シンデレラ達とのストーリー   作:テリアキ

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15話

 

 

 

武内P「ーーそうでしたか。お二人を助けていただき、ありがとうございました。」

 

毅「い、いえ!とんでもない!」

 

未央「やるじゃんタケっち!」

 

346プロ事務所内に連れられた俺は、現在応接室で武内さんと未央の3人で話している。ありすと仁奈がここに来るまでの経緯を説明してくれ、未央が俺のことを怪しい者ではないと話してくれた。

おかげで不審者扱いは免れ、こうやって武内さんからお礼の言葉をかけられるまでになった。

いやホント大した事はしてないんですが……。

 

にしても、一般人の俺が事務所に入ってもいいのだろうか?セキュリティどうなってんの?何もしないけどさ。

まぁ入れる機会なんて一生のうちで今回だけだろな。と思って応接室の中をキョロキョロ見回す。

 

すると、壁に貼ってあるポスターの数々が見えた。アイドルや芸能界に疎い俺だが、何人かテレビや雑誌で見た人がいた。

ポスターを順に見ていくと、端の方にニュージェネの3人のポスターがあった。

最近貼られたのであろう、まだ真新しいポスターをジッと見ていると未央がそれに気づいた。

 

未央「もー、タケっち見過ぎ!なんか恥ずかしいじゃーん!」

 

毅「安心しろ。卯月と凛を見ていただけだ。」

 

未央「もっと興味持たんかー!」

 

このポスターで未央だけ見ないってのは逆に難しくね?

 

武内P「お二人はお知り合いとのことですが、随分と仲が良いのですね。」

 

未央「そーなんだよ!でもタケっちはしぶりんとの方がラブラブだもんね?」

 

毅「アホか。ただの友達ですよ。凛とはクラスメイトです。」

 

武内P「渋谷さんの同級生でしたか。……いつも渋谷さんがお世話になってます。」

 

毅「なんか親みたいですね?」

 

武内P「……プロデューサーとはそういうものです。担当するアイドル全員が宝物のようなものですから。」

 

未央「おおっ!プロデューサーいい事言うね!じゃあ未央ちゃんも可愛い娘ってことかな?」

 

武内P「え、えぇ……まぁ。」

 

未央「なんで困った顔するの!?」

 

ギャーギャー騒いでいる未央はさておき、この武内さんはとても良いプロデューサーだと思った。アイドルやそのプロデューサーの事はど素人な俺だがこの人は凛を含めたアイドル全員を大切に思っている、そう感じた。……見た目はめっちゃ怖いけど。

 

この人なら安心だな。凛や未央達を途中で見捨てる事は絶対にしないだろう。必ずトップアイドルまで育ててくれそうだ。

 

毅「武内さん、俺が言うのも何ですが……凛をよろしくお願いします。」

 

武内P「……はい、もちろん。浅村さんも渋谷さんを応援し、支えてあげてください。」

 

毅「了解です。」

 

未央「未央ちゃんも応援してね?」

 

毅「当たり前だろ。」

 

 

それから武内さんは凛達の仕事中の事や、レッスン中の様子を話してくれた。俺が知らない、アイドル活動中の凛の事を聞いてなんか新鮮な感じがした。学校やバイト先での凛しか知らなかったしな。

 

いろいろ話していると、応接室の扉が開いた。

そこには少し元気のない仁奈が立っていた。

どうした仁奈!?なんでそんなに泣きそうなんだ!?

 

仁奈「プロデューサーさぁん、事務所に誰もいやがらねーから、寂しいでごぜーますよ……。」

 

武内P「市原さん!すみません、もう少しで自分は営業の方に行かなければならないので……。」

 

仁奈「そうでごぜーますか……お仕事はしかたねーです……」

 

未央「仁奈ちゃん!未央お姉ちゃんと一緒に遊ぼう?」

 

仁奈「ホントでごぜーますか!?嬉しいですよー!」

 

仁奈が未央と遊べるとなって、キャッキャと喜んでいる。可愛い。

そーいや仁奈はこの後何もないのか?

