いつもより長め且つ話が川嶋くんのごとくあっち行ったりこっち行ったり迷子です。
また、投稿していない間にお気に入りが増えていて驚きました。登録いただきありがとうございます。
なんやかんやあった(ほとんど自業自得)二日目の夜。夕食、入浴を済ませ、御館様からのありがたい、ありがた~いお言葉(説教)をいただいた後、就寝時間までのひとときとなったのだが――
「女子の部屋に行こう!」
それは修学旅行生の
「いや、さっき怒られたばっかだろう」
俺はその目の輝きと反比例するようなどす黒い提案を真っ向から否定する。
入浴時に本能に任せて覗きをしようとして、先ほどまで御館様からありがたいお言葉をいただいたばかりだというのに……
ちなみに俺は温泉を堪能していて気づかなかったのでその件における、ありがた――もう説教でいいや――説教は免れたのだが、昼間の件で一緒に説教を受けていた。
「川嶋は分かってない!」
大袈裟……というか妙に芝居がかったように池田が嘆息する。えっ、何コイツ……
「『やってはいけない』そんなことは分かっている。しかし! しかしだ! だからこそ得られるものは何ものにも代え難いのではないか!!」
――その結果、得られるものって説教と変態のレッテルだと思うんだけど――
「そうだ!」
「俺らはこの程度の圧力に屈しない!!」
「そこに! 楽園がある限り!」
――あれ? これって俺がおかしいの?――
俺以外の同室の奴らは、池田の演説に感銘を受け、彼を讃えていた。
人というのは不思議なもので、例えそれが間違いだと分かっていても多くの人が賛同してしまうと、それが正しいものであるかのように錯覚してしまう。
所謂『赤信号 みんなで渡れば 怖くない』である。
「でも、さっきの覗きの騒動で警戒されてるんじゃないの?」
当然、その程度のおいたを先生たちも予想していないわけがない。ある程度の対策はしていただろうが、今回の件を受け、即席ながら警戒を強化されてもおかしくはない。
「まぁな。だが、俺たちはその上をいく!」
キリッと決め顔で言い放つ池田だが、言っていることはゲスい。その決め顔は別な機会にとっておこうよ。
「聞きたくないけど、一応聞いておこう。その計画を」
「そうか。川嶋も聞きたいか。男だもんな~。ゲスめ」
――聞きたくないって言ったんだけどなぁ~。ついでにお前に言われたくはないんだけどなぁ~――
俺の心中を知ってか知らずか……まぁ、知らないんだろうけどさ。
うんうんと頷いている池田。
「まぁ、この計画にはお前が必要不可欠なんだけどな」
えー、勝手に計画に練り込まれているんだけど。許可した覚えはないなぁ。
ポン
「お前も下谷さんのところに行くつもりなんだろう?」
俺の肩に手を置いて田中がサムズアップする。
お見通しってわけなのね……。
ちなみに下谷さんというのは、奈緒さんのことだ。
と、いうのも、話は数時間前。俺がホテルの近くまでプロデューサーさんに送ってもらった後まで遡る。
※
「おっかえり~。奈~緒♪」
「ひゃわっ!? 抱きつくなぁ、ひっつくなぁ、は~な~れ~ろ~!」
プロデューサーさんの車から降りて、奈緒さんのお友達と合流を果たした。
早速奈緒さんは手荒い歓迎を受けている。
これが百合……というヤツなのだろうか。
「も~、照れちゃって~」
「彼氏くんともイチャイチャしたんでしょ~?」
ほれほれ、白状しろ~、と奈緒さんへの追及(物理)を緩めない。
――今がチャンスか――
清水寺で腹をくくったおかげか、誤解を解くチャンスが思いのほか早くめぐってきた。
――清水寺の神様! ありがとう! ――
清水寺の神様――でも、寺だから仏様? まぁ、八百万の神様って言うし、神様だよな今回は神様にしておこう――に感謝した。
「実はそのことなんですg「川嶋-!」」
と、ここで俺の班員が乱入。
「お前、どこ行ってたんだよ! 急に『すまん、急用で単独行動させてくれ』って連絡いれてくるし」
「コンビニ行ったっきり戻ってこないしな」
「ってか、この人たち誰?」
「おやおや~川嶋君、俺たちとの班行動をブッチして、女の子達とデートですかぁ? 男の風下にもおけませんなぁ~」
「風上な。お前は喋るな。バカがばれる」
「んだとぉ!?」
あぁ、もう収拾がつかない……
「ん? この子、神谷奈緒ちゃんに似てない?」
「!?」
「んん? そう言われれば……」
――ヤバい、これはヤバいですよぉ――
「そ、そんなわけないだろ? この人は、下谷さん。うちの喫茶店の常連さんなんだよ。偶然会ってびっくりしたんだよ。ね?」
班員に説明して、奈緒さんにウインクする。お願い、気づいて。
「は、はじめまして。下谷奈緒です。よ、よく神谷奈緒ちゃんに似てるって言われるんですよ」
しどろもどろになりながらも意図を察した奈緒さんは合わせてくれた。
――どうだ? 苦しいか? ――
「あ、そうなの? 知らなかったら間違えそうだよね」
「まぁ、アイドルの奈緒ちゃんがいるわけないよな~」
「いたら大騒ぎだわな」
うん。バkじゃなくて、純粋な奴らでよかった。
「ゆ……川嶋君、ちょっといい?」
奈緒さんが笑顔で手招きする。
笑っているんだけど、無理矢理笑っている表情だ。なんだろう?
