とある日の朝。
今日は目覚めの良い朝でした。
外は生憎の悪天候ですが、何か良いことが起こる予感がしました。
そう、それは先輩との距離も縮まるような何かが起きる予感です。
「令呪を持ってニトクリスに命じる! 俺と一緒にオジマンを召喚させるぞ!!」
あ、前言撤回です。
先輩との距離が縮まるのは、まだまだのようです。
まずは説教が必要でしょうか。
教育も必要でしょう。
先輩、またなのですか?
例え今日がオジマンディアスさんのピックアップの日だとしても、令呪はガチャをするために使うものじゃありません。
いえ、先輩からしてみれば令呪一画など気にも止めないでしょうけども。
日付が変われば一画復活するチートでしょうけども。
特異点で有効的に使ってください!
「じゃあ、ニトクリちゃんもご一緒に。おいでませ~オジマンオジマン!」
「お、おいでませ~………オジマンディアス様」ボソッ
「声が小さい! 恥ずかしがらずに!!」
「は、はいぃっ!」
………。
「おいでませ~オジマンオジマン!」
「お、おいでませ~オジマンディアス様!」
………。
「なんか語呂が悪いぞ! オジマンを様付けするな!! オジマンにディアスも付けるな!!!」
「で、ですが……っ!!」
「いや、皆まで言うな! お前の言いたいことはよくわかる! しかしな、いいか、よく聞けニトクリス! 一字一句でも詠唱を間違えればオジマンディアスはカルデアに来てくれないぞ!」
「そ、それは困ります!」
………。
「というか、オジマンも英霊の座で寂しくお前の呼びかけを心から望んで待っているはずだ。そうに違いない!」
「あの方が、私を……っ!!?」
「そうさ、お前の声が必要なんだ。だったらオジマンも呼び捨ても今回ばかりは許してくれるだろう。不敬も承知で俺の後に続け! リピート・アフター・ミー!!」
「はいぃっ!!」
………。
「はい、オジマンオジマン」
「申し訳ありません! オジマンオジマン!」
「もっと声を上げてー、オジマンオジマン!」
「オジマンオジマン!!」
………。
「おいでませ~オジマンオジマン!」
「おいでませ~オジマンオジマン!」
「手の動きが弱い。波を打つワカメの様に! しなやかに!!」
「こうですかマスター!?」
………。
「腰をもっとエロくクネらさせろ!!」
「こ、こうでしょうかー!?」
「脚も!! もっと!! その生脚はうねうねと海に生えるワカメのようにだー!!」
「物理限界を超えることはできませんー!!」
………。
「おいでませ~、オジマンオジマン!!」
「おいでませ~、オジマンオジマン!!」
「でませい、オジマン!!」
「でませい、オジマン!!」
「でませい、でませい!!」
「でませい、でませい!!」
「おいでよ、オジマン!!」
「おいでよ、オジマン!!」
「イケメン、オジマン!!」
「イケメン、オジマン!!」
「オジマン、アゲマン!!」
「オジマン、アゲッ!??」
………。
「ところでマスター! コレはいつまで続けるつもりですかー!!」
「ずっとだよ!!」
「ずっとぉ……っ!??」
「ピックアップ期間中はずっとだ!! 最終日になけなし呼符1枚で一発逆転狙いだ!! 当然だろーが!!」
「」
あ、ニトクリスさんが白目剥いてしまいました。
白目剥いたままワカメ踊りしています。
正直怖いです。
そして、ご愁傷様です。
先輩はたとえ相手がファラオであろうとも容赦しないでしょう。
いつものことです。
先輩の気分次第ですが、男性サーヴァントを召喚しようとするその無駄な労力と滑稽なまでの執念さで、当分の間は、暇を見つけては踊り続けるでしょう。
私も騙されて踊ったのがもう遠い昔のように思います。
まる。
「フォウ」
あ、フォウさんだ。
どうしたのでしょう。先輩を怪訝そうな目で見ながら私を呼んでいます。
というか、ナイスタイミングです。
一刻も早くこの場から離れましょう。
私はフォウさんに導かれるようにその場を後にしました。
ふう、助かりました。
☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ネコともリスともよくわからない小動物、それがフォウさんです。
私はフォウさんに導かれてやってきたのは、先輩の部屋前の廊下でした。
そこに聖女が佇んでいました。
先輩の部屋へ尋ねようとして、その手前あと一歩の勇気が持てず、扉をノックしようとした手を引っ込める、もうそれは聖女じゃなくただの恋する乙女がいました。
「あ、マシュさん」
あ、ジャンヌさんがこちらに気がつきました。
赤面しています。
もじもじするジャンヌさん、ばっちり映像いただきました。
「ジャンヌさん、何か先輩に用事ですか??」
「あ、いえ、大した用事ではないのですが……今度、私をレイシフトに連れて行ってくださるとおっしゃっていたので、その……方針とかいろいろ話さなくてはと思いまして」
