先輩、ATMはカルデアにありません!   作:れべるあっぷ

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邪竜百年戦争オルレアンをクリアしていないマスターはネタバレ注意。


先輩と竜の魔女EX

 突然ですが、先輩は家出をするそうです。

 

「もうこんなカルデアなんて家出してやる!!」

「は?」

 

 これを言われる度に「は? 何言ってるんだコイツ」とため息しかでません。

 

 毎度毎度のことです。

 

 先輩の悪い癖です。

 

 最早、持病と言ってもいいでしょう。

 

 ダッダッダッと先輩は私の横を通り過ぎて廊下を駆けて行きました。

 

「ちょっと待ちなさいよ、まだ話しは終わってないわよ! それにアンタ、ここ以外に行く宛とかないんでしょ!? 戻ってきなさい!!」

「誰が戻るかバーカ!!」

「子供かアンタは!!?」

 

 初めて見る方は皆口を揃えてびっくりされますよね。

 

 だだっ子の如くもう姿が見えなくなりました。

 

 特異点よりもめんどくさい問題です。

 

 一体全体今度は何が原因で喧嘩したんですか、ジャンヌ・オルタさん。

 

「私は何も悪くないわ。くだ男が私を無視したのが悪いのよ」

 

 痴話喧嘩もホドホドにしてほしいものです。

 

 さて、ジャンヌ・オルタさんに話を聞きながら管制室へと向かいましょうか。

 

 ドクターがいません。

 

 代わりにダ・ヴィンチちゃんがいました。

 

「ロマニならシャトル積み上げ記録に挑戦中だよ。ほら、バドミントンの打つ羽のやつ。あれを確か1000個積み上げるのを目標にしていたなー。だから、代わりに私が要件を聞くよ」

 

 最近ドクターの使えなさすぎが目につきます。先輩に影響されたのでしょうか。

 

 弛んでます。

 

「どうせ、アンタが今回の黒幕でしょ?」

「まだ事件すら起こってないのに黒幕扱い!? おかしいよね、それ。このジャンヌは絶対おかしい!!」

「日頃の行いでは?」

「マシュも辛辣!? あ、いつも通りの展開だ!!」

「なら白状してください」

「いや、白状も何もぐだ男くんをレイシフトさせただけだから」

 

 家出にレイシフト使わせないでください。

 

「アイツ、サーヴァントも連れないで家出したの!?」

「咄嗟のことだったから(面白そうだったから)仕方ないよね」

「格好の餌食じゃない!」

 

 ジャンヌ・オルタさんは心配なんですね。

 

「べ、別に心配してないわよ……まだ許してやってないし、だけど、アイツがいなくなったら私の存在事態消えてしまう訳だし? これはアイツじゃなく自分の心配してるの!!」

「「はいはい」」

「うぐっ、二人揃って見透かした目は何なのよ!?」

「じゃあ、先輩を呼び戻しに行ってきてください。宜しくお願いします」

「今回は邪ンヌ回かー。私だって、いつかメインヒロイン宜しくお願いします」

 

 ダ・ヴィンチちゃんのお願いはひとまず置いといて。

 

「あれ、私1人だけ? アンタ達は?」

「私はぐだ男くんのバイタルをチェックしないといけないからパス~」

 

 私は面倒……もとい、遠慮しときます。

 

「今めんどくさいって言わなかったかしら?」

「邪魔者は退散って言ったんですよ。邪ンヌさんは先輩と仲直りしてきてください。まだ喧嘩の途中でしたよね?」

「あっ……うん、そうね…………」

「よし、決まったね。ほら、行った行った。レイシフト先は……」

 

 先輩の家出先はフランスでした。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 ここはフランスにある、とあるバー。

 

 邪竜百年戦争が終わり修正されつつあるフランスです。

 

 修正されつつある状態を維持している特異点です。

 

 そんな特異点で、ひっそりとこじんまりとしたバーに先輩はいました。

 

