出遅れた学校生活も1週間が過ぎ、明日からGWとなった。
この1週間で仲良くなった友達は結構いるが、なんだかんだで一番仲良いのは凛だ。
クラスの男子からは
「あ、浅村!渋谷さんとはどどういう関係だ?」
「まさか付き合ってないよな?そうだよな?な?」
「こ、今度渋谷さん誘って遊ばないか?」
「貴様ぁ!抜けがけは許さんぞぉ!!」
等としつこいくらい聞かれた。
俺と凛はあれから毎朝一緒に登校し、一緒に帰っている。男連中から俺らが付き合っていると思われるのは仕方ないかもしれないが、俺達はただの友達だ。
まず凛みたいな魅力的な女の子と、年齢イコールDTの俺なんか相応しくないと思っている。……自分で言って悲しくなるな。
俺と凛がこうやって話すようになったのも、たまたま俺が道に迷っていたからであって、普通に入学式から過ごしていれば、仲良くなっていたかは分からない。
凛とクラスの男子の関係を見ると、たぶん話しすらしてなかっただろな。
そんなことを思っていると、帰りのHRが終わった。よし、帰るか。
荷物をまとめていると、凛が(先行ってて)と目配りしてきた。
…目だけで会話できるとか忍者かな?
凛「ねぇ…、毅はGW何するの?」
毅「毎日勉学に励むに決まってんだろ。学生の本分忘れんな。」
凛「バイト情報誌を食い入るように見てなかったらすごいと思ったんだけどな…。」
今俺達は喫茶店でお茶している。最近、凛と帰りにどっか寄るのが定番になっている。
俺はというと、今はバイト探しに夢中だ。一人暮らしだから、何かと金がいる。おっ、ここ自給いいな…って18歳以上かよ。18歳がそんなに偉いか?ああ?
凛「今お金無いの?家賃とか食費はどうしてるの?」
毅「あー……まぁ親からの金はあるんだが、あまり使いたくなくてな。なるべく自分の金で払いたいんだよ。」
凛「へぇー、偉いじゃん。…この前はケーキ奢らせてごめんね?今日は私が出すよ。」
…こいつ意外に義理堅いとこあるんだよな。
毅「気にすんな。必要経費だ。」
凛「社長じゃないんだから…。」
苦笑いする凛。しかし、本当に気にしなくていいのに。あれは俺が悪かったのは事実だ。
それに、まだ高校生とは言え、俺も男としてのプライドがある。女の子に奢ってもらうことには抵抗がある。
だから凛とこういう時に気を遣わせないってのも、バイトする理由の一つだ。決して貢ぐためじゃないからな?
毅「しっかし、なかなかいいバイトねぇな。これじゃ決まらねーわ。」
凛「何かやりたいバイトってあるの?」
毅「いや、自給がそこそこあって高校生OKならなんでもいいわ。」
この際、ワガママいってられないと思う。誰か、俺に職を…!
凛「…ちなみにうちの学校、基本的にバイト禁止だからね?」
毅「浮気もバイトもバレなきゃ問題にならねぇよ。」
凛「うわっサイテー。毅は浮気するんだ。」
毅「相手居ねーのに浮気もクソもあるか。物のたとえだよ。たとえ。」
凛「もし相手ができたらその人が可哀想。こんな節操無しなんて。」
毅「いや実際できたらしねーよ!」
凛「どうだか…。」
凛はジト目でオレンジジュースを啜る。…何ムキになってんの?お前は俺の彼女か?勘違いするぞ?
凛「…話変わるけどさ、毅は将来何になりたいとかあるの?」
毅「急にどした?」
凛「んー…ちょっと気になっただけ。」
俺は情報誌をパタンと閉じる。
…ふむ、将来か…。
毅「まだ何も考えてねーなぁ…。夢もなけりゃ、夢中になってる事もないしな。このまま普通に社会の歯車になるんじゃねーの?」
凛「毅ってスポーツできるし、意外に勉強もできるでしょ?それに、この前の美術の授業で絵も上手かったじゃん。何でもできるのに勿体ないね。」
毅「器用貧乏っていうやつだよ。…てか凛の方はどうなのよ?お前もたいてい何でも得意じゃん。愛想は無いけど。」
凛「うるさい。……実は、私もつい最近まではなりたいもの、熱中してることもなかったんだよね。」
暗い顔をして凛が呟く。
まぁこの歳ではそんなもんだろう。まだ高校1年生。まだまだ子供だ。……ん?最近までは?
