日本国召喚~小話~ 作:北京煙人
第2文明圏 ムー 港湾都市マイカル
港湾都市であるマイカルには、コーヒー・ハウスが数多くある。
多くの商人たちが、新聞や雑誌を手に取り、最近の情報をやり取りするのだ。
そんなコーヒーハウスの一つ「リフレッシュ」は、大手商人が多く集う老舗であった。
チョコレートやタバコを嗜む彼らの最近の話題は、国交が開かれたばかりの「日本国」についてのことだった。
「そういえば、聞きましたか?ついに日本国の自動車の販売が始まるとのことですよ」
白髪で恰幅の良い商人、ラトビッチが仲の良い若手の商人、ジェービスに話しかける。
「ああ、知っているぞ。店の建設工事は商業区の中でえらく目立ってたからな」
彼らが話していたのは、マイカルの中でも商業の盛んなワーナー地区のことだ。
技術流出防止法が一部緩和され、輸出が許可された自動車メーカーは即座にムーへの出店を決めた。
港湾都市であるマイカルはムーで最も早く自動車が販売が開始される予定であった。
また、自動車を皮切りに今後は日本国から様々な民生品の販売が開始される予定であった。
「私は日本国に行ったことがありますが、素晴らしい性能でしたよ。私はすぐに買いますぞ!」
大手の商会を切り盛りしているラトビッチは運良く日本国へと行く機会があった。
そんなラトビッチに対して、ジェービスは懐疑的である。
「本当にそんなに性能が良いのか?」
たしかに、技術力が高いとは聞いているが、現在のところ、日本の工業製品を積極的に輸入しようとしている商社は少ない。
第3文明圏の更に奥であるから、世界の反対側の話としか思っていないものが大多数であった。
「ええ、驚きますよ。ぜひ開店するときには行ってみると良い。あれは車の革命だ。T型車なんて比べ物になりません」
数週間後
初の日本車の販売店がオープンした。
ジェービスは、ラトビッチの勧めに従い、開店当日に訪れていた。
「う、美しい!!」
彼の知っている自動車とは違う美しい車体がそこにはあった。
流体力学にもとづいて作り出された優美な曲線。
様々なカラーリングの車があるが、どれも色の質感が素晴らしい。
これまでの車を見ていた者たちからすれば、光り輝いて見えた。
透明感のある色合いとでも言うのだろうか?
よく見ると一色の塗料でただ塗っただけではない。
造形に合わせ僅かに色が変化しているではないか。
これが量産されている車だというのか?職人の手による見せるための一品物ではないのか?
そう疑問に思い問いかけるが、誰でも注文できるとのことであった。
試しに座ってみると、柔らかさとともにしっかりと体を支える感覚が返ってくる。
素晴らしい座り心地だ。
自宅の椅子よりも座り心地が良い。
これだけでもこの車を買う価値がありそうだ。
「よろしければ、ご試乗なさいますか?ぜひ、運転をなさってみてください」
「ぜひ、やらせてくれ!」
隣りに座った説明スタッフに言われるがままに操作を行う。
まず、クラッチがないらしい。
日本における車の半数以上がオートマという仕様になっており、クラッチの操作が必要ないとのことだ。
なんと、車が自分で考え、ギアと回転速度を制御するとのことであった。
もっとも、マニュアルの車も選択できるとのことであり、好みであるという。
言われるがままアクセルを踏むと、ほとんど振動を感じることなくスムーズに発進した。
道の段差も全くと行っていいほど気にならない。
車を運転するとと腰が痛くなることが悩みだったが、これならどこまででも行けそうだ。
また、高速で巡航する際には車が速度調整をする機能についても説明を受けた。
前に走っている車との距離が一切変わらず、ついていくことができた。
また、燃費もすこぶる良い。これだけの性能だが、T型車の数倍の距離を走ることができるという。
「か、買った!」
ジェービスはムー国で最も最初に日本国の車を購入した人物となった。
また、日本車に大変な感銘を受けた彼は、販売権を取得し輸入車ディーラーとして名を馳せることとなった。
なんとなく思いついたので、書いてみました。
また何か思いついたら書いてみます。