隠れ家喫茶ゆるふわ(凍結中)   作:ハマの珍人

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 遅くなりました。今後、更新が2週間に1回になるかもしれません(-ω-;)

 書けば出る。書かねば出ない。出れば書く(笑)


交わした約束忘れないよ(幼少期を除く)

「決起集会?」

 

「はい!」

 

 バイトを終え、帰宅した俺に、部屋を訪れた藍子が、

 

「決起集会を開きたいんです!」

 

 と言った。

 

「何、346プロダクションに対してストライキでも起こすの?」

 

「ち、違いますよ!」

 

 うん。知ってる。だってそんなことしそうにないしね。ストライキ起こす前にお茶会開きそうだもの、この子。

 

「今度、新しいユニットを結成することになりまして、ユニット内の親睦を深める意味でもそういった会を開きたいなぁって……」

 

「なるほどなるほど。決起集会兼、親和会ってところかな?」

 

 それでも、決起集会って言われると不穏な感じがするんだけど……何かと戦うんじゃないかって……

 

「そうですね。親和会って意味合いの方が強いですね。……一緒に戦っていく仲間なので、絆を深めたいんです」

 

 ――え、本当に戦うの!?――

 

 

 ――アインフェリア―― それが彼女たちのユニットらしい。

 響きが北欧っぽいんだけど、ライブを『ラグナロク』とか言い出したりしないよね? それはどちらかというと蘭子さん案件だよね? メンバーまでは聞いていないけどね。

 と、いうか、お披露目する前にうちの店でお披露目しちゃって大丈夫なのだろうか……

 まぁ、そんなこと考えてもどうしようもないな。

レッスン終えてから来るって言ってたし、もうすぐだろうか……

 

「おーい、そこの不審者。ちゃんと仕事しないと給料は出ないぞ」

 

「不審者って、そこまでは……」

 

「5分おきに時計確認して、同じテーブル拭いたりイス整えたりするヤツのどこが不審者じゃないって?」

 

 不審者じゃ……不審者か。

 

「そもそも、そこの席に座るとも限らないし」

 

 残念なおじさんに正論吐かれた。

 

「お前ってさ……」

 

「はい?」

 

「いや、なんでもない。ミスしてコップ割るなよ?」

 

 そう言うと、マスターは裏へ消えていった。

 

「?」

 

 マスターにしては歯切れが悪いけどどうしたのだろうか……

 

 

「こんにちは~」

 

 待つこと数分。藍子がメンバーを連れてやって来た。

その頃には、店内もピカピカになっていた。

 

「何か、いつもと違いませんか?」

 

「いらっしゃい。何、どっかのバイトが気合い入れて、季節はずれの大掃除をしたんだよ」

 

 そのうち断捨離までし始めるんじゃないかって思った、とマスターはごちる。

 

 

「あれ? ユニットのメンバーの方は?」

 

「外で待ってもらってます。呼んできますね」

 

 そして、藍子と一緒に入ってくる3()()

 

――あれ、このユニット――

 

「はじめまして、新田美波です!」

 

 完全初対面のお姉さんと――

 

「お邪魔します」

 

 料理教室の生徒1のちびっ子と――

 

「こんにちは……」

 

 常連さん兼生徒2のお姉さん――

それと、彼女……

 

「ユニット内の大半が知り合いでした……」

 

「え!? 2人も知り合いなの!?」

 

「えぇ……」

 

「はい」

 

 新田さんがかなり驚いてるなぁ。

マスター? あぁ。色紙取りに行ってるよ。

 

「失礼しました。4名様でよろしいでしょうか?」

 

 席にご案内する前に、一応聞いておく。

よく、

 

「いや、見て分からない?」

 

 って感じの人いるらしいけど、確認するとしないじゃ大違いだし、何より――

 

「1人遅れてくるので、5人ですね」

 

 こういう場合もある。

 

「かしこまりました。では、席へご案内します」

 

 しかし、藍子のこの妙な笑みはなんなのだろう? 俺、なにかしただろうか?

