隠れ家喫茶ゆるふわ(凍結中)   作:ハマの珍人

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 いよいよ8月も終わりですっ。

現実では猛暑が続きますが、夏バテには気をつけましょう←夏バテ中


夏の終わり

 喫茶店cloverは本日臨時休業……になってはいるのだが、店内は大わらわ。

 店内にはマスター1人、店員2人にアイドル数名。

公式なイベントではなく、完全なプライベートである。

 

「槙原さん。落ち着きました?」

 

「あ、はい」

 

 さっきまでテンションMAXだった槙原さんも落ち着いたようだ。

それもそうだろう。来ても日に2人ほどのアイドルが一度にこれだけ来れば驚くよね。

 俺とマスターは……その辺感覚が麻痺しちゃっているからね。

 でも、マスター。ウキウキ気分隠せてないな。

まぁ、藍子さんに、日野さん、本田さん、小日向さん、奈緒さん、後で合流する五十嵐さんと凛さん。彼女たちの案内兼足止めの卯月さんと加蓮さん。そして――

 

「蘭子さんもお忙しい中ありがとうございます」

 

「うむ!我が魔力の片鱗をみせてやろう!」

(微力ながらお手伝いしますよ~!)

 

 急遽参加してくれることになった蘭子さん。

先日、凛さんと合宿をしたらしいのだが、合宿を終えたその脚でわざわざ参加を告げに来てくれた。

 と、マスターがこちらをチラリと見る。察するにそろそろ準備をしようといったところか。

 

 パンパンと手を叩き、注意を集める。

 

「えぇっと、まずは本日はお忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。

 それでは、早速ではありますが、買い出しと飾り付け班に分けたいと思います」

 

 

 

――買い出し班――

 

「川嶋さん!! このひき肉はどうでしょう!?」

 

「うん。悪くない。悪くないけど、トーン落とそうか」

 

 身元バレはまずいですよ~。

 

「川嶋さん。パスタ持ってきました」

 

「小日向さん、ありがとうございます」

 

 買い出しを手伝ってくれている日野さんと小日向さんと――

 

「なぁ、優也。愛しい愛しい人と一緒じゃなくていいのか?」ニヤニヤ

 

 カートを転がしながらニヤニヤしている奈緒さん。

俺をおちょくろうとしているようだけど、こちらにもカードがあるんだよなぁ。

 

「まぁ、さすがに人前でイチャイチャするわけにいきませんしねぇ」

 

「自覚あるのかよ!」

 

 このバカップルは、と呆れる奈緒さん。

 

「もっとも、俺がガマンできないと思うので別々にしました」

 

「優也って、意外とバカなんだなぁ……」

 

 自分が頭いいとは言わないけど、バカって言われると心外なんですが……。

 

 

 

――飾り付け班――

 

「あーちゃんには悪いんだけどさ……」

 

「はい?」

 

 飾り付けの準備中に未央ちゃんが言いにくそうに切り出します。

 

「かっしーって……あーちゃんと付き合ってから変わったよね」

 

「そうですか?」

 

 恋愛は人を変えるっていうけど、私たちも変わったのかな? 優也さんは……人付き合いが良くなりましたね。

 でも、他の子達が好きにならないか不安なんですけど……。

 

「うん。バカになった」

 

「……はい?」

 

 バカになった? 優也さんが、バカになった?

 

「あ、あーちゃん。怖いよ! だから悪いけど――って言ったのに」

 

 うふふ、未央ちゃんは何を怖がっているのでしょう? 私は怒ってませんよ?

 

「未央ちゃん、優也は変わってないぞ?」

 

 ここでマスターさんが弁護を――

 

「アイツはもともとあんなだぞ?」

 

「「えっ?」」

 

「つまり、アイツはもともと抜けてるし、バカだぞ」

 

 マスターさんの驚きのカミングアウト。

 

「え、でも、初対面の時は――」

 

「初対面の人には接客モードに入るから、あれが素」

 

「でも、お部屋は綺麗でしたよ?」

 

 だらしないところなんて――

 

「そういうところはしっかりするようになったんだけどね……。ほとんどベッドで寝ないのよ、アイツ」

 

「じゃあ、どこで?」

 

「良くてリビング。今の時期だと、『フローリング冷たくて気持ちいい~』って寝転がってるかな」

 

「「え……」」

 

 良くてそれなんですか……悪い方を聞くのが怖い気が……

 

「悪くて?」

 

 未央ちゃんは容赦なく聞く。

さすがにトイレとかお風呂場はないとは思うけど――

 

「玄関」

 

「玄関!?」

 

 あれ? 割と普通――

 

「帰宅直後にパタリと酔っ払いのごとく」

 

 じゃなかった!?

