出せるとしても、最初期の日本語ペラペラ状態なんだろうなぁ……。
浴衣美波を引けたら考えよう
「これより、第2回、凛と優也さんを仲直りさせよう会議を始めます!」
「いえーい!」ドンドンパフパフ
「い、いえーい」
――何かがおかしい――
会議ってこんなに盛り上がるようなものだったかな?
この会議に参加している(させられている?)奈緒さんもこの会議の異常性に気づいている。
いや、奈緒さんだけじゃなく、この部屋にいる人全員がこの異常性に気づいている。
気づいて誰も口にしないのだ。
かく言う俺も敢えて離れたところから傍観している。
……諦観、ともいうが。
「さて、この会議も記念すべき2回目を迎えたわけだけれど――」
――2回目で記念ってなんだよ! しかも、会議で記念ってどんなのだよ!――
と、突っ込みたいところだけど、突っ込んだら、『お前のせいだ』と言われそうだから黙っていよう。
それに、本来突っ込むべきはそこじゃない
「ねぇ……」
ここで混沌とした場に切り込む勇者が1人。
「なんで私の部屋でやってるの?」
そう、仲直りさせよう会議in渋谷さんの部屋、なんだよね……。
時は遡る
「仲直りする方法……ですか?」
仕事を終えて、俺の部屋を訪れた藍子さんに尋ねたのだが……
「それは謝るしかないですよね」
――はい、その通りです――
ぐうの音も出ない程の正論だった。
分かってはいるんだけど……
「謝ろうとして逃げられちゃうんですが……」
顔を見れば逃げられ、物陰に隠れて待ち伏せすれば、察知され、逃げられ、お巡りさん案件……
「なるほど。優也さんだけではなく、凛ちゃんにもワケがあるということですね。
本来は時間をかければなんとかなるでしょうけど、少し力技でいきましょうか」
――交渉、物理、うっ、頭が……――
力技と言われて、イヤな予感がする。
そもそも、藍子さんから『力技』という単語が出るとは思わなかった。
「力技……とは?」
「相手の……この場合は凛ちゃんの逃げ場をなくします」
「え!?」
試してみますか? と言いながら、スススッと寄ってきて――
「こんな感じです♪」
肩にもたれかかられた。
「おう……」
けして重たいわけではないのだが、避けようとすると、藍子さんが怪我すると悪いし――
「でも、これを俺が渋谷さんにやったら……」
「警察案件ですね」
ですよね。と、いうかなんで顔を赤くして俺の膝に乗ってくるんですか? 正直恥ずかしい。いい匂いする。
「まぁ、逃げ場を無くすっていうよりは、逃げ場を限定しちゃうってことですね」
なるほど~。少し難易度が下がった気がした。
「と、言うわけで、逃げ場の無い優也さんに存分に甘えちゃいますね」
このあとめちゃくちゃ甘えられた。
――346プロ内カフェ――
「と、いうわけで協力していただきたい」
「優也さん……」
「警察のお世話になることだけはするなよ?」
藍子さんからアドバイスを受け、同じユニットの加蓮さんと奈緒さんに助力をいらいしたのだが……
――やっぱり勘違いされるよね――
まぁ、当たり前だ。『渋谷さんを(逃げられない程度に)追いつめたいから手伝ってほしい』と言えばねぇ……
「訂正。渋谷さんに謝りたいんだけど、毎回逃げられるので、逃げられないようにしたいので手伝ってください!」
「そんなの、待ち伏せて――」
「毎回待ち伏せする度に、逃げられるどころか、なんか腕っぷしの強いアイドル(?)の方にお話(物理)される俺の気持ち分かります!? 最近なんか、『また君か』って感じの憐れみのような目を向けられるんですよ!?」
「お、おう……」
「それはごめんなさい」
346プロ内のカフェで、小さい子(身長的な意味で)慰められている男の姿がそこにはあった。
残念ながら俺だけれども。
「すまない、取り乱した」
「まぁ、気にするな」
「でも、よくそれでうちの事務所出禁にならないですね」
「まぁ、パイプがあるからねぇ」
――大人は汚いのだ――
「パイプ?」
「まさか、賄賂を!?」
