とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第13話 『閃光』

 

(『閃光』って…それは…SAOプレイヤー時代の美琴の通り名じゃねえか!)

 

 

シルフの集団の雑談を立ち聞きしていた上条はその話の内容を聞くなり、血相を変えてシルフの集団の中の1人に話しかけた

 

 

「なぁ!ちょっとアンタ!」

 

「あぁ?どわぁ!?スプリガン!?」

 

「今の話!もっと詳しく聞かせてもらえないか!?」

 

「・・・は?」

 

「今の閃光のような早さを持つレイピア使いのウンディーネの話!もっと詳しく知りたいんだ!」

 

「はぁ!?なんでそんなことをシルフでもないお前に…!」

 

「頼む!その子、俺の知り合いかもしれないんだ!どうしても会わなきゃいけない人なんだ!この通り!」

 

 

上条は直角に腰を曲げて頭を下げ、シルフの男性に頼み込んだ

 

 

「いや、だからさぁ…」

 

「いい、俺が話してやる」

 

 

シルフの男性はめんどくさそうに上条をあしらおうとするが、そんな彼を止めたのは、先ほど上条と店内で出会い頭に激突しそうになったシルフの集団のリーダーだった

 

 

「ほ、本当か!?ありがとう!本当にありがとう!恩に着る!!」

 

「えっ!?ちょっ…リーダー!?」

 

「気にするな、元を辿れば最初に彼の気分を害したのは俺たちの方だ。みんなは先に自分の飲みたいものを飲んで、食いたいものを食っててくれ。今日は俺の奢りにする」

 

「お!?本当かリーダー!?みんなー!今日はリーダーの奢りだぞー!」

 

「イェーイ!」「太っ腹ー!」「愛してるぜー!」

 

「全く…元気なやつらだ…」

 

「あ、えっと…俺の名前は上やんだ。種族は違うがよろしく頼む」

 

「ああ、すまないな。俺に続いてすっかり気分を悪くさせてしまって」

 

「いや、仕方のないことだろ。そういうゲームなんだから。むしろ俺の方が場違いだ、すまん」

 

「なに、これでもこの人数のパーティーのリーダーを担う人間だ。義理立てと人情には自信がある」

 

「それで…ワガママを言うようだが…その…」

 

「レイピア使いのウンディーネの話か?」

 

「ああ、俺の知り合いかもしれないんだ」

 

「実はな、俺らのパーティーは今日まさに、世界樹攻略を目標に世界樹の根元にある『央都 アルン』を目指してこのスイルベーンを出発したんだ」

 

「おう」

 

「ところが、だ。スイルベーンがやっと見えなくなったぐらいのところである1人のプレイヤーが俺たちの前を飛行していてな。最初はスイルベーンからそう遠くないし、同じシルフのプレイヤーかと思った」

 

「だが近づいてプレイヤーを確認してみるとウンディーネでな。向こうはたった1人だし、俺たちの旅立ちの初狩りとして狙うことに決めたんだ」

 

「なるほど…」

 

「それで戦闘を始めたはいいんだが、そしたらそのウンディーネがめちゃめちゃ強くてな。レイピアの切っ先が全く見えないぐらいで蘇生する間も無くあっという間に全滅だ。そして旅立って1時間もせずに全員シルフ領に強制送還だ。全く災難だったよ」

 

「それで全員揃った後、アイツはきっと最近シルフの間で噂になってる『閃光の如き速さを持つレイピア使いのウンディーネ』だろうって話になったんだ」

 

「!!!!!」

 

「まぁ…それでその後は敗戦を祝してヤケ酒でもしようって話になってこの店に来た…ってことだ」

 

「そっか…ありがとう。それで、そのウンディーネはどんなヤツだった?」

 

「判別できた限りはおそらく女性だろうな。背丈はお前より一回り小さいぐらいで…どこに向かってたかまでは分からんが方角的にはこっから世界樹に向けてまっすぐだな。だが飛行スピードは向こうも本気で走ればめちゃくちゃ速いんだろうが、俺たちが追いつけたぐらいだから普段移動する時はそんな早い方じゃないんだろ。まだそう遠くには行ってないかもしれん」

 

「!!!悪い!色々とありがとう!それじゃ!」

 

バァン!!!

 

 

シルフの男性のその言葉を聞くと上条は脇目も振らず駆け出し、店の出入り口のドアを乱雑に開けて飛び出した

 

 

「後はそうだな…髪の毛は腰ぐらいまで伸びてて…あっ!おい!行っちまった…」

 

「おーい!リーダー!リーダーも早く食えよー!」

 

「ちきしょー!一人の女の子に負けるなんて情けねー!!あーもうチキショー!ヤケだー!ヤケ酒だー!!」

 

「おーう、分かった今行く。…まぁなんとなるか。あんだけ急いで飛び出したってことはその2つの容姿の特徴だけで探してる人と一致したんだろ…」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「よし!行くぜ!」

 

ビュンッッッ!!!!!

 

 

上条は気合を入れると背中から翅を広げ、思いっきりスイルベーンの地を踏み切って大空へ向かって飛び出し、今の自分が出せる最高スピードで飛行を始めた

 

 

ゴオオオオオオォォォォォ!!!!!