 

 

「ご注文の方、どうなさいますか?」

 

 合流する人を待つなら後ででもいいだろうし、先に注文するかもしれない。この辺も聞いておかないともめることも多少ある。

 もめごとを避けるためには必要なことだ。

 

「どうしようか? 飲み物だけでも注文しちゃう?」

 

 新田さんはリーダー気質なのだろうか? まず、みんなの意見を聞いている。

 

「ありすちゃんは……大丈夫ですか……?」

 

「大丈夫です! 待ちましょう!」

 

「ありすちゃん、無理はしないでね?」

 

 ――何というか……あり『橘です!』……橘ちゃんとお姉さん’Sにしか思えない――

 

「あ、間もなく来るみたいです!」

 

 連絡が入ったのか、藍子が伝える。

 

「かしこまりました。では、後ほどご注文伺いますね」

 

 そう言って下がる。

 

 

「優也くんもこっち来ない?」

 

 ――はい?――

 

「えっと……藍子、さん……自分仕事っていうか、バイト中なんですけど?」

 

「でも、他にお客さんいませんよね?」

 

 確かにいないけど、洗い物とかありますし?

 

「いや、他に仕事――」

 

「うん。ないな!」

 

 流しでマスターが洗い物していた。

 

「え、でも……」

 

「お客様のご依頼に応えるのも仕事じゃないのか?」

 

「そうだけど……」

 

「給料……」

 

「し、失礼しますね」

 

 けしてお金の力に屈したわけじゃない! 屈したわけじゃないんだから!!

 

 

「じゃあ、改めまして……はじめまして、新田美波です」

 

「川嶋優也です。よろしくお願いします」

 

「お噂はかねがね」

 

 ――どんな噂だろう?――

 

「ちなみに、どんな噂ですか?」

 

「そうですね。喫茶店のお兄さん、346のお兄さん、料理のお兄さん……ってところですね」

 

 わりとまともな噂でホッとした。

いや、もしかしたら新田さんが悪い噂は隠しているだけかもしれないけど……たった数分話した程度だけど、この人ならそれぐらいの気遣いしそうだし。

 そうなってくると、悪い噂の方も気になってくる。

どういう噂がたっているだろう。アイドルホイホイ? ロリコン? ストーカー? いくつか本当のことだけに悲しくなってきた。

 

「えっと……そこまで変な噂はないですよ?」

 

「えっ!?」

 

 ――何で分かったし!?――

 

「ふふっ、思っていることが顔に出やすいって本当なんですね。あんな百面相、初めて見ました」

 

 クスクスと笑う新田さん。

 

 ――あぁ、初対面の人にも分かるほどに顔に出やすいのか――

 

「そんなに落ちこまなくても……」

 

 ――能面でもつけようかな。翁がいいか、般若がいいか――

 

 

カランカラン

 

「ごめんね! 遅くなっちゃったっ!」

 

 ドアが開くと共に、元気な声で謝罪が聞こえた。

最後のメンバーが到着したようだ。

 って、今の声聞き覚えがあるような……

 

「は?」

 

 入り口を見て、思わず間抜けな声をあげてしまった。

だって、そこに立っていたのは――

 

「久しぶり、大きくなったね」

 

 ここにいるアイドルで1番――常連である鷺沢さんや藍子よりも――古くからの顔なじみ

 

「ゆうくんっ」

 

「お前……ゆう?」

 

 幼なじみの『ゆう』――相葉夕美だったのだから。

 

 

「いやぁ、久しぶりだねっ。最後に会ったのは……ゆうくんがまだ小学校の時だったっけ?」

 

「あぁ、そう……だな」

 

「懐かしいなぁ~。未希ちゃん元気?」

 

「あぁ、やかましいくらいに」

 

「まだあの時は小っちゃかったもんね。『おねーちゃん、おねーちゃん』って、かわいかったなぁ~」

 

 思い出に浸るゆう。

 

「あの、お2人はどういうご関係で?」

 

 気になった橘ちゃんが代表して聞く。

うん。質問するときは手を上げる。いい習慣だね。

 

「幼なじみだよっ。うちがご近所さんで、よく一緒に遊んでたんだっ」

 

「「「おぉ~」」」

 

 色めき立つ3人。女子って幼なじみとかそういうの好きなのか? はたまたラブコメ的なことを想像しているのかな?実際そんなことはないんだけど……。

ご近所さんってことで、良いことも悪いことも噂になるし……。

 って、驚かないところを見ると藍子は知っていたのか。

 

