とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第12話 噂

 

「う、嘘だろ…なんで…今まで碌に泣いたことなんてなかったのに…」

 

 

頬をつたった涙を拭き取りながら上条は目元をゴシゴシと擦り、少しだけ目の周りが赤く充血していた

 

 

「ねぇ、辛いんでしょ?だから泣いちゃうんでしょ?この世界では涙が我慢出来ないの。だから…話してみてよ。あたし、力になれるよ?」

 

「・・・ごめん、リーファ」

 

ガタッ!

 

 

そう呟くと上条は椅子から腰を上げた

 

 

「え?ちょっ、上やん君?」

 

「ダメなんだ…もうこれ以上誰かを巻き込む訳にはいかない…確かにリーファの言う通りだ…俺は今、泣くほど辛い。でも…それでもやらなきゃダメなんだ。無理だって言われたぐらいで…心が折れてちゃダメなんだ…一人で戦うってのは…そういうことだ…」

 

「・・・上やん君…」

 

「おかしな話だよな…SAOじゃずっとソロやってたつもりなのに…いつも気がつけば誰かがそばにいて…一人だって気は全然しなかった…でも、今は…どこを見回しても…一人だ…」

 

「でも…約束したんだ。インデックスと…吹寄と…先生と…美琴と…みんなと…俺を助けてくれた全員に約束したんだ。だから俺は…たとえ一人でも、どんなに無理でもやらなくちゃならねぇんだ!!!」

 

 

そう言いながら上条はリーファに背を向け、店を出ようと歩き始め店の出口のドアノブに手をかけた。しかし、その時

 

 

「じゃあ!あたしが連れてってあげる!」

 

「・・・へ?」

 

「だから!あたしも世界樹に一緒に行ってあげるって言ってんの!上やん君を一人にしない!」

 

「…いや、人の話聞いてたんでせうか?もうこれ以上誰も巻き込む訳にはいかないってないって聞こえなかったんでせうか?」

 

「言っとくけどもうとっくに巻き込まれてるわよ。だったらもう乗りかかった船でしょ?とことん付き合うわよ。それに『俺を助けてくれた人』にあたしは含めてくれないのかしら?」

 

「・・・いやぁでもやっぱり出会ったばかりの人にそこまで世話になる訳には…」

 

「それに、世界樹までの道は分かるの?」

 

「うっ…」

 

「世界樹のグランドクエストはどうするの?一年以上攻略されてない世界樹を1人で突破できるの?」

 

「ぐっ…い、いやまぁ何とかするしかないさ…」

 

「いいの!もう決めたの!」

 

 

そう言って頑なに譲ろうとしないリーファはふんっ!と強めに鼻から息を吐くと、上条から顔を逸らした。しかし、店の蛍光灯のせいなのか、その頬が妙に赤らんでいる気がした

 

 

「・・・っだぁ〜…リズを彷彿とさせるじゃじゃ馬っぷりだなお前は…分かった分かった。じゃあ一つ提案がある」

 

「提案?」

 

「・・・明日、俺の事情を何もかも包み隠さずに話す。この世界に来た理由も、世界樹を目指す理由も、今までの俺になにがあったのかも、何もかも」

 

「!!!!!」

 

「長い話になると思うが、それを聞いた上で本当に俺について来たいと思ったなら、俺もリーファと一緒に世界樹を目指すことにする。でも、俺の話を聞いて付いてこれないと思ったなら、俺一人で世界樹を目指す。もちろん明日話すことは他言無用だ」

 

「・・・分かった。それでいい。じゃあ、あたしそろそろ落ちないといけないからログアウトさせてもらうわね。その…明日の時間はどうする?」

 

「大丈夫だ、リーファに合わせる」

 

「分かった…それじゃ午後3時にまたここに集まりましょ」

 

「分かった」

 

「それと、上やん君はログアウトするならこの店の上の宿屋を使ってね。変なとこでログアウトすると、次にログインした瞬間に周りのシルフからフルボッコにされるかもしれないから」

 

「わ、分かった…」

 

「それじゃ、また明日」

 

「おう、また明日」

 

シュンッ…

 

 

そう言って手を振るとリーファは自分のメニューのウィンドウのログアウトを選択してゲームを終了し、その身体はまばゆい光の中で消えていった

 

 

(さて…まぁ俺は別にログアウトする必要はねぇし….明日の3時まではまだまだ時間もあるし…とりあえずはアイテムの買い出しと装備を揃えて…後は周辺調査かな…後は…この世界でも『アレ』が使えるのか一度ぐらいは試しておきたい…一通りが終わったら俺も仮眠をとろう…)

 

 

自分のこの後の予定を大雑把に考えながらドアノブに手をかけた上条。しかし、自分が意図していないにも関わらずドアノブが勝手に回った。かと思えば何人かのシルフが一気に店へと入って来た

 

 

「「おわっ!?!?」

 

「あ、す、スマン…」

 

「いや、気にするな…出会い頭で驚いただけだ…ってスプリガン!?」

 

 

店に入って来た男性は上条の身なりを見るなりスプリガンだと判断し、シルフの領に別の種族がいることに驚愕し半歩だけ後ずさった

 

 

「あ、悪い!友達と会ってただけなんだ!すぐに出て行くから!」

 

「あ、そうなのか…悪い。種族が違うってだけでこんな過敏に反応しちまって」

 

「いやいや、気にしてませんのことよ?」

 

「おーい!なにやってんだよー!早く入れよなー!リーダー!」

 

「あ、お、おう!すまんな、それじゃ」

 

「おう」

 

(・・・分かっちゃいるんだが…やっぱああいうパーティーってのは…いいよな…)

 

 

上条はそう思いながらシルフの男性に別れを告げると、シルフの団体がぞろぞろと店へと入って来た。上条は店の出入り口は一つしかないため、全員が入りきってから店を出ようと思い待っていたところ、シルフの集団の中の一部から何やら話し声が聞こえてきた

 

 

「いやーー!でも本当に噂に違わぬ剣さばきだったよなー…あのウンディーネ」

 

「ああ!本当に目に見えない早さだったよな!俺なんか反撃する間もなくやられちまったぜ!」

 

「まさに噂通り!まるで『閃光』のような早さのレイピア使いだったぜ!」

 

「・・・え?」

 

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