そして、あけましておめでとうございます!
本年も、『超高校級の暗殺教室』をよろしくお願いします。
「今日から来た外国語の教師を紹介する」
「イリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく!!」
五月一日。
新しく、E組に教師が赴任してきた。
してきた……のだが……。
「…そいつは若干特殊な体つきだが、気にしないでやってくれ」
「ヅラです」
「構いません!!」
その先生、イリーナ先生はさっきから我らが人外担任、殺せんせーにべったりだ。
「本格的な外国語に触れさせたいとの『学校の意向』だ。英語の授業の半分は彼女の受け持ちで文句はないな?」
「……仕方ありませんねぇ」
「…へぇ、面白そうな先生じゃん。ねえ、日向」
「ああ…見れば見るほど素敵ですわぁ…。その正露丸みたいなつぶらな瞳、あいまいな関節…」
「いやぁお恥ずかしい」
俺たちはそこまで鈍くはない。
この時期にこの教室やってくる人間は……結構な確率で、普通の人ではない。
あの人は…イリーナ・イェラビッチは、間違いなく……
殺し屋関係の人間だ。
「……ん?」
一瞬、イリーナ先生と目が合った。
「………ッ!?」
その瞬間、俺は、なんというか、不気味な感覚に襲われた。
イリーナ先生の目から伝わってきた『何か』。
それは、すごく混ざり合っていて、すべて理解することはできなかった。
うっすらと理解できたのは…『無関心』。
あくまで、彼女は『英語の教師』ではなく、『100億円の賞金首を狙う殺し屋』だ。
イリーナ先生自身もそう考えているはず。ということは、考え方は暗殺が最優先、生徒のことは関係ない。授業をする気も、元からほとんどないのだろう。
少なくとも俺には……そう思えた。
「ヘイ、パス!!」
「ヘイ、暗殺!!」
昼休みのグラウンドに声が響く。
殺せんせー立案の『暗殺サッカー』だ。
やってることは単純で、殺せんせーにボールをパスし、暗殺する。
…まあ、毎度毎度回避されているんだが。
「日向君、ヘイ、パス!」
「ヘイ、暗殺!」
ボールを蹴り飛ばし、そのまま一気に近寄って小太刀で切りかかる。
先生は、軽く体をひねって回避してしまった。
クソッ、次のチャンスを……!
「殺せんせー!こ~ろせ~んせ~!」
…イリーナ先生がやってきた。
「烏間先生から聞きましたわ、すっごく足がお速いんですって?」
「…いやぁ、それほどでもないですねぇ…」
朝からの殺せんせーへの態度や言動。
あからさますぎるとも思えるほどの色仕掛け。
おそらく、イリーナ先生は、『そういう技術』をメインで扱うタイプなのだろう。
そんなことを考えていると、突如、殺せんせーがどこかに飛び去って行った。
『コーヒー』、『ベトナム』という単語から。おそらくはベトナムまでコーヒーを買いに行ったのだろう。
「…で、えーと…イリーナ…先生?次、英語の授業なんで……」
クラス委員の磯貝が話しかける。だが……
「…授業? ああ、適当に自習でもしてなさい。」
そう言って、イリーナ先生は煙草に火を付けた。
……ああ、やっぱりそうだった。
彼女にとって、生徒など只の『殺せんせーを留めておくための楔』程度の認識なんだ。
だから、授業なんてしない。俺たちに、その意味がないと考えているから。
「それと、気安くファーストネームで呼ぶのやめてくれる?あのタコの前以外で先生演じるつもりないし。『イェラビッチお姉さま』と呼びなさい」
「…で、どーすんの?『ビッチ姉さん』」
「略すな!!」
……なんというか、さすがカルマ。
プロの殺し屋相手でも全く怖気づくことなくからかっている。
それにしても「ビッチ」って……。
確かに、服装はそんな感じだ。
男を悩殺するための、露出の多い服。
さっき、E組一のエロ男子こと岡島が、鼻血を吹いていたのを覚えている。
「大人にはね、大人のやり方があるのよ。潮田渚ってあんたよね?」