「藍子……さんは知っていたの?」

 

「はい。お家にお邪魔したときにアルバム見せていただいて、最初は似ているだけかなって思ったんですが……」

 

「藍子ちゃんが事務所で写真見てて、それで私が気づいたのっ」

 

 ――俺の過去と現在、ダダ漏れじゃないですか!?――

 

「いやぁ、本当に懐かしいなぁ~。昔は私の方が背が高かったのに、今じゃこんなに大きくなってるしっ」

 

 ――成長期(?)なんで――

 

「私の後ろ着いてきて、一緒に遊んだねぇ~。『僕、大きくなったらゆうちゃんとけっこんする!』って言ってたっけ」

 

「「「「!!!??」」」」

 

「き、きおくにございません(棒)」

 

「私は覚えてるよっ! 何かあったときは、『ゆうちゃーん』って泣きついてきたことも……」

 

 ――もうやめて~!!!恥ずか死してしまう――

 

「ほらっ! 久しぶり私の胸に飛び込んでおいでっ」

 

 立ち上がり、両手をバッと広げて受け入れ体勢をとるゆう。

 確かに、あの時よりは成長ゲフンゲフンそろそろお仕置きが必要かもしれない。

 

(藍子さん、藍子さん)

 

 小声で藍子に話しかける

 

(何ですか? 甘えん坊のゆうくん?)

 

 ――おっとぉ!? 少し棘があるぞ! ――

 

(このあとって皆さん、お仕事入ってます?)

 

 撮影とか取材とか……

 

(何もないですね)

 

(そうですか。安心しました)

 

 ――なら大丈夫だ――

 

(それより、夕美さんがお待ちかねですよ? 久しぶりにしてあげたらいいんじゃないですか?)

 

 ――やきもち妬いてるのかな? そうだったらうれしいけど、後で謝ろう。とりあえず――

 

(そうですね。久しぶりにやってきます)

 

「えっ!?」

 

 藍子が驚きのあまり声に出すけど、今回はスルー。

 あの頃より大きくなっちゃったし、力もついてしまった。なにより久々だし、加減できるか分からないけど……。

 

 ゆうの方へ近づく俺を固唾を飲んで見守る4人。

ゆうは目を閉じているけど、そろそろ焦らすのも限界かな?

 

 やりやすいように高さを調整し、ポジションにつく。

そして――

 

バシッ!!

 

「「「「!!!???」」」」

 

 強烈な音と驚く4人。

 

「~~~~っ!!!」

 

 声にならない声をあげて額を抑えてしゃがみ込むゆう。

 

 まぁ、早い話がデコピンである。

 

「いったぁ~い」

 

「あほう。そんなこと出来るか。お花が大好き過ぎて頭の中までお花畑か!?」

 

「だからってここまでしなくてもいいじゃん。ゆうくんのデコピンは痛いんだからねっ!」

 

「それは……うん。すまん。でも、あの頃と違ってアイドルなんだからそういう軽はずみなことはするな」

 

「はぁい」

 

 とりあえず、保冷剤を取りにキッチンへ行った。

マスターにゲンコツを喰らって、色紙を持たされたのは些細なことだろう。

 

 

 

「実は川嶋さんに食べていただきたいものがあるんです」

 

 ティータイムも終わりにさしかかるころ、橘ちゃんが切り出した。

 

「食べてもらいたい? なんだろう?」

 

 そして、橘ちゃんのお姉さんクラブ(仮)の4人はどうして目を背けるのだろう?

