シンデレラ達とのストーリー   作:テリアキ

14 / 21
13話

 

 

 

楽しかったGWから1ヶ月が過ぎ、季節は段々と梅雨の時期に近づいてきた。

テレビの天気予報では来週から雨が続くという。洗濯物が心配になってくる。

若干憂鬱気味になりながらも、壁に貼ってあるカレンダーに目をやると今日の日にちの空白にCDとだけ書かれていた。

 

そう、凛達のCDの発売日。

 

凛達というのは、リーダーの未央と卯月との3人ユニットであるニュージェネレーションズだ。

 

俺は予約開始日初日に予約済みだ。学校が終わり次第買いにいく予定。

凛達はCDの販売イベントがあるので今日一日中CDショップを回るらしい。アイドルって大変なんだな。

そんな事を考えているとテレビの天気予報が終わり、次のニュース番組に切り替わった。やべ、学校行かねーと。

 

 

 

 

今にも雨が降りそうな曇り空の下、俺は学校への道を一人で歩く。

ここ1週間は凛が仕事やテレビの収録があり、学校へ昼から来て授業が終わると急いで出て行くので登下校は俺一人だけだ。

 

日課になっていた朝のランニングも、凛のデビューが近づくにつれてレッスンがキツくなったのでしばらく行ってない。俺のバイトが終わる頃にレッスン帰りの凛と顔を合わせる事があるが、その時の凛は少し疲れているように見えた。凛はランニングくらい大丈夫だと言っていたが、俺がなんとか説き伏せた。

デビュー前に体調を崩しては元も子もないからな。

 

いつもは凛とたわいも無い話をしながら歩くこの道が、最近は長く感じていた。

 

 

 

 

 

教室に入り自分の席に着く。あと10分で最初の授業が始まるので鞄の中から教科書を取り出し、今日の範囲を読む。来月にはテストがあるから少ない時間でも無駄にしない。なんか俺勉強できる人っぽい!

……誰か話しかけてこねーかなぁ。

 

そう思い周りの声に耳を傾けると、凛の話で持ちきりになっている。

デビューが決まってからその話が学校中に広がり、今では知らない人はいない。凛が学校に来るとその周りには人だかりができる。一躍時の人となった。

 

「渋谷さんのCD今日だよな?楽しみだわー!」

「俺は2枚買ったぞ!鑑賞用と保存用にな!」

「凛ちゃんのテレビ見た!?衣装すっごく可愛いかったよね!」

「いいよねーあの衣装!あたしもアイドルなりたいなぁ〜。」

 

今日も大人気だな。CD発売した後もすごいことになるぞこれ。

ため息を一つ吐き、俺は予習に戻った。

 

 

 

 

山崎「……以上でHRは終わりだ。気をつけて帰るように。」

 

先生の声に生徒たちが席を立つ。皆いつもより早く教室を出て行っているような気がする。

ああ、CD買いにいくんだな。

 

俺も早く帰ろうと思い席を立とうとすると、不意に声をかけられた。

 

「浅村くーん、ちょっといい?」

 

毅「へ?」

 

声がした方を見ると一人の女子が近づいてきた。

確かこの子は凛の前の席に座っている子……だよな?

 

「急にごめんね?実は、凛に今日の授業のノート写したの届けて欲しいんだ!」

 

毅「え、なんで俺?」

 

「だって凛の家近いんでしょ?帰り道なんだしいいじゃん♪」

 

毅「……わかったよ。ちゃんと渡しとくわ。」

 

「ありがと!凛も喜ぶと思うよ!」

 

毅「お礼は言われても喜びはしねーだろ?」

 

「まぁまぁ♪最近あまり会ってないんでしょ?凛、電話した時に浅村くんと会う時間が減って寂しいって言ってたよ?」

 

毅「え、それマジ?」

 

「ヤバっ!内緒だった!……まぁあの子、今ちょっと弱ってるから。CDデビューやテレビやらで疲れてて私につい本音が出ちゃったのかも。」

 

毅「本音、か。」

 

女の子の話を聞いてふと思う。俺の本音はどうなのだろうと。

 

考えているうちに、女の子が「よろしくねー!」と言い教室を出て行った。ノートを鞄の中に入れ、俺も教室を出る。

今日はバイトもないし、CD買ったら届けに行くか。凛と会えるかも。

そう思うと自分の胸が高鳴る。

 

 

 

なんだ、俺も……寂しがってるんだ。

 

 

 

 

 

 

CDを購入した俺はそのまま凛の家に向かう。

早く聴きたいが今はノートを届けて、凛に会っていろんな話をして……と考えていると花屋の前に着いた。

店の外には凛の母さんが花に水をやっている。

俺に気づいた凛の母さんは、笑顔で挨拶してきた。

 

凛母「あら?毅くん、こんにちは♪今日はバイトないのにどうしたの?」

 

毅「こんちは。凛、います?」

 

凛母「あらあらぁ〜?凛に会いに来てくれたの?最近あんまり話せてないから寂しくなっちゃった?」

 

毅「……ノート渡しに来ただけっすよ。」

 

ニヤニヤと顔を覗き込む凛の母さんに、俺は本心をあっさり見破られた。少し動揺したが平然を装いながら言葉を返す。この人エスパー?

 

凛母「でもごめんなさいね?凛は今日も遅くなるらしいのよ。せっかく会いに来てくれたのに……。」

 

凛の母さんが申し訳無さそうに謝罪する。

まぁしょうがないか。今はかなり忙しそうだし。

 

毅「いえ……。ノートよろしくお願いします。それじゃ、また。」

 

凛母「ありがとね!ちゃんと凛に渡しておくわ♪」

 

凛の母さんにノートを預け、俺は家に帰る。この空虚感は何なんだ?

