IS ーインフィニット・ストラトスー 〜英雄束ねし者〜   作:龍牙

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21話『タッグマッチ』

「あいつ、今剣から衝撃砲みたいなの飛ばさなかった?」

 

「流石四季さんですわ」

 

 先ほどの跳弾で先制ダメージを与えた四季は今度は“波動剣”を使って中距離から距離を詰めていく。

 剣から衝撃砲モドキを使う四季の姿に呆れながら呟く鈴と何時もの様に四季に惚気ているセシリアの二人。ポップコーンを食べながら観戦している鈴と恍惚とした表情でヴレイブを纏った四季を見つめているセシリアの姿が観客席にあった。

 まあ、全生徒参加の大規模な試合なので当然ながら一日で予選が全て終るわけも無く、二日目以降の日程に廻された生徒も居る。この二人は其方に当たる。

 一夏がシャルロットとチームを組み、四季がラウラと対等に戦う為に抽選でパートナーを決める事を聞いた為に、優勝も目指してチームを組んだわけである。四季とラウラに次いでの一年生の部での優勝候補に挙げられる代表候補生+専用機持ちのチームである。

 

 波動剣を使いながら接近して七星天剣流の間合いに詰めようとする四季と、それを警戒して四季の剣の間合いから逃れようとするシャルロットの構図が成り立っている。

 

「それにしても、一夏さんとデュノアさんはよく気があってますわ」

 

「確かに……息ぴったりよね」

 

 まだシャルロットが女だとしらないセシリアは何気なく呟いただけだが、彼女が女だと知っている鈴は無意識のうちに手の中に力が入り、ポップコーンのカップが歪む。

 

「でも、四季とあいつの息もあってるわよね」

 

「四季さんの援護が的確なだけですわ」

 

 一夏のサポートでシャルロットがラウラに攻撃しようとするたびに、四季によって妨害される。それを見てセシリアの表情が少しだけ変化する。

 

((なんか、釈然としないわね(ですわっ)!))

 

 同時にそう思う鈴とセシリア。……結構相性の良い友人同士な二人である。

 

「一夏っ!!! しっかり!!!」

 

「四季さん、ファイトですわ!」

 

 互いに意中の相手を応援する。

 

 

 

 

 

 

 

 

(流石に疲れるな、この技の連発は)

 

 波動剣は腕への負担が大きい。使い慣れているのか、四季に技を伝授した剣士ゼータは負担も無く使っていたことから熟練度の違いか……人間とガンダム族の違いかのどちらかと推測できる。

 前者よりも後者の可能性の方が高く感じるが。

 

(一か八か)

 

 一瞬動きを止めて棒手裏剣の要領でブレードをシャルロットへと投げつける。

 

「っ!? そう何度も」

 

 先ほどの兆弾の影響でブレードを投げた事を警戒して大きく距離を取って回避するが、

 

「今度はこっちが本命だ!」

 

 シャルロットの動きを視界に捉えた瞬間、拳を構えた四季の姿が消える。

 

「っ!? そんな、 瞬時加速イグニッション・ブースト!?」

 

「ヴレイブナックル!!!」

 

「うわぁ!!!」

 

  瞬時加速イグニッション・ブーストでの加速を加えてのパンチがシャルロットへと叩き付けられ、大きくSEを削る。 瞬時加速イグニッション・ブースト直前に射出した支援メカモードのアメイジング・レヴの一機によって投げたブレードを回収。ブレードは二つ有るとは言え、武器の回収は出来る時にしておくべきだ。

 

「七星天剣流……」

 

「させないよっ!」

 

「ちっ!」

 

 『飛槍突斬』の体制に入る四季だが、四季へと手榴弾を投げつける。とっさに頭部バルカンで命中直前に爆破させるが、それは四季から視界を奪い、僅かながらもSEを削っていく。

 

(しまった。勝負を焦ったか……)

 

 四季はラウラと一夏へと視線を向けるとアリーナの壁に叩きつけられた一夏へとトドメを刺そうとレールカノンを向けているラウラの姿が視界に映る。

 

(そっちか!?)