 

「はい! これです!」

 

 おもむろにかばんからタッパーに入った何かを取り出した。

 

「これは?」

 

「はい! 私の自信作! イチゴパスタです!!」フンス

 

 イチゴパスタ、いちごぱすた、ICHIGO PASTA、いちご・パスタ

 

 イチゴ――バラ科の多年草。一見種子に見える一粒一粒の痩果がついた花托部分を食用と供される。一応野菜。by グルグル先生。

 

 パスタ――日本語の麺類と同じ意味を持つイタリア語以下略。

 

 うん。一緒になるのが想像つかない。

少し前に黄色のスーツを着た眼鏡を掛けたお笑い芸人がリンゴとペンとパイナップルを合わせたネタをやっていたけど、これはネタじゃないんだろうなぁ~。マジメなんだよなぁ~。

 

「えっと……ありすちゃん。さすがにそれは……」

 

「いただきます」

 

「「「「ええっ!!??」」」」

 

 4人が驚きの声をあげたが、関係ない。出されたものはまず食べる。文句やなんやらはそれからだ。

 食わずに文句? それは出してくれる側に失礼だ。

 

 ――しかし……ふむ、ホイップクリームといちご、それにパスタか――

 

「この麺は?」

 

「はい、イチゴを練りこんだ特製麺です!」

 

 ――意外と手が込んでいる!?――

 

 とりあえず、食べる。感想を言うために手を止めたら、進まなくなる気がする。

 口の中で麺とホイップクリームの濁流が氾濫を起こしている。さらに、所々で爆発するイチゴボムが失いそうになる意識を覚醒させ、気絶すら許さない。

 心が折れかけるも、自分に強く言い聞かせる。

 

 ――何があっても、絶対に止まるんじゃねぇぞ!!!――

 

 

「ど、どうでしょうか?」

 

 緊張と不安の面持ちでこちらを見る橘ちゃん。

近代の錬金術師(りょうりにん)が作り上げた一品を完食。あまりの味に打ち震える。

 

「えっと、これは、主食なのかな? スイーツなのかな?」

 

 まずはコンセプトを尋ねる。

 

「そうですね。主食と考えています」

 

 ふむ。と、するとどうしようか。

 

「まず、イチゴは甘くないものにしたほうがいいね。

 サラダにイチゴ入っていたりするでしょう? あのイチゴも甘くないものだしね」

 

 そもそも、ケーキのイチゴももともとはクリームに合わせて甘くないものを使っているというのを聞いたことがある。

 

「後は、クリームかな。ホイップクリームじゃなくて、生クリームにして、クリームパスタにした方がいいかも。で、イチゴのソースをかけるとか」

 

「なるほど」

 

 真剣にメモをとる橘ちゃん。その向上心は大事だよ。

 

「それか、イチゴをスプーマにしちゃって添えるのもありかもしれない。最もこっちはやったことないけれど……」

 

「逆にスイーツ路線にするなら、ラザニア風のミルフィーユとか面白いかもしれない。イチゴ、生クリーム、イチゴジャムとかを層にしてみるとか」

 

「すごく……勉強になります」

 

 ただ、試食していないので、おいしいという保証はどこにもない。

 

「まぁ、そのあたりは料理教室である程度腕を磨いてからにしようね? 慣れないうちのアレンジは失敗の元だから」

 

「そう……ですね。しばらくイチゴパスタ計画は凍結させましょう」

 

(え!? 普通にアドバイスしてる!?)

 

(と、いうか……完食しましたね……)

 

(その上で、一切否定はせず、やんわりとイチゴパスタの中止を促したよっ!?)

 

(体調、大丈夫でしょうか?)

 

 

 のちに5人が帰ってから、バイトを早退け、マスターに送ってもらって何とか部屋に戻ったのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「大丈夫ですか?」

「面目ない」

 部屋に戻ってから数分後、心配になったのか藍子が訪ねてきた。

「何も無茶しなくても……」

「まぁ、そうなんだけどね。せっかく作ってきたものを無碍には出来ないし、かと言って残すのは失礼かなぁって……」

「それは……そうですけど……」

 シュンとする藍子。

「そもそも、あんなの断れないって。まぁ、結果として中止させることが出来たけどね。」

「辛くないですか?」

「……辛くないって言ったら嘘になるかな」

 ハハッと力なく笑う。と――

「ん」

 俺に向かい合い、両手を広げて受け入れ体勢をとる藍子。

「えっと……」

 何、このカワイイ生物。

「ん!」

 まぁ、言わんとしていることが分かったので、抱きしめる。

「どうですか?」

「あぁ。柔らかくて、暖かくて、いい匂いで落ち着く」

「それは良かったです」

 しばらく抱き合っていたが、フッと意識を手放して、眠りについた。
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