毅「へぇ、本田さんと島村さんは凛と一緒にアイドルやってんのか。」
未央「なんか反応薄くない?もっとびっくりすると思ったのに!」
毅「まだピンとこないだけだ。」
先程凛の母さんが帰って来て、少し休憩していいとのことなので今は凛の家のリビングで4人で話している。
それにしても、凛がアイドルねぇ…。
卯月「凛ちゃんはなんで教えてあげなかったんです?」
凛「まだデビューもしてないし…ライブやテレビにも出てないからなんか恥ずかしくって…」
未央「えぇー?私はクラスの皆にすぐ教えたよ?」
卯月「私も、仲の良い子に伝えたらいつの間にかクラスの皆さんが知ってましたねー…。」
凛の話によると、アイドルとしてスカウトされたのは1ヶ月前だそうだ。
クラスの仲の良い友達は知っているそうだが、数える程度らしい。
コイツ意外に交友関係狭いもんな…。
そこでふと疑問に思う。
まだ知り合って1週間程度とは言え、毎日一緒に朝走ったり登下校したり、帰りには寄り道する仲の俺にはなぜ黙っていたのか?と。
…もしかして仲良いと思ってるのは俺だけか?
もしそうならすごいショックなんだが…。
未央「じゃあタケっちとしぶりんはそんなに仲良くはないの?」
タケっち?何それ俺のこと?どんなネーミングセンス?
凛「…っ!そんなことない!毅は私の大切な友達だよ!」
本田さんの質問に、凛が身を乗り出して答える。
お、おぉ…そこまで言ってくれるとは…。すげえ嬉しいけど、すげえ恥ずかしくなる。
凛も自分の言った事に恥ずかしくなったのか、ハッとして段々しおらしくなる。
そんな凛を見た島村さんは、眩しいくらいキラキラした目で俺達を見る。
卯月「へぇー!凛ちゃんと浅村さんって本当に仲良しさんなんですね♪」
凛「うぅ…///」
未央「…♪」ニヤニヤ
凛が恥ずかしがって下を向いている。その様子を本田さんがニヤニヤと見ている。
凛をこんなにするなんて…島村さん、ナイスだ。
卯月「じゃあ仲の良い浅村さんに内緒にしてたのはなんでですか?」
凛「…なんとなくだよ。タイミングが無かったってのもあるし。」
凛さんや、それはそれでどうなんですか?
そこで、先日の喫茶店での凛との会話を思い出す。つい最近までは、将来なりたいものや、今夢中になれるものが無かったと言っていた。
つまり、今は…そういうことだろう。良かったな。夢中になれるものが見つかって。
毅「島村さんと本田さんもデビューはまだなのか?」
未央「そうなんだよ〜…ていうか私の事は未央でも未央ちゃん♪って呼んで構わないよ?同い年だし!」
卯月「私も…卯月で構いませんよ!敬語も使わなくて大丈夫ですから♪」
毅「じゃあ卯月と本田さんで。俺の事も好きに呼んでくれ。」
未央「私変わってないんだけど!?…あっ!もしかして照れてる〜?このこのー!」
毅「…そーいや卯月は最初俺と目合わせてくれなかったよな?ちょっと傷ついたわー…。」
肘で俺の脇腹をグリグリしてくる本田さんを無視して、卯月に質問する。
本田、少し黙ってくれ。
卯月「ああぁ!すみませんっ!…正直、毅くんを最初見た時に…少しだけ怖そうだな〜って…本当、すみませんでしたっ…!」
毅「いや…慣れてるから大丈夫だ。今は平気か?」
卯月「はいっ♪凛ちゃんのお友達って分かって安心しました!」
毅「なら良かった。これからよろしくな?」
卯月「こちらこそ、よろしくお願いしますね!…男の子のお友達はあまりいないので毅くんとお友達になれて嬉しいですっ!
…えへへ♪///」
何この子天使か?…守りたい、この笑顔!
