先輩、ATMはカルデアにありません!   作:れべるあっぷ

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先輩と恋の物語事件その2

 バカップルのせいでいろいろと騒ぎは起こっているようです。

 

 私こと名探偵マシュ・キリエライトと謎のヒロインXさん改めて謎のワトソンXくんは、この珍事件に巻き込まれた被害者ブーティカさんに連れられて食堂を目指しました。

 

 エビフライバター炒めが何か関係しているのかもしれません。

 

「カルデアはいつもこうなんだね。賑やかなのはいいんだけどさ、流石に食堂が使えなくなるのは困るよ。今日の晩御飯を抜きにするなら話は別なんだけどね」

 

 それは流石にまずいですね。

 

 食堂はカルデアの生命線とも言えます。

 

 日々、忙しく働いてくださるスタッフの皆さんの動力源です。栄養面を考慮してくれた食事を取ることによって活力を養います。なので、今晩はインスタントラーメン等でその場しのぎをすれば明日の業務に影響与えること間違いありません。

 

 それに腹ペコサーヴァント達が暴動など起こしでもしたら大変です。

 

 急いで食堂へ向かいましょう。

 

「マシュ先生、これは………」

「ワトソンXくん。皆まで言わなくてもわかります。私たちの手に負える案件ではなかったようです」

 

 食堂に到着しました。

 

 そして、心のどこかでブーティカさんの依頼は諦めようと決めたのでした。

 

「アレ、どうにかできそう?」

「どうにもできません。ムリです」

 

 本当に無理です。

 

「「「マスターをたぶらかす女はブッ殺す」」」

 

 ………。

 

 アレはヒトの力を超越した災害みたいなものです。だからムリなんですー。

 

 いつもの三人衆が厨房を占拠していました。物騒な言葉で物騒な獲物を持ってまさに修羅の世界が広がっていました。

 

「うふふ、うふふふふふ………マスターが泥棒猫に取られました……だから母は切り刻むのです………」

 

 頼光さんが何やら怪しい薬草をスパッスパパーンッと切り刻んでいました。まな板ごと。台の所の表面さえ切り刻むのです。

 

「フシュー………頼光さん。切り刻むだけじゃもの足りません、捻り潰して掻き回さなくては………」

 

 清姫さんは、その切り刻んだ薬草たち(まな板と台所の一部)をミキサーの中にぶち込みました。

 

「マスターは私が助け出します………私は毒しか出せませんが………聖女絶対殺すサバーニーヤ……」

 

 静謐さんが宝具を展開しました。

 

 ミキサーの中に入れていきます。

 

 なんだか恐ろしいおドロおドロした液体が混ざってしまいました。

 

 これで紫色の謎のドリンクが完成です。

 

 絶対飲みたくないです。

 

「さて、お次は………」

 

 まだ作る気ですね。

 

 次は何を作る気でしょうか。知りたくもありません。

 

 これは当分の間止められそうにありません。

 

 彼女達の気が済むまでやらせるのが一番でしょう。

 

「それができたら苦労はしないんだけどね」

「確かに、三人衆の愛と憎しみのポイズンクッキングがいつまで続くかもわかりませんし」

「なるほど、ポイズンクッキングのフルコースが出来上がるのが先か、厨房が壊滅するのが先か……どちらにしろ、私たちの手に負えないのは変わりません」

「名探偵マシュに助手のワトソンXくん、深刻な問題は何もそれだけじゃないんだ」

 

 まだこれ以上に何かあるのでしょうか。

 

 あのポイズンクッキングで出来上がったドリンクを見るだけでもう心が折れそうだというのに。

 

 尚、頼光さんが特性ドリンクを3つのグラスについでお盆に乗せてこちらへ運んできました。

 

 微笑んでらっしゃいまふ。

 

 私たちは恐怖で顔が引きずっていまふ。

 

「うふふっ、何をこそこそお喋りしてらっしゃるか知りませんが、お暇でしたら味見をしていただけませんか? 息子に効く母親の愛情が沢山詰まったじゅーすなるものです」

 

 母の愛というより毒ですよね、それ。

 

 頼光さんは私たちにも死刑宣告を告げるかのようでした。また微笑んで厨房へ下がって行きました。

 

「さて、ワトソンXくん、帰りましょうか。事件は迷宮入りです」

「そうですね。完璧な推理などこの世に存在しません。帰りましょう」

「いやいや少し待ってくれ!」

「私、用事を思い出したんです! このキャメラのバッテリーを交換しないと! あー忙しー! 探偵家業はハードスケジュールなんですからー!」

「あ、じゃあ私が代わりにバッテリー換えてきましょうか、マシュ先生。こういう時こそ助手をコキ使ってくださいよー」

「裏切るつもりなんですかワトソンXくん!?」

 

 もう既に内輪揉めに発展しました。

 

 バカップルの影響力、計りしえない恐ろしさがあります。

 

 少しだけ見苦しいですが、ワトソンXくんとは殴りあってでも、話し合いをしなくては駄目のようです。バッテリー交換は私が行くのです。

 