「なんでsゲフッ!」
近づいた途端に腹に見えないように肘打ちを入れてきた。
「なんだよ、下谷さんって」
「いや、咄嗟にしてはごまかせたと思うんだけど? 奈緒さんこそまんまじゃないですか」
「咄嗟に偽名なんか出るか!」
「アドリブ弱し……っと」
「あん!?」
小声で言い争っていると、
「お二人さ~ん、離れたくないのは分かるけどそろそろ時間が……ね?」
「川嶋-! 俺らも時間破っちゃうと、御館様の説教と夕飯抜きになっちまうぞ~」
おっと、まずい。ここで誤解を解きたかったが、さすがに俺の班員の前で言おうとすると、かなり面倒くさいことになる。
「じゃあ、奈緒さん、後で伺いますね」
「はぁ? ちょっ!?」
「はいはい、行きますよ~下谷ちゃん」
やっぱり寺だから仏様だったかぁ~。Oh! my god! と言っておこう。あれ? やっぱり神様で良くない?
※
「と、言うわけでお前には俺たちとあの子達の栄光の架け橋になってもらう」
「ずいぶん不名誉な栄光の架け橋があったものだな」
「そう言わずに~。頼みますよ~川嶋御代~」
なんていうか、時代劇に出てくる越後屋みたいになってるぞ。
さて、どうしようか。見回りの時間も分からない。ルートも分からない。そもそも奈緒さんたちの部屋も分からない。
そのかわりバレたらまたも説教。ひょっとしたら反省文とか、学校への奉仕活動を罰則としてやらされる可能性もある。
そうなれば藍子にことの顛末を話さなければならなくなり、藍子からのお説教もありうる……。
ならば、俺がとる方法は1つ。
「俺に策がある」
要は、奈緒さんたちの部屋に入る。そして、罰則を食らわない。この2つの条件を満たせば良いのである。
ならばどうするか。それは――
「失礼しま~す」
直談判すれば良いのである。
「おう、川嶋どうした?」
先生の部屋に行くと御館様と、隣のクラスの担任の山本先生がいた。
「いえ、今日はご迷惑をおかけしてすみませんでした」
「あぁ。まさかお前が迷子になるとは思わなかったがな」
「お恥ずかしい限りで……」
「それで? その件はさっきバカどもと一緒に反省したよな?」
まぁ、彼らは覗き、俺は迷子で重さは違うけどね。
「実は、その迷子の件で、あちらの学校にも迷惑をおかけしたので、謝罪に伺おうと思ったのですが……」
これが俺の作戦である。
御館様に謝罪のためということで、あちらの学校の先生のところへ赴き、謝罪とともに部屋に案内していただく。そして少しお時間をいただき、謝罪とともに誤解を解く。
うん。穴だらけの作戦だな。いくら御館様の好感度が高くても(高いのかなぁ?)、あちらの学校の先生のところへ謝罪しに行けるか分からない。御館様が行っちゃえばすむ話だしね。
それに万が一行けたとしても、それから奈緒さんたちの部屋に案内してもらえるとも限らない。普通に考えたら先生に謝罪して、先生から彼女たちに伝えるだろう。
さらに言えば、時間がもらえるとも限らない。
うん。考えたら考えただけ旗色が悪くなってきたな。もう考えるのやめようか。
「そうだな。んじゃ、今から行ってみるか」
「はぁ!?」
あっさりと許可が出たので、思わず驚きの声をあげてしまった。
「ん? どうした? 謝罪に行くんだろ?」
「あ、いや、そうなんですけど~」
もう少し、こう、一悶着あると思ったから拍子抜けだけど、とりあえず難所を1つ越えることが出来た。
日ごろの行いのおかげだろうか。
「ところで、部屋の外から様子を窺っているバカどもも同行するのか?」
――ハハッ、バレテーラ――
「いえ、俺1人だけです」ニッコリ
「んじゃあ、山本先生、お願い出来ますか?」
「承知しました」
二つ返事で引き受けると、山本先生は部屋を出ていった。そして、廊下で待っていた連中を連れて戻ってきた。
「よし、行くとしよう」
恨めしそうな目で見る彼らを尻目に、御館様と2人、入れ替わるように部屋を出た。
申し訳ないと思わない俺はおかしいのだろうか?