うん。それは無い……と思う。
「まぁ、そのうち分かるかもね」
俺はそう言って含み笑いする。
「ともかく。そうなると、事務所内は無理か」
「でも、そうなるとどこが――」
ブブッ
「ん? ちょっと失礼」
ラインが入って確認すると――
『やっほ~ お花のアレンジメントのサンプル出来たけど、来れるかしら?』
渋谷さんのお母さんからだった。
「おっと!」
「ん?」
「どうしたんですか?」
「ちょっと休養で渋谷さんの家に行かなくては……」
「「はぁっ!?」」
驚く2人。
「えっと……かくかくしかじか」
「四角いムーブ?」
「おい、お前ら何言ってるんだ?」
ノってくれる加蓮さんと混乱する奈緒さん。
「えっと、つまり、今のラインは凛のお母さんからで……」
「誕生会の花のアレンジメントのサンプル確認のために凛の家に行くと?」
「はい!」
「なぁ、これ私ら手伝う意味、あるか?」
「まぁまぁ、乗りかかった船だし、いいんじゃないかな?」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
奈緒さんは呆れていたが、正直、家で遭遇しても逃げられるのがオチだと思う。
そういう意味では助けてもらえれば嬉しい。
「こんにちは」
「あ、優也くん。待ってたわよ。あら?」
「「こ、こんにちは」」
「あら? あらあら、優也くんも隅に置けないわねぇ。カワイイ女の子を侍らせて」
「はべっ!? ち、違いますよ! しぶ……凛さんと同じユニットの子ですよ!!」
「知ってるわよ?」
しれっと言う凛さんのお母さん。
――なんで俺の周りの大人ってこういう人しかいないんだろう――
周りの大人が似たような人ばかりなことにガッカリした。
「まぁ、上がってちょうだい。凛もそろそろ帰ってくると思うし……」
「帰ってきちゃうんですか!?」
「? それはそうよ。自分の家だもの」
――ど、どうしよう……いきなりピンチなんですけど!?――
「とりあえず、凛の部屋で待っててちょうだいな」
「「はい」」
――ふぁっ!?――
しかも凛さんの部屋で待てというのですか、お母様!
「じゃあ、飲み物持ってくるから待っててちょうだいな」
「あ、お構いなく~」
――来てしまった。本拠地どころか、本丸も本丸――
「最後に来たのいつだっけ?」
「こないだのライブの前日じゃなかったか?」
「あぁ、そうそう。前日に泊まったんだっけ」
加蓮さんと奈緒さんが何か話しているが、正直頭に入ってこない。
「優也さん?」
「そんな隅っこに立って何してんだ?」
「あ、いや、その……ね?」
「「?」」
「女の子の部屋に入るの、初めてなもんで……」
失礼と思いながらもキョロキョロと部屋を見渡してしまう。
女の子の部屋、というのには殺風景かもしれないが、整理整頓が行き届いている。渋谷さんらしい部屋である。あと、いい匂いがする。
「とりあえず、座りましょ?」
「不審者みたいだぞ?」
「アッハイ」
とりあえず、隅っこに座った瞬間――
「わん!」
「ふぁっ!?」
急に小っちゃい何かが突っ込んできた。
「あ、ハナコ~」
「は、ハナコぉ~!?」
「うん。凛の犬」
「あ、ちょっ、まっ」
意識外からのタックルで体勢を崩したところに、顔をベロベロ舐められる。
ペロペロなんてもんじゃない。もう、ベロベロのベロンベロンのベッタベタだ。
「ちょっ、た、助けて!」
「ハナコぉ~、おいで~」
「おーい、ハナコぉ~」
加蓮さんと奈緒さんが呼びかけるも反応することなく舐め続けるハナコ。
結局、凛さんのお母さんが飲み物を持ってきてくれるまで舐められ続けた。
「うは~、ベトベトだぁ~」
なんとか救出され、凛さんのお母さんに洗面所に案内される。
「ごめんなさいね。あんなにはしゃぐことなんて、めったにないんだけど……」
「あー……お気になさらず」
「タオル、ここに置いておくから」
「すみません」
渋谷さんのお母さんはタオルを置いて洗面所を出て行った。
蛇口をひねって、水を出し、顔を洗う。