小声で武内さんに質問する。

 

毅「仁奈はこの後仕事やレッスンは無いんですか?」

 

武内P「ええ、ですが親御さんが迎えに来るまでは事務所にいてもらってます。今日みたいに一人で帰るのは危ないので。」

 

毅「俺みたいなのがいるから?」

 

武内P「い、いえ!何もそのような事は!」

 

この人ホント冗談通じないよな。未央にかなりいじられてんだろなぁ。

武内さんとヒソヒソ話していると、仁奈がこちらに近づいてきた。

 

仁奈「毅おにーさんも一緒に遊びやがるですよ!」

 

毅「よし、今すぐ遊ぼう!めっちゃ遊ぼう!何するんだ?おままごとか?なら仁奈のお父さん役は兄ちゃんに任せろ!」

 

仁奈「やったー!毅おにーさんと遊べるですよー♪」

 

未央「……タケっちって、もしかしてロ◯コンさん?」

 

毅「違う。断じて違う。」

 

なんて失礼なヤツだ。仁奈は妹のような、娘のような……とにかくそんな感じだ。邪な感情は無い!

 

てか勝手に遊ぶって決めたけど、部外者の俺がここにずっといるのはマズイか?

と思って武内さんを見ると、そんな心配は杞憂だった。

 

武内P「構いませんよ。浅村さんにはご恩がありますし、むしろ市原さんが喜んでいるのでこちらとしても有り難いです。」

 

武内さん、アンタやっぱいい人だわ!

 

未央「よし!それじゃ3人で遊ぼー!」

 

 

 

 

 

それから俺達3人は日が暮れるまで遊んだ。おままごとしたり、346本社を探検したり、346カフェでお茶したり。終始、仁奈は喜んでいた。

 

今は事務所内のソファーに座って、仁奈が俺の膝を枕にして寝ている。遊び疲れたのだろう。すやすやと寝息を立てている。天使か!

 

 

……そーいやアイツもこうやってよく俺の膝で寝てたな。

 

過去を懐かしんでいると、未央がニコニコした顔で話しかけてきた。

 

未央「それにしても、タケっちって面倒見良いよねー?仁奈ちゃんがめちゃくちゃ懐いてるし!」

 

毅「ん?ああ、俺も妹がいたからな。これくらいの子の扱いは慣れてるよ。」

 

未央「ふーん。……ん?"いた"って……」

 

毅「去年、交通事故で亡くなったよ。」

 

未央「え!?ご、ごめん!私、デリカシー無かった!」

 

毅「いいって。知らなかったんだし気にすんな。」

 

落ち込む未央の頭をポンと叩く。

 

そう、未央が落ち込む事はない。もう過ぎた事なんだ。

ホントお前もいいヤツだよな。

湿っぽい空気が流れていたので話題を変えようと、まだ元気のない未央に話を振る。

 

毅「そ、そういや未央は今日オフじゃなかったのか?凛はオフだって言ってたけど。」

 

未央「へっ?あー、今日は私もオフだったんだけど、ヒマだったから事務所に遊びに来てたんだ!で、プロデューサーとお昼食べに行こうと思ったら、タケっちがありすちゃん達といたからビックリしたよ!」

 

よし、いつもの未央に戻ったな。作戦成功だ。

 

毅「ふーん、でも未央も体は大事にしろよ?これから忙しくなるんだし。」

 

未央「そだねー、来月末には346オールスターライブがあるし……」

 

毅「オールスターライブ?」

 

武内P「ええ、346プロダクションオールスターライブです。」

 

毅&未央「うわっ!?」

 

いつの間にか営業から帰ってきた武内さんが俺達の後ろに立っていた。

全く気配が無かったぞ?何者だこの人……。

膝の上の仁奈を見るとまだ寝ている。よかった、起こしてしまうとこだった。

 

未央「プロデューサー!?帰ってきたなら言ってよ!」

 

