IS ーインフィニット・ストラトスー 〜英雄束ねし者〜 作:龍牙
DEMのアリーナ施設にあるパーティー会場。
その日、四季達や太一達だけでなく、ガンダム達やデジモン達も集まれるようにとアリーナ施設の中に設置された、今は様々な料理や集まる者達の年齢に配慮したジュースなどの飲み物が置かれたテーブルが並ぶ其処の中心に二機のISが飾られていた。
「と、言うわけで……カンパーイ」
「「「「「「「「カンパーイ!」」」」」」」」
四季が乾杯の音頭を取ると声を揃えて集まっている全員が応える。『祝・新型IS開発完了』とある其処に居るのは四季の友人一同+デジモン達とDEM本社防衛のガンダム達、武者五人衆、騎士ガンダムとアルガス騎士団、遊撃部隊のメンバーとなっているキャプテンを除いたG-アームズの面々である。
……トライオン3は正確には追加装備のトライオンシリーズの合体した姿なのだが、それをISと表現しても間違いは無いだろう。
核となるISこそ存在しないが、合体状態を維持しているトライオンシステムの合体形態である『トライオン3』と、もう一機存在している赤と黒に塗られ腰に二本の剣を刺したIS……搭乗者としてデータを取った和人の好みの色と戦闘スタイルに合せてカスタマイズされた、スダ・ドアカワールドの最初の勇者である『勇者ガンダム』の絵姿をモデルに作り上げたられた機体『ガンダムエクシア』をベースに開発された『ガンダムエクシアダークマター』である。
他にもDEMに有るIS用のシミュレーターでの太一達のデータから設計された彼ら用の機体も何機が存在しているが、そのデータより今回最初に作られた機体がエクシアダークマターだ。
共に開発キーワードに『勇者』と言う単語があるのに『勇者ロボ』と言う外見が似合うトライオン3と、『暗黒騎士』と言う外見が似合うダークマターと、見事に対照的な二機が出来上がった始末である。
「『TRI』計画一号機の『ガンダムエクシアダークマター』完成についてはまだ表に出せないけど、此処にいるみんなは素直に喜んで祝って貰いたい」
『TRI』計画、DEMでも限られた者達だけで勧められていた男性でも操縦可能なISの開発計画である。正式な計画の一号機であるエクシアダークマターと、武装の形で従来のISに今まで以上の戦闘力を与えるトライオンシリーズ。
トライオンシリーズは正式に倉持からコアの所有権ごと開発権を譲られた『打鉄弐式』が扱える様に微調整が必要なので、まだ完全に完成とは言えないだろうが。なお、トライオン3の胸の顔は相変らずライオン派と虎派に分かれているが。
そして、二号機のトライオン3の改修機として合体機能を廃して最初から一機のISとして運用する『メガゼータガンダム』も計画中だったりする。
なお、一号機と二号機の開発の成功に伴い、両機のマイナーチェンジ版も開発中だとか。
続く三号機として計画中なのがまだデータとして形になっていない詩乃の護身用の機体なのだから、先に開発に成功するのはデータの揃っている四号機以降のナンバーだろう。
男性でも使用可能なIS開発と言う部分を除いても、SEに頼らない宇宙空間での活動を前提とされた開発計画。ISを本来の宇宙活動のための形として活かす為の
秘匿技術の塊であるエクシアダークマターに対して、既に発表されているシステムを使っているトライオン3、その核になるのは倉持から正式に開発権を譲り受けた打鉄弐式が現在最有力候補である。
「それにしても、なんでパワードスーツに本体の分離機能なんて求めたんですか?」
「なんか、
このパーティーの参加者の一人……『泉 光子朗』の疑問に答える四季。そもそも、人間が扱う以上、分離にしてもヴレイブブースターが限界だと考えていたが、本体を分離させる機能を三機の外部攻撃ユニットとする事で解決させたらしいが……。
「まあ、破損した部分だけ交換ってのは整備もし易い……のか?」
それについては完全に疑問である。序でに未だにマイナーチェンジ版の胸の造詣は虎とライオンで争っているそうな……。
「それでは、TRY計画の第一歩となった『ガンダムエクシアダークマター』のパイロットの和人さんに盛大な拍手を」
身内だけのパーティーだが、今回の主役は己では無いので主役になる友人を持ち上げておく事にした四季だった。
その日の夜……パーティーもお開きとなり、年長組が二次会に突入している頃、四季と詩乃の二人は自宅にいた。思ったよりも遅くなった他の参加者は、夜遅いことも有って、四季達の住む九割を超える社員寮の空き部屋に止まって貰っていた。
