隠れ家喫茶ゆるふわ(凍結中)   作:ハマの珍人

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 しばらく空いてしまいましたが、更新します。
 何気に初投稿から1年経ってました。
ここまで来られたのは皆様のご愛顧のおかげです。
 ちょっとした気まぐれで投稿をはじめたのですが、想像以上のお気に入りをいただきました。
 拙い作品ではありますが、これからも楽しみにしていただけたら幸いです。


仕事の量は計画的に

 side TP

 346プロダクション カフェ

 

 

「最近、優也さんの目つきがヤバいんだけど」

 

 加蓮が飲み物を1口飲んでから重々しく口を開いた。

 

「えっと……早苗さん案件?」

 

 さすがにアイドル以前に女の子をいかがわしい目で見ちゃダメでしょう。早苗さんと保護者の藍子を呼んでお説教。場合によっては示談交渉、裁判のち即有罪判決を出さなきゃいけなくなるかな。

 

 私の質問に加蓮は首を横に振って否定する。

 

「どちらかと言えば清良さん案件かな」

 

「愛海が関係してんのか?」

 

 全くアイツは、と奈緒がため息をつく。

もしそうなら裁判すっ飛ばして、即懲役かなぁ。むしろ愛海ともども清良さんから折檻されるかな。

 

 

「実際に見た方が早いかな」

 

 そう言ってスッスッとスマホを操作して目的の画像を見つけたのだろう。他の二人に見やすいようにテーブルに置いた。

 

「うわっ……」

 

「これは確かに清良さん案件だな」

 

 そこには目の下にハッキリとクマが出来、目が据わっている優也さんの顔の画像があった。

 

「最初のうちは小さい子たちも『パンダみたい』って笑ってたんだけどね……」

 

 これはさすがに怖がって近寄らないだろう。

下手したらトラウマものだ。

 

「小梅が喜びそうだな」

 

 冗談のつもりで奈緒が茶化す。

 

「うん……『ゾンビみたい』って目を輝かせてたよ」

 

「え……」

 

 まさか本当のことだとは思わず奈緒もフリーズしてしまう。

これが歩いてる動画ね、と今度は動画を見せられる。

 本人はまっすぐ歩いているつもりなんだろうけど、あっちへフラフラ、こっちへフラフラと歩いている。確かに手を前に出したらゾンビに見えなくもない。被害者が出る前に――

 

『ギャーッ!!』

 

「あ、これは目撃して腰抜かしちゃってる幸子ちゃんね」

 

「「幸子……」」

 

 どうやら思った以上に被害が出ているようだ。

 

「それ、川嶋さんですか?」

 

 そこにバイトをしていた菜々さんがひょっこり現れた。

 

「菜々ちゃん知ってるの?」

 

「えぇ。よくここで響子ちゃんと打ち合わせしてるので。最近は観葉植物と話したりしてますけど」

 

 ――それってかなりヤバいんじゃないかなぁ?――

 

「そもそもどうしてこうなってるの?」

 

 あまりの豹変ぶりに白い粉(意味深)の影響すら考えはじめる。

 

「あたしは文化祭の何かの責任者になったって聞いたな」

 

「え? 料理教室のハロウィンパーティーじゃないの?」

 

「あれ? 喫茶店のハロウィンメニューを考えてるってマスターが……」

 

 3人とも言ってることがバラバラだった。

 

(でも……)

 

(アイツなら……)

 

(全部やりそうな気がする)

 

 元人見知りなくせに、頼られると絶対に断れない。口には出さないものの、3人の総意であった。

 

「そもそもこういう時のストッパーは藍子でしょ?」

 

 保護者兼彼女の藍子には優也さんは絶対に逆らえない。別に藍子が強要しているわけではないのだけど、まず優也さんが断るところを見たことがない。

 意見の食い違いがあっても、最終的には優也さんが折れるのが常なのだ。

 そんな藍子に言われれば、さすがの優也さんも――

 

「ポジパのイベントに行ってなかったっけ?」

 

「あ……」

 

 第一プラン、失敗

 

「夕美さんは? 夕美さんのいうことも聞くんじゃないか?」

 

 夕美――相葉夕美と優也さんは幼なじみだったらしく、夕美と優也さんは本当の姉弟みたいだったとか。

 最近は顔を合わせると、昔のように(本人たち談)仲良くしたい夕美と、少し恥ずかしい(夕美談)優也さんとの攻防戦が行われている。

 

「残念。李衣菜と有香と『秋風』」

 

