ほぼ会話。あーちゃんでません。尻切れトンボの3連注意。
『3倍返し』という言葉がある。
そもそも、『お返し』というのは歴史を紐解くと、原始時代から行われていたらしく、有名なのは、ハンムラビ法典にある、『目には目を、歯には歯を』というのが有名だろうか。
もっとも、『お返し』というよりかは『仕返し』なのだが。
最近では某ドラマにて『やられたらやり返す! 倍返しだ!!』というセリフも話題になった。
さて、話が脱線したが、実は『お返しは3倍返し』というのは、『倍返し』より更に前。バブルに沸いたあたりに言われていたという説がある。
それだけ当時の日本は経済が潤っていたのだろう――
「ホワイトデーのお返しが『3倍返し』って本当ですか?」
346プロダクションの1室。キッチンスペースで作業しながら尋ねる。
「正直、都市伝説だと信じたいよな」
ユニット、『炎陣』の担当Pさんが、イスの背もたれを前にして跨がり、ごちる。
「悪しき風習ですよね~」
P.C.SのPさんも続く。
「甘いぞ! お前ら!!」
ユニット『宵乙女』のPさんが吼える。
「実話だ実は! ほんとにチョコっとチョコ渡しておいて、サラッと3倍以上を要求されるんだぞ!?」
――宵Pさん……駄洒落ですか?マジメですか?――
「あの~……」
ここで申し訳なさそうに手を上げるセクギル――セクシーギルティ――Pさん。
「バブルってなんですか?」
「ユッコの真似しなくていいから」
「いやいや、本当にバブルってなんですか?」
部屋の空気が凍った気がした。
宵Pさんなんか、頭を抱えて、『これがジェネレーションギャップか』って思っ「これがジェネレーションギャップか……」言っちゃったよ。
「ジェネレーションギャップって言うより……」
「セクギルPさんが」
「おバカなだけ?」
「ひどくない!?」
俺含め、3人の感想にショックを受けるセクギルPさん。
「頭痛くなってきたわ」
「まぁまぁ。甘いものでもどうぞ」
「春菜とかな子のフュージョンアップ……だと!?」
「あの2人を合わせると優也くんになるのか!」
――この人たちは何を言ってるんだろう?――
「ところでさっきから何をしてるん?」
「ほら、ホワイトデーじゃないですか。だから、お返しを……って皆さん、どうしたんですか?」
『ホワイトデー』という単語を出した途端に、目をそらしたり、苦笑いを浮かべたり……宵Pさんなんかは顔色がかなり悪くなった。
アル○ォートを参考にしたチョコ&クッキーだったけど、砂糖と塩を間違えてしまっただろうか……うん。普通に食べられる味だ。
宵Pさん、甘いもの苦手だったのかな?
「忘れていた。今日は
「あぁ。
「女性がチョコを与える日をバレンタインデー、渡したチョコを元手に3倍のO☆KA☆E☆SHIを要求する日をホワイトデーって言うらしいで?」
「内容はブラックなのにホワイトとは、皮肉か?」
暴走を始めるPさんたち。
「アメリカの大統領夫人がチョコのお返しを回収して建てたのがホワイトハウスなんですよね?」
「マジっすか!? アメリカマジ献身的!!」
「それに比べて日本は……」
「いいから払うのです!」
――もはや何を言っているのか分からない――
「あの、皆さん。お疲れの様ですし、ティータイムにしませんか? お菓子は多めに作ってありますので」
「彼が女神か……」
「世界よ、これが天使だ」
「(俺が)女なら惚れていた」
「(優也くんが)女なら惚れていた」
「おなかすいたーん」
「あれ? 羽衣Pさん、いつの間に?」
「ん? 初めからおったんよ。優也くんがここに入るん見えたんで、こっそり着いてきちゃった」
ペロリと舌を出す羽衣Pさん。
「本当に隙が無いですね。まぁ、どうぞ」
「おおきに」
「では、ホワイトデーのお返しをどうするか考えるか」
「今から買いに行って、大丈夫かな?」
「まぁ、期待されてないなら大丈夫だろうなぁ」
ティータイムとともに始まった会議。
「その点、P.C.Sはいいよな?」
「天使が3人だからな。基本何を渡しても喜ばれる」
「いやいや、これでも考えて購入したんですよ?」
「何!? 買ってあるのか、裏切り者め!」
P.C.S Pさんが責められてる。
「彼女たちの悲しむ顔、見たくないので」
「こういう時の行動は早いんだよな」
「仕事は遅いのに」
「仕事は関係ないでしょ!?」
「まぁ、N.WPよりかはマシだよなぁ?」
「千川の弟子がいるからな」
千川さんの弟子ってどういう?