 

 幸か不幸か、一夏がピンチになっている状況……ならばシャルロットの選択する動きは……。

 

 レールカノンが発射される直前、一夏とラウラの間に割って入りシールドで一夏を守るシャルロット。

 

「お待たせっ!」

 

 追撃しようとするラウラに対して上に飛ぶ事で回避する一夏とシャルロット。

 

「シャル、助かったぜ、ありがとな!」

 

「どういたしまして」

 

「四季は?」

 

「何とか隙を作ってこっちに来れた」

 

 僅かな隙しかないが、全スペックがトップクラスのHi-νガンダム・ヴレイブでも瞬間移動は出来ない。その一瞬の隙……僅かな時間でしか無いが今がラウラを落とす最大のチャンスだ。

 

「今が最後のチャンスだよ」

 

「ああ、見せてやるしようぜ、オレ達のコンビネーションをよ!」

 

 今を逃せば四季とラウラに勝つチャンスは無くなる可能性が高い。そう考えて雪片を構える一夏と、試作型ビームマシンガンを構えるシャルロット。

 今回のトーナメント前に四季からシャルロットにテストを依頼した武装の一つだ。曰く、四季からのDEMへの勧誘前の贈り物と言った所だ。彼女がDEMの所属になった時の事を考え、彼女の適正を確認すると言う意味合いもある。流石にマーキュリー・レヴは渡していないが……。

 

 

 

 

 

 

 管制室……

 

「ふぁー、すごいですねぇ。二週間ちょっとの訓練であそこまで連携が取れるなんて。やっぱり、織斑くんと五峰くんって才能有りますよね」

 

「ふん、あれは五峰とデュノアが合せているから成り立つんだ。織斑自体は対して連携の役には立っていない。五峰の方もボーデヴィッヒの動きに合せて織斑達の動きを妨害しているに過ぎない」

 

 真耶の言葉を千冬がそう斬り捨てる。連携の訓練に誘っても断るだろうと踏んで、四季が考えたのがそれである。

 モニターに映る試合を観ながら会話を交わす千冬と真耶。

 

「そうだとしても他人が其処まで合せてくれる織斑君自身がすごいじゃないですか? 魅力の無い人間には誰も力を貸してくれないものですよ。それに五峰君も訓練も無しであそこまで動きを合わせる事でできるなんて、それだけでも本人の技量が高いってことですよ」

 

「まあ…………そうかもしれないな」

 

「それにしても、学年別トーナメントの急なタッグ形式への変更はやっぱり先月の事件のせいですか?」

 

 そう真耶が話題を変える。

 

「今年の新入生には第三世代型のテストモデルも多いからな。不意の襲撃にも対応できるよう、より実践的な経験を積ませるのさ」

 

「なるほど」

 

 千冬の言葉に真耶は納得したと言う様子で頷く。だが、千冬は四季の映像を見ながら考えを巡らせていた。

 

(やはり、あいつには実戦経験……それに近い物を豊富に経験している)

 

 千冬の目には四季の持つ咄嗟の事態への対応力の高さ、それは軍人であるラウラよりも高いようにも見える。

 ……千冬は知らない事だが、デジタルワールドでの冒険とエルガとの戦い、この二つ冒険での経験が四季の血肉となっていると言う事だろう。

 

 

 

 

 

 アリーナ

 

「これで決める!」

 

「ちょろちょろと目障りな……」

 

 一夏は零落白夜を発動し……一気にラウラとの距離を詰める。そんな一夏を迎え撃とうとワイヤーブレードを射出するが、

 

「させないよ!」

 

 シャルロットが一夏に当たりそうな起動のワイヤーブレードを迎撃する。それによって一夏は何の憂いも無くラウラへと真っ直ぐに進む事が出来た。

 

(ありがたい! シャルが迎撃してくれたお蔭で!!!)

 

「ちっ! 小癪なっ!」

 

 そんな一夏にラウラは忌々しげに舌打する。

 

「しかし、無駄な事!  AIC慣性停止能力の前では……」

 

「良いのか? オレ一人に集中して?」

 

 一夏へと手を翳し、AICを使おうとした瞬間、一夏がそう問いかける。返答が返って来る事等期待していないが、一夏に意識を集中しようとしていたラウラの表情が変わる。シャルロットの行動によって、だ。

 

 意識が一夏だけに向いた瞬間、ラウラの後方に回り込むとレールカノンを狙ってビームマシンガンを撃つ。それによって一夏に意識を集中していたラウラは無防備にそれを受けてしまう。

 

「くっ! (レールカノンが……!)」

 

 レールカノンを破壊された瞬間、一夏へと向けていた意識が途切れ、一夏がAICから開放される。

 

「一夏ぁ!」

 

「おう!」

 

 最後の一撃とばかりに零落白夜を発動し、雪片を振り上げる。

 

(四季から教えてもらった! AICは停止させる対象に集中しないと効果は維持できない!)

