暖かい目でよろしくお願いします。
皆さん、こんにちは。
私はマシュ・キリエライト。
ひょんなことからサーヴァントと融合したデミ・サーヴァントです。
そして、
「フォー!! フォフォーーー!! マーリン・ピックアップ・ガチャが来ている!!」
それは一年に一度あるかないかの運命の出会い。
「俺の読みどおりだ!! マシュ!! 言ったとおりだろ!!」
そんな奇跡に歓喜している先輩がいた。子供みたいに、はしゃぐ先輩がいた。先輩が手を振ってきました。意味がわかりません。一応、手は振り返しましたけど。
「石溜めといて良かった~!! 300個!! 100連!! 今日この日のこの時のために頑張って集めた甲斐があった~!! コイツさえカルデアに来てくれたら勝ち組なんだ!! コイツさえパーティに組み込めば特異点の攻略も捗るんだ!! だから、是が非でもお願いします!! 何卒、お願い致し申します!! カルデアの希望の光になってくれ!! ポチっとな………………………ッ!!」
先輩の名は藤丸立香。
一般人男性。
年齢:16歳。
血液型:B型。
性格:マイペースで我が強い。
最近、女難の相により女性不審に陥りがち。
そんな彼は、焼却された人理を修復するため、未来を取り戻すべく特務機関カルデアに選ばれた48人の内の1人、そして、ただ1人生き残った悪運の強いマスターである。
でも、テンション高めで、私ちょっとついていけてません。
「あ、ハズレ。メドューサさん、いらっしゃい。まぁ、10連だしな、これからだよな」
先輩。嘘でも、ハズレとか言ってはいけません。石にされても知りませんよ。
「20連目。ブーディカ・ママ、お久しぶりですねー」
先輩。握手が雑です。ローマ以来の再会なのですが……胸に目がイってるのも減点です。
「30連目、そろそろ金鯖来て下さいよ~。マーリン来て下さいよぉ~。キャスター枠!? しかし、メディアさんだ。しょんぼり、あ、ウソですよ。うそうそ、超うれしー」
先輩。心に篭ってません。嘘でも、もっと喜ばないと……せっかく召喚に応じてくださったサーヴァントに失礼ですよ。
これも先輩の悪い癖です。
「40連目、召喚サークルが光った!??」
召喚システム・フェイトが金色に光るとレアなサーヴァントが召喚される仕組みです。
星5サーヴァントが召喚される演出には虹色に光ることがあるそうですが、まだ見たことはないです。はい。
しかし、
「バーサーカ!? 大事なことだからもう一度言うけど、バーサーカだとっ!? 俺が欲しいのはキャスターだ!! わかるかね!! キャスターが欲しいのー!! バーサーカはいらないんだワン!! 痛いのだワン!?? 噛むな噛むな!! 実は俺、タマモキャットも欲しかったんだ!!」
寧ろ、先ほどのお三方に殴られなかっただけでも、それこそ奇跡かと。
仮にも召喚されるサーヴァントは古今東西、時を越えていくつもの時代に名を馳せた英雄たちなのですから、先輩はもっと相手へ敬意を払うことを覚えた方がいいです。
これは教育が必要です。ブーティカさんとか喜んで協力してくれそうですね。
「さあ、気を取り直して50連目だ…………………………………おいおい、俺のカルデアは10連で一体のサーヴァントしか召喚に応じてくれないのかよ!? あぁ、牛若丸ね、知ってる知ってる…………………………………………すーはー。やべ、石無くなってきた」
徐々に焦りの色を見せる先輩。
ちらっ、ちらっ、とこちらに振り返る先輩の挙動不審さはいつものことだった。
「60連目は百貌のハサンか。はいアウトー!! ぷぎゃ!?」
はい、百貌さんから鼻フックいただきましたー。当然の報いです。
「な、70連目だ……………おい、マーリン………頼むぞ、マーリン………………………いや、マーリンじゃなくてもいいや。男だったら誰でもいいや」
先輩、それは聞き手が間違えると誤解されかねない発言かと!!?