「3倍以上じゃないと泣き落としが入るらしいな」
「なお、村松は頬一杯にして食うらしいな」
――ハムスターみたいですね――
「和久井さんのとこのPは大変だよな」
「『お返しは判子だけでいい』って言って、チョコと一緒に婚姻届入ってたらしいな」
――お返しは体で払えと!?――
「去年は『和久井』の判子注文して、それをお返しにしたんだっけ?」
「でも、それをプロポーズだと受け取ったとかなんとか」
――和久井さん、ポジティブ過ぎる!!――
「お返しは給料3ヶ月分か」
「それ言ったら、佐久間Pもかなりだよな」
「バレンタインどころか、クリスマス、誕生日の度に徐々に外堀埋められてるしな」
――佐久間さん、さすがです――
料理以上に手際がいい気がするけど。
「今年あたりは両親にご挨拶……かな?」
「そんなもん、未成年組には活動報告ってことでやってるだろ?」
「ちげぇよ。……Pの両親にだよ」
「「「あ」」」
佐久間Pさん……気を確かに。後で差し入れ持っていってあげよう。
「優也くん、なに見ているんだい?」
俺が持っている紙をP.C.SPさんが覗き込む。
「アイドルの皆さんの好みのお菓子とかアレルギーの有無などが書いているリストですよ」
「「「「はぁ!?」」」」
――そこまで驚かれることかなぁ? プレゼントしたものでアレルギーが出て、せっかくの日が台無しってなってもいやだし――
「普通、そこまでやるか?」
「いや、やらないかな」
「(俺が)女なら結婚してる」
「(優也くんが)女なら結婚してる」
「でも、数が数なので、今年はクッキーとかで勘弁してもらいますけどね」
さすがに100人以上いれば好みも違うので、個人個人に合わせることは難しい。
「ちなみに、その情報はどこから?」
「本人から聞いたり、ちひろさんに聞きましたね」
――ちひろさんと言えば――
「ところで、バレンタインの時にちひろさんにドリンクを貰ったんですが、どこにも売ってないものみたいで……。お高いんですか?これ」
相場を調べようとしたけど、似たパッケージのものもなく、検索しても出なかった。海外製なんだろうか……。
「マジかよ、千川」
「まだ未成年なのに……」
「さすが、あくどい」
「せ、センカワサンハメガミデスヨ」
顔を青ざめながらP.C.SPさんが反論する。
一体どうしt――あー
「なに言ってんだ。極悪非道!」
「金が無ければ体毛だって売れるものは毟り取る!」
「鬼、悪魔どころか地獄の閻魔様だって泣いて許しを請うほどだぜ!?」
「どなたに許しを請うんですか?」
「「「!!!???」」」
Pさんたちの背後からひょっこり現れたるは、唯一無二の蛍光グリーンの事務服、噂の事務員、千川さんだ。
「お疲れ様です。プロデューサーさん♪ 優也くんもお疲れ様です」
「お疲れ様です」
いつもにこやかで、何故アイドルじゃないのか不思議なくらいな千川さんだけど、今の笑顔は見る人に恐怖を与える様である。
「闇に飲まれyヒィィィ!!」
ダークイルミネイトPさんが現れた! 去って行った(この間1秒)
「あれ? 羽衣Pは!?」
「いねぇ! 野郎逃げやがった!」
「探すぞ!」
「その前にやることがあるんじゃないですか?」
憤る3人のPさんに宣告するちひろさん。
「「「ちひろさん、すみませんでした!」」」
直角のお辞儀をする3人。
「それが謝罪ですか?」
「えっと……」
千川さんは笑顔を崩さずに下を指さす。
「「「すみませんでした!!!」」」
すぐさま土下座する3人に対し――
「あらあら。謝罪にかこつけて、私のスカートの中を覗くつもりですか?」
「「「んな!?」」」
流れるように3人を手玉にとる千川さん。顔を上げた瞬間に後ろに待機してる片桐さん、木場さん、柳さんにしばかれるんだろうなぁ。
「じゃあ、お返し配ってくるので失礼しますね?」
「「「優也くん! ヘルプ!!」」」
「はーい。いってらっしゃい」
千川さんたち4人分のお返しを置いて部屋を出た。
のちに3人の叫び声が聞こえたけど……俺に責任はねぇ!
廊下を歩いていると、桃華ちゃんとありすちゃ「橘です!」……偶然だよね?
