天使―――。
それは翼が生えているアレです。
天使―――。
それは神の使い。
或いはヒトが作りだした偶像。
もしくはヒトの願い。
または希望……
神代が終わり人の時代になり神々は姿を消しました。
だから、神は天使を使い人々とコンタクトを取ろうとしたのかもしれませんね。
神の存在は信じるのに天使の存在を否定することはできません。
天使―――。
カルデアで天使といえばあのヒトですよね。
白衣に身を包んだ天使。
クリミアの天使。
先輩曰く、戦慄の天使。
ですが、それも踏まえて素敵な女性です。
では、ナイチンゲールさん、先輩のお尻をどうにかしてください。
「婦長、婦長~」
「はい、私はここにいますよマスター」
「あぁ、ありがたや~。おめーさんの手は冷たいが心がホカホカするんじゃ~。と、とにかくケツがいて~んでよぉ、どうにかしておくんなせい」
「あぁ、これは重傷ですね。ここまで絞まりが悪いと排便も垂れ流しの末路を辿るでしょう」
「そんなのおらは嫌だ~……っ!?」
「まったく、どうしたらこんな開き方に……あれほど毎晩イジるなと言ったでしょうに」
「いやいや、毎晩どころかクソしてケツ拭くしかしてねーんですけど!?」
「ウソおっしゃい……」
「いやいや、何その反応? その目は冷た過ぎません?? ねぇ、婦長。田舎っぺキャラやめるからちゃんと聞いて。真剣に聞いて。俺、イジってないからな??」
「あぁ………指じゃ物足りなくなったのですか。その気持ちはわからなくもないです」
「おい誰かこの婦長を止めろ……っ!! 哀れな子アザラシを見る目もやめろっ!!」
先輩、ナイチンゲールさんは
「そもそもロマンの奴はどうしたんだ? 俺は婦長じゃなくロマンを所望する!」
「マスター、やっぱりそっちの気が……」
「ちげーよ、俺のケツの一大事だぜ? 医療トップに見てもらうのが妥当だろ?」
「確かに一理ありますがドクターは現在、生牡蠣を大量に食べて絶賛ゲリです」
「ロマーン!!?」
「ではダ・ヴィンチ女史に助力求めますか?」
「婦長、貴女だけが頼りです……っ!!」
「なら黙って私に全てを委ねなさい」
「お、おう……」
天使とは、美しい花をまき散らす者でなく、苦悩する者のために戦う者である。これ、ナイチンゲールさんの言葉です。憧れて痺れますよね。
「では、まずはケツを切開しましょうか。マシュさん、メスを……」
「何故に……ッ!!?」
ナイチンゲールさんにメスを要求されましたが、流石に渡すことはできません。
命拾いしましたね、先輩。
「ケツを切り開く必要はないと俺は思うんだけどな!!」
「いえいえ、マスターは発想が貧相だから困ります。ここは一度切って縫った方が治りも早いというものですよ」
「そ、そんなもんか?」
そんなもんでしょうか……早く治療できるなら渡すのもやぶさかですが。
「いや、やっぱりおかしいぜ。たかがカンチョー如きで開いたケツにメスを入れるのはおかしいぜ??」
「そのたかがカンチョー如きでマスターはケツがヤバいんでしょうが!! だから私はケツを引き裂いてでも治してみせます!!」
「ちょーいちょいちょい本気で待て!! 引き裂くとか考えちゃいけねーよ!! マジでこえーよ!!」
「マスター。私はマスターのために言ってるのです……だというのに、あれは嫌だ怖いから嫌だとはなんですか!! 本気でおケツを治す気はあるのですか!!」
「え、なに、俺が怒られてるの? おかしくね??」
先輩のためを思っての言動ですよ。
ナイチンゲールさん、やっぱり良いヒトです。
「まったく……貴方は駄々をこねまくる子供ですね」
「だってまだ未成年だもーん」
「ふんっ」
「あだ、婦長に殴られた……っ!?」
「はぁ、仕方ありません。治療するのにも看護婦と患者は信頼関係がなくてはなりません。なので、もう少しお話してみましょうか」
「………」
手術台にケツを突き出して伏せた先輩と、その正面に椅子を置いて座りなおした婦長が対面しました。そして、私は先輩の背後に回って、お尻丸出しの姿を撮っておきましょうか。
「ふっ、対話したって無駄だぜ婦長。俺のケツは1㎜たりとも切らせん」
「何を格好つけて言う事じゃないでしょうに。痛いのが怖かったら麻酔撃ちましょうか?」
「そういう問題でもねえ」
「ならどういう問題が残ってるのでしょう? 最早、貴方が大事に守ってきた貞操は奪われたのですよ」
「ごふっ………」
「本当は男性サーヴァントに捧げたかったのでしょうけど諦めたらどうですか?」
「婦・長・は・何・か・誤・解・し・て・い・る」
「私が誤解? そんなはずありません。確かに私は聞きました。とあるカルデアスタッフの方から、いつも熱い視線を感じるって」
「本当に誤解されてるな!!? 俺をゴマアザラシのタマちゃんだと間違って襲ってきた獰猛なシャチ共から助けてもらおうと、たまたま通りがかった奴らにアイコンタクトしただけだっつうの」
「何故にタマちゃんなのです?」
「例えはどうだっていいだろ。それよか誰だよ、誤解してるそいつはぁ……」
「それは言えません」
「いや言えよ。令呪使うぞコノヤロー」
「マスターのケツにメスを入れさせていただけるなら」
「なら言わんでよし。あとでスタッフ全員に言って誤解を解けばいいだけの話だ」
「ちっ、いらんことを……」
「婦長が舌打ちしてたら俺との信頼関係を築くなんて夢のまた夢だな。ふはははー」
「ムカッ………!!」
ナイチンゲールさんも失策ですが、先輩もそれでは困るのでは?