 

 

「世界樹に向かえばいいんだよな!お前はデカすぎて目立つから助かるぜ!!」

 

 

世界樹へと進路を向け、風を切りながらグングンと加速していく上条。曲がりなりにもシルフでもトップクラスの飛行速度を誇るリーファにも負けず劣らずの飛行速度を上条は持ち合わせているため、スイルベーンが見えなくなるほど遠くなるのにそれほど時間はかからなかった

 

 

「さて、あの人の情報通りならそろそろ目を凝らして探し始めないとな…今も飛んでる保証はないし滞空時間の限界が来てたら地上にいるだろうから下の森の方も気にしとかねぇと…」

 

 

自分の眼下に広がる木々の隙間に目を配りながら空を泳ぐ上条。捜索の為に適度な速さに速度を落とした

 

 

「えーっと…ウンディーネってのは確か青色を基調にしてる種族だったよな…緑の中から青を探すのか…こりゃ骨が折れるな…いっそサラマンダーとかなら探しやすいんだが…なんだって美琴のヤツはウンディーネを…ん?…アレは…?」

 

 

そんな愚痴を零しながら美琴と思わしきウンディーネの捜索にあたる上条は何やら森の木々の隙間から1人のプレイヤーの人影を見つけた

 

 

「!!!あのプレイヤーの色は…青…ってことはウンディーネだ…」

 

 

自分が剣の世界で戦っていた間、常に傍にいる訳ではなくとも、いつだって自分の助けとなり、力になってくれた女の子がいた。周りから自分だけの時間が進み始め、失意の念にかられてなお、ずっと追い求めた女の子がいた

 

 

「アイツだ…美琴だ…そこにいるのか…美琴…美琴ッ…!!」

 

 

シュンッ!…ズダンッ!ダダダッ!

 

 

上条はもういても立ってもいられなかった。ずっと探し求めていた女の子がそこにいると分かれば、身体は勝手に動き出していた。背中の翅をしまい、乱暴に着地すると目の前の女の子の方へ向かって走り出した

 

 

「美琴!!!!!」

 

「?・・・・・へ?」

 

「・・・・・ぇ………」

 

 

その名を叫んだ。追い求めた彼女が自分の方へと振り向いた……はずだった

 

 

「えっと………どちら様ですか?」

 

「美琴じゃ……ない……?」

 

 

目の前にいる月明かりに照らされて輝く青の彼女は、自分の求め続けた女の子とは似ても似つかなかった。自分より一回り小さい背丈に、凛とした顔立ちで、腰に細剣を携え、青色の綺麗な髪が丁度腰のあたりまですらりと伸びている女の子。確かに上条は例外だが、この世界は自分の容姿がそのまま反映される訳ではない。それでも、違うと感じた。一目見れば分かるはずだ。それほどまでにあの二年間で彼女を理解していたから。だからこそ、上条は自分の目の前の彼女が、御坂美琴でなかったことを受け止め切れなかった

 

 

「『ミコト』さん…という人を探しているのでしたら…人違いだと思いますよ?」

 

「……………ぁ……」

 

「・・・?もしもし?あの、大丈夫ですか?」

 

「・・・ぁ、ひ、人を探してるんだ…君と同じくらいの背丈で…ウンディーネ…かも…しれなくて…」

 

 

あまりにも大きすぎた悲しみと、どうしても現実を受け入れられなかった上条は言葉が出なくなっていた。辛うじて言葉をなんとか絞り出すが、その言葉はどれも途切れ途切れで、不鮮明で今にも消えてしまいそうな声だった

 

 

「・・・ごめんなさい」

 

「え?」

 

「だってあなた…すごい…悲しそうだから…私があなたが探してる人じゃなくて…ごめんなさい…」

 

「い、いやっ!そんな!謝らないでくれ!わ、悪いのはこっちの方なんだ!勝手に人違いして…勝手に落ち込んで…全部…俺が…勝手に…」

 

「いえ…その、私もかれこれずっと人を探しているの…私があなたと同じ立場だったら、きっと同じ反応をすると思うわ…だから…ごめんなさい…」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

 

気まずさのあまり互いにかけるべき言葉がみつからず、言葉が出てこなくなった空気の悪さから上条とウンディーネの女の子は互いに視線を逸らし、顔を俯かせていた

 

 

「・・・あの、一つお願いがあるんだけど…」

 

「あ…なんですか?」

 

「その…出会ってすぐでなんなんですけど、俺と戦ってくれませんか?」

 

「えっと、あなたと私が?」

 

「ああ」

 

「・・・いいですよ。でも私、あまりこのゲームを始めてから日を重ねた訳じゃないですけど、それでも結構強いわよ?レイピアの腕も性能も女の子だからといって見くびらない方が身の為ですよ。それに、あなたのその初期の片手剣じゃどうしようも出来ないと思いますけど…」

 

「いいんだ。そこはなんとかするから」

 

(・・・確かにこの子は美琴じゃない…でも、この世界の『閃光』が美琴じゃないと決まった訳じゃない…このシルフ領の周辺にいるウンディーネなんてこの女の子ぐらいだろう…なら、せめてこの子が『閃光』と呼ばれている本人なのかそうでないのかだけでも戦って確かめられれば…今はそれでいい…)

 

「・・・分かったわ。やるからには手加減しないわよ」

 

「恩に着るよ。ありがとう」

 

 

その言葉を皮切りに女の子は腰に据えた鞘から細剣を抜き、上条は背中の鞘から片手剣を抜いた

 

 

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