本編とは一切関係ありません
ふと思いついたネタ。本当は某アイドルの名前でやろうと思いましたが自重。
夏にはちょうどいい話ですかね。
いつからだろうか。自分の左手の薬指にある赤い糸が結ばれているのに気がついたのは。
最初は事務所の子が、俺が寝ている間にいたずらで結んだのかと思った。
しかし、誰に聞いても、
「赤い糸? どこにも見えないけど?」
「プロデューサーもロマンチストなんだね」
「お疲れですか?」
と言う答えが返ってくる。どうやらこの糸は俺にしか見えないらしい。
そうなると、何故、今までこの糸の存在に気づかなかったのか。何故、この糸が急に見えるようになったのか。
そもそもこの糸はなんなのか。最初のうちはいろいろ考えて眠れなくなり、仕事中に居眠りをしてしまったこともあった。しかし、いつまでたっても何も起きないので、考えることも馬鹿らしくなり次第に興味を無くしていった。
しばらくして、イベント会場の下見やら企業との打ち合わせのために仙台に出張へ行くことになった。
「うーんと……この会場へ行くには……」
壁にもたれて、スマホで地図を確認していると、
「あ……」
目の前で女の子が人とぶつかったのだろう、鞄を落としてしまい、中身が散乱してしまった。
放っておけずにしゃがみ、拾うのを手伝う。
「あ、ありがとうございます」
「いえ……はいどうぞ」
拾ったものを渡すと、彼女は受け取りながら俺の顔を見て……硬直した。
「? あの……どうかしました?」
「あ、いえ、なんでもありません」
――俺、何かしたかな?――
「あ、じゃあ、俺はこれで失礼しますね」
いたたまれなくなり、俺は足早にその場を去った。
「プロデューサーさん、お客様ですよ」
出張から戻って数日後のことだった。事務員に連れられて来たのは、あの子だった。
「あれ? どうしてここに?」
俺は名前も職場も教えていないはず……
「コレが落ちてましたので」
彼女が机の上に置いたのは、俺の名刺だった。
「あ、え、嘘……落としてた?」
「はい。それで、職場の方も調べて、来ちゃいました」
来ちゃいました、って……何しに?
「それで……マヤをアイドルにしていただけませんか?」
マヤは、読モだったらしいのだが、俺と出会ったその日に辞めたらしい。
更に、事務所の場所を確認するやいなや両親を説得して上京したらしい。とはいえ、未成年なので、親御さんに確認したところ、
「娘の好きなようにさせてあげてほしい」
と言われた。放任主義なのかとは思ったが、後日書類を持っていく旨を伝えた。しかし、都合がつかないらしく、郵送して欲しいと言われた。
説明責任等もあると説明しても、郵送して欲しいの一点張り。仕方なく、上と相談して郵送することになった。
また、通っていた学校の手続きや転居届等の手続きも済んでいて、新たに通う学校もこちらで探すことになった。
マヤは家庭的な子だった。毎日のように弁当を作ってくれたり、ワイシャツのボタンが取れたりすると、つけてくれたりもした。
ただ、時折、『赤い糸』やら『運命』やらスピリチュアルなところもあったり、薬指をジッと見つめたりするなど、少々電波な部分もあった。
それでも、俺は徐々にマヤに惹かれていったし、マヤも(うぬぼれで無ければ)俺を好いていたと思う。
それでも、仕事はしっかりとやり、マヤもメディア露出が増え、仕事が軌道にのりはじめた。
そんな時だった――
「え? マヤが主役ですか?」
「あぁ。監督さんがな、前のドラマの演技を見て気に入ってくれたらしくてな。ぜひ主役にって」
「でも、この作品って……」
「あぁ」
マヤの言いたいことは分かる。キスシーンがあるのだ。しかもねちっこいヤツ。
この監督はそういった演技で一切の妥協を許さないことで有名なのだ。
ただ、その作品で成功すれば将来を約束されたようなもの。
逆に断れば、仕事が入ってこないという噂があるらしい。
「やっぱり……嫌か?」
「……」
マヤは俯いたまま、ピクリともしなかった。
まぁ、演技とはいえ、ファーストキスを捧げなければいけないのだ。年頃の女の子としては辛いものがある。
「何、イヤならば断ってくるさ。仕事が入ってこないっていうのだって、噂だろうし……」
「プロデューサーさん……」
俺の言葉を遮り、マヤが告げる。
