先輩、ATMはカルデアにありません!   作:れべるあっぷ

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先輩と竜の魔女EXⅣ

 先輩が何故「狩り」を行ったのか、どんなメッセージを届けたかったのか、その謎解きをしましょう。

 

 謎を解くキーワードは言わずもながら「狩り」です。

 

 かつて、ヒトは狩りをして暮らしていました。

 

 私達の遠い祖先に当たるヒトに限りなく近いお猿さん達は石を削って武器を作り獲物を狩っていたのです。

 

 そんな情景を想い描くきっかけが「狩り」だったのです。

 

 勿論、それだけでは類で猿な人が生きていた時代なんて思い描くことはできなかったでょう。

 

 ですが、ジャンヌ・オルタさんは憤怒の炎で敵を燃やしました。

 

 先輩はアタランテさんを会話というコミュニケーションツールで説得を試みたのです。

 

 重要なキーワードは他にも隠されていたのです。

 

 ヒトは火を起こし、狩りをして、会話を確率しました。

 

 それが人類の始まり、すなわち人類史の始まりであり、最初の試練をそれになぞらえばこそ、先輩はそれを伝えたかったんじゃないでしょうか。

 

 ジルさんの与えた試練が、歴史の再現であれば、次の試練も歴史の続きで、そこにも何らかのキーワードが隠されているはずです。

 

 それを予想すれば、そこに1つの真実が浮かび上がってきます。

 

 ジルさんの真の目的です。

 

 先輩とジャンヌ・オルタさんへ試練を与えた仲介役は偽りの姿でしかなかったのです。

 

 愛など取り戻させる気なんてミジンコたりともありません。

 

 あの方は、渇望していたのです。

 

 あの方は、まだ世界を恨んでいたのです。

 

 あの方は、カルデアに呼ばれなかったことを怨んでいたに違いありません。

 

 スネちゃったんですね。

 

 だから、あの方はもう一度戦争を起こすことに決めたのです。

 

 歴史をなぞらえて、もう一度、ジャンヌ・オルタさんをダークサイドに堕とし、フランスを火の海に変えようとしているのです。

 

 試練によって、駄目なマスターぐだ男に愛想つかせたいのです。

 

 ジルさんの真の狙いは邪竜百年戦争のリベンジで間違いありません!

 

「今日のマシュはぶっ飛んでるな~。通りで僕の生涯に一度のチャレンジを邪魔する悪い子なんだ」

「ロマニのアホはさて置いて。マシュ、その推理はいささか強引すぎやしないかい? 確かにレイシフト先であのジル・ド・レェがいたことには驚きはしたけど、たまたまだよ。そう、たまたま、偶然そう見えただけだ。そんなこと絶対にありえないよ」

 

 え、否定されました。

 

 この給料泥棒達は何を呑気なこと言ってるのでしょう。

 

 もっと、危機感を持ちましょうよ。

 

 人類史を脅かすあらゆる可能性は排除すべきです。

 

「君の推理が破綻している点は三つ。

 まず一つ、ジル・ド・レェは敗北者だ。たまたま家出したぐだ男くんと遭遇して、ついでに邪ンヌと運命の再開をしたとして、それがきっかけで邪竜百年戦争へリベンジを燃やすにしろ、もっと慎重に、まともな計画を立てるだろう。そう、彼の言葉で言えば、この計画犯罪はcoolじゃない、だ」

 

 ま、まだ論破されたワケではありません。

 

「一つ、歴史の再現とやらだが、たまたま、気まぐれで、ツンデレか何かで、ぐだ男くんは狩りをしただけかもしれない。ぐだ男くんの中でデート=狩りだったかもしれない。その一連のやり取りが歴史の再現だとこじつけるには無理がある。それと、まだ試練があるにせよ次もソレだとは限らない」

 

 あばばばばばばば……私の推理が破綻していく。

 

「一つ。ははっ、君は推理小説の読みすぎだ」

 

 ………。先輩、私も家出していいですか?

