(あまりサブタイと関係ない内容です)
僕は何でも知っている。こっくりさんとしては、異種なのかもしれない。けれど、術者が何を聞きたいのかは、直前まで分からない。だからこそ、面白い。
さて、校内では髪切りヨウコさんという怪談が広まっている。綺麗な髪を持つ少女が次々と襲われているようで、決まって黒髪だけが切られているらしい。何故、黒髪の少女だけが狙われるのだろうか。生憎と、僕は30年前に殺された時の常識しかないので、最近の流行は未だに分からない。……僕、古臭いのかなぁ。
僕は屋上に現れる。よく知られた有名な怪談は知っているけれど、その他の怪談はイマイチ知らない。これに関しては、情報が足りない。
「――だから、”キツネみたいな顔をしたイケメン”だよ、キツメン!!」
「あぁ! カウンセラーの工藤先生じゃないですか?」
「ほほほう!! カウンセラーの!! 工藤先生ねェ」
『(カウンセラー、ねぇ……。心理学には精通しているから、やろうと思えば洗脳出来るんだよなぁ。まあ、僕が見えないだろうし、関係はなさそうだね)』
「どうかしたんですか?」
「同じニオイがするんだよねェ」
「確かに四ッ谷先輩もキツネみたいな顔ですよね! イケメンじゃないけど!」
「中島……、夜ゼッタイに眠れなくなるおハナシしてやろうか……」
「すいませんでした!!」
「――狗塚、いるんだろォ?」
『おや、気付かれたね。髪切りヨウコさんについて、聞こうと思ったんだ』
「珍しいな、なんでも知ってるんじゃねェのか?」
『そうだね、なんでもと言うと語弊があるけど、ある程度は知っているよ。ただ、僕が死んだ30年前から以降のことは知識がないからね。僕がずっと旧制服なのも、こっくりさんになった時がそうだったし、召喚される度に霊界から降りるから、現界の情報は分からないね。僕の答えられるのは最近の流行以外だよ。今はそれなりに力も上がったから、こうして現れることが出来た、かな』
「なるほどな、じゃ行くぞ。――”ヨウコさん”は自分の黒く綺麗な髪の毛だけが自慢でした。容姿に自信のなかった”ヨウコさん”髪の毛だけが自慢なのに、髪の綺麗な女の子は他にも沢山居たのです。そこで、
ヨウコさんは思いました」
自分よりも綺麗な髪、すべて切ってしまえば、自分が一番綺麗な髪。
「ヨウコさんは夕暮れの学校で、綺麗な髪の女子生徒を次々と襲いました。――では、髪の毛さえ差し出せば助かるのでしょうか? そうではないのです。ただ切ったのではまた生えてくる。彼女はそれが許せなかった。だから持っていく、頭ごと」
僕はヨウコさんを聞き終え、少し考える。この怪談、そういえば別の学校で聞いたことあった。似た内容だけど、概ねはその通りである。ただ、包丁だったけれども。
その日、校内を一つの怪談が広まった。二年の女子生徒が、誰かに鎌で髪を切られたという内容で。
『――先生が一人、連れ去られたね。長い綺麗な黒い髪の女性だよ。ごめん、場所は分からなかった』
僕はそう言うと、駐輪場を見つめる。倒れた自転車、周りに散らばる荷物とバッグ。それを集めようとする教頭の姿。
「ほぉ、髪の長い。嫉妬深い”ヨウコさん”の仕業かねェ……」
さて、怪談も聞けたことだし校内を彷徨っていよう。工藤先生のことも気になるからね。好青年を思わせ、キツネのようなクールな顔立ちをしていて、いつもカウンセリング室に駐在している。外部から来ていただいた先生とあるので、それなりに時間に余裕はある。僕は壁を通り抜けて、カウンセリング室に入った。
「おや? 君はこの学校で流行っている狗塚さんだね」
『そうですよ。それがどうしましたか』
「そう。それじゃ、関係はあるの?」
『それについては、是であり否と。呼び出した皆の後押しをしただけ、それ以降は関係ないよ』
「それなら――協力してくれないかな?」
『別に構わないです。だけど、お還りを願われたらどうにも出来ない。それでもいい?』
