「じゃ、飛ぼっか」
そう言うとリーファは自分の背中から翅を出し、ゆっくりと浮遊し始めた
「ちょっ!ちょっと待った!」
「え?」
「そ、それ…リーファは一体どうやって飛んでるんだ?」
「え?普通にだけど…さっき上やん君も飛んでたんでしょう?落ちてきたって言ってたじゃない」
「え?あ、ああいやえっと…なんて言うか…むしろ無我夢中でやってたら何となくというか…」
「なるほどね。補助コンローラーの存在も知らずにいきなり随意飛行にチャレンジした訳か」
そう言うとリーファは一旦地面に降り、背中の翅を下ろした
「上やん君、ちょっとそのまま後ろ向いてみて」
「ん?ああ、分かった」
上やんがリーファに背を向けると、リーファは上やんの背中の一点に手を当てた。すると、上条の背中から大小が対となった4枚の翅が生えてきた
「お、翅が出てきた!」
「今触ってるところ、分かる?」
「ああ、分かる」
「この辺がいわゆるあたし達の翅の中心。ここから仮想の骨と筋肉が伸びてると想像して、意識をもって動かしてみて?」
「仮想の骨と筋肉…こ、こんな感じか…?」
上条がリーファに言われた通りの場所に力を込めると、背中の翅がバサバサと小刻みに震え始めた
「おお!上手い上手い!じゃあそのまま今の感じで、もう一度もっと強く力を込めて動かしてみて」
「よ、よし…いくぞ…」
バサバサ…バサッ!
「くっ…!ぬっ!」
一度広がった翅を一旦下ろし、先ほどより強く力む上条。するともう一度翅が小刻みに震えながら広がった。するとそれを見たリーファが上条の背中をドンッ!と突き飛ばした
「えいっ!!!」
ドンッッッ!!!
「えっ!?ちょっ!?どわあああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?!?」
「よし!離陸成功!」
すると、上条の体がもの凄い勢いで空に向かってぶっ飛んだ。しかし、余りもの早さに上条の身体はあっという間に米粒ほどの大きさになり、やがて見えなくなった
「ちょっ!?やっば!?上やんくーん!!大丈夫ー!?」
リーファも翅を広げ急いで離陸し、上条を呼んで探すが、周囲のどこを見渡してもまるで見当たらない。いよいよ冷や汗が背中を伝ってきたその時、不意に上空から声が聞こえてきた
「ひぃやっほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉう!!!!!!!」
「え、上やん君!?」
「見ろよリーファ!飛んでるぜ!俺ちゃんと飛んでるぜ!」
そう言いながら上条は空を自由気ままに飛び回り、旋回したり宙返りをしたりと完全に随意飛行を自分のモノにしていた
「す、すっごーい!上やん君すごいスジがいいよ!最初っからこんなに飛べた人初めて見たよ!」
「はっはっはー!こりゃいいや!どこまででも飛んで行けそうな気がするぜー!」
「さて、そういうことなら早速スイルベーンに行こっか」
「よっしゃ!競争だぜリーファ!」
「ほほう?飛行と剣術においてはシルフじゃ右に出る者はいないとまで言われるこのあたしと競おうと?いいわ!受けて立ってあげる!」
そう言うとリーファはみるみる内に加速し、上条を抜き去った
「なんの!俺だって負けてたまるか!」
ビュオオオオオオオオ!!!
負けじと上条も加速し、リーファと肩を並べ、そのスピードを維持して飛行した。そうして二人ともMAXスピードでしばらく飛んだ後、夜の世界で一際輝く街が見えてきた
「おお!あれがスイルベーンか!」
「ええ!思ったより早く着いたわね!それじゃ、真ん中の塔の根本に着陸するわy……って上やん君、君『ランディング』のやり方解ってる?」
「ランディング?ランニングじゃなくて?」
「・・・ごめん、幸運を祈る」
「えっ…」
スッ…
そう言うとリーファは手慣れた翅使いで減速し、段々と地上へと降下して行った。もちろん飛び立てほやほやの上条は『ランディング』なるもののやり方なぞ知る由もない
「はっはっはっ。なにを今さら幸運を祈るなどと。日々不幸の中心で生きている上やんさんにそんな物が欠片でも残っているとお思いで?」
当然スピードを殺しきれるわけもなく…
「嘘だろおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?不幸だーーーーー!!!!!」
轟音と共にスイルベーンの塔が激震し、黒い塊が地面に叩きつけられた