 

 というか、します。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 さて、家出してきました。

 

 ヴィヴ・ラ・フランスです。

 

「あの、マシュさん、何がなんだかワケワカメなんですけど、何故突然私はフランスに連れてこられたのでしょう?」

「フランスのピンチだからですよ、ジャンヌさん」

 

 別に一人で家出するのが寂しかったとかじゃありません。

 

 別に誰かを道連れにしたかったワケでもありません。

 

 まだ私の推理が破綻したワケじゃありませんので。

 

 私の推理を鼻で笑ったダから始まってチで終わるサーヴァントと、こ○亀1巻から読み始めたドクターをギャフンと言わせるためにも彼女の手は必要でしょう。

 

 そう、彼女こそがこの事件に最も相応しい助手役というワケなのです。

 

 だから、ジャンヌさんを拉致……もとい、連れてきました。

 

「では、早速ですが先輩達の張り込みといきましょうか」

「本当に何が起こってるんですか……?」

 

 かくかくしかじか、ジャンヌさんにこれまでの経緯を話しました。

 

 微妙な顔をされました。

 

 誰かさんみたいに鼻で笑わなかっただけでも良しとしますか。

 

 ただ、あまり気乗りしていないみたいですね。

 

「ただの痴話喧嘩に私達が介入していいものなのでしょうか……」

 

 野暮だといいたいのでしょう。

 

 ですが、それは違いますよジャンヌさん。

 

「違う、のですか?」

「介入でも仲裁でもなく、これはあくまで静観です。先輩達を見守るだけです。パレない距離からこそっと覗いているだけです」

「ストーカー行為では……」

「清姫さんと一緒にしないでください」

「それ、ご本人の前で正直に言えるのですか……」

「とにかく、今は私達の手が届く範囲で先輩達を尾行するのです。尾行という名の護衛です」

「えー………」

「ふっ、仕方ありません。私の秘蔵コレクションの1枚、先輩の寝顔写真を差し上げますよ」

「はぅっ……………………………………………………わかりました。コレで手を打ちましょう」

 

 ジャンヌさん、貴女も随分カルデアに染まってきましたね。

 

 取り敢えず、よだれを拭いてください。

 

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 さて、気を取り直して先輩達の張り込みをしましょう。

 

 もう既にリヨンの街へ引き戻ったであろう先輩を探すことなど容易いです。

 

 この時代にGPS機能が無くても、それは後輩属性がカバーしてくれます。

 

 ましてや、ジャンヌさんがいます。

 

 フランスはジャンヌさんの庭みたいなものです。

 

 どこがデートスポットくらいわかるでしょう。

 

「いえ、田舎女な私ではわかりませんが、マスターを見つけました。そ、そんな、ここは……」

 

 そこは、ラブホ街……ではなく。

 

 先輩達の距離感ほんと計りかねますが、いつの間に仲直りしたのでしょうかと思いましたが、どうやらそういうワケではないようです。

 

 見慣れない看板が立て掛けてあるお店の中へ入っていきます。

 

 ギルドと書かれています。

 

 意味不明です。

 

 私達はいつの間にかゲームの世界へ迷い混んでしまったんじゃないでしょうか。

 

 カウンターの受付をされているマリーさんに何やらモツをお渡ししていました。

 

 そう、あのタコさんのモツと通貨を交換していました。

 

「ヴィヴ・ラ・フランス♪マスター、貴方達のギルドランクがEからDに上がったわ。これでより難易度の高いクエストを受けられるようになったわよ。おめでとう」

「ぐだ男、さっそく『海魔を飼い始めました。子供が生まれて手がつけられません』を受けるわよ」

「だべ」

 

 その依頼人はアホなのですか。

 

 そして、そんなアホなクエストを引き受ける先輩達もアホなんですね。

 

 お願いですからデートしろよーマジで~、です。

 

 歴史の再現とかアホみたいな推理どうでもよくなりましたよ。

 

「だけど、今の俺達はこんな状態だ。二人でクエストするのは危険だよな」

 

 だったら先にデートして仲直りしたらいいじゃん~。

 

「マスター、鯖が足りないのなら石を割って召喚すればいいじゃない」

 

 マリーさんも上手いこと言いますね。というか、随分カルデアに染まりましたね。

 

「石を持ってない不甲斐ないマスターちゃんはどうしたらいいのよ?」

「聖晶石が手元にないロリコンマスターでも大丈夫。ギルドで登録している鯖を紹介できるわ……って、仕様書に書いてあるわ」

「それがお前の本音だったら大事件だったよな」

「か弱い私は今夜、マスターに乱暴されてすすり泣き調教されるのでした」

「まーそれだと邪ンヌとセットで最悪だ」

「ちょっとアンタそれどういう意味よ?」

 