 

 そのラウラに生まれた一瞬の意識は空白は、最大限の好機となる。だが、

 

「なっ!?」

 

 そこで雪片から光が消え、零落白夜の持続時間が終ってしまう。最大の好機でエネルギー切れ……最悪のタイミングで一夏にとって警戒していたことが起こってしまった。

 

(ここに来てエネルギー切れ!?)

 

 その光景にラウラは己の勝利を確信する。勝負の流れ……いや、勝利の女神は己の方に微笑んだのだと。

 

「残念だったな、限界までSEを消費してはもう戦えまい!」

 

 そう、一夏の白式の武装は雪片一本のみ。その雪片もSEを消費する以上、限界まで消費した時点で最早戦うことは出来ない。

 

「やらせない!」

 

 そんな一夏とラウラの間にビームマシンガンを構えてシャルロットが割って入る。

 

「邪魔だっ!」

 

「うあっ!」

 

 新たに現れた障害に対して、 主武装メインウェポンのレールカノンが破壊されている為、 副装サブのワイヤーブレードを射出するも、それはシャルロットの装備していたシールドで防がれてしまう。四季との戦いで大きくSEを消費しているシャルロットも既に危険な状態だ。

 

「シャル!」

 

「君の主武装のレールカノンはさっき破壊したからね……」

 

 微笑を浮べながら一夏の言葉に答える様にラウラに対して、一丁のビームマシンガンを手放しながらゆっくりと言葉を告げる。

 

「 副装サブのワイヤーブレードなんて避けるまでもないね、一気にカタをつけるよ!」

 

 そう宣言し、シャルロットが使った技に一夏とラウラは驚愕する。

 

「なっ……! 『 瞬時加速イグニッション・ブースト』だと!? そんなデータは無かった!!!」

 

「今、初めて使ったからね」

 

「な、何……!? まさか、この戦いで覚えたと言うのか!?」

 

「敵と味方に二人も良いお手本が居たからね!」

 

 ラウラにとって予想外の事態に動揺したのか、動きを止めてしまいビームマシンガンの弾幕に曝される事となる。

 

(ラウラを出し抜くなんて、やっぱりシャルの器用さはずば抜けているな)

 

 ラウラを完全に出し抜く形となったシャルに思わず感心する一夏。

 

「だが私の停止結界の前では無力……。っ!?」

 

 後ろからの衝撃にシャルロットへと意識を向けようとしていたラウラの意識が途切れる。ラウラが其方の方へと意識を向けると、そこには……ビームマシンガンを構えて笑みを浮かべている一夏の姿があった。

 

「この距離なら外さない!」

 

 シャルロットのラファールの装備された第二世代の武装の中で最強の破壊力を持った一種の浪漫武器……

 

「六九口径パイルバンカー《 盾殺しシールドピアーズ》!」

 

 

『ああ、確かにこの距離なら外さないな……』

 

 

 そんな中、四季の言葉が響く。シャルロットとの距離をつめ、シールドを突きつける。本来のヴレイブのシールドに装備されているのはシールドキャノンだが、改造型のこのシールドは違う。

 

「一尖、必撃!!!」

 

 奇しくも四季の持つそれは、シャルロットと同じ武器……シールド内蔵型パイルバンカー『シールドバンカー』。

 

「ヴレイブバンカー!」

 

 四季の一撃がシャルロットのSEを大きく削り取る。

 

「かはっ!」

 

「シャル!!!」

 

 四季の一撃によって苦悶の表情を浮べて吹き飛ばされるシャルロットを一夏は慌てて受け止める。

 

「くっ……ぅ」

 

「シャル、無事か!?」

 

「っ!? わあぁぁぁ! い、一夏!?」

 

 至近距離で見た一夏の顔に、思わず慌てた反応を見せてしまうシャル。

 

「それにしても、あいつ……あのタイミング、狙ってたのか?」

 

「多分……そうだと思うよ」

 

 一夏とシャルはHi-νガンダム・ヴレイブの金色のデュアルアイを通して自分達を見下ろしている四季の姿を見上げる。

 

「本当に、彼は強いね……」

 

「ああ、本当にどんな奴に鍛えられてるんだろうな、あいつは?」

 

 DEMの謎が深まるばかりの一夏とシャルロットの二人だった。最上級の実力の持ち主……異世界の英雄達が直々に鍛えているのだから、実力も相応の物を持っているのも当然と言えるだろう。

 

 

 

 

(まさか……あいつに助けられなかったら、私は……こんな所で負けていたのか?)

