先輩、ATMはカルデアにありません!   作:れべるあっぷ

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それはモヤモヤする事件でした


先輩と恋の物語事件その1

 最近、やたらとカルデアを這いずり回る段ボール箱を見かけるようになりました。

 

 暇をもて余した子供たちが遊んでいるのでしょう。

 

 こうして、イタズラに段ボール箱を取り払うと、

 

「アタランテさん、貴女も子供たちと遊んであげているのですか。たいへんですね」

「子供たちの相手ができるのだ。あのロリコ………マスターには感謝しないとな」

 

 今、貴女、先輩のことロリコンと言いかけましたよね?

 

 でも、それは正解です。

 

 この前も先輩は言ってました。子供たちが最後の癒しだそうです。

 

「ところでアタランテさん。そのロリコンをこよなく愛する先輩を見かけませんでしたか?」

「見ていない。一つ言えることはこの遊びに参加していないということだな」

「わかりました。他を当たってみます」

 

 四六時中、一緒にいてるわけではありませんからね。

 

 今日も今日とて、私は先輩を探す旅から始まるのでした。

 

 先輩の愉快痛快カルデアドラマを記録するため、いざゆかんですっ!!

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 などと、意気込んでみたものの、関わらなければよかったと後悔しか残らなかった事件が起きるのでした。

 

 そもそも、「先輩あるところに事件あり」という諺があるぐらいです。

 

「貴女は何してるんですか、謎のヒロインXさん?」

「しっ、静かに。セイバーを射ち損ねてしまうじゃないですか」

「またですか………」

 

 セイバーを抹殺するためにカルデアに送りこまれたアサシンこと謎のヒロインXさん。

 

 毎度のことですが、クラス・セイバーのサーヴァントにつっかかる面倒なヒトです。

 

 今回も獲物を廊下の角から狙っています。

 

 それもいたいけな少女を………

 

「流石にリリィさんは駄目ですよ」

 

「何言ってんですか? 弱者から始末するのがプロのアサシンってもんですよ」

 

「せめて、成長したアルトリアさんにしてください」

 

 返り討ちにされるでしょうけど。

 

 弱い者イジメ、ダメ、反対です。

 

「と、まあ冗談はさておき」

 

「貴女の場合、半分本気でしょうけど」

 

「あのセイバー・リリィ、さっきからため息ついて、私と同じように角に隠れて覗き見してるようですよ。相手は言わなくても一目瞭然だと思いますが」

 

「先輩を、ですか」

 

「そのようですです」

 

 アルトリア・ペンドラゴン・リリィさん。又の名をセイバー・リリィさん。

 

 かの有名な誉れ高き騎士王の成長する前の、謂わば未成熟系サーヴァントです。

 

 純粋無垢で一辺の穢れもなく大食らいでもない少女。

 

 もし、自分のクラスに転校してきて席が隣同士になって、次の席替えでも隣同士になった日には恋に落ちていただろうと先輩に言わしめたほどのお方です。

 

 そんなリリィさんが憂いを含んだため息を吐いてました。

 

 切なそうな眼差しを曲がり角の向こう側へ向けていました。

 

 恋する乙女のように。

 

 先日のジャンヌさんのように。

 

 デジャヴです。

 

「あ、セイバー・リリィが諦めて引き返してきます」

「そうですね。私はただの通りすがりを装って先輩の様子を見に行ってきます」

「それだと私は同行できないじゃないですか!?」

「何故です? 一緒にただの通りすがりを演じればいいじゃないですか?」

「それができたら苦労しません。セイバー・リリィを煽ってマスターに告白してこいとけしかけたのは、何を隠そう私なんですから!」

「そんなどや顔で謂われても……」

 

 自らゲロりよったとはまさしくこの事です。

 

「なので身を隠さないと!」

「いやいや、リリィさんのアフターケアをお願いします」

「いやいや、セイバーが弱ってる時こそが好機です。マシュさん、一緒に隠れましょうよ」

「えー」

 

 もう言うてる間にリリィさんがやってきます。

 

「そこに段ボール箱が2つあるでしょ?」

「………」

 

 まさか私まで段ボール箱に隠れる日がくるとは思いもよりませんでした。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「はぁ、マスターのバカ………」

「「………」」

 

 なんだか、雲行きが怪しくなってきました。

 

 リリィさんがため息を吐いて、不自然にも置かれた段ボール箱(私たち)をキレイにスルーして通り過ぎて行きました。

 

 一度の見向きもしません。

 

 私は一体全体何してるのでしょうか。

 

 何故、謎のヒロインXさんと仲良く隊列を組み、いえ、この場合は段ボール箱2つ並んで先輩の元へ向かっているのでしょう。

 

「謎のヒロインXさん、もう段ボール箱から出てもいいのでは?」

 

 ただの通りすがりAとBじゃ駄目なのでしょうか。

 

「これこそ好機というやつですよ。セイバー・リリィが勇気を出せなかった理由を解明できるチャンスです。このまま前進あるのみですよ」

「これ、何でバレないんでしょう………」

 

