ライブスタートです。ですが先に謝っておきます。
作者はまだライブ参戦したことありませんので、イメージで書いてます。
なのでそんな演出ねーぞ!とかサイリウムの色が違う等といった指摘があるとは思いますがご了承ください。
6th行きたかったなぁ……
左手に着けている腕時計を確認すると午後6時になったところで、会場の中がほのかに暗くなった。
ザワついていた観客達の声が静まり、静寂が中を包む。
そんな時、ステージにスポットライトが当てられた。
光の中には4人のアイドルが立っていた。
それを確認したファンの歓声が会場の中に響いた。
美嘉「皆んなー!おっ待たせー!」
楓「皆さん、今日は私達のためにお越しいただきありがとうございます。」
まゆ「室内ですが、ちゃんと水分補給を忘れずに。楽しい時間を過ごしましょうね♡」
瑞樹「それじゃあ早速、346プロオールスターライブ……始めるわよー!」
観客「うおおおおおおお!!!」
美嘉「まずは全員でこの歌から!お願いシンデレラ!」
美嘉のタイトルコールで舞台袖から続々とアイドルがステージに踊り出る。
かなりの人数だが、皆んな一糸乱れずに歌いながら踊っている。
ファンの歓声、コールもそれについて行っている。
地響きのようなそれらは、まるで戦場にいるかのような錯覚を引き起こす程の衝撃だった。
その光景は正に圧巻だ。
それを見た俺は自然と呟いた。
毅「すげぇな……。」
今俺は会場の一番後ろの出入り口付近でライブを見ている。
武内さんから舞台袖や関係者席で見てもいいと許可が出たが、こうやってライブ会場に連れて来てくれただけで充分だった。
なので、それを丁重に断り出入り口の少し空いたスペースで見ることにした。
346プロ総出で歌うお願いシンデレラとファンの歓声に圧倒されながらも、俺の目は自然と一人のアイドルに向けられる。
まだまだ新人だからか左端のほうでどこか緊張しながら、それでいて楽しそうに歌う渋谷凛の姿に。
凛が歌う姿を見るのはこれが初めてだった。
普段凛に会うたび愛想がないとよく揶揄っていたが、今はそんなことは思わない。心の底から楽しんでいるんだろう。俺が見たことない笑顔でファンの声援に応えている。
ああ、これがアイドルの姿なんだな。
全体曲が終わり、ソロの曲が次々に歌われる。
ファンの歓声も変わらぬどころかなおヒートアップしている。
アイドルもそうだが、ファンの凄さにも驚かされていたところに、背後から誰かに肩を叩かれた。
武内P「どうですか、初めて見るライブは。」
いつものような無表情の中にも少し誇らしげな顔をした武内さんが俺に問いかける。
毅「いや……圧倒されたというか、衝撃的というか…とにかく言葉では表せないくらい凄いって思いました。」
武内P「そうですか。そう言って頂いて私も嬉しく思います。」
俺の隣に立った武内さんはそう答えて目線をステージに向ける。
ステージの上では速水奏が妖艶なパフォーマンスを披露していた。
俺はファンの人達とステージの上にいる速水奏を見た後、武内さんに問いかけた。
毅「武内さん…ひとつ聞いていいですか?」
武内P「ええ、なんでしょう?」
毅「武内さんはこのライブを見てどう思いますか?」
武内P「どう…とは?」
毅「確かに、これだけライブを盛り上げてるアイドル達は凄いと思います。でも、そのアイドルをここまで育てたのは武内さんですよね?俺はライブ初参加の一般人でただただ凄いとしか思えてないですけど、プロデューサーから見るこのライブってどういう感じなんですか?」
俺の問いかけに武内さんは少し考える素ぶりを見せた後、ゆっくり答えた。
武内P「そうですね…浅村さん、ここにいるファンの方々の顔を見てください。」
毅「顔、ですか…?」
周りにいるファンの人達に目を向ける。
どの人も目を輝かせ、ステージの上のアイドルに声援を送っている。
毅「とにかく、皆んなすっごい笑顔ですね。」
武内P「そうでしょう。確かにこの笑顔を作り上げているのはアイドルの皆さんが一生懸命頑張っている成果です。ですが、私がアイドルの皆さんのプロデュースを蔑ろにしていたら少なくともこのような光景は見られてなかったと思います。少しおこがましいかもしれませんが。」
毅「いや、そんなことはないと思いますよ?」
武内P「ありがとうございます。なのでライブを見る度に改めて実感するんです。ああ…アイドルでなくとも人々を笑顔にできるのだと。」
今の武内さんの顔は誰が見ても分かるような誇らしげな顔をしていた。
毅「人々を笑顔に…。」
武内P「それがプロデューサーの役目でもあり、醍醐味でもあります。」
武内さんの答えを聞いた俺は、胸の中が熱くなった気がした。
しばらく武内さんと並んでライブを見ていると、ステージの上には唯の姿が見えた。
唯「イェーイ!ここからは唯の出番だよー♪皆んな一緒に盛りあがろーねー!」
観客「ワアアアアァァ!!」
唯「じゃいっくよー!Radio Happy!」
軽快なリズムと共に唯が歌い、踊る。
アップテンポな曲が唯によく似合う。
唯のパフォーマンスは見ているこちらが踊りたくなるくらい、観客を楽しませる。
そんな時、歌の途中で唯がダンスをやめて真っ直ぐ手を伸ばした。スクリーンにはどこかはにかみながら歌う唯の顔が映る。
唯「大好きな、君に届けたいよ〜♪」
そんな唯を見たファンの歓声は今日一番と思えるくらい会場の中に響いた。
曲が終わりに差し掛かり、唯が色んなポーズを決めている。
やっぱ唯はどんなポーズでも映えるなぁと思っていると、最後に唯が投げキッスをした。
これにもファンは大盛り上がり。オレンジのサイリウムがブンブン振られている。
しかし、さっきの手を伸ばして歌った時といい、投げキッスといい…
俺の方に向けられた気がしたのは本当に気のせいだろう。……気のせいだよな?