 などと、そんな見苦しい言い争いを止めたのはブーティカさんでした。

 

 肩を掴まれました。ワトソンXくんも同じく。

 

「タマモキャットが犠牲になったんだ」

「「………」」

 

 ブーティカさんの一言で時間が止まったかのように私たちは大人しくなりました。

 

 もう既に犠牲者が出ていただなんて。

 

 キャットって名前が付いてるのに語尾にワンがつくキツネさんのことですね、わかります。

 

「私は止めたんだけどキャットの奴、言うこと聞かなくて味見したんだ」

 

 それはキャットさんが悪いですね。

 

「いや、キャットの気持ちも汲んであげた私が悪かった。キャットもバカップルへの嫉妬でテンションおかしくなってしまったんだ」

 

 やっぱりキャットさんが悪いですよね!

 

「今はドクター・ロマンの指示の元、マハタリに看病してもらってるよ。私は倒れてうなされる彼女を見てこう思ったんだ。仇は必ず打ってみせるってね」

「でも、相手はあの三人衆です。いくら、ブーティカさんでも荷が重すぎます」

「だからマシュに頼んでるんだよ。今日の私は勝つために手段を選ばない女だよ」

「いやいや、私が加わった所で勝ち目ないですよ、ほんと」

 

 いつから推理小説ものがバトルアクションになったのでしょう。

 

 そもそも勝ち負けの問題じゃないかと。

 

「マシュ先生、ワトソン役の私がいるじゃないですか」

 

 数の問題じゃないんですけど。

 

「わかりました、ブーティカさん。こういうのはどうですか? この際あの三人衆のことは一旦諦めてください」

「それじゃ、キャットの仇が取れないじゃないか」

「いえ、あの三人衆よりも、彼女らをあんなんにした元凶をどうにかした方が健全的です。それがキャットさんのためにもなるでしょう」

 

 私たちの身の安全にも繋がるでしょう。

 

「なるほど、大元を断つってわけですね。流石、マシュ先生」

「用はあのバカップルをどうにかするってことよね? しばくの?」

「はい。あのバカップルには痛い目をみてもらいましょう」

 

 どうシバくかはこれから話し合えばいいのです。

 

 なに、簡単です。

 

 いつものように、いつも通りにシバいたら問題解決しそうな気がします。

 

 なのに。

 

 あともう少しで話がまとまるはずだった、それなのにです。

 

 どうして先輩はアホなのですか?

 

「ハニー、ここでお茶していかないかい?」

「はい、ダーリン/// 小腹も空きましたね」

「じゃあ、エビフライバター炒めを頼もうか。ウェイター! エビフライバター炒め二人前と何かお茶的なものを二つ!!」

「「「………」」」

 

 おーのーれーこのバカップルー!!

 

 何がハニーだ! 何がダーリンですかー!

 

 あと少しで話がまとまりそうだったのにー!

 

 これでは火に油を注ぐようなもんですー!

 

 どこまでアホなのですかー!

 

「あらあらー。バカップルからオーダー入りましたよ清姫さん」

「ええ、あの幸せオーラをエビフライバター炒めと共にぶちのめしましょう!」

「NP溜まりました。いつでも宝具展開します!」

 

 聖女絶対殺すマンがまた宝具を展開しました。

 

 ヤバいです。

 

 もう止まれません。

 

 止められません。

 

 しかし、これはこれでアリかもです。

 

 ここでバカップルをぶちのめしさえすれば事件は解決するような気がします。

 

 ブーティカさんもワトソンXくんもそう悟ったに違いないでしょう。

 

「先にお飲み物を持って参りました。ごゆっくりどうぞ」

「まあ、美味しそうなジュースですね」

「あぁ、まるで母の愛とかいろいろ詰まっていそうなだ。ふっ、やはりこの店を選んでよかったぜ」

「「「…………」」」

 

 バカップルは空気を読めないどころか視力まで低下するようです。

 

 先輩、ここは店じゃありません。食堂です。

 

 そして、キザな台詞と共に乾杯するのでした。

 

「それじゃ、今日という記念日に、君の瞳に乾杯」

「か、乾杯です///」

 

 ………。

 

 うわー、ベタですね。

 

 カルデアキッチン内、キンとグラス同士接触する音だけが聞こえました。

 

 そこにいたものは誰もがその一部始終を固唾を飲み込んで見守りました。

 

 なんとまあ、甘ったるい最悪の一時なんでしょう。

 

 私は何故………私は誰………などと、危うく自我さえ蕩けて無くなってしまいそうな瞬間です。

 

 そして、そのポイズンドリンクを飲んだのは先輩だけでした。

 

「まっずぅーーーーーーッ!?」

 

 いや、不味いでしょうけど。

 

 

 

 

☆―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 毒を盛られても死なない先輩はさて置いて。

 

 いえ、毒を盛られてクレーマー化した先輩は聖女様に連れられ食堂から退場しました。

 

 そんな見るに見かねない光景に唖然とする中、視界の端に一人の少女の姿を捉えました。

 

「マスターのバカ………」

 

 誰にも聞こえない小さな声で切望して呟いてました。




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