「あー!」

 

 第二プラン、失敗

 

「じゃあ……蘭子は? 蘭子は優也さんのことお兄ちゃんみたいって思ってるみたいだし、上手く説得を……」

 

「幸子でも怖がる優也(ゾンビ)に立ち向かっていけるならな」

 

「……くっ」

 

 どう頑張っても、『ぴゃあ!?』と鳴き声をあげて震えながら逃げていくブリュンヒルデしか想像出来なかった。

 

「卯月ならいけるんじゃないかな?」

 

「長電話でゾンビ化が加速する」

 

「ダメか……」

 

 その後も彼と面識のあるアイドルが浮かんではシャボン玉のように消えていく。

 

「残ったのは私たちだけか……」

 

「よくアニメで聞くセリフだけど、こんな場面で使いたくはなかった」

 

「正直遠慮したいなぁ」

 

 優也さんをどうこうする前に、私たちが疲れてしまい3人で机に突っ伏す。

 

「まぁ、私たちも付き合い長いからね」

 

「優也を正常に戻すのはあたしたちしかいないな」

 

「じゃあ、『アレ』の出番だね」

 

 妙にノリノリの加蓮。そんなに『アレ』がよかったのかな?

 

 

「え″! アレをするのか!?」

 

 一方でイヤそうな顔をする奈緒。

 

「あれぇ? 奈緒もノリノリだったと思うんだけどぉ?」

 

 加蓮がニヤニヤしながら奈緒をいじる。

 

「いや、あれは一時の気の迷いっていうかだな……その……」

 

「気の迷いで片づけるにはずいぶんテンション上がってなかった?」

 

「あれは……ほら、その場のノリって言うか……」

 

 奈緒も苦しくなってきたのか、かなりしどろもどろになってきた。

 

「まぁ、いいや。私ちょっと準備することがあるから先に着替えてて」

 

「あ、ちょっ! 加蓮!」

 

 奈緒の制止を聞かず、じゃっ、と言って加蓮はどこかに行ってしまった。

 

「どこ行ったんだ?」

 

「さぁ? それはそれとして、お着替えしようか? 奈~緒」

 

「え、本当に?」

 

 イヤな顔をする奈緒をじわりじわりと追い詰める。

 

「やーめーろー! はーなーせー!」

 

「はいはい、人を人攫いみたいに言わない」

 

「事実だろう!?」

 

 奈緒の抗議の声を無視しながら衣装室まで引きずって行った。

 

side out

 

 

 凛さんたちから連絡を受け、何故か会議室にいた。

文化祭の方は、メニューを絞り込んだが、あとは備品のレンタルやらメニューの試作やらが残ってる。

 バイトの方は手詰まり。むしろ通常業務にすら支障が出てる。マスターにはシフトを減らせとも言われてるし、槙原さんにも心配と苦労をかけているレベル。

 事務所のハロウィンの方も放置気味。打ち合わせでも響子さんにかなり怒られている。

 

「おっと……危ない」

 

 少し油断すると、睡魔さんがベッドに引きずり込もうとする状態のため、『翼を授ける飲み物』と『○○ミンだは』は手放せない状態。 用法用量? ナニソレ状態である。

 

 ガチャッ

 

「!!」

 

 と、会議室のドアが急に開けられた。掃除のおばさんでも来たのだろうか?

 

「御用改めである! シン選組だぁ!」

 

 入ってきたのは、シン選組なる2()()()だった。

1人は役になりきってるけど、1人顔が真っ赤だ。

 

「あ、修学旅行のお土産のヤツか」

 

 修学旅行の時に買ったコスだった。

確かあげたとき、凛さんは

 

「あ……ありがと?」

 

 と、何とも言い難いって感じで受け取っていた。

加蓮さんは割とノリノリだったけど――

 

「って、加蓮さんは?」

 

 そうだよ。なにか違和感があると思ったら、加蓮さんがいないじゃん。

 

「さぁ? どこか行っちゃった」

 

 と、凛さんも知らないようで首をかしげる。

 

「えっと、奈緒さんは――」

 

「ご、御用改めである!」

 

「いや、そうじゃなくて」

 

「御用改めである!!」

 

「加蓮さんは――」

 

「御用改めである!!」

 

「……」エー

 

 ――壊れたレコードかな? 最近のは女の子のような見た目をして、しかも赤面までするんだね――

 

 ガチャ

 

なんて現実逃避を始めた頃に再びドアが開いて――

 

「お待たせ~」

 

 遅れてきた加蓮さんが現れた。

でも、よく見ると髪の毛は多少乱れ、顔も少し赤く、息も乱れてる。何してきたんですか!?