「しっかし……犬に弄ばれるのなんて、いつぶりだろう」
幼い頃、子犬を触ろうとして、もみくちゃにされたのが始まりだった。じゃれあっていると思われたようだが、一方的に弄ばれていた。
それ以来、しばらく犬に恐怖心があった。その恐怖心を克服はしたものの、あまり近づかないようにしていたのだ。
「っと、タオルタオル……」
「どうぞ!」
「あ、ありがとうございます」
タオルを受け取り、顔を拭う。
――あれ?――
普通にタオルを受け取ったけど、今洗面所には俺しかいないはず。
おそるおそる顔を向けると――
「ブイッ!」
――出たぁ~――
「って、卯月さん!?」
「はい! 島村卯月です!」ブイッ
卯月さんが笑顔をうかべて立っていた。
「なんでいるの?」
「レッスン終わって、遊びに来ました」
な、なるほど……
「さ、行きましょう!」
グイッと手を引かれ、渋谷さんの部屋に戻った。
「あ、うづ――」
おおぅ、俺の方を見るなり、目が見開かれたぞ。
「ど、どうも……お邪魔してます」
「まぁまぁ、優也さんも座ってよ」
加蓮さんに促され、再び隅っこの方に座る
「これより、第2回、凛と優也さんを仲直りさせよう会議を始めます!」
ここで冒頭に戻る
「そもそも、その会議に私がいたらダメなんじゃないの?」
――ごもっともです。むしろ俺らがここで会議をするのが異常です――
「でも、凛も当事者だし……」
「そもそも、しぶりんはなんやかんや言って逃げそうだし……」
――逃げる……はっ!――
謀らずとも凛さんは出入り口から遠い自分の机にいるし、膝の上にハナコがいるので、急に動くことはない。
一方、俺は出入り口付近にいる。逃げ場を無くすことに成功していることに気づいた。
しかも、一対一ではなく、こちら側の協力者もいる。
何より、警察のお世話になることにはならない!
――謝るなら今だ! 藍子さん。お力お借りします!!――
「渋谷さん!!」
「!! な、何!?」ビクッ
「この度は、不快な思いをさせてしまい、すみませんでした!!」
ガバッと土下座をする。自分の土下座に価値なんて無くても、姿勢が大事なんだと。
だがここで、計算外のことが起こる。
俺が大声を張り上げた際、渋谷さんがびっくりしてしまった。結果として、膝の上に乗っていたハナコが渋谷さんの拘束を逃れ――
「わん!」
ポフッ
運命の神のいたずらか、ハナコの気まぐれか……土下座している俺の頭に前脚を置いた。
――これって、お手だよね? 足蹴にしてるわけじゃないよね?――
謝罪しているわけで、勝手に頭を上げるわけにもいかない。
周りから『うわぁ……』といったなんとも言えない空気が漂っている中――
「フフッ」
たまらず渋谷さんから笑い声が漏れ、それが部屋中に伝染していく。
――あの、笑えるのは分かるんですが、ハナコをどうにかしてもらっていいですかね? あ、これ明らかに頭に乗ってますよね!?あの、その……あぁーっ! ハナコぉ~!!――
「はぁっ、はぁっ、あぁ~、笑った」
――うん、それはなによりです――
結局、3分近くしていち早く復帰した奈緒さんによって仔犬型爆弾HANAKOは俺の頭から取り除かれた。
取り除かれたのだが――
「優也さん、笑わせないでよ!」
「かっしー、ハナコを降ろして。早く!」
頭の上が気に入ったのか、しばらくすると登ろうとするんです、この子。
渋谷さんなんか、涙うかべて笑ってるし……
「……うん。私の方こそ叩いちゃってごめんなさい」
居住まいを正し、こちらに頭を下げた。
「謝らなきゃって思ってた。でも、そのたびに怖くなって逃げてた。言い訳にしかならないけど、ごめんなさい」
「いやいや、俺が鈍感で無神経なばっかりに……」
「でも、さすがに叩くのは……」
「いやいや……」
「いやいや……」
「おふたりさーん」
「ラチ明かないので仲直りの握手でお願いします」
本田さんと加蓮さんに煽られ、握手した。
これで、元通り。ひとつ違うことと言えば、名前で呼び合うようになった。