次はプリム編でしょうかw
グッドスプリングスの名物は何か?
そう聞かれれば、何人かはありきたりな答えを述べる。
新鮮な水、のどかなスローライフの町、西部開拓の名残がある田舎、時代から忘れ去られた町etc…。様々な答えが出る中で、たまにこういうものも出てくる。
「変なカウボーイロボット」
セキュリトロンと呼ばれる、大戦争前でもお目にかかることはない珍しいブラウンテレビが内蔵されたロボットがグッドスプリングスに滞在している。それも、どうやらニューベガスの警備についていたロボットとは一味違い、本当にカウボーイのようなの男がスクリーンに映っており、声も警備の声とは違って渋いおっさんの声であった。名物とは言わないまでも、モハビ・ウェイストランド界隈では異色とされるが、それこそウェストサイドにいる人と暮らすスーパーミュータントや雪が積もる山にひっそりとあるミュータントの町、ミード湖の上で暮らす住民など、ウェイストランドで変なものはかなりある。はぐれセキュリトロンなどそうそうお目にかかるものでもないが、グッドスプリングスの名物として観光する人間など、このご時世いるはずもない。
だが、ついこの間新たな仲間が加わった。
濃緑色の旧アメリカ陸軍塗装のロボット。禿げた塗装や陸軍のはぐれロボットなどウェイストランドではたまにあることだ。東海岸のような荒廃しきった地域では多くあるが、モハビでは極低確率である。
モハビは各勢力の戦闘が起こり得るが、とある東海岸の地域と比較しても豊かである。それこそ、ニューベガス周辺に大戦争後に誰も入ってはいない軍事基地や施設などは少ない。殆どが何処かの勢力に接収され、備品であったロボットを運用するためか、放浪するはぐれロボットの個数は限られる。
しかし、そこにいるロボットはモハビの人々が知るそれとは違っていた。女性のようなフォルムを持つ、人間よりも若干高めの身長を持つそれは一般的なロボットと違って人に近い。
そのロボットはアサルトロンと呼ばれるロブコ社が開発した陸軍向けの戦闘ロボットとして採用されたモデルだ。アサルトロンの「assault」は強襲や突撃と言った意味の英単語であり、アンカレッジ戦線におけるロボットの火力支援などの観点を取り払い、純粋な兵士の代替え的兵器として作られたそれは、生身の人間では戸惑うような第一線で敵陣地に強襲するように設計されている。他の戦闘ロボットと違い、白兵戦などに特化され、両手にブレードを装備しているのが一般的である。
だが、グッドスプリングスにいるそれは明らかに違うものだった。
「トルーディーさん、一杯ください!」
「あんたに売れる酒はないよ・・・・そもそも飲めないでしょ」
呆れた様子のトルーディーは核分裂バッテリーを棚から出す。人間のような振る舞いで、件のアサルトロンはカウンターの運び屋の隣に座った。
「お前、アサルトロン・・・・・?」
運び屋は半信半疑のような面持ちで問いかける。運び屋の知識はまだ残っているが、彼自身その知識も間違っているのではないかと思わされた。そもそも、アサルトロンは一級線任務に用いられるため、大戦争後のアメリカではほとんどお目にかかることはない。殆どが東海岸に配備されていたためであるが,NCR軍でもあまり知る者はいないだろう。
運び屋の知らないことであるが、東海岸における激戦地「ワシントンD.C.」では多くのアサルトロンが配備されたが、その殆どが中国軍上陸部隊に使用され、2277年において現存する機体はほぼないと言われていた。多くは主戦場とならなかった東海岸、ボストンなどの地域では相当数のアサルトロンが残っている。
米国内で展開する米軍一線級の精鋭部隊は西海岸など太平洋から中国軍が攻めてくると想定し、配備されていた。逆に東海岸には首都防衛の戦力を減らし、人よりも優秀なロボットに転換していたのだ。そのため、西海岸でアサルトロンのような高性能を誇る最新型殺戮マシーンが置かれていることはない。
辛うじて、運び屋は記憶の片隅。強いて言うなら「知識の片隅」にロブコ社の軍向けの製品カタログにアサルトロンがあった。だが、運び屋の知識が正しければアサルトロンの両手は物を掴むための三本アームかブレードだったはずである。