 

「バイト始めたばかりの時は、疲れすぎて頻繁に寝落ち。んで、翌朝俺が迎えに行ってた」

 

「それは……お疲れさまです」

 

 優也さんのそんな1面、知らなかった。

 

「あとは、朝飯と昼飯かな」

 

 お昼……ってお弁当作っていたような――

 

「朝は菓子パンなりおにぎり1個、もしくは食べない」

 

 シャワー浴びたりしなきゃいけないから時間なかったんだと、とマスターさん。

 

「昼は光合成してるって言ってたっけ」

 

「「はい!?」」

 

 光合成って葉緑体ないと出来ませんよね!?

 

「まぁ、実際は日なたぼっこしてたらしいけどね。

 バイトに慣れたら弁当作りだしたけど」

 

「それはなんとも……」

 

「まぁ、普段の自分を出せるようになるくらいにはみんなと仲良くなれたのかな」

 

「だといいですね」

 

 とりあえず、この会が終わったら優也さんにはお説教しなきゃいけませんね!

 

 

 

「蘭子さん! 本当に、本っ当に気をつけてくださいね」

 

「うむ! 些細問題ない! 我が錬金術、その目に刻むがいい!」

(大丈夫です。ちゃんと作ってみせますよ~)

 

 買い出しから戻り、調理することになったのだが――

 

「刻むのはタマネギだけにしてくださいね?」

 

「大丈夫ですっ!」

(くどい!!)

 

 蘭子さんもハンバーグを作ると言い出した。

まぁ、合宿前に料理を教えてほしいと頼まれて、何度か教えはしたが正直不安なんです。

 

「みくちゃんの手、みくちゃんの手」

 

 ――なんか不穏なことを呟きながらタマネギ刻んでるんだけど!?――

 

「かっしー。パスタの茹で具合、こんなもんでいいかな?」

 

 本田さんが、ひょいと菜箸で麺をつまんで差し出してくる。

 ――器用だけど、あぶないぞ?――

 

「ん、良い感じっす」

 

「りょうか~い」

 

「優也~。サラダ出来たぞ~」

 

 今度は奈緒さんが呼ぶ。

 

「とりあえず、冷蔵庫にお願い」

 

「はいよ~」

 

 俺も熱々の油の前でポテトを揚げる。

 

「小日向さん、カナッペどうなってます?」

 

「オッケーだよ」

 

 各所に指示を出し、状況を確認する。

前回は五十嵐さんと2人でやっていたっけ。

前回は人数が少なかったとはいえ、スムーズだったことを考えると、五十嵐さんの抜けた穴って大きいんだなと実感する。

 

「槙原さん、フルーツポンチはどうなってます?」

 

「優也くん。今からでもパフェにs「却下です」……だよね?」

 

 この人数分のパフェなんてさすがに代金から脚出るよ。

そもそも今からパフェに変更しますって言って、修正出来るフルーツポンチってどんなのだよ! それはそれで気になるなぁ。

 目玉のケーキは、今回はチョコレートケーキとスタンダードなショートケーキの2種類。さすがにみんなの好みに合わせてケーキを作る余裕などなかった。

 さすがにどっちも食べられないって人、いないよね?

 

「間もなく着くってよ!」

 

 マスターに連絡が入ったらしく、報告があがる。

よっしゃ、ラストスパートだ!

 

 

 

「うわぁ~」

 

「これは、スゴイ」

 

 来店した2人は目の前の光景に驚いていた。

その顔を見られただけで満足だ。

 

「これ全部川嶋さんが?」

 

「いやいや、俺そこまで1人で出来ませんって。皆さんに手伝っていただきました」

 

「このハンバーグは?」

 

「我が魔力の賜物ぞ!」

(私が作りました!)