唯は俺がどこにいるかは知らないはずだしな。
自分でも自意識過剰気味なことを考えていると、唯の曲が終わりまたもや大歓声に包まれる。
手を振りながら舞台袖に帰っていく唯を見ながら俺も大きく手を振る。
そんな時、唯がこちらを向いて嬉しそうに両手を振りながらピョンピョンと跳ねた。
え、もしかして本当に気づいてたのか?
まさかなぁ……。
ー舞台裏ー
唯「楽しかったぁー!もうサイコー!」
美嘉「唯!お疲れー!めっちゃ良かったよー☆」
唯「ありがとー!唯、頑張ったよ♪」
舞台裏に帰ってきた私を美嘉チャンが労ってくれた。
やっぱりライブは最高だね♪すっごく楽しい!
椅子に腰掛けてペットボトルに入った水を飲む。
火照った体を冷やそうとするが、全然治らない。
曲の途中で幾つかアドリブを入れちゃった。
ダンサーの皆んなは戸惑いながらも最後まで踊ってくれた。
やっぱりプロなんだな、凄いや!
タケちゃん気づいてくれたかな?くれたよね?
手をいっぱい振り返したらポカーンとしてたし。
唯の精一杯の気持ちだよ!ファンの皆んなと、大切な貴方に。
思い返してみてもドキドキが止まらない。
体の火照りはこれが原因かな?なんちゃって♪
しばらく余韻に浸っていると、舞台裏にある扉が開いた。
中からは次の次にステージに上がるニュージェネレーションズが出てきた。
卯月「あっ!唯ちゃん!お疲れ様です!ステージ凄かったです!」
唯「アリガトー!卯月ちゃん達も頑張ってね!」
未央「任せてよ!ニュージェネの本気をお見せしましょうぞ!」
唯「アハハ♪未央ちゃんは大丈夫そうだね!」
卯月ちゃんと未央ちゃんを激励した後、二人から少し離れて入ってきた凛ちゃんに目を向ける。
真っ直ぐな瞳、背筋がピンと伸びた堂々とした佇まい。それは新人アイドルとは思えない程だった。
やっぱり凛ちゃんは凄いなぁ。
凛ちゃんのそんな姿に目を奪われていると、向こうから声をかけられた。
凛「唯、お疲れ様。やっぱり唯のライブは盛り上がりが違うね。凄いや。」
唯「アリガト!でもこう見えてめっちゃドキドキだったんだよー?」
凛「そりゃああんなアドリブしたらね。私なら恥ずかしくて舞台袖に帰っちゃうかも。」
唯「やっぱ凛ちゃんは気づいてたんだねー。」
凛「もちろん。でも同性の私がドキッとするくらい可愛かったよ。」
唯「ホント!?なら唯と付き合っちゃいなよー♪」
凛「私好きな人いるんだ。ごめんね?」
唯「ちょ、冗談だって!てか凛ちゃん知ってるクセにー!」
凛「ふふっ。ごめんごめん。」
凛ちゃんとお互いに笑い合う。
そうしてる内にスタッフさんから声がかかる。
スタッフ「ニュージェネレーションズさん!そろそろ所定の位置に着いてください!」
凛「出番だね。それじゃ、行ってくるよ。」
唯「うん!頑張ってね!」
凛「あっそうだ、ニュージェネの後ちょっとしたサプライズあるから。」
唯「サプライズ?」
凛「まぁ楽しみにしててよ。」
手を振りながら凛ちゃんが舞台袖に向かう。
サプライズって何だろう?
ニュージェネの次は10分の休憩時間だ。
そこで何かするのかな?
私がウンウンと頭を悩ませていると、凛ちゃんが途中で足を止めて、私の方に振り返った。
凛「私、唯に負けないから!」
そう言った凛ちゃんの姿は凛々しくて凄く魅力的だった。
私の心も昂ぶってきた!
唯「お手並み拝見だー!凛ちゃんの本気を見せてみろ!」
凛ちゃんは私の言葉に頷いた後、また舞台袖に向かった。
相手にとって不足なしだね!
頑張れ!唯のライバル!
心の中でそう呟くと、私はステージを移すモニターに目を向けた。
美嘉「青春してるねぇー。……いいなぁ。」
次回ニュージェネのライブ回です。
ライブの様子を書くのって本当に難しいですね。