武内P「す、すみません……。言おうと思ったのですが、お二人がライブの話をしていたもので、つい。」

 

毅「だ、大丈夫ッス。それで、オールスターライブって?」

 

武内P「346プロに所属するアイドル総出演でのライブです。」

 

未央「私達ニュージェネは初のライブだからね!気合い入りまくりだよ!」

 

未央の顔がやる気に満ち溢れている。

ライブか、俺は今までライブやフェスに行ったことがないからどんな感じなのかはわからん。

テレビの芸能ニュースなどでたまに見たことある程度だが画面の中ではいまいちどんな規模か想像できない。

 

毅「ライブねぇ、やっぱファンが大勢来るんだろな。」

 

未央「みんな未央ちゃんの勇姿を見に来てくれるからね!当日は満員かな?」

 

毅「自信満々じゃん。その感じだと未央は大丈夫っぽいな。」

 

未央「えへへー♪そだ、タケっちも見に来なよ!」

 

毅「見に行きたいがチケットはまだ取れるのか?」

 

武内P「残念ながら、チケットは即完売でした。」

 

未央「ええー!?じゃあタケっち来れないの!?それじゃしぶりんも悲しむよー!」

 

何故そこで凛が出てくるのよ。てか凛からライブがあるなんて聞いてないぞ?

 

毅「しょうがないですね。次回のライブがあれば行きますよ。」

 

武内P「すみません……。私も関係者席に入れるかどうか上に掛け合ってみます。」

 

毅「いやいや!そこまでしなくていいッスよ!」

 

凛達がステージの上で歌っているのを生で見てみたかったが、こればかりは仕方がない。

DVD出ねーかなぁ……。

 

??「あ、プロデューサーさん!探しましたよ!」

 

俺が残念がっていると、そこへ緑色の事務服を着た女性が入ってきた。綺麗な人だがこの人もアイドルか?

ボーっと見ていると目が合った。

 

??「あら?こちらの方は?」

 

武内P「ああ、こちらは浅村毅さんです。実はーーー」

 

 

??「まあ、そうでしたか!私は千川ちひろと申します。346プロで事務員をしています♪ありすちゃんと仁奈ちゃんがお世話になりました!」

 

毅「い、いえ!どうもです……。」

 

ちひろ「お礼に……ハイッ!スタドリとエナドリを差し上げますね♪」

 

ちひろさんは懐から栄養ドリンクのようなものを2本取り出し、俺に手渡した。

こんなドリンク初めて見たんだが変なモン入ってないよな?ちょっと怖いんですが。

 

武内P「千川さん、それで私に何かご用ですか?」

 

ちひろ「そうなんです!実はオールスターライブの件ですが思ったより規模が大きくて、当日のスタッフ数が少し足りないみたいなんです!」

 

未央「それは一大事だ!確かにスタッフさん居なかったら色々大変だよね!」

 

武内P「ですが、今からですと何人探せるかわかりませんね……」

 

3人がライブの事であーだこーだ話している。

ライブ一つやるのも大変なんだな。アイドル以外にも裏方さんがいて初めてライブができるのか。

蚊帳の外になった俺は寝ている仁奈の頭を撫でる。

そーいやライブにはありすや仁奈も出るのか?それならめっちゃ行きたいんだが!しかしチケットが無い俺は入ることができない。

何で凛は早く教えてくれなかったんだ!怨んでやる!

 

一人でここにいない凛にイライラしていると、先程まで話していた3人が一斉にこちらを向いた。なんだなんだ?

 

未央「タケっち……そうだタケっちがいいんじゃない!?」

 

ちひろ「そうですね!今は一人でも多くの人員が必要ですし♪」

 

毅「ちょ、何のことですか?」

 

武内P「浅村さん、ライブ当日……スタッフとして参加していただけませんか?」

 

毅「……マジっすか?」

 

 

 

武内さんの提案に仁奈を撫でる手が止まった。

 

 






この作品で出てくる346プロのアイドルは全員同じ部署です。
武内P過労死しそう。

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