ説明した
「あはははは。まさか、ストーカーと間違われるなんて
」
「まぁ、運が悪いというか……」
「でも、今回は大丈夫なんですか?」
「今回は担当の人がフロントに来てくれるらしいから」
来なかったら、そん時は泣く!
「っと、優也さんがストーカーをカミングアウトしたところで着いたね」
「やめて! 笑顔で古傷をグリグリ開かないで!」
「さぁ、優也さんの運命は……」
「俺たち(と思い込んでいるゆうや単独)の(警備員との)戦いはこれからだ!」
「次回の作品にご期待ください」
「頼むから、本当にやめて!」
「やぁ、優也くん」
俺に声をかけてきたのは――
「あれ? プロデューサーさん?」
「なんだ、卯月たちといたのか」
「「お疲れさまです」」
おなじみのP.C.Sのプロデューサーさん。
「どうしてプロデューサーさんが?」
「今日は優也くんとプロジェクトの打ち合わせでね」
さぁ、ついに動き出すプロジェクトとは……
「鎌倉、楽しかったなぁ~」
「藍子ちゃん、お疲れさま~」
「あ、お疲れさまです」
「何見てるの?」
「この間のイベントの写真です」
「鎌倉だっけ? いいなぁ。ゆっくりできた?」
「はい!」
「あれ? この写真……」
「あ、それは……」
「この子……未希ちゃん?」
「え!?」
「大きくなったなぁ……」
(じゃあ、この人が……)