そう言ってイリーナ先生は渚に近づいて……
唇を重ねた。
「「「「なっ……!?」」」」
あっという間に渚は骨抜きになり、イリーナ先生が雇った人たちと一緒に連れていかれた。
確か、渚は殺せんせーの特徴や弱点をメモしていた。
ということは間違いなくそれが目当てなのだろう。
「少しでも私の仕事の邪魔したら……殺すわよ」
渚を骨抜きにするキス、従えている男たち、『殺す』という言葉の重み…
改めて、彼女が殺し屋であるということを、俺たちは実感した。
でも、同時に俺たちはこう感じた。
この先生は……
嫌いだ。
5時間目、英語の授業……
そんなこんなで始まった午後の英語の授業。
イリーナ先生初の授業だが……黒板には大きく『自習』の二文字。
肝心の教師はといえば、生徒そっちのけで何やらタブレットとプリントを交互に見ている。
おそらく、暗殺計画と、渚が持っていた弱点を整理して、計画の手直しをしてるのだろう。
「なービッチねえさん。授業してくれよ」
「そーだよビッチねえさん」
「一応ここじゃ先生なんだろビッチねえさん」
「あーー!!ビッチビッチうるさいわね!!」
……もはや完全にビッチで固定されてしまったらしい。
そのビッチこと担任は教師の仕事をせず、自習という名の時間潰しと化している……。
……なんだこの授業。
結局、その日の授業は自習だけで終わってしまった。
翌日……
烏間先生による射撃練習の最中、イリーナ先生と殺せんせーが一緒に倉庫へ向かっているのを見た。
「…おいおいマジか。二人で倉庫にしけこんでくぜ」
「…なーんかガッカリだな殺せんせー。あんな見え見えの女に引っかかって」
……本当にそうだろうか。
確かに、昨日の殺せんせーの反応から、『そういうもの』に結構弱いという事はわかった。
でも、さすがにあんなあからさまな行動、いくら殺せんせーでも気づいてもおかしくはない。
そして、以前先生が赤羽に言った言葉。
『先生は、暗殺者を決して無事では帰さない。その代わりに手入れをするのです』
……もしかしたら、先生はもう気付いている……?
「ねぇ、日向」
「なんだよ、カルマ」
「日向はさ、ビッチねえさんの暗殺、成功すると思う?」
…カルマの目には、確信のようなものが見えた。
だから、俺は…答える。
「俺は……正直、成功するとは思えない」
クラスメイトの視線が集まる。
「俺たちに対する態度から、俺達を見下している、もしくは、あまり重要に考えていないと思う」
間違いなく、イリーナ先生は俺達を重要視していない。
渚の弱点情報も、保険程度のものだろう。
「ってことは多分、『普段通りの方法』で暗殺しようとするはずだ……多分、武器も」
昨日連れていた男たち。
間違いなく、彼らも殺し屋だ。
そして、自分が一番信用っできるもの…普通の銃弾を使うだろう。
でも……
「『対殺せんせー用』なんてものがあるってことは、多分既存の武器は効かない」
そう言い終わった突如…
倉庫から銃声が響いた。
「な、なんだ!?」
「銃声!?」
突然の銃声に、全員が倉庫のほうを向く。
さらに……
「いやあああああ!!!」
イリーナ先生の悲鳴が響いた。
「こ、今度は悲鳴とヌルヌル音!?」
「一体、中でなにが起こってるんだ……!?」
流石に俺達も気になってきた。
全員で倉庫へと走る。
倉庫についた直後に、殺せんせーが倉庫から出てきた。
顔をピンク色にして、ずいぶんと満足げだ。
「殺せんせー!!」
「おっぱいは!?」
「いやぁ…もう少し楽しみたかったですが…」
倉庫からフラフラとした足取りで出てくるイリーナ先生。
ただ、その服装は一変していた。
露出全開のお色気ファッションとは打って変わった、体操服にブルマ。
頭には鉢巻き。
体操服の名札にはご丁寧に【イリーナ】と記載されている。
「まさか…たった1分であんなことを……」
……一体何したんだ、殺せんせー……?