毅「ってことは、最近なりたいもの見つけたのか?」
凛「んー…、ナイショ。」
毅「そこまで言っといて内緒はねーだろ…。」
凛「まだ言いたくないの。女の子にはいろいろあるんだよ。」
毅「…あぁ、あれか。お嫁さんか。頑張れよ。」
凛「はぁ?何言ってんの?…私がお嫁さんとか言うと思う?」
毅「凛だって愛想は無いけど女の子だろ?だからお嫁さんになりたいって思うのは別におかしくないんじゃねーの?愛想ないけど。」
凛「無愛想で悪かったねっ…!ていうか愛想無い言い過ぎ!」
毅「冗談だよ。悪い悪い。」
凛「…無愛想な私は良いお嫁さんなんてなれませんよ!結婚なんてできないかもね!」
毅「いや、それはねーだろ。凛って美人だし、意外に優しいとこあるし。」
凛「ちょっ……!い、いきなり何!?///」
凛が結婚できないのは有り得ないと思う。
今現在、クラスの男子から熱い視線を送られているしな。学年関係無く、凛が廊下を歩けば男子が振り向く。
道に迷ってた俺のために、わざわざ朝ランニングや学校まで着いて来てくれる優しい所もある。引く手数多だろう。
凛「ストレート過ぎるよ…!
……で、でも…ありがと…///」
こーやって照れる所が可愛いのもポイント高い。眼福眼福…。
凛「…何ニヤニヤしてんの?殴るよ?」
毅「すぐ手を出そうとするのは治しましょうね?」
からかい過ぎると怖い。
凛「結局バイト決まらないんだね。」
毅「マジでどうすっかなー…。」
今俺達は、喫茶店を出て家に帰っている。
この後、凛は用事があるらしいので、今日はいつもより早く別れる。
毅「この際新聞配達でもするかねー…。」
凛「朝走るのに、新聞配達は大変だね。」
毅「いや新聞配達になったら、朝走るのはやめようかなと。」
凛「え!?何で…!?」
毅「単純にキツいと思ったから。なんなら、配達で走らせてもらえたらそうしたい。」
朝早く起きて、新聞配達終わった後ランニングするのはかなりキツそうだしな。
凛と初めてランニングしてからも、毎朝凛とハナコと一緒に走っている。新聞配達が決まったら、この日課も終わりかぁ…。
などと考えていると、凛が怒った顔で文句を言ってきた。
凛「…新聞配達はダメ!絶対ダメ!」
毅「なんでだよ…。もう新聞配達くらいしかないんだっての。」
凛「他にまだあるかもしれないでしょ?私も一緒に探すからさ!」
何故凛は新聞配達を頑なに否定するんだ?俺だって、まだ日が昇ってない時間に起きるのは嫌だが、生活していくためだ。仕方ない。
毅「凛はなんでそんなに否定するんだ?何か理由あんの?」
凛「そっ…それはっ…!その…」
毅「…あー、俺と一緒にランニングできなくなるのがそんなに嫌なのか?悪いな。まぁ寂しいとは思うが、学校でいつでも…」
凛「……そうだよっ!悪い!?」
毅「……え?」
顔を真っ赤にして凛が言ってきた。え?冗談のつもりだったんだけど…
凛「あっ……なんでもない!なんでもないから!」
そう言った後、凛はシュンとなって俯いた。
こんな事を言ってくれるという事は、凛は俺との朝の日課を少なからず楽しいと思ってくれていたんだろう。
なんだろう…すげー嬉しいぞ…!
毅「…やっぱ新聞配達はやめとくか。寝坊して怒られるのがオチだろうしな。」
凛「…別にやったらいいんじゃない?お金稼ぐためなら仕方ないじゃん。」
毅「いやー…、その…なんだ。俺も凛と朝会えないのは、少し寂しいわ。」
凛「…えっ?」
毅「さて、新しいバイト探すか!凛も一緒に探してくれよ?」
凛「…うんっ。そうだね!」
よく見なければ分からない程だが、凛が笑った。
俺も素直じゃないな。
凛「…そうだ。良かったらウチの店聞いてみようか?」
毅「へっ…?」