5月に入り朝一番でもようやく春の暖かさを感じられるようになった。
走っていると暑くなってくるので、下はジャージだが上はロンTの上に半袖のTシャツという格好にした。準備を終えて店の外にいる愛犬のリードを握り歩きだす。毎朝この時はハナコもすごく嬉しそうだ。
尻尾を振るハナコを見てペットは飼い主に似るって言葉が頭に浮かぶ。……ハナコ程じゃないよ。
毅「おはようさん。今日はどこ走る?」
凛「おはよ。一番最初のコースでいい?」
毅「公園で折り返すんだな。んじゃ行くかハナコ!」
ハナコ「ワンッ!」
愛犬のリードを毅に渡す。ハナコが喜んでるからいいけど、少し毅にヤキモチを妬いているのは秘密。飼い主は私だからね?
毅にジェラシーを感じながらも、毅とハナコの隣で走り出す。私が左端、毅が真ん中でハナコが右端。この立ち位置も最初から変わらない。
毅がニコニコしながらハナコの方を見る。それを隣で見るのが好き。
だってこんな笑顔私には向けないから。
ヤキモチを妬いているのはハナコに対して…
違うから。断じて違う。
自分の中に沸いた感情を忘れるように私は少しペースを上げた。
少し驚きながらも毅はハナコと着いてくる。置いてっちゃうよ?
毅「んで、今日はどこ行くんだ?」
凛「こういう時は男の人がエスコートするもんじゃない?」
毅「んじゃ今日はデートって事でいいんだな?」
凛「…………違うよ。何勘違いしてんの?」
毅「今の間は何なんだよ…。」
この後のことを決めようと、私達は公園のベンチに座り話している。
ハナコは毅の膝の上で撫でられながら丸くなっている。
気持ち良さそうにしちゃって。羨ましいとか思ってないから。
…やめよう。今日の私は何か変だ。
毅のデートという言葉に少しドキッとしながらもそれに否定する。
変なこと言わないでよ。走って暑いんだから。
毅「じゃあ凛はどっか行きたい所はないのか?」
凛「んー…特にないかな。」
毅「何かしたいことは?」
凛「……毅と一緒ならそれで良いよ。」
毅「…ッ!」
私の言葉に毅の顔が少しだけ赤くなった気がする。
おかえしだよ。照れちゃって可愛い。
それにしても今日は暑いな。
毅「…何も決まんねーじゃん」
凛「そうだね。」
毅「このままだと帰れねーよ?」
凛「そうだね。」
毅「あの渋谷さん?考える気あります?」
凛「さぁどうだろ?」
毅「ダメだこいつ早く何とかしないと…。」
目の前の毅が項垂れる。
その姿を見て私はクスクス笑う。
ああ…楽しいな。正直私の望みはもうほとんど叶っている。
毅とこうやって冗談を言い合ったり、たわいもない話をするのが私の一番の楽しみなんだ。
この時間がずっと続くといいな。…貴方はどう思ってる?
毅「よし…じゃあとりあえずショッピングモールに行くぞ。そこなら何でもあるしな。」
凛「んー、まあ悪くないかな。及第点。」
毅「人に任せてんのにえらい厳しいなオイ」
そう言って毅がハナコを地面に降ろして立ち上がる。
ショッピングかぁ…。毅とは初めてかも。
そう思うと少しだけ緊張してきた。…なんで?
疑問を抱きつつも私達は元きた道を走り出した。
凛と一旦別れた後、俺は部屋に戻って準備を始める。
1時間後に凛の家に迎えに行く。正直30分で充分なのだが、凛に「女の子はいろいろ時間がかかるの」と怒られた。
シャワー浴びて着ていく服をある程度決めたら、ほとんど終わった。
ここまで15分の早業だ。
テレビでも見ながら時間を潰そうかと思っていると、スマホが鳴った。
画面を見ると未央からの着信だった。
未央『もしもし、タケっち?おっはよー♪』
毅『おはよう。どした?』
未央『今日しまむーとしぶりんも誘って、皆んなで遊ぼうと思ったんだ!どうかな?』
毅『凛はもう誘ったのか?』
未央『今のところはしまむーだけかな!しぶりんはこの後連絡するんだー。』
毅『じゃあ凛には俺から伝えとくわ。』
未央『さっすがタケっち!じゃ、10時に駅前のカフェに来て!よろしく!』
毅『了解。また後で。』
電話を切って時計を見る。現在8時45分くらい。凛を迎えに行くのは9時半。そこから駅前までは15分かからないほど。ちょうどいいか。
しかし、勝手に決めてしまってよかったのか?
