以上で終わりです。
「ねぇねぇ、狗塚さんって知ってる?」
「それ、何なの?」
「それって、こっくりさんだよね?」
「ええー、それやばくね?」
夕暮れの放課後。ある教室で語り合う四人の女子生徒たちがいた。人がまばらになった学校で、彼女たちは何をするのだろうか。
「それがね、やばくないんだってさ。質問すれば、答えてくれるしアトバイスもくれるって、先輩に聞いたもん」
「やり方とか、分かるの?」
「それは、ばっちしだよー」
「じゃあさ、やろうよ!」
その声により、彼女たちは一つの机を囲んで、鳥居の上に十円玉を置いて指で押さえる。そしてそれぞれ見合って、お呼びの言葉を唱えた。
「狗塚さん、狗塚さん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」
すると、十円玉が鳥居から動き、“はい”の上に動く。
「狗塚さん、痩せたいのですがどうすればいいですか?」
その質問に答えるように、十円玉は五十音の上を滑るように動いていく。
『それは本気で言っているの。痩せたいと思うなら、夜中の間食を止めた方がいいよ。君、いつもそう言っているけど痩せるつもりないよね。それだから振られるんだよ。口先だけの嘘吐きだね』
「……鳥居の位置までお戻りください」
「次は私ね。狗塚さん、三年B組の真壁先輩と付き合いのですが、どうでしょうか」
『君に脈ありだよ。ちょうど明日、長距離の練習があるからタオルとスポーツドリンクの差し入れをして、話があると言えばいいかな』
「ありがとうございます! 鳥居の位置までお戻りください!」
「うわ……。じゃ、私か。最近、変なことが起きるんです。誰もいないのに音が聞こえたり、気配を感じるの……」
『なるほど、君は霊感を持っているようだね。それじゃ、部屋の四方に盛り塩をして中央に居ること。どんな声が聞こえても、我慢してほしい。その時、君は絶対に声を出しては駄目だよ。動物の鳴き声がしたら、心の中で助けてくださいと祈って』
「どうしても、部屋の中央に居ないといけないのですか?」
『別に居なくてもいいけど、助けられない場合もあるから止めた方がいいよ。今日は耐えて、明日のうちに神社へ行って数珠を貰って』
「あ、ありがとうございますっ!! 鳥居までお戻りくださいっ!」
三人目の彼女はそう言って、何度も頭を下げながら泣いている。まさか、自分の命が脅かされていたとは思っていなかったのだろう。
「私で最後ね……。こっくりさんをしても大丈夫なのでしょうか」
『へえ、その質問をするの君で四人目だよ。一応、まだ安心な部類だけど楽観視するのは危険だからね。質問が終わったのなら、すぐにお帰りの言葉を唱えて……憑依されるよ』
狗塚さんの回答は、彼女達の背筋を凍らせるほどの衝撃を与えた。安心だと思っていたら、まさかの発言にびっくりする。
『君たちは知らないと思うけど、狗塚さんは呪いに使われるくらい危険でもあるんだよ。呼ぶのはいいけど、やり方はちゃんと調べて守るように』
「狗塚さん、狗塚さん。どうぞお戻りくださいっ!」
誰かがそう言うと、十円玉は鳥居に戻っていき、動かなくなる。そして、彼女たちは指を離すと顔を見合わす。
「ねえ、この後って分かってるの……っ!」
「た、確か……紙を破って捨てるんだよね!」
「そ、そうそう……っ! 十円玉はどうするんだっけ!?」
「三日以内に使い切らないといけないはずだよっ!!!」
あっと言う間に慌ただしくなり、彼女たちはスマホを取り出すと検索し始めた。色んなサイトを見て回り、やり方や終わった後の手段などを調べる。
そして、紙を破るとゴミ箱に捨てて後片付けをすると、急いで教室を出ていく。
誰もいなくなった教室に、旧制服を着た少年が現れる。ゴミ箱から破られた紙を拾うと、手から出た炎で燃やして跡形もなく消した。
『こっくりさんは誰でもできる遊びだけれど、呪われることもある。実際に呪われて、精神崩壊して狂った例も少なからず実在しているよ。興味本位で実行するのは、オススメしないからね』
口の前に人差し指を立てて、そのまますっと消えた。
了