「コーヒー入ったわよ」
「ん、ありがう」
ソファーに座りながら四季が詩乃から渡されたコーヒーカップに口を付けると、彼女も隣に座って自分の分のコーヒーを飲む。テレビに映っているのは他愛の無い歌番組だったが……
『番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします』
突然切り替わるテレビの番組。何が起こったのかと疑問に思いながら、其方へと視線を向けると、
『マッドォー』
巨大な紫の巨人達が『マッドォー』と言う叫び声を上げて暴れまわっている映像に切り替わる。巨人達の破壊活動で所々被害が出ているが、時々炎に炙られている巨人も砂になって崩れ落ちていくが、海から湧き上がって来る海水を浴びて再生していく。
「四季、あれって」
「マッドゴーレム!?」
騎士ガンダムから聞いた過去のジオン族との戦いでジオン族の皇帝ジークジオンが、泥人形に邪悪な命を与えた伝説の巨人の紛い物、ジオンモンスター『マッドゴーレム』。
泥で有る為に弱点は炎……水分を失った泥が砂に変わる事で崩れ落ちるのだが、他にも巨大な城の様な物……天宮の国で作られた『超機動闇将軍』が数機ほど暴れまわっている。海上施設で暴れまわっているのは、マッドゴーレムと超機動闇将軍が目立つが、幸い機兵は出撃していない様子だ。
『正体不明の怪物を有する巨大兵器の集団が、IS委員会の海上プラントを襲撃、現在も破壊活動を続けてます!』
女性キャスターの叫び声が響く中、画面の中ではラファールや打鉄を纏ったIS部隊が出撃していた。
『あっ! 委員会直属の部隊がテロ鎮圧に出撃した模様です! もう安心です、敵にはISは……』
『キャァー!!!』
「っ!? 見るな!」
キャスターの声を遮って悲鳴が聞えてくる。その光景に気が付いて素早く抱きしめる形で詩乃の眼を塞ぐ。
背中から翼を生やした赤い騎士『騎士サザビー』が一太刀で隊長と思われる相手を切り殺していた。更に混乱に陥ったIS部隊を雑兵と思われる混成部隊が分断、騎士サザビーが各個撃破していく。辛うじて海上に逃げ込めたものは……
『イヤァー!』
『た、助け……』
海の中から現れた巨大な人と蛸のキメラ……『モンスター・ザクトパス』によって握りつぶされていく。
『そ、そんな……ISが。最強の兵器が……』
女性キャスターが呆然とした顔で呟いていると、彼女の真上に黒い影が迫り、地面に落ちたテレビカメラの映像に巨大な蛸の足が映り、映像が途切れた……。
「……何が……起こった?」
今まで月を拠点に秘密裏に動いていたはずの闇の軍勢が、急に見せた派手な動き。それに対して四季の考えが追いつかない。
『四季、聞えるか!?』
「キャプテン隊長!?」
空中に浮かび上がるモニターに映し出されたキャプテンガンダムの姿。焦った様子でキャプテンは言葉を続ける。
『先ほど、オレ達は奴らに襲撃されていた海上施設に向かったのだが……』
そこで言葉を一度切ると、
『残念ながら間に合わなかった。襲撃された施設は跡形も無くなっていた……』
「沈められた……って事ですか?」
『いや、恐らくだがそれは無いだろう。念の為に簡単にだが、海中の捜査も行なっている。だが、恐らくはヤツラは海上施設の奪取が目的だったと考えられる。収穫は有ったが、この程度だ』
詳しい調査が出来ないのは、IS委員会や各国の調査隊が来る前に日の場を離れるためだろう。そう言ってキャプテンが取り出したのは一つのエンブレム……。
『ザタリオン帝国のエンブレムだ。今回の襲撃はフューラー・ザタリオンの意思の元に行なわれたんだろう』
一方的な戦闘だったが、偶然にもIS委員会の部隊の攻撃が被弾したのだろう、微かに汚れの有るエンブレム。
『敵はあの施設を自分達の軍事拠点として利用する為に奪ったんだろう』
「毎回月からだと、オレ達に簡単に対応されるから……ですか?」
『ああ。各勢力が独立して動くための地上拠点の一つ……ヤツラは一枚岩じゃないからな』
寧ろ、一つや二つ潰した所で意味が無いほどに、頭は大量に存在している。しかも、一つ一つが一つの頭でも放置も出来ない危険性を持つ。
「……他には何か有りましたか?」
『連中が捨てて行ったISコアが海中に沈められている。回収するか?』
「束姉から貰ったと言えば見つかっても誤魔化せるかもしれないけど、放置しておいてください」
最後に『調査に来た人達が回収するでしょうから、見つかり易い所に置いといてください』と付け加えておく。