「仕方ないね、それでもいいよ」
僕は一礼すると、そのまま壁を通り抜けて戻る。どちらの味方でもないし、敵でもない。中立と言えば聞こえはいいけど、ただの優柔不断だし。それに工藤先生には言ったけど、僕もお還りを願われたら必ず戻される。こっくりさんの一種だから、別に狗塚さんと言われなくても送還されてしまう。こればかりは、どうにもならない。しかし、まだ呼べば来れるけど、いつ召喚されるか分からない。僕を含めたこっくりさんは、低俗霊を召喚する儀式だと呼ばれている。どこにでもある紙と十円玉で、簡単に呼べる怪談だ。
まあ、この話は置いておこう。今、僕は屋上で四ッ谷と向かい合っている。
「――お前、何か隠してるなァ?」
『隠しているけれど、それは答えられない。だけど、オマケとして一つだけ言ってあげる。今回のヨウコさんと、ゴミ捨て場の事件は関係ないよ』
「あぁん? それはどういうことだ」
『ヨウコさんは、自分より綺麗な髪を持つ人に嫉妬しているんだから、背後から鋏で切った。けれど、鋏で人を切るのは難しいし、綺麗に切断できない。それなら、特定の部位にフェチを持つ人がいれば?』
「――なるほどな、そういうことか」
『それじゃ、僕は準備があるから失礼するよ』
そう言って、屋上から姿を消した。といっても、いつもの桜の下だけど。そういえば、都市伝説的な形で語られるのだけれど、桜の木の下には死体が埋まっていると言われている。火のないところに煙は立たないと言うのだから、実際にあったんだろうね。誰が言い始めたのか分からないけど、怪談としては面白いと思う。まあ、死体が腐れば栄養になるかもしれないけど、それでより綺麗に咲くとは言えない。
さて、この話はこの辺で止めておこう。語りきれなくなるし、そもそも僕は信じていない。大方、死体を埋めている所を目撃して、広めた結果がこうなったんだろうしね。僕が準備しているのは、校外に出られるようになりたいから。前にも言ったのだけれど、僕は学校に縛られているから校外に出ることはできない。一応、僕も霊ではあるけど霊とは言えない存在でもある。死んだ時点で輪廻転生に回され、生まれ変わるはずが怪談に組み込まれたのだ。おかげで、色んな制約に縛られ、人を怖がらせないと存在を保てなくなっている。この辺は神でも同じで、そこに信仰か恐怖の違いがある。人々の信仰で力を得る神と、人々の恐怖で力を得る妖怪。似ているようで、似ていない。
怪談は区別としては、ほとんどが妖怪と言っていいモノである。もちろん、人から神になったように、人から妖怪又は怪談になるという話も実際に確認されているのだ。
『今の僕は地縛霊みたいだよね、場所に縛られている辺り。でも、校外に出るにはどうすればいいのだろうね……ああ、彼に話したアレがあったか』
そこで僕は四ッ谷に話した儀式の道具を思い出す。こっくりさんで使われた十円玉は、マーキングの役割を持つ。前にも言ったのだけれど、こっくりさんをした後に紙と十円玉を始末するわけを。紙については、別に害があるわけではない。ただ、十円玉は三日以内に使用しなければいけない理由を、君たちは知っているだろうか。
儀式に使われた十円玉には、目印という役割が持たされている。大抵はその場ですぐに、突然、様子がおかしくなるからだ。精神が狂って、言い方が悪くなるが“キチガイ”になる。これを君たちは狐憑きと呼ぶ。こっくりさんに参加した人たちも、後から次々と恐怖に怯え、狂っていく。
さて、ここからが本題となる。三日以内に使い切らず、持ち続けているとどうなるか。それは、十円玉を目印に霊がやってくるのだ。こうなったら最後、どうにもならなくなる。何故なら、十円玉を手放すまで霊は憑いてくるから。だが、手放した十円玉による被害は何も出てこない。これに関して、僕は何も知らない。
十円玉を媒体にすれば、僕は校外に出られるはず。試してみようか。