誤解されやすい先輩の変わりに代弁しますと、先輩は男性サーヴァントを召喚したいだけなのです。
「でも、やっぱりマーリンが欲しい。君に夢中~セパセーン……と、ほら!! ヤバイ!! 本当にヤバイ!! 来た!! 来た来た!! キャスター枠!! これは勝った!! 金鯖!! フォーーーーーーー!! ニトクリスゥゥウウウウウウウ!!?」
ズコーッ、と先輩は大袈裟にこけました。
別にお笑いを取るとかそういうわけでもなく、純粋に? 素でと言いますでしょうか。もうそれは本当に予想外のサーヴァントの召喚にズッコケるしかなかったようです。
さて。
顔を真っ赤にしてぷるぷる震えるニトクリスさんを他所に、先輩は何かに取り憑かれたかのようにガチャを回していきます。
「あ、マシュ。ATM行く準備しよっか。俺の財布用意しといて」
先輩、カルデアにATMはありません!
皆まで言わずもながら、『外』も世界が消失されてますので近くのコンビニまで足を運ぶこともできません。
そもそもここは年中吹雪に覆われた標高6000mの山なんですけども。
さあ、気を取り戻して、80連目。
「80連目。ははっ、エウリュアレか。いえ、鼻で笑うなんてとんでもない。貴女はいつ見てもお美しい……ッ!!」
怖いもの知らずな先輩。
時にはその無謀さも必要なのでしょうか。私にはよくわかりません。
「90連目…………………あれ? 金鯖なのに涙が出てきた。ジャンヌさん、ハンカチありがとね」
先輩。神引きしているんですけどね。
お久しぶりです、ジャンヌさん。フランスではたいへんお世話になりました。
そんなジャンヌさんが先輩の涙に戸惑い、こちらに説明を求めてきました。他のサーヴァントの方々も先輩を放置して私に詰め寄っては説明を一から要求してきました。
後輩だから仕方がありません。
人理を修復するために共に過ごしてきた時間が一番長い私の役目でもあります。
ため息のひとつぐらい出してもバチは当たらないでしょう。
あれです。
先輩は男性サーヴァントが喉から手が出るほど欲しいだけなんです。
そう告げたら皆さん、顔を引きつってました。
あ、ホモじゃないですよ、とフォローはしませんでしたけども。
さあ、ラスト100連目です。
もうオチは見えていますが、先輩は諦めていないようです。
「俺は諦めないぞ。何故、最後の10連で諦められる? ここまで頑張ってきたんだ。諦めれられるはずないだろうが。いつだってそうだっただろうが。苦しい時、辛い時、ピンチの時、何もかも投げ出して死んで楽になりたい思う気持ちもあったけども、俺は結局諦めなかった。だから、今の俺があるんだ。絶望のどん底から這い上がってきたんだ。今までもこれからも……そうさ、もう希望しかないじゃん!!」
くどいので早く回してください。
諦めない姿勢は大事ですが、できればガチャ意外でお願いします。
「マーリン、カモン!!」
オチがあれなので先に言っておきますね。
先輩の本当の望みはマーリンじゃなかった。
先輩が切望しているのは男性サーヴァントなら誰でもよかった。
とにかく男性サーヴァントがカルデアに来てほしかった。
そうじゃないと、ここカルデアがさらに魔境と化すから。先輩はそれを危惧して、抗うことのできない運命に必死に抗い続けただけなのです。
しかし、先輩がいくら抗っても男性サーヴァントもマーリンも出ない。
召喚に応じるのはいつも女性サーヴァントのみ……
「………」
「………」
金鯖。クラスはキャスター。
しかし、先輩は喜びはしなかった。
何故なら、ニで始まってスで終わるサーヴァントだったから。
「………」
「………」
口を一文字にした先輩と口を一文字にした女性サーヴァントが対峙する。
「………」
「………」
真顔の先輩と真顔のファラオの視線が交差する。
「………」
「………」
長い沈黙が続き、それを先に破ったのは先輩でした。
「お~の~れ~ニトクリスゥゥゥウウウウッ!! マーリンを寄越せぇええええええええええええええええっ!!」
「こ、ここここの不敬者ー!! そんなに私のダブりが不満なのですかー!? 私、自慢じゃありませんが一応周回のできるファラオですけどー!!」
私は確信しました。きっと先輩たちは仲良くやっていけるでしょう。なんたってニトクリスさんの宝具レベルが2に上がるのですから……
2人が仲良く取っ組み合いに発展し、頃合を見計らっては、あとはニトクリスさんに先輩を任せて、私は他に召喚されたサーヴァント方をカルデア内へ案内するのでした。
魔の桃源郷カルデアへ、ようこそ。
そして、これからも先輩の観察は続くでしょう。
まる。
ご質問、ご感想等あれば、カルデア窓口まで(>_<)