「お疲れ様~。ありすち「橘です!」ありs「橘です!!」あr「橘です!!!」桃華ちゃんたちはレッスン?」
橘ちゃんが折れないので、俺が折れた。
「ごきげんよう、優也さん。レッスンを終えまして、これから打ち合わせですの」
桃華ちゃんはさすがに落ち着いている。橘ちゃんも見習えばいいと思う。
「今、失礼なことを考えませんでした!?」
生花店の娘さんといい、この子といい、黒髪ロングのクールっ子はエスパー必須なのk「呼びました!?」
――こういう時のユッコは本当にエスパーだなぁ――(棒読み)
「ところで優也さんは何をしていたんですか?」
とりあえず、ユッコを手招きして呼んだところで橘ちゃんが疑問をぶつけてくる。
言葉に棘があるから本当に刺さるんだよね。
「今日はホワイトデーだからお返しの品を作ってたんだよ。人数が人数だから、3倍じゃないし、クッキーだから勘弁ね」
断りを入れて3人に渡す。
「まぁ! 優也さんの手作りですの!? 嬉しいですわ。ありがとうございます」
微笑みながら喜ぶ桃華ちゃん。
「お返しですか。ありがとう……ございます」
喜びを表に出さないように、クールに振る舞おうとするあr「橘です!」……橘ちゃん。
「ひゃっほー!!!」
喜びを爆発させて、スキップしながら去っていくユッコ。それでいいのか、お前は。
「んじゃ、俺は行くから次の収録でね。桃華ちゃん、ダディーヤナザン」
さぁ! 次だ!! ダディーヤナザンが何か怒っているが気にしない! 俺に責任はねぇ!
カフェのボックス席で、和久井さん、三船さん、服部さん、担当Pさんを発見。
――さすがに遠慮した方がいいかな――
出直そうと思ったところで三船さんが気づいて、こちらに手を振る。
そしてこちらを見る面々。特にPさんは『助かった』という顔をしている。
「お疲れ様です」
「お疲れ様。優也くん、今日はどうしたの?」
和久井さんが尋ねる。その間に、三船さんが立ち上がり、俺に座るように促してくるも、遠慮する。
「みなさんにバレンタインのお返しを渡してまわってるんです」
「へぇ……バレンタインのお返し……ねぇ」
「と言っても、クッキーですし、3倍じゃないですけどね」
「お返しは……質や量じゃありませんからね……」
「そうそう。気持ちさえこもっていれば、ね」
言いながらPさんをチラッと見る3人。
――給料3ヶ月分――
さっきの話を思い出した。
「じゃあ、俺は行きますね」
口々にお礼を言う3人、目で必死に訴えるPさん。
――ごめんなさい。俺にはどうにも出来ません――
一室にて佐久間さんと佐久間Pさんを発見。
佐久間さんにもお返しを渡したいんだけれど、この状況は……。
「Pさぁん」
「まゆ……」
「Pさぁん」
「まゆ……」
うん。声聞くだけだといかがわしいことしてるようにしか見えないけど、ありのまま起こっていることを話すと――
佐久間さんがPさんに詰め寄っている。
体格差を考えれば逆はあっても、佐久間さんが詰め寄ることはない。詰め寄ったところで対応できる。
しかし、今、Pさんが座っていて、なおかつ虚をつかれたのだろう。
結果、キャスター付きのイスで距離を取ろうとするPさんと詰め寄る佐久間さんという光景が――
「あ……」
ついにPさんが壁に追いつめられ――
ドンッ!
「フフッこれで逃げられませんよ?Pさぁん」
佐久間さんが壁ドン、さらにPさんの足の間、座っているイスに膝をつき、上と横の逃げ場を無くす。
「ねぇ、Pさぁん」
――さらにアゴクイ……だと……!?――
「そろそろ、いいんじゃないでしょうか?」
あぁ、Pさんの顔が真っ青を通り越して土気色に――
コンコン
「「!?」」
「あ、お疲れ様で~す。これ、バレンタインのお返しと、Pさんへの差し入れです。
あ、お気になさらず。ここに置いときますんで。はい、失礼しました~」
2人に口を開かせること無く目的を果たし、途中出会った星さん、森久保さんをお返しを渡してUターンさせる。俺に関係はねぇ!
その後、オフ、地方への仕事の方以外は配り終えた。
「藍子は……大阪でライブだっけか」
ホワイトデーに渡せないのは残念だけど、帰ってきてからデートでもしようかと考える。3倍になるかは分からないけどね。
後々、デート、さらに高森母との遭遇を果たすのだが、それは別のお話。
SS確定ガシャ始まりましたね。
被りを恐れてキュートで回したら幸子(フェス限は所持)でした。
うーん……。