しかし、目の前のアサルトロンの腕は人間のような五本指であった。器用にトルーディーからもらった核分裂バッテリーを何かの機器に接続し、背中のソケットに機械から延びるコードを接続する。
「ええ、私はアサルトロンです。と言っても改良型ですが・・・・・これ中々旨いですね」
「バッテリーって味するのね、驚きだわ」
運び屋はアサルトロンがする人間のような素振りに驚き、トルーディーはバッテリーの味があるのかと半ば呆れている。現実なのかと運び屋は考えるが、その答えは当のアサルトロンが答えを出す。
「私の演算能力はそこらの古いロボットとは格が違います。アサルトロンは単独での作戦遂行能力を兼ね備えているので、高度な人格AIが装備されているんですよ」
「そ、そうか・・・・」
製造から200年経っていれば、十分古いだろうに。と運び屋は思う。
「私より変な奴がいますけど、彼は外でお留守です」
「彼?」
運び屋は外にいると言っていた彼とは何なのか。疑問の声を上げるが、トルーディーが説明を始める。
「ええ、彼女より前に来たセキュリトロンのカウボーイが居てね。いろいろ手伝ってくれるけど、なんか不気味なのよね」
もう一体のロボットはニューベガスストリップ地区の警備をしているセキュリトロンだが、カウボーイのような言い回しで何か不気味さを醸し出しているとトルーディーは嫌々そうに語る。サルーンの主人である彼女は一度もセキュリトロン -ヴィクターを店にいれたことはないが、つい最近やってきたアサルトロンの彼女は店に入れたらしい。
「なんでこれはいいの?」
「だってこっちは感じがいいわよ。あなたも一緒に酒飲めばわかるわ」
「いや、飲めないだろあれは」
―あ~ロブコ社純正の核バッテリー旨~!
こんなロボットは普通いない。バッテリーの味を認識して感想を言うなんて、ロボットとしては廃スペックじゃないか?
運び屋はまじまじとそれを見る。若い女性のような声とは裏腹にその身体はロブコ社が設計した戦闘用マシン。対物ライフル以外ならば、弾丸を弾き返すのだろうその装甲は、幾重の年月を経て、塗装は剥げ落ちている。そんな運び屋の視線に気が付いたのか、セキュリトロンの顔が運び屋に向いた。
「何じっと見てるんですか。見たって一緒には寝てあげませんよ」
「誰もお前とヤリたいとは言ってないよ!そもそも、お前に欲情なんかしないし」
「そうなんですか?噂だと、ロボット娼婦を探しているという話聞いたことあるからもしかしたら・・・」
「そんな変態と巡り合う確率は多分Mr.ハウスがロボット彼女作ってるのと同じぐらいだよ」
世界広しと言えどもロボットに欲情する奴の気が知れないと運び屋はトルーディーからもらったウィスキーを煽り、ため息を吐く。
「そんな辛気臭い顔しないでください。人間ならもっと元気を出さなきゃ」
「ロボットらしからぬお前に言われたくない」
「酷いですね、男女差別も甚だしい!」
「いや待て、お前はロボットだろ」
設計し、人格をプログラムした人間の顔が見たい。呆れながらもウィスキーを煽る運び屋に同情してか、イグアナの角切りを出すトルーディー。彼女もまた、その異様なアサルトロンに驚き、呆れたのだろう。そして、慣れてしまったに違いない。
パウダーギャングをやっつける作戦を考えていた矢先、乱入してきた闖入者。その型番も人格もおかしなロボットは何食わぬ顔で、そもそも顔と言った顔は高出力レーザーヘッドなため確認できないが、カウンターで核分裂バッテリーから電力を得ている。
「ああ、忘れてました。私はアサルトロンのウリエルです。」
「いや、ロボットが要件を忘れるな」
アサルトロンのウリエルと名乗るロボット。運び屋は差し出された鋼鉄製の手を渋々と握る。
「あ、握手したからって惚れないでくださいね」
運び屋は自己紹介早々、相手の顔面にマチェットを振り下ろしたくなる衝動に駆られたが、これからそれが幾度のなく繰り返されることになるとは、運び屋自身思っていなかった。
ただ一人、いや一つを除いて。
前のシリーズをお読みの方。
言わなくとも分かると思いますが、あれですw