「そもそもです。そもそも、貴方が子供たちにカンチョーごっこを教えなかったら済んだ話では?」
「………」
ナイチンゲールさん、もう過去の過ちを掘り起こすのはやめてやってください。もうどうしようもないことですよ、それは。
「いえ、ここははっきり言っておかないとマスターのためになりません」
と、言いますと……??
「お昼からどこぞの人妻サーヴァントとお楽しみしていた所をうっかりジャックちゃんに見つかり、見苦しい言い訳にカンチョーごっこをしていたと言ったのが失策でしたね、とでも少し言い方を変えてみましょうか」
「ごはっ……」
もう弁解の余地もありませんね、それは。
私の知らないところでそんなイベントが起きていただなんて! こんな大スクープを撮りこぼした私はなんてポンコツなんでしょう!!
それにしても、その人妻サーヴァントが誰なのか気になります!!
先輩、相手は誰ですか?
「マスター、白状したらどうなのです……?」
「ふっ、なんというか取り返しのつかない情熱的なお昼を過ごしてしまった。このぐだ男、あの日のことは墓場まで持っていくだろう」
いや、何を言おうともサイテー野郎には変わりませんが……
「まぁ、マスターの気持ちも察してもうこの件に関してはこれ以上は追求しません。ですが、次からは……その、ドアの鍵はロックしておくように。うっかり私まで参戦しかねませんから///」
「………」
あ、先輩のライフが0です。
ナイチンゲールさん……貴女ってやっぱり凄い人ですね。尊敬します。
「とにかく、マスターの自業自得でそんなケツになったのですから、私が責任もって切らさせていただきます!」
「切らせん!」
「切ります!」
「いやじゃー!」
「じゃあ、こうしましょう。なけなしの策ですがボラギノ〇ルを塗っときましょう。それで様子みましょう」
「そ、それで……治るのか?」
確か、あれは痔に効く薬なんじゃ……口に出して言いませんが。
「マ、マシュは……なんで笑ってるんだ??」
別に……私は笑ってませんよ……ぷふっ。
「ふ、婦長……それって本当に効くのか?」
「さて、どうでしょう」
「おい」
「ですが、試してみる価値はあるとは思いませんか?」
ないです。
「塗って、数日様子見て、もし治らなかったら、その時はお覚悟を……」
要するに先輩はこの間に他の策を見つけてお尻を治さなくてはならない、ということです。
ナイチンゲールさんの言葉を信じるか。己自身に問いかけるのか……見ものですね。
さて、あとはソレを患部に塗って、今日の診察はおしまいです。
「ど、どうした婦長?」
「……………………………」
ナイチンゲールさんがフリーズしています。
手に持ったボラギを見つめています。
なにやらよからぬことを考えてそうな顔です。
「これ、中へちゅうっと注入することもできるんでしたね」
「は?」
「いえ、マスターのケツの症状から察するに外を塗るだけじゃ効果得られないんじゃないかと思いまして」
「塗るだけで十分だろ?」
「ですが、中も相当ダメージいってるはずです。これ一本で足りるかどうか……」
「いやいや、そんな深刻そうな顔しやんとって!?」
「まぁ足りなければ足せばいいだけの話ですしおすし」
「婦長はおすしとか言わないからな!?」
「私にツッコんでくるだなんてあの日の続きですかマスター」
「そ、その話はやーめーろーーー!!」
「ふっ隙あり……っ!!」
「ぎょえええええええええええええええええっ!??」
とりあえず、一本いっときますか先輩。
ご質問、ご感想等はカルデア窓口まで(>_<)