 

CD聴いて今日は早く寝るか。なんか疲れた。

 

 

 

 

 

その日の夜、早めに布団に入った俺だが何故か全然眠れない。

文字を読んでたら眠くなるだろうと、本を読むために部屋の電気を点けようとしたがめんどくさくなってやめた。何を必死に寝ようとしてんだ俺は。

 

寝る前にはあまり良くないが、代わりにスマホを見る。すると俺は自然と電話帳を開いた。そこには凛の電話番号が表示されている。

指が発信ボタンをタップしようとするが、直前に思い留まる。

 

時間は夜22時。凛も疲れているだろうし、迷惑だろうと勝手に理由付けてスマホの電源を落とし目を閉じる。

 

あ、なんか今なら寝れそうだ。明日は土曜日だし昼まで寝るか。

心のモヤモヤを忘れるように、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン……

 

部屋のインターホンの音で俺は目を開ける。

時計を見ると0時を回っている。誰だよこんな時間に……!

のそのそとベッドから起き上がり、まだ眠い目を擦りながら玄関のドアを開ける。俺の睡眠を邪魔した罰だ。一言文句言ってやる。

 

ガチャ

毅「オイ、こんな時間に何のーー」

 

凛「あ、寝てた?ごめんね?」

 

毅「えっ……」

 

扉を開けた俺は、その光景に言葉が出なかった。

そこにはマンションの通路の灯りに照らされ、クスッと笑った凛が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

毅「こんな時間にどうしたんだ?」

 

凛「毅に会いに来たんだよ。」

 

現在、凛は俺の部屋に入っている。時間も時間だが、話がしたいとの事だったので部屋に上げた。

先程から部屋の中をキョロキョロと見回す凛。なんか恥ずかしいからやめてくれない?

 

 

毅「明日じゃダメだったのか?それにこんな遅い時間に出歩くのは感心しねーな。」

 

凛「すぐ会いたかったの。それに、毅に電話しても出てくれなかったもん。」

 

凛の言葉にハッとしてスマホの電源をつける。すぐにホーム画面が映り、そこには凛からの着信が入っていた。

 

毅「すまん……。電源切ってたわ。」

 

凛「もういいよ。……今こうして会えたんだし。」

 

そう言って少し笑った後、凛はコーヒーを飲む。その顔はどこか嬉しそうだ。

俺もコーヒーを一口飲む。さっきまで寝るのに必死になっていたが、今はずっと起きていたい。凛とずっと話していたい。

 

凛がコーヒーの入ったマグカップを机の上に置くと、あるものに目を向けた。

 

凛「あっ、CD買ってくれたんだ?」

 

そこには発売したばかりの3人のCDがあった。

 

毅「ああ、学校終わって買いに行ったよ。いい歌だな。」

 

凛「そっか……。なんか恥ずかしいかも。でもありがとう。」

 

凛が照れを隠すように、下を向いて髪を弄る。

歌ってる本人の前で、CD買ったって伝える俺も恥ずかしいんだが。

 

すると机を挟んで正面に座っていた凛が立ち上がり、俺の隣に座った。

何?どうした?

 

驚いている俺に凛がクスッと笑った後、話し出した。

 

凛「最近慣れないことばかりでさ。新しいことに挑戦できるのは嬉しいんだけど……ちょっと疲れちゃった。」

 

そう言った凛の顔には、確かに疲労の色が出ていた。

 

普通の高校生だった凛がたった二ヶ月で、アイドルとしてテレビやラジオ、イベント等でファンの前に立っている。

ただの一般人の俺には想像もつかない程の緊張やプレッシャーを感じていたのだろう。

こんな弱っている凛の姿始めて見たな。

 

 

隣に座っている凛の頭を、俺は無意識に片方の腕で抱き寄せた。

 

なぜそんな事をしたのかは分からない。だが、今の凛を見ていたらそうしないと、そうしたいと思ってしまった。

「きゃっ」と驚く凛。俺の胸の辺りには凛の頭がある。

 

毅「凛はすげえよ。アイドル、頑張ってんだな……。しんどいと思うけど、無理はするなよ?」

 

凛に労いの言葉をかける。今の俺には、凛に言葉をかけてあげるくらいしか出来ない。そんな無力な自分に腹が立つ。

 

少しの沈黙が流れる。途端に自分の今の状況が恥ずかしくなってきた。

しかし、その沈黙を凛が破った。

 

凛「ふふっ、ありがとね。私、これからも頑張るよ。だから……ずっと見ててね?」

 

凛が俺の顔を見て微笑む。

その顔は見ている者を虜にするような、魅力的な笑顔だった。

 

凛「それに、疲れてたけど……今元気になったよ///」

 

小声で呟く凛。

俺の顔が熱を帯びたのが分かる。今になって凛のシャンプーのいい香りが鼻をつく。

それに凛、その顔と台詞は反則だ……。

 

 

 

 

しばらくそのままの姿勢で話をしていた俺達。

しかし、時計を見るともう2時になろうとしていた。

流石に夜も遅い。凛を家に送るか。

 

毅「もうこんな時間か。凛、家まで送ってくわ。」

 

凛「大丈夫だよ?今日は泊まってくって親に言ったから。」

 

毅「……は!?」

 

 

 

凛の言葉に俺はしばらく固まったままだった。

 

 






鼻水が止まりません☆
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。