未央「……私を無視するなぁぁー!!」
痺れを切らした本田さんが叫ぶ。ちとやり過ぎたか。
毅「悪かったよ。…未央もこれからよろしくな?」
未央「フム…ま、優しい未央ちゃんはよろしくしてあげるっ!仲良くしようね?タケっち♪」
未央がはにかんだ笑顔で喜んでいる。
こうして二人の笑顔を見ると、アイドルなんだってのも何となく分かる気がする。
凛「……むー。」
俺が二人と話していると、凛が俺を睨んできた。
あの…凛さん?アイドルに相応しくない顔になってますよ?
未央「あー!しぶりんがヤキモチ妬いてるー!」
卯月「ヤキモチ妬いてる凛ちゃん…可愛いです!」
凛「ヤキモチなんて妬いてない!毅!仕事に戻るよ!」
毅「ちょ、凛!引っ張んなよ!痛っ!」
凛が俺を引きずりながら店の方に向かう。
お前こんなに力強かったの?段差に尻ぶつけてすげえ痛いんですけど…。
未央「にっしっしー♪これは楽しくなりそうだぞ〜?」
卯月「はいっ!毅くんと仲良くなれて良かったですね♪」
未央「……しまむーは本当にいい子だねぇ…。」
卯月「……?」
俺と凛が仕事に戻った後、未央と卯月が帰っていった。
帰る時に二人と連絡先を交換する事になったが、その時も凛が不機嫌そうにジッと見てきた。
連絡先を交換するくらい何がいけないんだ?…もしかして凛は俺の事…
…その先を考えるのは辞めた。有り得ねぇ。自意識過剰にも程があるだろ。
せっかく凛とこうして友達になれたんだ。これでいいじゃねーか。
あれだろ?「私の大切な友達に変な気起こすなよ」って事だろ?
心配しなくても、自称紳士な俺はそんな事しねえよ。
初めてのバイトが終わり、凛の母さんのご厚意に甘えて晩御飯をご馳走になった。その時に、花の配達から帰って来た凛の父さんに挨拶すると、なぜか泣きながら「凛をッ…!娘を頼むよッ…!」と懇願された。
凛の母さんはずっとニコニコしてたが、凛の方はそんな親父さんを見て若干引いた後親父さんにドロップキックをかましていた。
ご愁傷様です…。
凛「今日はお疲れ様。ごめんね、あんな親で…。」
毅「親父さんもお袋さんもいい人じゃん。こうやって皆んなで飯食ったの久しぶりだっから、俺も楽しかったよ。ご馳走さん。」
晩御飯をご馳走になった後、凛の両親にお礼を言い、俺達は店の外で話している。今日は色々あったが、とても充実した1日になった。
凛「未央と卯月もまた会いたいって言ってたよ。…モテモテだね。」
毅「揶揄うなよ…。友達としてって事だろ。二人にもよろしく言っといてくれ。」
凛「…うん。じゃあまた明日もお願いね?私は午後からレッスンでいないけど。」
毅「ああ、また明日。」
そう言葉を交わした後、俺は凛に背を向けて帰りだす。
…おっと、忘れてた。
店の中に入ろうとする凛を呼び止める。
毅「凛っ!……アイドル、頑張れよ。ずっと応援するからな!」
凛「……うんっ!私頑張るから!デビューするまで待っててね!」
驚いた顔をした後、凛も俺に笑顔でそう答えた。
手を振る凛の姿は、ステージ上でファンの声援に笑顔で応えるアイドルのように見えた。
…お前ならなれるよ。トップアイドルに。
凛「……ちょっと!二人とも見てたの!?そのニヤニヤした顔やめてよ!もうっ…!」
少し歩くと、凛の店の中からそんな声が聞こえてきた。
…俺も明日、凛の母さんにからかわれるんだろなー…。
反対意見を押し退け結婚式でtulipを踊る事に決定。