あれから数日、俺達は、あの手この手で殺せんせーの暗殺を試みたが、尽く失敗した。
「「「「「1、2、3、4!」」」」」
それで今、体育の時間。
「八方向からナイフを正しく振れるように!どんな体勢でもバランスを崩すな!」
俺達は、教師となった防衛省の烏間さん…もとい、烏間先生の下、ナイフ術の訓練をしていた。
殺せんせーに唯一ダメージを与えられる『対先生ナイフ』の練習だ。
「日向君、振りが甘い!」
「はいっ!」
俺もナイフを片手に練習している。
しているんだが…
「しく…しく…」
…砂場で泣きながら何かを作っている殺せんせーが気になってしょうがない。
あと…
「もう少し長い…竹刀くらいのもののほうが慣れてるんだよな…」
ナイフを眺める。
今まで日常的に手にしていたものと比べると、はるかに短い。
「どしたの日向?」
「ん?ああ、中村か」
「さっきからナイフ片手に首傾げて、なんかあったの?」
クラスの中でも目立つ女子、『中村莉桜』が訪ねてきた。
「いや、なんというか、リーチになれないというか…」
「そっか、日向って確か…」
「ああ、元剣道部だ」
去年までは…な。
E組は『学業に集中する』という名目で、部活動への所属が禁止されている。
俺も、去年までは剣道部に所属していた。
一応、竹刀を振ることだけはやめてはいないが、おそらく、卒業まで剣道をすることはないだろう。
高校に行ったら…やめるだろうな。
俺には剣道の才能はない。この2年でそれを実感した。
それでも竹刀を振るの惰性か、諦めか…どっちだろうな。
「いっそ烏間先生に頼んでみたら?刀サイズの武器」
「ああ、それがいいかもな」
あとで烏間先生に頼んでみようか。
「でも烏間先生、こんな訓練意味あんスか?しかも当の本人の目の前でさ」
「そうか……では磯貝君、前原君。そのナイフを俺に当ててみろ。かすりでもすれば今日の授業は終わりでいい」
「いいんですか?しかも、2人がかりで?」
「そのナイフなら当たってもけがは無い。遠慮なくかかってこい」
いくらベテランだからって、2対1ではさすがに少し難しいんじゃないか?
そう思ったがそれはすぐに覆された。
E組でも運動神経はそこそこあるであろう、2人のナイフを、軽々とかわし続ける烏間先生がいたから。
挙句、そのまま二人を軽々と地面に投げ倒してしまった。
「このように、多少の心得があれば、素人のナイフくらい俺でも捌ける」
「俺に当たらないようでは、マッハ20の奴に当てるなど不可能だ。見ろ!今の攻防の間に奴は……!」
バッ!と全員が殺せんせーのいる砂場に注意を向ける。
そこには…………
超精密な砂の城の横で、何やら和装に着替えて湯呑を持ち、にやにやとこちらを見ている殺せんせーの姿があった。
「砂場に大阪城を作った上に、着替えて茶まで立てている!!」
「「「「腹立つわぁ~……」」」」
…本当に腹が立つ。特にあの笑みが。
「当てれるといいですねぇ」とでも言いたげな表情が、その行動をより一層苛立たせていた。
「クラス全員が俺に当てられるようになれば、少なくとも成功率は格段に上がる。今後は、体育の時間を使ってナイフ、射撃などの暗殺の基礎を教えさせてもらう!」
現役の戦闘のプロ直々の訓練…。
きっと、殺せんせーを殺すことができるだろう。
「あッれェ、せんせーひょっとしてチョロい人?」
今俺は、嫌、俺たちは…全員が同じことを考えているだろう。
『殺せんせーにダメージを与えるなんて』と。
そして、その視線は目の前の男子生徒に集まる。
『赤羽業』。今日から停学明けらしいが、正直不気味なほどだ。
相手をおちょくるような言動と、今の不意打ち。
間違いなく、このクラスにおいて最強と考えられる一人だ。
着替えて席に戻ると、隣に赤羽が座った。
「や、日向、今日から隣だけど、よろしく」
「あ、ああ。よろしくな、赤羽」
赤羽は、どうやら俺の隣の席だったらしい。
さっきと変わらない笑みを向けてくる。
その眼には、何となく不気味さと同時に虚無を感じた。
そして6時間目、小テストの時間。
殺せんせーはひたすら壁に自分の触手をぶつけていた。
だが、威力がないのか、それとも触手自体のせいなのか、ブニョンブニョンという音だけが響く。
「ブニョンブニョンうるさいよ殺せんせー!小テスト中なんだから!」
「こ、これは失礼!」
…本当に、殺せんせーにとってはショックだったんだろうな。赤羽にしてやられたことが。
その赤羽は、また殺せんせーを挑発し、ダメージを与えて、さっさと行ってしまった。
翌日…
「おはようございます。……ん?どうしましたか、皆さん」
朝、殺せんせーが教室に入ってきたが、俺達の意識は、教卓におかれたタコに集まっていた。
「あ、ごめんごめん!殺せんせーと間違えて殺しちゃったぁ。捨てとくから持ってきてよ」
赤羽が不敵に挑発する。
隣にいる俺にはその右手に隠した対先生ナイフがはっきりと見えた。
「…わかりました」
ゆっくりと先生が歩いてくる。でも、昨日の件でまたひっかるのか……?
次の瞬間、
殺せんせーはどこからかミサイルを持ち出し、前肢の触手をドリルのように変形させた。
「見せてあげましょうカルマ君。このドリル触手の威力と、自衛隊から奪ってきたミサイルの火力を」
ミサイルに火が付き、恐ろしい勢いで何かが作られていく。
気が付くと、ソースの匂い。
そして赤羽の口にはたった今できたばかりであろう湯気の立ったたこ焼きがあった。
「先生は、暗殺者を決して無事では帰さない。その代わりに手入れをするのです。錆びて鈍ったその刃を。その顔色では朝食を食べていないでしょう。マッハでたこ焼きを作りました」
「今日1日、本気で殺しに来るがいい。そのたびに君を手入れしましょう。」
そういって先生はニヤリと笑みを浮かべる。
誰が見ても、間違いなくこれは……
「放課後までに…君の心と身体をピカピカに磨いてあげよう」
先生から赤羽への、宣戦布告だった。
閲覧ありがとうございます。
活動報告の調査においていくつかリクエストがあったのと、質問があったのでここでも説明します。
Q:ヒロインって一人?
A:正直最初はハーレムも考えましたが、ヒロインの偏り&日向君への認識から無いと考え、没にしました。
調査の方では律、中村にリクエストがありました。正直、だれがヒロインになってもメリットとデメリットがあるんですよね。当たり前ですが。
一応、今回リクエストのあったヒロインのメリット、デメリットをまとめると
律:モバイル律の存在により、話しに全体的に絡ませやすいが、カップル成立後の個別エピソードに苦労する
中村:原作において天才なので、それをネタに日向とかかわれるが、チョロイン化の危険性がある
となっています。ほかのヒロイン候補は、投票があったら説明しようかと思います。