『だから~邪ンヌが悪いんだって。こっちは忙しいっつってんのに邪魔してきた邪ンヌが悪い』

『それはあの子が構ってほしいからじゃないかな?』

『いやいや、エリちゃんのライブ前日に俺がどれだけ神経質になってるかわかってる? アイツの歌聞いたことないからそう言えるんだぜ、デオン』

 

 先輩、やっぱりそっちの気が……

 

 あ、いえ、デオンさんは女性にも男性にもなれるサーヴァントです。

 

 まったく、先輩は……家出してレイシフトして何処へ逃げるかと思えばフランスで小汚ないバーで性別不明なサーヴァントと逢瀬して太ももをスリスリしてもらってるとかセクキャバですかー!?

 

 ちなみに、エリザベートさんの歌を聞くと世界が3つぐらいぼやけて見えます。

 

『マスター! カルピスピーチをソーダ割のロックで!』

『もう、ホドホドにしときなよ?』

『これが飲んでいられずにいられるかってんでいっ!』

『ソーダで割ったりしてるけど、ただのジュースだよね』

『うるせーやい!』

『まあまあ、今日ぐらいはいいじゃないでしょうか。私はジャンヌゥの話しをもっと聞きたいですから』

 

 ちなみに、バーのマスターはジルさんです。

 

 目玉が飛び出てるジルさんです。

 

 いくら叩いても復活するジルさんです。

 

 カルデアと違って特異点にはジルさんぐらい、いますよ。

 

『そう、わたくしが「お義父さん、目玉飛び出しているから明日参観日だけど来なくていいからね、と言われたけどこっそりお忍びで行ったらバレてしまい口を利いて貰えなくなる」ジル・ド・レェでございます!』

『いきなりどうした、頭打ったか?』

『いえ、唐突ですが改めてカルデアのマスター・ぐだ男に自己紹介しなければと思いまして』

『そんなことよりピーチソーダのロックまだか?』

『おっと、失礼。はい、こちらがカルピスピーチのソーダ割ロックでございます』

『ほほう。俺の注文を間違えずに出したか。coolだ』

『お褒めにいただき恐縮千万』

 

 先輩が久しぶりの男性サーヴァントに興奮しています。

 

 イキイキしています。

 

『しかし、珍しい組み合わせだよね。偶然、私が居合わせていなかったらどうなっていたやら』

 

 はい、デオンさんの言う通りです。

 

 ジルさんはフランスで敵対していた黒幕です。聖杯に願って特異点を作り出した張本人です。しかし、先輩によってその野望は消え去さりました。

 

 贋作騒動もありましたし、少なからずとも因縁があります。

 

 オルレアン攻略をヌルゲーと言った先輩を恨んでいてもあってもおかしくありません。

 

 デオンさんがその場に居合わせていなければ、下手したら殺されていたかもしりません。

 

 嫌がらせに毒入りジュースの1つでも提供しそうです。

 

 まあ、先輩は毒で死なないチートですけど。

 

『おほほ、確かに因縁のある好敵手ですが、マスター・ぐだ男を殺してしまえば二人のジャンヌゥのお話しが聞けなくなります』

 

 なるほど。

 

 人理焼却はジルさんにとっても死活問題になったということですね。

 

『今度、連れてきてやるよ』

『おほほ、是非ともお願いします』

『つーか、お前らがカルデアに来てくれたら話しは早いんだけどよー』

『それができれば苦労しません』

『今回のもアレだ。お前が邪ンヌの相手さえしていれば喧嘩なんてしなかったさ。アイツ、中途半端な絆レベのせいで脛狙ってくるだぜ? 構ってちゃんにも程があるだろうが……』

『それはそれは、なんとも羨ましいですな』

『羨ましがんな!!』

 

 私、思ったんですけど、今回の喧嘩の元凶はエリザベートさんにあると思います。

 

 突如、明日にワンマンライブを開催すると宣言し出したエリザベートさんに先輩はもう既にオコでした。

 