一応、現在地球上で最も価値のある宝と言える代物なのだ、海に沈んだISコアを求めて荒らされて、敵に対する手掛かりを消されてはたまらないので、さっさと回収して離れてもらおうと言う考えだ。
最悪、DEMのTRI計画で使うコアは束に頼んで融通して貰おうかと考えているので。
各国としてもIS委員会としても、その思惑は撃墜たされたISのコアの回収を優先するだろう。
『分かった。確かにその方が良いだろう。……それと、話は変わるが、そっちのパーティーはどうだった?』
「エクシアは完成、トライオンはこれから交渉……TRI計画は次の段階に進みました。シャルロット・デュノアの専用機はデータが集まり次第開発を始めます」
『……そうか。其方の計画も大幅に進める必要が有るかもしれない。各国の支部でもTRI計画の機体の完成を急がせた方が良い』
「はい」
IS委員会からの新型ISの強奪、ザタリオン帝国による海上施設の襲撃と奪取……。この二つが関係有るかは疑問だが、色々と警戒はしていたほうがいいだろう。
『だが、今から開発して間に合うのか?』
「彼女の前の専用機がラファールのカスタム機ですからね。近いコンセプトの次期量産機の試験タイプの機体をベースにすれば改修で済むそうです」
四季達の細部まで計算された専用機ではないので、それほど開発期間は掛からないそうだ。
後にDEMフランス支社で販売される量産型第三世代機のベースになるのだが、それはまだ先の話しだ。
「……どころで、なんでオレに真っ先に連絡を?」
『いや、コマンド総司令に連絡したんだが……連絡が取れなくてな』
「…………何となく理由が分かりました、オレから直接連絡しておきます」
『頼む』
そう言ってキャプテンからの連絡が途切れる。コマンド達との連絡が取れないのは、恐らく、四季達未成年組が帰った後の年長組によるパーティーの二次会だろう。
「ねえ、何が起こってるの? またあの時みたいなことが起こるの……?」
四季の腕の仲で詩乃が問いかけてくる。かつてのエルガとの戦いの事を思い出したのだろう。デジタルワールドの魔王『デーモン』の現実世界侵攻と同時期に起こった四季達とガンダム達の出会いの切欠となった戦い。
その多くが無関係な人間だったが、多くの人が犠牲になった戦いでも有る。
「……これだけは言える。“起こる”じゃなくて、今も続いているんだ」
そう、あの時からこの世界には多くの敵が現れた。あの時の四季達の戦いはその内の一つを終えただけに過ぎなかった。……それを改めて実感してしまった。
(敵の戦力は確認できたのは騎士サザビーとマッドゴーレムに、超機動闇将軍。多分、超機動闇将軍は奴等の移動基地の役割を担っている、か)
詩乃を抱きしめつつ四季は敵戦力を分析する。テレビに映った者達だけだが、その中にはキャプテン達の言うザタリオンと言う勢力は確認できなかった。
超機動闇将軍の原型は元々『超機動大将軍』。天宮の国の天界で造られた巨大では有るが一種の『鎧』だ。同時にそれは城であり飛行要塞や単独行動の形態としての変形機能も持っている。
その技術は鉄機武者でも完全に再現できなかったのだろう、その最大の特徴である天界の物質『輝羅鋼』の翼を持たず、飛行形態や単独での活動は出来ず、地上を走る移動基地としての機能しか再現できなかった。
だが、今回海上施設を襲撃した超機動闇将軍は少なくとも飛行能力は無いが、海上移動の機能程度は有していると言う事だろう。
寧ろ、純粋に科学力……まあ、多少は魔刃頑駄無の魔力も加わっていたのだろうが、それだけでも有る程度再現させた代物を元にして作り出された超機動闇将軍を改造したものだと推測できる。
(負ける気は無いけど、勝ち目が有るか不安になる戦力だよな……。しかも、まだ敵の戦力の底も見えない)
大量に送り込まれる無人ISシャッフルガンダムを初めとして、スダ・ドアカワールドや天宮の国の多種多様なモンスターや妖怪、機械仕掛けの兵士に武者に騎士達に超機動闇将軍を初めとする巨大兵器群。出てきては欲しくないが、恐らく機兵も敵の戦力には存在している筈だ。
それこそ、並の戦士達は専用機持ちに匹敵する戦闘力を有している。空を飛べない程度ではハンデにすらならないだろう。
(一応
地味に敵が機兵を使ってきたらこっちが風潮被害を被るので、敵の機兵は出てきてくれない方が本当にありがたい。逆に敵の機兵がISに勝ってしまって、兵器として評価されて機兵が売れてもそれはそれで困るのだし……。
量産型第三世代ISの開発こそしているが、それは宇宙開発のための物であり、死の商人になりたい訳ではないのだ。