 今世紀最大の謎かもしれませんね。

 

 ダ・ヴィンチちゃんに解析してもらい、次回の特異点に活かせないでしょうか。

 

 絶対にバレる距離です。

 

 セイバー・リリィさんが勇気を持って告白できなかったロリコン先輩が目前に迫ってきました。

 

 しかし、先輩は気付きません。

 

 どうやら、お取り込み中みたいで、それどころじゃないようです。先輩がジャンヌさんを壁ドンしていました。

 

「ジャンヌ。素敵だよ」

「うふふ、もうマスターったら。からかわないでください///」

「いやいや本当に素敵だ。君はまるでエビフライバター炒めのように美しい。今すぐ食べてしまいたい」

「まだお昼ですよ。子供たちも遊んでます。夜まで我慢してください///」

「じゃあ、今夜は寝かさないよ」

「はい///」

「「………」」

 

 ツッコミどころ満載なんですけどー!

 

 なんですか、胸焼けしてしまうこの甘ったるいシーンはー!

 

 たかが廊下の出来事なのにー! ガラス張りで見え外の景色は猛吹雪が吹き荒れる悪天候なのにー!

 

 なんですか、このバカップルはー!

 

 いつの間にそこまで進展してたんですかー!

 

 それに何なんですか、エビフライバター炒めって。先輩はジャンヌさんのことそんな目で見てたんですかー!

 

 しかも、ジャンヌさんも今夜ベッドインする気満々ですねー! 良かったですねー!!

 

「ここは冷えるよ、ジャンヌ。少し場所を変えよう」

「はい、立香///」

 

 うおーい、ジャンヌさんが先輩のこと名前でしかも呼び捨ててまーす!

 

 私もまだ先輩を下の名前で呼んだことないのにー!

 

 そんな私の心情などつゆ知らず、この場に、いえ、このカルデアの世界には自分たち二人しかいないものだと思い込んだバカップルが立ち去って行きました。

 

 手を繋いでます! それも恋人繋ぎで!

 

「マシュさん、今の見ましたか?」

 

 えぇえぇ見ましたとも。見たくもないものを見てしまいましたとも。

 

「マシュさん、マスターどうしちゃったんですか?」

「今までに類を見ないぐらいベタ惚れでしたね」

 

 私は段ボール箱から出て、もう段ボール箱に八つ当たりをするしかなかったのです。

 

「そう、そこなんですよ。マスターちょっと変でした」

「先輩が変なのは今に始まったことじゃないでしょうに」

「ですけど、変です。だって、マスターってロリコンなんですよ。聖女に壁ドンして愛を囁くなんておかしいです!」

「確かに言われてみればそうですね」

 

 謎のヒロインXさんの言葉に私は冷静になれました。

 

 確かに先輩は変でした。

 

 いつもと違う様子だったとも言えるのです。

 

 何故なら先輩から女性サーヴァントを口説くなんて、無自覚以外でありえないのですから。

 

 先輩もそんなことすればどうなるか理解しているはずです。やぶ蛇みたいなものです。

 

 だから、変です。

 

「マシュさん、何だかキナ臭いですね」 

「ええ、そのようで」

「なので、なんとかしてください」

「なんとかしてくださいって………あの、何故私が?」

「何故も何も、数々の難事件を解決してきた名探偵マシュさんだからこそお願いしてんじゃないです」

 

 いやいや、名乗った覚えはありませんよ。いや、名乗ったこともありました。探偵気分に浸ったことがあります……

 

「いやー、お噂はかねがね聞いておりましたが、ついに私もワトソン役ポジションに抜擢されましたかー。これは照れますね」

「助手役を貴女に抜擢もしていませんが、何故……」

「だってマシュさん、かの有名なシャーロック・ホームズ先生のお弟子さんなんでしょう?」

「どこ情報なんですか、それ?」

「情報元は秘密です。しかし、彼の意思を継いだのなら助手も必要ですよね?」

「その理屈はおかしいと思うのは私だけでしょうか」

 

 何故、助手役にそこまでこだわるのでしょうか、このヒト。

 

「言っておきますが、今回のワトソンポジションだけは誰にも譲れませんからね。アサシンネットワークを駆使して頑張ります、マシュ先生!」

「えー」

 

 私、先生になってしまいました。

 

 とても面倒なことになってきましたが、先生と言われるのはそう嫌ではないようです。

 

 でも、もうオチが見えてます。

 

 先輩絡みの事件に首を突っ込んで後悔しなかった日はないです。

 

 ため息しか出ません。

 

 されど、この事件、私たちが予想していた以上の結末が待っていただなんて誰も思いもしない事件でした。

 

「ささ、はじめのお客さんが訪ねてきましたよ、マシュ先生」

 

「はあ、どうなってもしりませんからね。ワトソンXくん」

 

 前からやってくるのはブーティカさんでした。

 

 フォウさんに導かれやってきました。

 

 続く。




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