全三巻、好評発売中。
投稿してみた。
※プロローグ
夕暮れの放課後。薄暗い部屋に四人の女子が一つの机に集まって、紙の上に置かれた十円玉に指を置く。そして、お決まりの言葉を言う。
「狗塚さん、狗塚さん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」
すると、彼女たちの指を乗せた十円玉は鳥居から動き、“はい”の上で止まる。それを見た彼女たちは質問の回答を貰うべく、順番に一人ずつ話しかけ始めた。
「狗塚さん、狗塚さん。好きな先輩との恋は実りますか?」
『何の努力もしてない君には無理です。こんな事してないで、自分を磨きなさい』
「そんな……。鳥居の位置までお戻りください……」
「じゃ、次はあたしね! 狗塚さん、狗塚さん。明日のテストの範囲を教えてください」
『君は何をしに学校に来ているのですか。ちゃんと、人の話は聞かないと分からなくなるからね。ちなみに範囲は数学のP148からP160まで』
「い、狗塚さん……っ! ごめんなさいですぅー! 鳥居の位置までお戻りくださいぃ……」
「次は私だー! 狗塚さん、狗塚さん。四谷先輩をご存知ですか?」
『ああ、彼かい。もちろん知っているよ、屋上にいると聞いているからね』
「……狗塚さんは何でも知っているのね」
『何でも知っているけど、聞かれたことだけは言えるよ』
「鳥居の位置までお戻りください」
「最後は私か……。狗塚さん、狗塚さん。怖い話を聞きたくないのですが、どうすればいいんでしょうか?」
『それは僕でも無理だよ。そればかりは、君が慣れるしかないと思うのだけれど、聞きたくないのなら意思表示はした方がいいよ』
「やっぱりかぁ……。鳥居の位置までお戻りください!」
四人の質問が終わった頃には、日が暮れて夜になりかけていた。校庭には人気がなく、教師が巡回を始めている。そこで最後の言葉を言うことにした。
「狗塚さん、狗塚さん。どうぞお戻りください」
しかし、十円玉はずっと五十音の上をグルグルと回っている。そして、順に文字を指し示す。
『君たちは危機感を持った方がいい。これは降霊術の一種で、霊界から霊を呼び寄せる儀式だよ。だけどね、稀に動物霊が降りることもある。手順を間違えば、君たちは憑依されておかしくなるから』
それきり、十円玉は鳥居に戻り、動かなくなる。しばらく無言が続き、四人は顔を青くさせて急いで教室を出ていった。
誰もいなくなった教室に、すうっと半透明な状態のちょっと古い制服を着た男子が現れる。そして、机の上に置かれた紙を49枚に破いて、ゴミ箱に捨てると十円玉を持って消えた。