エピローグ ゆかりサイド
時刻は22時40分
先程までの活気に満ちた部屋が、今は静寂に満ちている。
皆、帰宅したのである。
「百人一首、楽しかったなぁ」
パソコンの電源を入れながら、ゆかりは呟いた。
普段、ネット通話越しに会話をしながらゲームをすることは多々あるが、今日みたいに集まってテレビゲーム以外で遊ぶことは滅多に無かった。
「また、何かやりたいですね。次は何にしましょうか」
無邪気な笑顔を浮かべながら、次の遊びを思案するゆかり。
「まぁ、それはおいおい考えましょう。今は動画編集に集中しなくては」
思考を切り替える。
幸い明日は休日。気合いをいれて編集しようと思ったその時、
グゥ〜ッ
腹の虫が鳴いた。
「そういえば、帰宅してから何も食べて無かったですね。軽く何かお腹に入れましょうか」
立ち上がり冷蔵庫に向かう。たしか、楽しみにしてたみかんがあったはずだ。
そう思い冷蔵庫開けるが……
「あれ、みかんが無い。まだ食べて無かったはずなのに」
腕を組み、首を傾げる。
そんな時、ラインの通知が携帯に届いた。
「おや、こんな時間に誰でしょうか」
差出人は、きりたんから……いや、
『みかん、美味しかったどす。ご馳走様でした』
犯人からの連絡だった。
「ゆかりさんのみかんがああああああ!」
結月家に、絶叫が響いた。
エピローグ 東北姉妹サイド
「よし、送信完了」
携帯を閉じる。今頃ゆかりさんは絶叫している事だろう。
想像すると、笑いが込み上げてきた。
「楽しそうだねきりたん。ゆかりさんに、何の連絡したの?」
「お礼を言っただけですよ。みかんのお礼をね」
今度結月家に行く時は、何か持って行ってあげよう。
エピローグ 琴葉姉妹サイド
「お姉ちゃん、何の本を読んでるの?」
珍しく姉が本と睨めっこをしている。普段は漫画しか読まないのに。
「百人一首の本を、押し入れから出したんや」
返事をしながらも、目線は本から離れない。相当集中しているようだ。
「結局、ゆかりさんに百人一首で一回も勝てなかったからな。次は必ず勝つ為に、久々に勉強をしてるんや」
そう、百人一首はゆかりさんの全勝という結果に終わった。
最後の戦いは、枚数差2枚とお姉ちゃんも善戦したが、ゆかりさんには一歩届かなかった。
「お姉ちゃん、負けず嫌いだからね」
「せやで、次は必ずあのドヤ顔を歪ませるんや」
そう言うと、再び百人一首の本に集中するお姉ちゃん。
(邪魔するのも悪いか)
そっと部屋を出る。
(頑張ってね、お姉ちゃん)
心の中で応援しながら、私は自室に戻った。