 そのままの意味だと思いますけど。

 

「ともあれ、今、ギルドで紹介できる鯖は………………………キャスターにアサシンはどうかしら?」

「ビミョーなとこ突いてくるわねー」

「アマデウスにサンソンかよ……」

「チェンジした方がいいんじゃない?」

「うん、チェンジで」

 

 組み合わせが最悪ですね。

 

「あら? 男性サーヴァントと触れ合える機会を作ってみたのだけど?」

「どちらか1人にしておくれよ。マリー」

「ごめんなさいね、それはできないみたいだわ。大人の都合とかでギルド条例に反するらしの。それに、彼ら、1人だとDランクのクエストもビミョーなのよ」

「結構酷いこと言ってるわ、この王妃様」

「他は? 他にも鯖いるだろ? できれば男がいいです。」

 

 先輩は男に飢えているのです。

 

 あ、マリーさんと目が合いました。が、先輩達には内緒にしてくれるみたいです。

 

「ジルはいないの?」

「アイツは今回の黒幕だろうが、いるわけないだろ」

「白い方でいいかしら?」

「黒い方がいいわ」

「ワガママ言うなよ」

「紹介できる鯖はこのリストに載っている方々しかいないのだけど」

「フランス組ばっかだな」

 

 マリーさんに差し渡された、メニュー表みたいなものにパーティー編成可能なサーヴァントが載っているそうです。

 

 ですが、

 

「つーか、なに、アマデウスにサンソン以外の鯖は待ち時間がございます? 他の鯖を選んだら待たされるの?」

「えぇ、基本彼らは暇じゃないでしょうに……白い方のジル・ド・レェも、今は別のクエストに出払っているのよ」

「裏を返せばアマデウス達は難易度の高いクエストには行けず手持ちざたってことか」

「それは違うわ。彼らが暇してそうだったから私がお願いしてマスターのために待機してもらってるのよ」

「マリー、お前……俺のためにそこまでしてくれたのか。ありがとな」

「勿論、マスターの希望が最優先よ。少し時間を潰して待って貰えば、出払っていた鯖もギルドに戻ってくるでしょうし、紹介もできるわ」

「じゃあ、どこかで時間潰すとするか……」

「なら、ここでお茶していきなさいな」

 

 さて、誰が先輩のパーティーに加入するのでしょうか。

 

 先輩達はごろつき紛いの傭兵やら戦士やらが集う酒場席で、お茶するそうです。

 

 ホントにロマンチックのロの字もないですね。

 

「ですけど、マリーの淹れる紅茶は美味しいですよ」

 

 ジャンヌさん、心の浄化できるお茶だといいのですけど。

 

 そんなこんなと見張りを続けること五分。

 

 やっと、お茶が出ました。

 

 ウェイターの格好をしたジークフリートさんが持ってまいりました。

 

「すまない」

 

 開口一番、お決まりの言葉です。

 

「いや、その『すまない』は少し遅れて『すまない』なのか、ウェイターの格好が似合い過ぎて嫌み的な感じで『すまない』なのか……はたまた、カルデアに来れなくて『すまない』なのかどっちだよ」

「アンタ、仮にも竜殺しの英雄でしょ? 威厳とかプライドとかないわけ?」

「すまない……」

 

 先輩、これ以上ダメ出ししてあげないでください。

 

「まあいいや……とにかく、メンバーの一人がジークフリートかー」

「やれやれ、最低でもあと一人は欲しいわよね」

 

 メンバーが見つかってよかったですね、先輩。

 

 しかし、ところがどっこいでした。

 

「すまない………今回の俺はただバイト役を命じられただけのサーヴァントだからクエストには行けない」

「お前が何言ってるのかわからない」

「ぐだ男、私もわからないから大丈夫よ」

「ギルド条例がなんとやらで………詳しくはマリー王妃に聞いてくれ。とにかく、お茶を淹れるだけの鯖で、すまない………」

「「あ、うん……なんか、こちらこそ、ごめんなさい」」

 

 と、とにかく、私達もギルド登録しましょう。ジャンヌさん。




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