Fallout:Stray Ranger   作:文月蛇

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評価を見てびっくりしました


赤い……オレンジじゃなくて赤!?


頑張らなくては……


十三話 Untouchables Ⅱ

 

 

 

プリムは地図上、荒野に咲く一輪の花だった。I-15号線と州道95号線の境が近くにあるため、両幹線道路の交差点に近いその町は比較的に栄えていた。大戦争以前よりベガスの来客から金を吸い取っていた歴史があり、近づけばベガス行きの客とNCRへ帰る帰還兵、旅人が初めてキャップを落とす土地か、もしくは再び土地にキャップを落とす。蟻地獄に似たその土地は必然的に交通の要所となり、モハビ・エクスプレス本社が設立された。現在では、本社は移転し、小さい支社となっているものの、NCRへの玄関口として、ニューベガスの物流の通り道となった。

 

 

 

以前までモハビ・エクスプレスは単独任務による凄腕運び屋を雇い、重要貨物を運ぶハイリスクハイリターンを業務方針としていたが、現在ではMr.ハウスの政治的手腕と資本主義によって大規模輸送と大量資材の輸入により確固たる収入を得ていた。

 

 

以前のベガスであれば、カジノの収益で稼いでいたはずであったが、カジノは所詮来客の財布を目当てに考える二次産業、三次産業に頼るしかない。だが、Mr.ハウスは違った。ベガスが独立した勢力となるよう、自分達の産業と過酷な環境によるモハビ・ウェイストランド人の強靭なバイタリティー、キャップの資本力によって長期的な「Mr.ハウス帝国」を実現する。

 

 

NCRに未だ依存しつつも、科学力と強大な軍事力を背景に独自の勢力を確立する大帝国構想は実現しつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、プリムはいわゆるNCRとMr.ハウスの政治的、経済的戦争の真っただ中と言えよう。なぜならば、プリムはNCRモハビ前哨基地と目と鼻の先であり、Mr.ハウスからしてみれば、手中に収めるモハビ・エクスプレスの支社があるところである。モハビ・エクスプレスは各所に独立して運営できるような能力を持っているはずであったが、NCR領内とモハビの綱渡し的存在であるプリム支社はNCRへの経済的進出には欠かせない土地であることに他ならない。

 

一方、NCRはプリムを支配したいと日ごろから目を光らせていた。独立勢力の維持もNCR憲法に課せらられており、法治国家であるNCRにとっては行動を制する鎖でもあった。そして、Mr.ベガスにとってプリムはNCRへ経済進出を行う橋頭堡。強引な手段を用いればNCRの入口を狭まることに他ならない。

 

 

 

その事から両者の手加減と表現すべき緊張状態が生まれつつあった。

 

 

 

 

 

 

 

その緊張状態がNCRCFから離れた脱獄囚一派にしてやられた原因だろう。その均衡は運び屋の匙加減により変化することはどの勢力も感知していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ~………なんでここには売春宿ないんだよ」

 

 

 

傭兵のような格好に身を包んだ脱獄囚は持っていたシングルショットガンを肩に掛け、恨めしそうに隣の同じ収容棟であった囚人にぼやく。

 

 

 

 

 

「さぁ~な、ここの保安官はネルソンみたいな卑怯者じゃなくて真面目な保安官だからな。それも仕方がない」

 

 

 

 

 

悪を憎むキャップ亡者のバウンティーハンターである賞金稼ぎがプリムの保安官になったことは囚人達では飯時の噂話として評判であった。既に囚人達の慰み者になった妻の横で朽ち果てた保安官は、首を掻ききられて生きてはいない。囚人達は「ざまぁみろ」といわんばかりに、かれらの住居に卑猥なメッセージをスプレーで宣言して以降、その家屋は放置されている。ぼやいた男はNCR陸軍との銃撃戦に参加していたため、保安官邸宅での宴には参加していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ぼやいていた男はNCRでも名の知れている凶悪な強姦殺人を複数やらかした重犯罪者、プリム住人が殆どカジノに立てこもっているため、突破する手段がなく、人数に事欠いた脱獄囚はNCRと膠着状態に陥っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

強姦魔の男は辛抱ならんと戦前のポルノ雑誌片手に悶えていたが、今からネルソンに行こうかと頭を過る。だが、結束の弱い脱獄囚は頭が残虐な手段で部下を統率することから、裏切り者はシーザーも恐怖するような殺し方でもってひどい死に方をする。犯罪者集団が結束する上で必要であり、強姦魔の男もホテルに籠る首領に恐怖していた。

 

 

「ネルソンに居れば良かったんじゃないか?」

 

 

「やだね、腐れ娼婦とやれば梅毒移されるだろうよ。それよか幼女……」

 

 