…人数多い方が楽しいだろ。それに行き先は未央が決めてくれると思うから楽できそうだ。凛も二人がいた方が喜ぶだろう。
よし、未央達が来ることは黙っていよう。サプライズってやつ?
我ながら粋な計らいだな。
10分程歩いた俺は凛の店の中に入る。
中には凛の両親が花に水やりをしてたり、ラッピング作業をしていた。お疲れ様です。
毅「おはようございます!」
凛父「おお毅くん、おはよう。」
凛母「おはよう毅くん。凛を呼んでくるからちょっと待っててね♪」
凛の母さんが階段を登って凛の部屋に向かった。
二階から二人の声が聞こえたが、よく聞こえなかった。
しばらくすると凛の母さんがニヤニヤしながら降りてきた。
何ニヤニヤしてんの?凛が何かやらかしたか?
と思っていると、階段から凛が降りてきた。その顔は真っ赤になって俯いていた。
不思議に思いながら凛をよく見ると、青い薄手のセーターに白いロングスカートといった格好だった。
腰のくびれ、ロングスカートを履いていても分かるくらいの足の長さ。流石アイドル。
凛の姿をボーっと見ていると凛が近づいてきた。
凛「お、おまたせ…。」
毅「お、おう。今来たとこだ。」
凛母「毅くん!そこは凛の服装を褒めるとこよ!普段スカートなんて履かない凛が頑張ったんだから♪」
凛「お、お母さん!!///…毅っ!行くよ!」
毅「は、はいっ!」
怒った凛が俺の腕を引っ張って歩きだす。
凛の両親に頭を下げて俺も凛の後に続く。
凛から解放され、今は二人で並んで歩いている。
しかし、凛はさっきからずっと黙っている。チラッと顔を見ると少しだけ眉間にシワが寄り不機嫌そうだ。怖いよ?凛さん?
凛の雰囲気にビビってると、凛が申し訳なさそうに話しかけてきた。
凛「ごめんね…。お母さんがスカート履いていかないと一週間ご飯抜きだって言ってきてさ…。やっぱ似合わないよね…。」
毅「…んなことねーよ。すげえ似合ってる。やっぱ凛は何でも似合うのな。」
正直な感想を伝えると、凛が「ほ、ホント?」と言って次第に機嫌が良くなってきた。
…よかった、なんとか機嫌が直ったようだ。
今では小さく鼻歌なんか歌っちゃう凛は可愛い。マジで。
凛「そーいえばモールとは反対方向に歩いてるよね?どこか違うとこ行くの?」
毅「あー…まぁな。もう少しで着く。」
凛「そっか。じゃあ道案内よろしくね。」
危ない。俺の完璧なサプライズが無駄になるところだった。
俺じゃなく未央のおかげだが。
しばらく歩いた俺達は目的のカフェに着いた。未央に地図を送ってもらってたので、迷うことはなかった。ナイス未央。
店の外観はいかにも女子が好きそうな、レンガ造りになっている。凛もまじまじと見ている。
凛「へぇ、毅がこんなとこ知ってるなんて。やるじゃん。」
毅「こ、この前たまたまな…?とりあえず入ろうぜ。」
なんとか誤魔化しながら俺達は店の中に入る。
店内にもお洒落な空間が広がっていた。こんなとこ俺一人じゃ入れねーよ。
すると、店の奥から未央が手をぶんぶん振っているのが見えた。俺も手を振り返す。
しかし、チラッと隣の凛を見るとしばらく呆然とした後にキッと睨んできた。
凛「…毅?どういうこと?」
あれ?なんで怒ってるの?女の子がそんな顔で睨んじゃいけませんよ?
凛の後ろに般若が見えた気がした。
無料ガシャでSSRちゃんみおキター!
なお恒常の模様。