今作品にも絡んでくるキャラも出てきますのでよろしくお願いいたします。
というか、この話から新たな章です
二十話 Unternehmen Greif
ノバック
元々、ディノ・ディーライトモーテルのネオン看板「NO VACANCY」が破損して「NO VAC」と表示され、現在の呼び方となっている。元々は十字路や幹線道路沿いの燃料休憩やストリップ地区に行く前にここで休憩を済ませる観光客の泊まる場所とされ、名称としてはディノ・クロッシング(恐竜通り)などの呼び方になるのだろう。
戦後もその立ち位置は変わることなく、NCRから来る旅行者や行商人、軽歩兵連隊の休憩場所としても知られ、独立町としてその地位を保っている。NCR前哨基地からは離れているものの、ノバックはNCRの色合いが濃い。というか……
「おい、ウリエル……あれは?」
「双熊旗ですね……ここはNCRの飛び地かな?」
ちらりと見えたNCR国旗である双熊旗が翻っているとなると、「ここはNCRの領土です」と宣言しているのに等しい。だが、よく見るとその国旗を翻っている所をよく見れば中央に星条旗が垣間見え、そしてネヴァダ州の州旗もあることから、中庭と捉える方が自然だった。
すると、近くにいたスカヴェンジャーの一人が話を聞いていたのか近づいてくる。
「あんたらはじめてかい?ここはNCR退役軍人が多くてね、むこうからこっちに移り住んだ奴もいるくらいなのさ」
「へぇ~、じゃあここは独立町ということでいいんですか?」
「まあ、そう言う事だろうな。とは言っても重要な決定事項はモーテルの婆が議長やるけど、結局町の総意を汲んで決めるから誰が一番ってわけでもないな。有事の時は退役軍人が先頭に立つし」
レプコン試験場によくスクラップ目当てで行くらしいが、今はフェラルグールが沸いているらしく、下手に近づけないらしい。
「フェラルを掃討しないのか?」
「したくても、ここ最近は銃弾の値段は高騰してるからな。向こうのネルソンがレギオンの連中に占領されて、ここにもつい最近偵察部隊が近づいたことあってさ。今はあの道の向こうに部隊が駐留してるけど、この分だと突破されるかもな」
スカベンジャーは指をさし、ティラノサウルスが頭を向ける方へ目線を向ける。シックスはついつい近くのNCR軍の状況が知りたくなり、色々と質問してしまう。
「こっちはかなり劣勢だな……大丈夫か?」
「どうだろうな、NCRも結構頑張ってはいるけど、素人目でも防諜が些か雑に見えるけどね。」
彼は喉が渇いたのか、水筒のふたを開けて乾いた喉を潤していく。
「あんたもNCRの人かい?」
「多分な、事故で記憶を失ってて」
「そりゃ、ご愁傷様。ああ、俺はここいらでキャラバンをやってる、ジョセフ・スミスだ」
「一応、モハビエクスプレスの……ああ、本名まで忘れたからシックスか運び屋とでも呼んでくれ」
シックスとジョセフは握手を交わし、シックスは友好の証と情報のお返しとしてバックに入っていたウィスキーを渡すと、ジョセフの目は嬉々とする。
「助かるよ、そろそろ切れそうだったんだ、また何処かで」
「ああ、じゃあな」
ジョセフはパツパツとなった大型背嚢を背負い、「よっこらせ」と言うと、入手した軍需物資を売りさばこうと、一番売れそうな場所へと向かっていった。この場合だと、最前線に最も近い、キャンプ・フォーロン・ホープに違いない。
「さてと、宿を探すか」
「ええ、ここはどんなバッテリーが待ってるのでしょうね」
「………」
Mr.ハウスが付けたお目付け役だろうが、本当に仕事する気があるのか?