 どうやってライブを潰すかカルデア中を走り回っていたのです。

 

 そんな時に邪ンヌさんの呼び掛けを先輩はスルーしました。

 

 邪ンヌさんもカチンと来たのでしょう。

 

 執拗に先輩を追いかけ脛蹴りを試みました。

 

 先輩も大人気ないと思いますが、脛蹴りからの大転倒でマジギレしてしまい喧嘩へと発展して家出をしてしまったのです。

 

 というのが、二人の証言を客観的に総合的にまとめた感想です。

 

 ほんと、めんどくさい二人です。

 

『とりあえず、この後ホテルへ行こうか、デオン』

『え、なに、いきなりホテルは困るんだけど……』

『これこれ、邪ンヌとの仲直りが先ですよマスター・ぐだ男』

『もういいよ、アイツのことなんて』

『coolじゃありませんね。わかりました、僭越ながら「お義父さんの靴下と洗濯なんて死んでもやめてよね」でお馴染みのわたくしことジル・ド・レェが二人の仲を取り持って差し上げましょうぞ』

『え、それで何故に攻撃体制?』

『マスター下がって……っ!!』

 

 しかし、デオンさんはあと一歩足りませんでした。

 

 完全に油断していた先輩も愚かでした。

 

 こうなんだか不気味な色した光線が先輩を包みこんでいきました、

 

『ぐだ男はいるー? 迎えに来たわよ……って、ジル!? アンタ、そこで何をしてるのよ!! ぐだ男に何をしたっていうのよ!!』

 

 あぁ、ジャンヌ・オルタさん、遅いですよ。

 

 もう手遅れです。

 

 先輩が奇妙な態勢で苦しんでいます。

 

『おほほ、まさかここでジャンヌゥと会えるとは……眼福眼福』

『ぐっ、来るな邪ンヌ……つーか、誰が迎えに来いなんて言った? 俺は頼んでねーぞバカ……』

『はあ? 誰がバカですって? 別にアンタなんか迎えに来てないわよ、アタシはここに用事があってきただけですー。アンタなんてそのまま奇妙な倒れ方したらいいわ!』

『ふむ、今の二人は本当にcoolではありませんね。致し方ありません、「お義父さんは悲しい。いつ如何なる時も苦難を共に乗り越えようとしない若き二人に幸せが訪れるはずがない! だったら一肌脱ぐしかありません!」なので、覚悟してくださいジャンヌゥ……っ!!』

『え、どうしちゃったのジル……って、何でアタシにも攻撃してくるのよ!?』

 

 ジャンヌ・オルタさんも謎の光線に包まれてしまいました。

 

『ちょっと、うそっ、ちょっとこれ何よっ!? 復讐の魔女の威厳なんてあったもんじゃないわ!?』

『ぎゃははー、邪ンヌに猫耳とか誰得なんだよ!』

 

 あ、モニターの調子が……

 

 一体邪ンヌさんに何が起きたんですか!?

 

 先輩、もっと詳しく!!

 

『もう駄目だ笑かすな出る出る出るなんかやべぇ、キモチわりぃ……オロゲェェェェェェェ』

『ぎゃー!? アンタなんてモンを吐き出すのよ!? サイテー!!』

 

 先輩がゲロんちょしました。。

 

 モニターが不調で良かったのかわかりませんが、ビチャビチャビチャビチャってなんか聞こえてきます。

 

『今、お二方に呪いを掛けました。これからいつ如何なる時も恋人繋ぎをしなければそうなる呪いです。二人はこのまま明日フランスの街でデートして仲直りしてください。できなければ、その呪いは解けませんので悪しからず』

『『な、なんだってー!?』』

 

 雲行きが怪しくなってきたのは午後9時のこと。

 

 いろいろ状況把握しないといけませんが、今夜二人はホテルに泊まり、険悪のままイチャラブすることもなく就寝に就くのでした。

 

 勿論、朝起きれば大惨事になっていたのは言うまでもありませんよね。

 

 続く。




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