「マヤの初めて、もらっていただけませんか?」
彼女からすれば、精一杯の譲歩だったのだろう。
だが、俺は――
「すまない。それは出来ない」
拒絶した。保身にはしってしまった。
日々、有名になっていくマヤに怖じ気づいてしまった。
「ですよね……冗談ですよ」
顔をあげた彼女は泣いていた。無理に笑おうとしているのだろう。困ったような笑いを浮かべて泣いていた。
その顔は、演技を褒められた女優としての顔ではなく、ただ1人の少女だった。
「マヤ……」
「わ、私、帰りますね。お疲れさまでした。プロデューサーさん」
荷物をまとめると、慌ただしくマヤは事務所を出て行った。
彼女が出て行った後に降り出した雨は、彼女の涙のようだった。
しばらくして事務所の電話がなった。
「はい、○○プロダクションです。はい? 警察? 確かにその子はうちの事務所の所属ですが……え? いやいや、ご冗談ですよね? だって、さっきまで、いたんですよ……? そ、んな、そんなこと……」
マヤが死んだ。スピード違反の車が、雨が降っていたこともあり、信号で止まれずに横断歩道を渡っていたマヤに突っ込んだらしい。
あそこで俺が拒絶していなければ、事務所を出る前に引き留めていれば、そもそもこの仕事を断っていれば、むしろその前のドラマの仕事をマヤに回していなければ……
なんで、なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで――
そんな自問で頭がいっぱいだった。
左手の薬指の赤い糸は見えなくなっていた。
その後、俺を心配してか、上は休職扱いにしてくれた。担当していたアイドルは別のプロデューサーに引き継いだ。正直何もしたくなかった。何も考えたくなかった。
マヤを失った悲しみが大きすぎた。
気づけば、部屋はゴミ屋敷のような有様になっていた。
マヤがいないと、ここまでダメ人間になるのかと実感してしまう。
マヤと出会うことが運命だとして、この運命は受け入れたくない。あんまりじゃないのか。
ジッと自分の手を見ると、
「え?」
見えなくなっていたはずの赤い糸が左手の薬指に結ばれていた。
しかも――
「あぁ、ついに俺もおかしくなったのか」
未練がましく赤い糸を信じるから、見えるし、引っ張られる感覚に陥るのだろう。未練と共に断ち切るか。
そう思い、ハサミを手に糸を切ろうとするが、糸は意志を持ったかのように、ハサミを避ける。
そんなはずがあるわけがない。まだ無意識のうちに未練がましく思っているから切れないのだ。
いや、事はもっと単純。ハサミだけで切ろうとするから切れないのだ。
そう思い、口で糸を咥え、切ろうとしたときだった――
カチャリ
玄関が開く音がした。しかし、自分は一人暮らし。一緒に住んでいる人なんかいない。と、なると……
「事務員さんかな?」
さっきまでの無気力状態はどこへやら。玄関へ来客を出迎えに行く。
と、気づく。
あれ?
そもそも、事務員さんならチャイムをならすはずである。
では、誰なんだろうか?
と、その女性の左手の薬指にもアカイイトがあるのに気づいた。
そして、その女性は顔を上げ――
「一緒に逝きましょう。どこまでも一緒ですよ? プロデューサーさん」
『続いてのニュースです。本日午後7時頃、都内のアパートでこの部屋に住む○○さんが遺体で発見されました。
遺体は首を赤い紐のようなもので絞められていて、警察では、自殺、他殺の両方で捜査を進めるとのことです』
「って、言う話なんだけどね……」
「それ、フィクションですよね!? まゆとしては仙台出身って時点で他人には思えないんですけど!」
「……ふへぇ」
「小梅ちゃん!? フィクションですよね!? フィクションって言って下さいよ!!」
「ま、まゆさん。もしかして怖いんですか? も、もし怖いんでしたら、今夜、一緒に寝てあげてもいいんですよ? ボクはカワイイので」プルプル
「も、もりくぼも、1人で寝るなんて、む~り~」
『当お話はフィクションです。私とは一切関係ありません by あの子』
ほらー、怖くなかったでしょ?
そもそもホラーなんて書いたことないですし……。
非難囂々ならば削除する予定です。
ちなみに、構想、執筆2時間ほど。やぁ~深夜のテンションこわいね。さて、今日も仕事なので、2時間は寝ますねではノシ