 

「どうしたんですか!?」

 

「あはは~。ちょっとね」

 

 尋ねると、遠い目をしながら目をそらした。

体調が悪くなければいいんだけど……

 壊れたレコードから無事に人間に復帰した奈緒さんも

 

「大丈夫か? 救急車呼ぶか?」

 

 と、加蓮さんの周りをグルグル回りながら声をかける。

 

 あ、これ犬だわ。忠犬みたい。凛さんも後ろから奈緒さんを抱きかかえ、

 

「はい、奈緒。ステイ」

 

 って抑えてるし。

 

「本当に大丈夫なんですか? なんなら日を改めて――」

 

「大丈夫大丈夫。むしろ今日の方がいいよ! うん。今日であるべきだよ!」

 

 何故か妙に必死だった。

 

「あ、飲み物。コーヒーでよかった?」

 

「あ、はい。あ、お金……」

 

 カバンから財布を取り出そうとすると、

 

「あ、大丈夫大丈夫。呼んだのはこっちだから」

 

「あ、ありがとう」

 

 年下に奢られるのって気が引けるけど、まぁいいかな。

 紙コップを受け取り、1口飲む。

ブラックは苦手だったけど、最近は眠気覚ましにブラックしか飲んでいない。苦みと酸味が口の中に広がる。

 

「それで話って?」

 

「まぁ、それは座ってからでも」

 

 あ、立ち話で出来るようなものでもないか。

 

 全員が座ったところで、急に睡魔さんがログインした。

 

 ――いや、お帰りいただきたいんだけど――

 

「で、今日呼んだのはね――」

 

 加蓮さんが話しているんだけど、変に声が反響して聞こえる。まぶたもだんだん重たくなってきた。ここで寝ちゃだめだろ。

 

「――さん?」

 

 もはや誰が何を言っているか分からなくなっていき、あっさりと意識を手放した。

 

 

 

「寝た?」

 

「寝ちゃった」

 

 川嶋さんが寝たことを確認する。頬を突いてみても起きる気配がない。

 

「さすが志希ちゃん特製の睡眠薬」

 

「えっ!? 志希の!?」

 

 志希――一ノ瀬志希といえば、346が誇る(?)マッドサイエンティストだ。匂いフェチで、失踪癖があって、気まぐれで……なんか問題児のようだけど、興味を持ったものには執着を見せる天才だ。

 

「うん。でも、ここまで即効性とは思わなかったよ。代償を払っただけあるね」

 

 加蓮は苦笑いした。

 

「代償って……」

 

「うん。かなりハスハスされたよ」

 

 あぁ。だから色々乱れてたのか、と2人は納得した。

 

「さて、じゃあとっとと運ぼうか」

 

 加蓮がまるで人攫いのようなことを言ってのける、

 

「どうやって?」

 

「あ……」

 

 この場にいるのはJKが3人。人数的に考えれば3倍だけど相手は自分達より背が高い上に意識がないから運ぶのも一苦労だ。

 

「奈緒、がんば!」

 

「年上としての意地、見せてね」

 

 加蓮が奈緒に向かってサムズアップする。

凛もそれに便乗する。

 

「いやいやいや! 無理だから」

 

 顔を真っ赤にして手をブンブン振って否定する奈緒。

 

「なんなら加蓮が――」

 

「あー、志希ちゃんからハスハスされた影響で疲れがー(棒)」

 

「じゃあ、凛が――」

 

「え、ヤダ」キッパリ

 

「即答!?」

 

「まぁ、プロデューサー呼ぶんだけどね~」

 

 

 

「ん……」

 

 目が覚めたら見覚えのない天井だった。

あれ? 会議室にいたはずなんだけど。

 

「あ、起きた?」

 

 目線を動かすと、加蓮さんがいた。

 

 ――えっと……どういう状況?――

 

 とりあえず起き上がろうとすると、加蓮さんに止められた。

 

「最近、寝てないんだって?」

 

「いや、そんなことはないですよ~」

 

 寝てるといえば寝てるよ。睡眠時間短いし、授業中だけど。

 

「ふぅ~ん」

 

 THEジト目といった感じで俺をじーっと見て……これ睨んでます? 圧がすごいんですけど。

 かと思えば何かを思いついたようにニヤニヤしだして――

 

「これは藍子に報告「やめてください! それだけは、本当に!!」あ……うん」

 