 

 フフンと胸を張る蘭子さん。手つきはおぼつかなかったけど、上手に出来ました。

 

「蘭子はこの間の合宿でも作ってたからね」

 

「そうなの!? 楽しみだなぁ~」

 

「ところで……やっぱり量、多くないですか?」

 

 料理を見た卯月さんから指摘が入る。

 

「寮へのお持ち帰りの分――」

 

「それにしても多すぎません?」

 

「……」

 

「……」

 

「作り過ぎちゃった」テヘッ

 

「どうするんですか!?」

 

「またマストレさんの地獄のレッスンが-!!」

 

「鬼! 悪魔!」

 

「女の敵!」

 

 うん。先ほどそれをひと通り済ませた後なので、俺のライフはすでにマイナス通り越してマントルら辺なんだよね……。

 

「じゃあ……減らします?」

 

「「「いや食べる!!」」」

 

 ――なんなのこのやりとり――

 

 自分のことながら、ツッコまずにいられなかった。

 

 

「えー、皆様。グラスは行き渡ったでしょうか? お客様の中に、グラスをお持ちでない方――え? いいから早くしろ? はい、失礼いたしました」

 

 何故か乾杯の音頭をとらされることになった(約1ヶ月ぶり、通算2度目)

 

「えー、では、本日は五十嵐さんと、凛さんの誕生会に当店をご利用いただき、ありがとうごz……え? 料理が冷める……はい、では1つだけ。

 今回の会を開くにあたりまして、私個人のせいで、開催が遅れてしまい、申しわけありませんでした。

 これもみなさまの多大なるご協力のたm……あぁ、分かりました、分かりましたから! そんなに巻きを入れないでください! 俺はとんぼじゃねぇ!! えぇ、では、乾杯!」

 

「「「かんぱ~い!!!」」」

 

 ――乾杯の音頭の間にヤジが多すぎるよ。もう2度とやらないからな!!――

 

 みんなが食べて、飲んで談笑している間に、ケーキを仕上げる。正真正銘手作りですよ。ちゃんとチョコの看板にもデコって……ロウソクも立てる。

 

「はい。遅くなりましたが、ケーキも出来上がりましたので、ロウソクの火を消していただけますか? あ、その前に誕生日の歌を……さん、はい!」

 

 

 

「片付け、手伝ってもらって申しわけないね」

 

「いえいえ。大丈夫ですよ」

 

 無事に誕生会もお開きとなり、みんなはこれからカラオケらしい。

 ただ、藍子さんは用があるらしく、みんなと一緒に行かず、閉店作業(後片付け等はみんなで終わらせた)を手伝ってくれた。

 

「でも、用事があるんじゃないの?」

 

「はい。優也さんに少しお話が……」

 

 ――俺に話? 何だろうドキドキする――

 

「な、何だろう?」(裏返った声)

 

「いえ、大したことないんですけどね……」

 

「? とりあえず、うちでいいかな?」

 

 自宅につくなり、

 

「優也さん、座っていただけますか?」

 

「あ、うん」

 

 リビングに腰を下ろす。

 

「あ、正座です」

 

 ん?

少し疑問に思いながら正座すると――

 

「ちょっ!?」

 

 俺の膝に、俺と対面になるように藍子さんが座る。手は俺の首の後ろに回した。

 

「お説教ですっ」

 

「はぁ!?」

 

 俺、お説教されるようなこと、したかな?

 

「マスターさんから聞きました。ベッドで寝ないでここで寝たり、玄関で寝ているとか……」

 

「んな!?」

 

「それで、朝ごはんを食べない日もあるとか」

 

「あぁ~……」

 

「去年は、お昼もとらずに光合成していたとか……」

 

「あの……ね?」

 

「私は、また球技大会の時みたいに倒れられるの、イヤですよ……」

 

 藍子さんは悲しげな顔で訴えてきた。

これは普通に怒られるより辛い。

 

「はい……ベッドで寝るようにします」

 

 それ以外の答えなどない。

 

「では、2つ目」

 

 ――え!? まだあんの!?――

 

「どちらかというとこちらが本題です」

 

 ――本題こっちなの!?――

 

「何で他の子も名前で呼んでいるんですか?」

 

 ぷくーっと頬を膨らませる藍子さん。

これは拗ねてます。分かります。

 

「えっと、名前で呼んでと言われたからでして……」

 

「じゃあ……私も藍子って呼んでください」

 

「? いつも呼んでるよね?」

 

「呼びすてにしてください」

 

「あ~……それでいいの?」

 

「それが、いいんです」

 

 よく分からないけど、藍子さんが嬉しいなら良いかな。

 

「藍子」

 

「はい、優也くん」

 

 おおぅ!? なんか距離が縮まったような、電流が走ったような。

 

「えへへっ、いいですね」

 

「うん……。ところで、これでお説教は終わりかな?」

 

「はい。終わりですっ」

 

「じゃあ、降りてもらっても――」

 

「ダメです」

 

 デスヨネ~。

 

 このあと、本当に足に電流が走ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

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