 

 四季に救われなかったら負けていたと言う事実にラウラの精神は打ちしがれる。相手の実力だけでなく、味方の実力さえも見誤った。認める他無い……四季は自分よりも『強い』と。だが、それでも……

 

(私は……! 確かに相手の実力を見誤った。シャルル・デュノア、旧式機使いとは言えこの者の戦闘力は私に匹敵しうる)

 

 そして、そのシャルロットと渡り合った上で優位に立っている四季の後姿がラウラの目に映る。

 

(五峰四季、最新鋭の機体の性能に頼って最強と呼ばれているだけだと思っていた。違う、奴の戦闘力も……経験も……私を凌駕している)

 

 対戦相手であるシャルロットと一夏だけでなく味方である筈の四季さえもラウラは睨み付ける。

 

(私は……私は負けられない! 負けるわけには行かない!!!)

 

 そんなラウラの心境を見て月にある『ヤツラ』はゆっくりと笑みを浮かべる。前回の反省は幻夢界と言う空間に閉じ込めたからこそ、四季の救援に流星の騎士団の三人が現れた。ラウラと彼女のISの中にあるモノを利用すれば……それを利用して新たな刺客を送り込むことができる。

 

 

 

 

 そんなラウラの心情など知らない四季はブレードを構えてSEが殆ど無くなっている一夏とシャルロットへと突きつける。

 

「悪いな……今回のトーナメントは本気で勝ちを狙っているんだ。これで決着だ」

 

 四季の取る構えは七星天剣流のそれだ。本気でトドメを刺す心算の、その構えに身構える一夏とシャルロット。そんな時だった。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!」

 

 突然、ラウラから身が裂けんばかりの絶叫が響き渡る。同時に彼女のISシュヴァルツェア・レーゲンから激しい電撃が放たれる。

 

「っ!? 何が……」

 

 四季はラウラのISを一瞥しながら、以前束に破壊を依頼された物の事を思い出す。

 

(まさか、VTシステム?)

 

 ラウラを飲み込みながら……彼女のISは変形し始めていた。四季のデジモンのデータによってヴレイブが変身する特種形態移行と違い、原型がなくなる様に装甲は溶け、ドロドロとしたナニカになってラウラの全身を飲み込んでいく。

 黒い、深く濁った闇のようなナニカに飲み込まれる様は……四季には何時かデジタルワールドで見た暗黒の力にも似たものに見えた。

 

 その姿に警戒し、四季は本能的にラウラから距離を取るとラウラを飲み込んだ闇は粘土細工を作り上げる様に新たな形へと作り直していく。

 シュヴァルツェア・レーゲンだった物は今は黒い 全身装甲フルスキンのISに似た何かが現れる。

 

(デジモン……いや、人?)

 

「なんだよ……あれは?」

 

 黒い人型には四季にも一夏にも……いや、この場に居る全員に見覚えがある影だった。そして、その手の中に有るのは……

 

「『雪片』……!」

 

 一夏の静かな叫びが響き渡る。それが手に持っている武器は確かに、かつて織斑千冬を最強のIS乗りと謡わせた武器にして一夏と秋八の雪片弐型の原型となった剣、『雪片』だった。

 

(……やっぱり)

 

 四季は雪片を持った千冬の形をしたナニカを睨み付ける。

 

(詩乃に出会って、気にすることもなくなったと思っていたけど、何処か蟠りってのはあるみたいだな……)

 

 仮想敵として何度も戦ってきた影が四季の目の前に居る。その身に纏うのは己と詩乃の誓いと未来に進む為の証しであるHi-νガンダム・ヴレイブ。目の前に居る敵は過去の象徴たる雪片を持った千冬の姿をした敵……。

 

(落ち着け……先ずはVTシステムの破壊、次にボーデヴィッヒの救出)

 

 冷静になるように己に言い聞かせながら二つの目的を上げる。だが、冷静では無いかったから、と言うのは言い訳に過ぎない。だからこそ気付かなかった……一瞬の明滅だがヴレイブのセンサーは確かに捕えていた。IS学園のネットワークを通じ、月からラウラのISの中に入り込んだ一つのデータの存在に。

 

 

 

『……掌握開始……。我が名は……『――ン―ッ―ス』

 

 




四季の秘密兵器はロマン武器のパイルバンカー、シールドバンカーです。
本来はカイラ専用のインフラックスの武装ですが、ヴレイブでも問題無いでしょうから。
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