シックスは呆れた顔をしてノバックに入っていった。
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大規模なぶつかり合いではなく、他の補給線破壊によって餓えらせるような攻撃。更には度々基地に狙撃や未熟な兵に打撃武器を持たせた自殺突撃。度重なる攻撃は陥落には至らせらないものの、士気は最底辺に落ちており、まるでレギオンの指揮官があざ笑いながら作戦指揮しているようにすら思える。
ボラトル少佐は埃の被った軍用糧食の箱に入っていたインスタントコーヒーの袋から賞味期限切れの紙パックを取り出した。プラスチックやビニール製品などはほとんどが医療用器具の保管や保存のために使われており、湿気を通しにくくするためにバイオ燃料から抽出した植物性ビニールを内側に貼ったそれを開け、粉状のコーヒーを金属製マグカップへ入れていく。
「バラモンの粉末ミルクは・・・ないか・・・・・・・・・」
NCRの主な乳製品は保存の効きやすい加工品ばかりがあり、生産量もかなり少ない。放射能によって変異した牛、バラモンによって供給されるが、変異はまちまちであるために乳房の大きさや数が不揃いであり、アメリカ特有の酪農機械化の足枷となっている。核戦争さえなければ、自動搾乳機ぐらいのテクノロジーは簡単に手に入った。だが、アメリカ全土を焦土にしてしまった現在、失われた技術は多く存在する。BOSなどの武装科学結社は兵器に転用可能な技術しか収集していないし、即戦力となるものや人類の脅威となる存在以外は眼中にない。それはNCR政府も同じであったが、建国から幾年も経って、富国強兵といった政策には軍事の他にも、国民の生活向上も行わなければならないと気づく。失われたテクノロジーを復刻するために日夜、科学者達は過去の産物からどのように製造していたのか、詳しく調べ、または新たに生み出す必要があった。
そのためにはまず、新たな技術や科学を発明する科学者が必要になり、国民の学力を向上させ、識字率を上げなければならない。ボラトル少佐もかつてはアポカリプスの使徒から学問の知識を得て、NCRの高等機関で学び、大学の奨学金を返済するために陸軍に入隊。そして、なぜか少佐の位まで昇進し、戦線維持に全力を注いでいた。
文学などを学んでいたからか、NCRの文学界における躍進はそうした産業育成に出版社にでも就職するという選択肢があった。意外にも軍人という職業が天職であったらしく、軍内部でも指揮能力はかなりのものであると太鼓判を押されているだけあって、壊滅しかけたネルソン駐留部隊と自分の率いている増援部隊を統合してネルソンに防衛線を張っている。だが、その戦力も大分減少している。これまで指揮していた一個大隊とネルソンに駐留していた二個中隊を統合した部隊は情け容赦のない攻撃によって、一個大隊程度にまで減少していた。
「少佐、各基地に派遣した補給部隊が到着しました」
「そうか、帰ってきた部隊の数は?」
「3個隊です・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
淹れたばかりのコーヒーを地面に叩き付けたくなる怒りが込み上げるものの、部下が見ている手前、そんなことをすることはできなかった。苦々しい表情を浮かべる少佐への言葉がない部下は、クリップボードに記された補給品リストを手渡した。
「各部隊に均等に物資を支給しますが、武器弾薬がかなり消耗しています」
「航空部隊の爆撃やヘリによる攻撃要請はどうだ?」
「司令部は捕虜の解放を最優先にしろとの通達が・・・・・・・・・」
「あの大統領の腰巾着が!前線の状況を知らないでよくぬけぬけと・・・・・・・・!」
ついに堪忍袋の緒が切れたのか、ボラトル少佐は怒りを露わにする。だが、それに驚く者はいない。怒りは真っ当なものだ。膠着状態の続くフォーロンホープ戦線を打破するには打撃力を有する装甲師団か航空部隊による近接航空支援をして大打撃を食らわせ、敵を木っ端みじんにするしかない。
「再三、ヘリのによる攻撃を打診しましたが、対空兵器の存在もあるために却下されました」
ボラトル少佐はため息を吐く。こればかりはどうしようもなかった。レギオンはブルヘッドシティー防衛のための攻撃ヘリを経験したためか。戦前の地対空ミサイルを引っ張り出してきた。大戦中には西海岸に配備されても、使用されることのなかった鈍重な中国の対地攻撃機を対象とした車両型ミサイル兵器を配備したのである。戦前のジェット戦闘機であればなんとかなりそうだが、ベルチバードなら話は別だ。
貴重な航空戦力であるベルチバードはNCRにとって虎の子に等しい。戦術的優位を覆すような真似はしたくないし、落したベルチバードをプロパガンダに利用してもらいたくない司令部は墜落の可能性のある戦線への投入を控えている。さすがに戦況打開のために虎の子であるベルチバードを投入したいボラトル少佐でも、憎きレギオンのプロパガンダに愚かな将校として宣伝されるのは好ましくない。
副官の少尉は防衛計画の書類や報告書をボラトル少佐に渡して司令部テントを後にする。
―これなら、ボルダーシティー防衛戦の時の方がまだましだった。