強姦魔ならぬロリコン野郎の台詞は口から紡がれることなく、他の囚人の遮る声によって聞こえなくなる。

 

 

「おいおい、変態過ぎるぞ。経験を積んだ女の方がいいに決まってるだろう」

 

 

「確かに!お前は変態過ぎる。おれはやっぱり経験をちゃんと積んだ女がいいぜ。幼女なんて痛がるだけで面白くないわ」

 

トラックの修理が終わったのか、一人は油まみれになったジャンプスーツを着こむ囚人や警備をしていた対物ライフルを構える囚人がやってきた。本来であれば、トラックを警備しなければならないが、そこは訓練された兵士ではない。ロリコンの囚人と最初に居たアジア系の囚人は下世話な話をしたことに後悔したが、今更辞めろとは言えなかった。彼にも幼い娘がいることから、その囚人は悪態を付いた。

 

 

 

「俺はNCRに別れた女房と娘がいるけど、絶対おめぇみたいなのには会わせたくねーよ」

 

 

 

 

「ぶ男な娘はブサイクにきまってら。俺みたいなロリコンにだって分別はあるぞ」

 

 

 

 

 

「てめぇみたいな糞に女の何がわかるんだよ。いいか、おれは家族のためにここに来た。俺はヤマオカ組の名誉のためにこんなド田舎に来たんだ。もし、俺がレギオンの連中やNCRがいなければ、おめぇみたいな糞ダメからきた汚物野郎に……」

 

 

 

 

強姦魔と組まされたある意味不幸な男、アジア系改め日系の刺青のヤクザはNCRCFでもあまりお目にかかれない日本刀を持ち、あたりを警戒する。上裸の彼の背中にはびっしりと刺青が入れられている。それは周囲に危険な男であると知らしめていた。

 

 

 

 

 

ヤマオカ組の名誉のために来たと言うヤクザの男は強姦魔に書くのも躊躇うような汚い言葉を浴びせかける。「てめぇなんか刀の錆にもしたくない」と言う位変態のことを嫌っているようで、何故彼らを歩哨として組ませたのか、リーダーシップを疑うことだろう。しかし、変態の強姦魔からは返事がなく、不審に思ったヤクザの男は背後にいた変態の強姦魔を怒鳴る。

 

 

 

 

『てめぇ!話も禄に聞けん阿呆かおんどれわぁ!!!!』

 

 

 

 

とうとう堪忍袋の緒が切れた男はモハビでは全く話されていない日本語を叫びながら日本刀を振りかざして威嚇しようと変態へ斬りかかろうとするが、振り被ろうと目線を男へむけたが、男の姿はない。

 

 

 

『残念………奴ハモウ死ンデルヨ』

 

 

 

片言の日本語が聞こえたと同時に、体内へ電流が走る。それは体の機能をほとんど停止させて失神に導く。途切れていく意識の中で見えたのは、銃を構える白人の男と濃緑色の奇妙なロボットだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆弾映画を思い出すと何であろうか?

 

 

 

 

 

多くのエンターテインメント映画を思い出すのであれば、それは爆弾にまつわる話が多い。爆弾と言う兵器が生まれて以来、そうした作品は映画と言うエンターテインメントにおいて、親しまれたものであるスリリングな体験を視聴者に楽しんでもらうことを重点に置いたものが多いだろう。例えば、時速数百キロを満たない速度でなければ爆発する高速列車や時速数十マイルで走行しなければ爆発する交通バス。はたや、爆弾が仕掛けられた飛行船などなど、数え上げればキリがない。

 

 

 

 

 

その中でも爆弾が仕掛けられたエレベーターなどは並べるべくもなく、爆弾を使用する凶悪犯罪の中でも悪質極まりない代物であると言えよう。エレベーター内は基本的に密室であり、扉が開かなければ出ることは叶わない。電子ロックとコンピューター制御のエレベーターではなおさらであり、人間の手によって管理された時代よりもコンピューターによる管理によって、ハッキングや爆弾によるテロ攻撃により人質にされるケースも存在する………かもしれない。

 

 

そのような犯罪はフィクションの中だけであり、そうした犯罪を行う人間が管理しやすいと思われるかもしれない。エレベーターシャフトなど整備士しか入れない場所は専門技師しか入れない他、侵入経路はおろか技術者の特定が容易い一面もあり、保安上の観点から犯罪も難しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらスネーク重りに爆薬を設置完了。二階からはもうそろそろ脱出できる。って………なんでスネークなんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

「潜入ミッションならスネークですよ」

 

 

 

 

 

 

 

「・………スネークという人物は知らないが、プリスキンという人物は知ってる」

 

 

 

 

 

「あれですよ、蛇の工作員が潜入するやつ」

 

 

 

 

 