※
俺1人だったら確実に迷子になったであろうルートを通り(実際には別の階に行っただけ)、おそらく1番の関所に到着――
ピンポーン
「な!?」
したと同時に躊躇なくチャイムを押す御館様。早い! 早すぎる!!
――心の準備も出来てないんですけど!?――
そして、すぐさまドアが開けられ、出迎えたのは――
「は~い。あ~! たけだせんせぇ~だぁ~」
添乗員の椎名さんだった。
「あれ? 椎名さん?」
「は~い、呼ばれて飛び出て、結ちゃんです!」
椎名さんが出てきたのも驚きだけど、昼とテンションが違う? 心なしか顔が赤い気が……
「もうお前の担任じゃないだろうが」
「ひっどぉい! 私とは遊びだったのね!」
「人聞きの悪いこと言ってるんじゃないよ!」
――おぅ、まさかの先生と教え子の禁じられた関係が――
「酔っぱらいは後で相手してやるから。上杉先生は?」
「ん~? せんぱいですかぁ~? せぇんぱぁ~い」
部屋の奥に呼びかける椎名さん。
「はいはい。そんなに大きな声出さなくても聞こえてるよ~、後輩」
椎名さんの頭を撫で、部屋の主であろう人が現れた。
この人が――
「どうかなさいました? 武田先生」
ニコリと微笑む、いかにもクールビューティーな上杉先生。『せんぱぁい、せんぱぁい』と上杉先生にまとわりつく椎名さん。
椎名さんの頭を撫でながら応対する様は、宅配便が来たことで騒ぐ犬と、それを宥める飼い主のようだ。
「夜分遅くにすみません。昼間にうちの生徒がそちらの生徒さんにご迷惑をおかけしたので、その謝罪に参りました」
おぉ、ここまで下手に出る御館様初めて見たかもしれない。これが修学旅行の奇跡なのか……っと、御館様が目線で促している。
「えっと、武田先生の教え子の川嶋優也です。この度はご迷惑をおかけしまして、その謝罪に参りました。あの、お口汚しになりますが……」
謝罪を行い、持参した品を差し出す。
「えっ! そんな、もらうわけには……」
「せんぱい! これ塩見屋のお菓子ですよぉ!」
俺の持っている紙袋を見て、椎名さんは気づいたようだ。
これが部屋に案内してもらうための切り札、塩見さん家で購入(これはちゃんと自腹)したお菓子の詰め合わせである。……まぁ、少し値下げしてもらったけどね。
「お前、こんな気遣い出来たのか。俺は気を遣ってもらったこと無いが」
「いやぁ、せんせーならそこまで気を遣わなくても大丈夫かなぁと」
あははと笑ってごまかす。
「え、なおさらもらえないんだけど……」
あちゃー、これはまずかったかなぁ。このままじゃあ、ここで計画終了しちゃうんだけど……
「えー! もったいないですよぉ」
「はいはい、結ちゃんはちょ~っと静かにしようね~」
椎名さんの援護射撃も、上杉先生にとっては酔っぱらいの戯言か。えぇい! ままよ!