と少佐は独り言を言いそうになる。部下とレンジャー2人を残してしまったことは彼にとって失策だったが、それでもレギオンの連中を釘付けにしてボルダーシティー中に仕掛けた爆薬を起爆させ、レギオンの大群を吹き飛ばした。肝心なのは、戦争に勝利する手段ではなく、勝利した後の後始末だった。ボルダーシティーの住民にはNCRへのヘイトがたまり、有効な復興策を打ち出せぬまま、フーバーダム要塞のコンクリート輸送の中継基地としていく関係でかつての街並みを修復することはしなかった。
ボラトルは頭の中で悔恨に苛まれるが、突如として銃声が響き渡ったため、すぐさま近くの無線兵へ尋ねた。
「今の銃声は?」
「確認します・・・・・・・・・こちらHQ、全監視所へ。銃声の位置を特定し、最寄りの巡回班は報告せよover」
(こちら北側監視所!て、敵の攻撃を受けている!敵の規模はいっ…)
「北側監視所!応答しろ!」
「敵の襲撃だ。偵察行動を行う全隊員を帰還させろ。全部隊は至急防御態勢に・・・・・・・・・」
命令を下そうとした瞬間、室内が真っ白に染まり、まるで金槌で殴られたような衝撃に襲われた。それが閃光によって視界が潰された事や強烈な爆裂音によって三半規管が揺さぶれたことに気が付くまで時間を要した。
「おっと、ここが司令部か。貧相だな」
視界が晴れ、ボラトルが見たのは自分達と同じ格好をするNCRの野戦服に身を包んだ兵士だった。だが、その顔は見たことがない。腕には真っ赤な布を巻いていて、手には正式採用していない手斧と9㎜拳銃を握りしめており、見るからにそれは偽装したレギオン兵士だった。
「こいつが指揮官じゃないか?」
通信兵を撃ち殺し、倒れていた警備兵の喉元を他のレギオン兵が切り裂いた。噴水のように吹き上がる血しぶきがテントの天井を赤く染め、下衆な笑い声を響かせる。外では応戦する銃声と爆音が響き、組織的な反撃が出来ていなかった。
「首をぶった切って、センチュリオン殿に見せよう。奴隷の一人を貸し出してくれそうだ」
血と脂で汚れたマチェットが兵士の手に抜けたと思うと、ボラトルの目の前の地面に刺さる。ゆがんだ表情を浮かんだ自身を見、改めて自分の進んだ道が間違いだと気づいた。もし自分の進みたい道に進んでいればこんなことにならずに済んだだろう。
だが、もしその道を進んでいたとしても、目の前の文字も読めない野蛮人に鉛弾を食らわせることができないのは悔しいことだった。
「死んだらワシントンやらリンカーンによろしく伝えてくれよ、糞くらえってな」
振り上げたマチェットは宙を舞い、へばり付いた血液がテントに付着する。次の瞬間にその刃がボラトルで染まるだろうと思い、彼は身構えた。
その瞬間、テント内に爆発ではなく、鉛弾が嵐のように突き刺さり、部隊の配置図や周辺の部隊展開図など穴をあけ、ボラトルを殺そうとするレギオンも先の通り、ハチの巣になって地面へ倒れた。
「少佐!ご無事でしたか!」
突入してきたのはレギオン兵士ではなく、レンジャーハットを被り、精鋭部隊に供給されるM4自動小銃を構えるレンジャー隊員であった。彼の後ろには残存兵力と思しき重火器兵や衛生兵、ライフル兵など、兵科オールスターズと言ったところだろう。だが、この組み合わせはこの非常時にお目にかかるとなると、この後に起きることは一つしかない。
「少佐!ここはもう持ちません!退却を!」
「・・・・・・・・・・・」
NCR歩兵に紛れて基地に潜入したレギオン兵による攪乱攻撃。その後、騎馬兵と歩兵の電撃攻撃。明らかにNCR軍は後手に後手を重ね、司令部まで木端微塵に吹き飛び、指揮官以外の兵士も半ば戦死状態。これでは防衛遂行は困難だった。
「・・・・・・・・・・全フォーロンホープ防衛線部隊に通達。現時点をもって現陣地を放棄。退却する!」
度重なるNCR軍の敗北
これはネルソンやキャンプサーチライトに続くNCR軍の敗北であった。
一方、フォーロンホープ防衛線近くに位置する放棄された旧軍バンカー内から声が聞こえた。
(話を聞くんだ!ドッグ!)
「ドッグ、おなか減った!」
(まったく、首輪まで飲むなんて、FEV変異体はいかれた奴らが多すぎる。いいか、マスターからの命令だ)
無線の男の声にも聞こえるが、無線の出力よりも強力なのか、クリアな回線で入っているのかわからないが、目の前で話しているような声がバンカー内で響き渡る。
(いいか、このあと、NCRの落伍した兵士やレギオンの追撃部隊がくる可能性がある。そうしたら、お前は渡してある催眠ガスで奴らを生きたままとらえろ。おやつとして食うな。生かして私の噴水のところへ連れてこい。そして地下鉄で全員連れていき、噴水の場所まで引きずっていくんだ)
「了解です。マスター」
(わしに令呪や英霊がいれば・・・・・・・・・・・どうでもいいか。ドッグしっかりと仕事をしろよ)
寂れたバンカーは来るであろう客人を待ち構えるべく、準備を進めるのだった。
Unternehmen GreifはWW2のドイツ軍が考えたグワイフ作戦の独名です。連合軍兵士に偽装して攻撃を行う作戦。実施されることはなく、ハーグ陸戦規定に引っ掛かり、連合軍の軍服で偽装するドイツ軍兵士が捕虜になっても、スパイや便衣兵として処刑されてしまうこともあって、かなり苦慮した様子です。
というか、資料を見る限り、末端でも敵の軍服を鹵獲して使ってて、其れがもとで撃たれたりしましたし、百害あって一利なしです。
皆様もお気をつけて(←何にだよw)
ちょこっとDLCが出てきましたが、DMが一番好きだったりします。