英語の授業……
イリーナ先生…が返り討ちにされた次の英語の授業。
相変わらず黒板には『自習』の二文字。
先生の方は、完全にいらいらしながらタブレットをいじっている。
「必至だね、ビッチねえさん。あんな事されちゃプライドズタズタだろうね~~」
相変わらずカルマは余裕の表情だ。
「先生、授業してくれないなら殺せんせーと後退してくれませんか?一応、俺ら今年受験なんで……」
とうとうクラス委員の磯貝が意見した。
当たり前だ。
椚ヶ丘中学校は中高一貫。
だが、3年の2学期期末テストまでにE組にいる生徒は、内部進学の権利が取り消される。
つまり、高校受験の必要性が出てくる。
そんな中で、授業が全く行われないというのは、はっきり言って不満でしかない。
「地球の危機と受験を比べられるなんて…ガキは平和でいいわね〜。それに、あんた達ってこの学校の落ちこぼれだそうじゃない。勉強なんて今更しても意味ないでしょ。」
そしてイリーナ先生……いや、ビッチねえさんは、ついに俺達の逆鱗に触れた。
「そうだ!私が暗殺に成功したら一人五百万分けたげる。無駄な勉強するよりずっと有益でしょ?だから黙って私に従い…」
それ以上の言葉は、投げつけられた消しゴムで打ち消された。
「…出てけよ」
そういったのは誰だったのか。
「出てけクソビッチ!」
「殺せんせーと代わってよ!」
それをきっかけにして、クラスの不満は一斉に0爆発した。
次々に投げつけられる文房具、怒号。
完全に学級崩壊だった。
……『巨乳なんていらない』と聞こえたような気がするが、多分気のせいだろう
「なっ……何よあんた達その態度っ、殺すわよ!?」
「上等だよやってみろコラァ!!」
ビッチねえさんの脅しも、もう通用しない。
この授業は、ビッチねえさんが教室から逃げ出し、烏間先生が仲裁に入ることで何とか収まった。
翌日……
クラスで学級崩壊が起こった翌日。
突如、昨日の元凶…ビッチねえさんがクラスに入ってきた。
俺たちの視線など目もくれず、黒板に何かを書いていく。
英語の分の様だけど……
「You're incredible in bed!Repeat!!」
「「「「「「ユ、ユーアーインクレディブル、インベッド…」」」」」」
とっさに復唱しろと言われ、戸惑いながらも読む。
ってか、この文章って……。
「アメリカでとあるvipに暗殺を仕掛けたとき、まずそのボディガードに接近したわ。
それはそのときに言われた言葉よ。意味は『ベッドでの君は……凄いよ』」
おい!中学生になんて文読ませるんだ!?
「外国語を短い時間で習得するにはその国の恋人を作るのが手っ取り早いとよく言われるわ。相手の気持ちをよく知りたいから、必死で言葉を理解しようとするのね」
ビッチねえさんは、しっかりとした態度と言葉で話す。
見た目はともかく、その振る舞いは『教師』だった。
「私は仕事上必要な時、その方法で新たな言語を身につけてきた。だから、私からは外国人の口説き方を教えてあげる。プロの暗殺者直伝の、仲良くなるための会話のコツ。身に着ければ、実際に外国人と会った時に必ず役に立つわ」
…なるほど、と思った。
ビッチねえさんは、教科書よりも、実践的な英語……いや、外国語の能力がある。
実際に殺し屋としてのスキル以外でも、その語学力はかなりのもののはずだ。
「受験に必要な勉強はタコに教わりなさい。私が教えられるのは実践的な会話術だけ。もし、それで先生だと認められないなら、その時はこの教室を出ていく。…それなら問題ないでしょ」
そういって、少しぶっきらぼうな謝罪をする。
俺たちの答えは……
「「「あははは!!」」」
笑うことで返した。
「何ビクビクしてんだよ、さっきまで殺すとか言ってたくせに」
「なーんか普通に先生になっちゃったな」
昨日まで俺達を完全に見下していた人が、まっすぐに俺達と向き合ってくる。
これも、殺せんせーによる『手入れ』名の顔知れない。
「もうビッチ姉さんなんて呼べないね」
「考えてみりゃ先生に失礼な呼び方だったよね」
「んじゃ、これからは普通に読んであげないとね」
「あんた達…分かってくれたのね」
「じゃ、ビッチ先生で」
イリーナ先生が固まった。
「えっと、折角だからビッチから離れてみない?ほら、ファーストネームで呼ぶとか……」
ひきつった笑顔で説得しようとするが……
「えーもうビッチで固定されてるし。」
「イリーナ先生よりビッチ先生のほうがしっくりくるし」
「そんなわけでよろしく、ビッチ先生!」
「授業始めようぜビッチ先生!」
もはやE組においては『ビッチ』で定着してしまっている。
今更変えることはできないだろう。
「キーッ!!やっぱりきらいよあんた達!!」
こうして、俺達E組の英語の先生としてイリーナ先生…改め『ビッチ先生』がやってきた。
これからの暗殺も、いろいろと進展するかもしれない。
感想、アドバイスありましたらよろしくお願いします。
……男子の通信簿が書けない……。