「俺が知っているのは、ロサンゼルスでエレベーター爆弾人質事件に失敗した身代金目的の元爆処理警官が狂って交通バスに爆弾仕掛ける話しだけどな」

 

 

 

 

 

「なんですそれ?」

 

 

 

 

「ああ、ハリウッドで作られたNCRの宣伝映画だよ。そのロスの警官の父親がレギオンのフルメンタリーっていう設定の」

 

 

 

 

 

「はぁ~・・・・、NCRの映画ってなんか冷戦時代の映画みたいですね」

 

 

 

 

 

 

「かなりの大金稼いだアクション映画だぞ。キアノ・ラーブが主演の……」

 

 

 

 

「私はワシントンの生まれなんで知りませんよ」

 

 

 

 

 

 

「ぼろが出たな……」

 

 

 

 

 

 

「あっ………」

 

 

 

 

 

 

ロボットの欠片もないアサルトロン。人間のようにボロを出すなど、笑いを誘うそのミスに運び屋は三階のエレベーターシャフトから小さいスペースを進みながら、笑いを堪える。スカーフで埃を吸わないように進んでいた。

 

 

 

 

ウリエルの考えた作戦は第一段階として、外にいるトラックを警備する囚人たちを排除する。必要と在ればトラックごと囚人たちを爆破する。第二段階はジェットコースターのレール上から侵入し、陽動作戦によって二階へ続く階段とエレベーターシャフトに誘導。そして集まったところをダイナマイトで吹き飛ばし、一網打尽にする。

 

 

結果、第一段階は上手くいった。トラックを警備していた囚人は話に夢中になったため、無防備となった。そのため、トラックは無傷で押収。囚人の一人を除いて全員射殺したあと、一人を生け捕りにした。そこまでは良かったのだが、エレベーターシャフトを含めて建物の多くは崩落しており、三階は人が入れぬほど瓦礫が積まれていた。

 

 

 

 

エレベーターシャフトに至る通風孔はボロボロとなっており、エレベーターシャフトに来るまで何度も音を立てそうになったが、やっと爆弾を設置するところまで運び屋はやってきた。

 

 

 

 

 

「やっと出られる。ひと騒ぎ起こすから、そうしたら爆破を……」

 

 

 

 

敵への誘導によって某映画のようにエレベーターシャフトで一網打尽にしようと思ったが、ロボットの叫び声によって運び屋の伸ばしていた手を震わせた。

 

 

 

 

 

「あ、しまった!」

 

 

 

 

「・・・・・・・んん!!!おい、ウリエル!なにした」

 

 

 

 

 

人間臭いミスと共に、ウリエルが持つ無線から爆弾の起動音と共に秒間ごとになるアラームが運び屋の無線から響き渡る。

 

 

 

 

 

「ミスりました、配線違いで“プランB”に繋いでました」

 

 

 

 

 

「うぉぉぉぉぉぉぉい!!ばっか!おまっ何やってんの!」

 

 

 

Bプラン、1分経つとホテル全体を爆破するようにセットしたのである。

 

 

最早、ロボットでドジっ子とか、戦闘時では糞以上のものではない。むしろ、投げつけて敵に戦意消失できるのならば、排泄物のほうが優秀である。投げた本人がの味方へ誤射するような奴でなければ、そんな酷いことにはならないからだ。

 

 

 

 

もはや、運び屋には一片の猶予もない。パイソンスティーブホテルには人質が居るか居ないかは知らない。もし、カジノに籠城するプリム住民に話を聞ければよかったが、そんな時間も余裕もなかった

 

 

 

 

 

人質が居ないことも祈りつつ、隠密行動もへったくれもないと思いながら、運び屋は盛大に音を立てて、二階のコースター整備扉へ走る。生憎、侵入経路と警備が薄いことも相まって脱獄囚はほとんど警戒していない。ただ、運び屋の痛恨の叫びが聞こえたようで、警戒度が高まった。

 

 

 

 

 

「この人間以下!粗大ごみ!自爆ロボット!カミカゼ!」

 

 

 

 

「神風とは!?敵に勝てますね、神様とは縁起がいい!」

 

 

 

 

 

「言い訳あるか!この間抜け!」

 

 

 

 

 

 

己を犠牲に攻撃する特攻攻撃を例えに挙げたが、神の攻撃と比喩される蒙古侵略を阻止した津波を「神風」と呼ぶことや神の風など神話から来ていることを知らない運び屋はウリエルの頓珍漢な台詞に怒りを覚えた。

 

 

 

 

 

運び屋は罵倒し、力の限り足を動かす。そして、タイマーが0になり、各所の要所に仕掛けられたダイナマイトが固有の無線周波数を拾うセンサーを起動。それと共に起爆剤が点火され、200年以上の建築を誇るアメリカの商業施設が一気に爆発、がれきの山と化したのであった。

 

 

 




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