 そんなことしたら大変なことになってしまう。もう、なんていうか……大変なことに(語彙崩壊)

 

 俺の弱味であることは分かっていたけど、ここまでとは思わなかったのだろう。申し訳なさそうな顔をして加蓮さんはスマホをしまった。

 

「なんでそんなに必死なの?」

 

「え?」

 

 加蓮さんの質問の意図が分からずに聞き返す。

 

「あ、藍子のことじゃなくてね。文化祭とかハロウィンのこととか、なんでそんなに頑張るのかなって」

 

「それは……みんなの思い出に残るようなものにしたいですし、頼まれたからには頑張らなきゃって……」

 

 まぁ、3つ重なっちゃったからそれなりには大変だけど。

 

「でもさ、川嶋さんだけが頑張る必要はないよね。文化祭は学校の行事なわけだし、バイトの方はマスターさんに相談出来るし、料理教室だって響子ちゃんもいるわけだよね?」

 

 ド正論だった。

 

「でも、迷惑かけるわけには――」

 

「ん~、少し昔話しようか」

 

 ――へ? む、昔話?――

 

「あ、昔話って言っても、桃太郎とかじゃなくて、まぁ、私の話なんだけどね」

 

 そう言って加蓮さんは語り始める。

 

 

 

 北条加蓮は病弱な子だった。

幼い頃から入院生活を余儀なくされ、学校にいる時間よりも病院にいる時間の方が長かった。

 ようやく退院して学校に通っても、帰ってきて体調を崩してまた病院に逆戻りということもざらだった。

 最初のうちは心配してお見舞いに来てくれた友達も1人、また1人と来なくなり寂しい思いをしたこともあった。

 そんな時に彼女はテレビで見たアイドルに憧れた。

煌めく舞台で、みんなの前で歌って踊って、笑顔を浮かべるアイドル。

 自分もこんなアイドルになりたい。憧れはいつしか夢に変わった。

 

 それでも現実は非情で、日常生活ですらままならないのに、激しいダンスや歌に耐えられるはずもない。

 アイドルになりたいときらきらした顔で夢を語る彼女に両親は困ったように笑顔を見せることしか出来なかった。

 自分が悪いわけではなく、両親が悪いわけでもない。

分かってはいるものの、行き当たりのない感情を両親にぶつけるようになってしまった。

 

 ようやく退院して、学生生活をおくれる頃にはそんな夢は片隅に追いやられていた。

 

 そんな時に出会ったのが今のプロデューサー。

当時は罵詈雑言とも言える言葉を吐き、体力がないことを免罪符に頑張ることを嫌っていたのだが、彼女のプロデューサーは突飛な行動に出た。

 

「俺もレッスンする!」

 

 彼女の隣で、トレーナーに怒られながらも食らいついてレッスンをしてみせた。さらに通常業務も支障をきたさないように行っていた。

 

 加蓮が体調を崩したときにはその分自らがダンスレッスンを行い覚えた振り付けを加蓮が覚えるまでひたすら踊り続けた。

 

 

 いつだったか、お見舞いに来た彼に言ったことがある。自分は迷惑をかけているんじゃないか、と。

 

 しかし、彼は笑いながら言った。

 

「俺は加蓮に煌めく舞台で輝いてほしい。そのために必要なことをしているだけ。それを迷惑なんて思ったことはないよ。

 それに、迷惑をかけない人間なんていないよ。

必ずどこかで迷惑はかけてる。それと同じくらいどこかで感謝されるようなこともしてるんだ。まぁ、持ちつ持たれつだよ」

 

 納得いかない顔をしていると、

 

「まぁ、大人はずるいってことだ」

 

 とはぐらかされた。

 

 

 

「川嶋さん1人で抱え込む必要なんてないんだよ。川嶋さんがお願いすればみんな助けてくれるよ。

 だって川嶋さんが頑張り屋なのはみんな分かってるからね」

 

「本当にお願いしてもいいのかな?」

 

「もちろん。あ、でも私から1つお願い」

 

 加蓮さんが人差し指を立て――

 

「無理をしないでちゃんと寝ること。病気になったら元も子もないんだからね」

 

 と、いたずらっぽく笑った。

 

「そのお願いは聞かざるを得ないな」

 

 俺は肩をすくめるのだった。




 久しぶりすぎて、何を書くかぐちゃぐちゃになっちゃいました。
 次回は……ハロウィンの予定ですかね。
クリスマスまでにはあげられるようにします。
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