「打ち合わせは大切ですもんね。わかります」
「は、はい、そうなんです」
このヒトは絆レベも1にすら満たない新人さんです。
本当はもっと先輩との絆を求めているのは私にもわかります。
フランスでの一件もありましたが、あのガチャ100連事件で召喚されたジャンヌさんは今日まで、ロクに2人きりで話し合うことすらなかったのでしょう。
わかりました。ここは一つ、このマシュ・キリエライトがひと肌脱ぎましょう。
「先輩、失礼します」
「あ、え、マシュさん!? ノックもせず入っては……っ!??」
確かに無作法ですが、無人ということは承知の上でした。
「どうやら、留守のようです」
「そ、そうみたいですね……」
「おや? どうかされましたジャンヌさん? 顔だけそっと覗いてるだけじゃなくて、早く中へ入ってください」
「で、ですがマスターは留守にしています。留守なのに勝手に入ったら怒られませんか? それも、まだ数日しか経っていない新入りをこんな神聖な場所へ……きっと怒りますよ」
「そんなことないですよ。私や他の方々もよく先輩の留守中に部屋にお邪魔してくつろいだりしてますけど」
「えぇ!? それは本当なのですか!?」
あ、今のは失言だったでしょうか。
ですが、私はちょっと先輩のベットでごろごろして先輩のニオイを嗅ぐだけですから問題ないでしょう。
先輩の秘蔵書を漁るような真似はしてないのでセーフです。
ノーカンです。
「ジャンヌさんは先輩と仲良くなりたくないんですか?」
「そ、それはもちろん仲良くしたいです! もっとお話ししたいです!! お食事もっ!!」
「じゃあ、勇気を出して一歩踏み出しましょう!」
「ちょっと、マシュさん!? それはまた話しが違うんじゃ……っ!!」
らちが明かないので手を引っ張ってでも部屋へ招き入れるまでです。
もうこれで私たちは共犯みたいなものですね。
「ここが、マスターのお部屋……」
あ、もじもじジャンヌさんが深呼吸ジャンヌさんに変身しました。
両手を胸の前に組んで祈り始めました。
主よ感謝します、とかぶつぶつ言ってます。緊張をほぐすためだろうと思うことにしました。
というか、先輩の部屋へ訪れるのも初めてだったんですね。
絶対に私の口からは言わないですけど、珍しくも先輩に気に入られたニトクリスさんは召喚二日後には部屋へ招かれてましたけども。
「ジャンヌさんはここで待っていただけませんか?」
「べ、ベットの上で、ですか……??」
「難易度が高いのならそちらの椅子に腰掛けてもらっても構いません。くつろいでいてください。私が先輩を連れてきますので」
「私1人ここに残るんですか?」
「えぇ、セッティングはこのマシュ・キリエライトにお任せください!」
「そ、そんな張り切らなくても! 私も一緒に行きます!! お話しは別にマスターの部屋じゃなくてもいいんじゃないですか!!」
「それはできません!!」
「何故ですか!?」
今現在、先輩によりニトクリスさん弄り真っ只中な光景を目にするのは、この聖女様にはあまりにも目が毒でしょう。
いろんな意味でショックを受けるでしょう。
いや、令呪をくだらないことに使った先輩をジャンヌさんに叱ってもらうのは効果ありかもですが、それ以上に面白いことがきっとこの部屋で起こるはずです。
「フォウさん、しっかりとジャンヌさんを見張っててください。すぐ戻りますから」
「ちょっとマシュさん!!」
「フォウ……」
フォウさんは「やれやれだぜ」と言わんばかりのため息をつきましたが、私は先輩の元へ来た道を引き返すことにしました。
☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして、私はジャンヌさんを先輩の部屋に置いてきたことを後悔しました。
一緒に連れてくるべきだったのです。
説教してもらうべきでした。
私は先輩を侮っていたようです。
ここまで本気で馬鹿だとは思いもよりませんでした。
「令呪を持ってクレオパトラに命じる。お前も一緒に踊れ!」
「この無礼者ー!?」
さらに令呪一画使って古参のクレオパトラさんが犠牲になりました!?
しかし、3人になったことにより、先輩達の立ち位置をそれぞれ線で結べば三角形ができ、それはエジプトのシンボルであるピラミッドをも想像させられます。
なるほど、ピラミッドパワーを利用するつもりですか。
まさか、ここまで計算されているとは……
これなら、あるいはワンチヤン無きにしも非ずです。
「おいでませ~オジマンオジマン!」
「おいでませ~オジマンオジマン!」
「パトー!」
「でませい、オジマン!」
「でませい、オジマン!」
「パトーー!!」
「でませい、でませい!」
「でませい、でませい!」
「パトーーー!!!」
あ、クレオパトラさんは合いの手入れるだけなんですね。
知ってました。
ご質問、ご感想等あれば、カルデア窓口まで(>_<)