「じゃあ、そのかわりと言ってはなんですが、1つお願いを聞いていただけませんか?」
もはや破れかぶれ、謝罪に来ているのにお願いってどういうことなんだろう。
「聞いちゃいましょうよ~、それでこれいただきましょ?」
「はい、お口チャック。一応聞いておこうかしら」
あ、聞いてはくれるのね。
「神谷さん……ご迷惑をおかけした皆さんにも謝罪したいので、10分ほど時間をいただけませんか?」
つまりは、謝罪+賄賂で女子の部屋に入るのを黙認してくれ、ということだ。
「ん、ん~。私が彼女たちに伝える、だけじゃダメなの?」
上杉先生から告げられたのは予想通りの質問だった。
確かに謝罪だけなら先生を通せば簡単だ。だけど――
「謝罪と……伝えなきゃいけないことがあるんです。それは俺自身の口から伝えなければ意味が無いんです」
彼女の目を見てハッキリ告げる。彼女も俺の目から視線をそらさない。
視線をそらしたらやましいことがあると疑われる。そう思い、意地でもそらさない。
「分かったわ。案内しましょう」
やがて、上杉先生が折れた。
「ただし、5分。それしかあげられないわ」
「まあ、5分だったらよほど早「椎名」はい、黙ります!」
椎名さんは何を言いかけたんだろう?
「じゃあ、迷子にならないように着いてきてね」
「……はい」
御館様と椎名さんに見送られ、上杉先生に着いていった。
※
「夜分遅くにすみません」
「いいのいいの。奈緒に会いに来たんでしょ?」
「私たち、どっか行っとこうか?」
「あ、いえ、皆さんにお伝えしたいことがありまして……」
上杉先生の案内で部屋に行き、謝罪をしたところ、快く迎え入れてもらえたのだが、俺からしたらここからの数分間がようやく本番なのだ。
「お? なにかな?」
奈緒さん以外のみんなが気になり始めたところで、俺はカーペットに正座する。
それを見て、明らかに様子がおかしいことに気づいたのだろう。動揺が見られた。
「すみません、俺、奈緒さんとは付き合って無いんです!」
「それは昼に聞いたけど……本当に?」
「はい! 付き合ってません!」
「じゃあ、抱きしめていたのは? あれは何?」
当然のことだが、警戒度が上がった。『友人、神谷奈緒の彼氏』から『得体の知れない他校の生徒』ぐらいだろうか。それ以下もあり得るよな。
「お恥ずかしい話ですが、全く知らない土地で迷子になってしまって、かなり心細かったんです。それこそもう元の学生生活をおくれないんじゃないかと思うくらいに」
見知らぬ土地、どこまで行っても見覚えがなく、知り合いもおらず、頼れる人もいない。連絡手段もない。
「そんなところに奈緒さんが来たことで、救われた気がして、感極まってしまって……」
「な、なるほど……」
「じゃあ、川嶋くんはさ、奈緒のことどう思っているわけ?」
――ここがターニングポイントか――
「奈緒さんは確かに魅力的です。小っちゃくて、素直じゃないけど、優しくて、髪の毛ふわふわだし、常識人だし、どんなボケも拾うし、いじられキャラだし、いじろうとしてもいじられるし、なんやかんや言うけど、面倒見良いし……それに――」
「ちょ、ちょっとストップ!」
「奈緒がオーバーヒート起こしてるよ!」
「にゃ、にゃにいっへんだよ~」
――あ、あれ?――
「とにかく、川嶋くんの気持ちは分かった。そもそも、奈緒から色々聞いてたしね」
――え? そうなの?――
「川嶋くんが喫茶店のバイトだってことも、彼女がいるってことも」
――なん……だと……――
「うん。聞いてた通りの人だね」
「川嶋くんのバイト先行ってみたいなぁ~」
「あ、来ていただけたら最大限のサービスさせていただきます!」
その後、上杉先生がお迎えに来るまでに連絡先を交換。奈緒さんも無事に復帰した。
その後、池田他数名に責められたのはいうまでもない。
「しっかし、まさか許可を出すとは思わなかったなぁ」
「先生としてはダメなんでしょうけど、経験者としては応援したくなってね」
「経験者って……せんぱい、まさか!」
「うん。気になった人のお部屋にこっそり行ったの」
「きゃ~! せんぱいだいたぁ~ん! でも、バレなかったの?」
「あれ? その時俺が見つけて説教した気がするんだが?」
「ふふっ」
「あれ? それじゃあ成功したの?」
「成功したわよ~。一晩同じ部屋にいたわ~」
「あれ? 説教してて、寝てしまって布団に寝かせて、俺は地べたに座って寝たぞ。おかげで尻が痛くてなぁ」
「その人とはどうなったんですかぁ?」
「ふふふっ」
「まぁ、年の差はあるけど、一緒になったわな」
「結ちゃん妬けちゃう~」