やっぱりウチのサンドバッグはバカで能無しだが打たれ強い! 作:A i
親愛なるシルビア・ホワイト様へ
今日をもってあなた様と僕とが出会って丁度一年になりますね。あなた様は覚えておいででしょうか。僕たちの運命の出会い。その日のことを。
あれは、僕がまだ中等部三年の春。十四才になってはじめての春でした。あのころの僕は人間不信に陥っていたのだと思います。毎日毎日繰り替えされる校舎裏での暴力、嫌がらせ、罵倒。教室の中でも、皆が僕のことを疎ましく思い、僕のことを避けるので、いないモノとして扱われる。毎日のように繰り返される地獄の日々に僕の心はすり減り、疲弊し切っていました。とにかく嫌だった。惨めでしかたなかった。だけど、臆病な僕にはどうすることもできなかった。いじめっ子達に何か一矢報いるような。そんな勇気をあの頃の僕は持ち合わせてはいなかった。だから、僕はひたすら耐えた。耐えて耐えて耐えて耐えて耐えた。時間がすべてを解決してくれると信じて耐えたのです。だけど、それも限界に近づいていました。心はとうにすり切れ摩耗し、もうこの世界に希望はないとさえ思っていました。ゴミのように惨めに死んでいくことを受け入れて何もかも諦めてしまおうかとも考えていた。でも、そんなとき。あなた様は現れてくれたのです。その日も僕は五人ほどのいじめっ子グループに袋だたきにされて、地面に這いつくばり、もがき苦しんでいた。何がそれほどまでに彼らをこの行為に向かわせのかいっそ不思議なほどに彼らは一心不乱に僕をいじめていました。一瞬たりともやまない蹴りや口汚い罵詈雑言。目をつむり、耳を塞ぎ、このまま消えてしまいたいと思ったそのとき、なぜか蹴りも罵倒も止んだ。僕は不思議に思いました。重いまぶたをゆっくりと上げ、目の前の光景を目の当たりにしたとき、僕は驚きのあまり言葉が出なかった。なんとそこにはあなた様がいたのです。いじめっ子達は当然鬼のような形相であなた様に飛びかかりましたが、あなた様は涼しいお顔で悪鬼のごとく荒れ狂ういじめっ子達をすべて返り討ちにしていく。僕はその光景を目の当たりにしてぼうっと見ていることしかできません。
しかし、その光景はありありと覚えています。暗い校舎裏でありながらそのときの僕にはあなた様が輝いているように、いや、その程度の言葉では言い表せない。言うなれば・・・そう、天使。天使のように思えたのです。僕を暗澹たる絶望に支配された地獄から救い出してくれた天使。それがあなた様です。あなた様がいてくれたから今の僕があるのです。
感謝しても仕切れないほどに僕はあなた様に感謝しております。そして、その感謝を伝えるため僕はその日からあなた様に忠誠を誓いました。この命は未来永劫あなた様のモノです。どうかこれからも末永くお使いください。
P.S 今日も道場でお待ちしています。
あなた様の忠実なる下僕シュンより
私は読み終えた簡素な手紙を元に戻しため息をつく。この手紙はラブレターでも何でも無い。ただの事務連絡用の手紙。毎日毎日私のところに届く手紙だ。そんな毎日の手紙でこのような長文を送りつけてくる奴を馬鹿と呼ばずになんと呼ぼう。しかも、本題である道場で待つの部分が一行って・・・・。危うく読み落とすところだった・・・。
「やっぱりあいつは馬鹿で無能だ・・・。」
はあ、ともう一度深くため息をつき、私は彼が待つという道場に向かって歩き出すのであった・・・。